超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス   作:友(ユウ)

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第6話 紫と白の戦い(バトル)

 

 

 

 

春万との試合を終えた一夏は元のピットへと戻ってきた。

なお、春万は負けたことが悔しいのか反対側のピットへと戻っていった。

一夏が皆の前に降り立つとISを解除し、分離した光がエミリへと姿を変える。

すると、紫苑が一夏に向かって歩いていきながら右手を挙げ、

 

「お疲れ」

 

「おう」

 

パンッ、と一夏と軽くハイタッチを交わす。

 

「流石だな、兄さん」

 

マドカが歩み寄りながらそう言う。

 

「ありがとう、マドカ」

 

そして、

 

「強くなったな、一夏」

 

「千冬姉…………うん!」

 

千冬からのその言葉は一夏にとって何より嬉しかった。

 

「……………あ…………………」

 

その様子を見て、箒も声を掛けようとしていた時、この部屋の出入り口の扉が開き、

 

「一夏さん!!」

 

「うわっと………!」

 

一夏の名を叫びながらセシリアが目に涙を浮かべながら駆け込んできて、そのまま一夏に抱き着いた。

 

「ぬあっ!?」

 

その瞬間を目撃して思わず変な声を上げる箒。

 

「えっと………あの………オルコットさん………?」

 

いきなり抱き着かれた一夏は困惑する。

セシリアは少し離れると、

 

「わたくしの事はセシリアとお呼びください一夏さん! そして、ありがとうございます!」

 

頬を赤く染めたセシリアがそう言う。

 

「ああ、気にしなくてもいいよ。俺はただ、弟の蛮行を止めたかっただけだ」

 

一夏はセシリアの言葉にそう返した。

 

「いいえ! あなたはわたくしを救ってくださいました! いくら感謝してもしたりません!」

 

セシリアの迫力に一夏は少し押され気味になる。

 

「わ、わかった。そこまで言うなら感謝の言葉は受け取っておくよ…………」

 

「はい!」

 

一夏の言葉にセシリアは嬉しそうな表情で返事をした。

すると、セシリアは頬を染めながら少し俯き、

 

「い、一夏さん…………先程あの人へ立ち向かうあなたは、まるで誇り高き『騎士』のようでした………」

 

その言葉に、一夏は一瞬呆気にとられた表情をした。

だが、すぐに嬉しそうな顔になり、

 

「…………ありがとう! 最高の誉め言葉だ!」

 

喜びの微笑みと共にその言葉を口にした。

 

「ッ!?」

 

その表情を見て、一気に顔が赤くなるセシリア。

そして、

 

「い、一夏さん………!」

 

何かを決意した表情になり、一夏の名を呼ぶ。

 

「何かな?」

 

一夏が聞き返すと、

 

「わ、わたくしは………! あなたに心奪われてしまいました…………!」

 

「えっ?」

 

その言葉に一夏は呆けた声を漏らし、

 

「なっ!?」

 

箒は驚愕し、

 

「いきなり告白!?」

 

翡翠は驚き、

 

「あら、セシリアちゃんったら大胆♪」

 

楯無は楽しそうにそう言い、

 

「やっぱり…………」

 

「やれやれ…………」

 

紫苑と千冬は呆れていた。

 

「いきなりこんなことを言われても困惑するのは分かっています! 故に、答えは今すぐでなくても構いません! ですが、わたくしの気持ちは知っていて欲しかった…………お慕いしています、一夏さん」

 

「え………あ…………」

 

セシリアのストレートな告白に一夏が呆けていると、

 

「…………ブランに何て言うつもりだ?」

 

紫苑が後ろからボソッと一夏だけに聞こえる位の小声で呟く。

一夏はギクッと体を震わせると、

 

「IS学園に入って一週間足らずで『戦姫候補』を2人も作るなんて、ブランから離れた途端にこれかよ…………」

 

紫苑はやれやれと言わんばかりに呆れた呟きを漏らす。

 

「ブランが前に言っていた一夏のフラグ折りが一番苦労してるっていうのはこういう事か……………」

 

一夏の無自覚フラグ体質を思い知った紫苑は呆れと驚きが半々だ。

一夏が何も言えないで居ると、再び千冬がパンパンと手を叩いて自分に注目させる。

 

「あー…………話が逸れたがまだ試合は残っている。第2試合の勝者は状況的に見て月影兄とする! それでは織斑兄、月影兄、準備をしろ!」

 

「了解」

 

「りょ、了解………」

 

千冬の言葉に紫苑は平然と、一夏は若干動揺が抜けきらない声で返事を返した。

 

「アリン」

 

「エミリ」

 

紫苑と一夏がそれぞれのパートナーに声を掛ける。

すると、アリンとエミリの2人が光となってそれぞれのパートナーを包んだ。

再びISを纏う2人。

すると、

 

「一夏」

 

紫苑が一夏へ声を掛けた。

 

「………楽しんでいこうぜ?」

 

そう言いながら拳を突き出す。

一夏はそれに対し気を取り直すと笑みを浮かべ、

 

「おう!」

 

その拳に自分の拳を合わせる。

ガシャッっという金属をぶつけ合う音が響き、互いに笑みを浮かべると、

 

「「行くぜ!」」

 

同時にカタパルトから飛び出していった。

 

 

 

 

 

ピットから飛び出して来た2人に、観客の生徒達は歓声を上げる。

まるで打ち合わせたかのように2人は螺旋を描きながら上昇し、一定の高さになると二手に分かれて所定の位置に着いた。

向き合う2人。

紫苑は翡翠との試合で使った刀剣を展開する。

だが一夏は目を瞑り、

 

『エミリ、戦斧だ』

 

『了解! 展開するね!』

 

右手を前に突き出すと、前の試合とは違い、灰色と白の刀身と水色に輝く刃を持った巨大な戦斧を展開した。

それを掴むとまるで普通の剣を扱うかの如く軽々と振り回して感触を確かめる。

 

「よし!」

 

そのまま紫苑を見据える一夏。

その時、試合開始のカウントダウンが表示される。

すると、2人は互いに近づいていき、互いの刀剣と戦斧を掲げる様に構えた。

それは自然と2人の武器が交差する形となる。

 

「………………………」

 

「………………………」

 

「「「「「「「「「「…………………………………」」」」」」」」」」

 

その2人の姿に自然と観客の声が減っていき、静まり返った。

そのままカウントがゼロになった瞬間、互いが軽く武器を弾き合ったかと思うと、

 

「はぁあああああああああああっ!!」

 

「おおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

渾身の一撃を繰り出し合った。

ぶつかり合う初撃。

それに押し勝ったのは、

 

「おおおぉ………らぁっ!!」

 

一夏だった。

戦斧を振り切り、紫苑を吹き飛ばす。

だが、紫苑はそれも織り込み済みだったのか、慌てる事無く体勢を立て直し、空中に留まる。

だが、

 

「うぉりゃぁあああああああっ!!」

 

一夏は紫苑に対して追撃を仕掛けており、体勢を整えた紫苑に向かって戦斧を薪割りの如く両手持ちで脳天から振り下ろす。

 

「フッ!」

 

だが紫苑は、振り下ろされる戦斧に向かって刀剣を添えると、春万が受け流しきれなかった一撃と同等かそれ以上の一撃をあっさりと受け流して見せた。

まるで空振るように紫苑の後方へと受け流される一夏。

だが、幾度も剣を交わらせた仲。

この程度で紫苑が捉えられると思ってはいない。

一夏は即座に片手持ちになると、そのまま後ろに向かって大きく薙ぎ払った。

反撃を予想しての一撃。

だが、紫苑はその一撃が紙一重で届かない場所にいた。

並の人間なら僅かな。

だが、達人にとっては決定的な隙。

その隙に紫苑は切り込んだ。

 

「クロスコンビネーション!!」

 

「ぐああっ!?」

 

刀剣による乱撃。

翡翠との試合でも使ったその技を一夏に叩き込んだ。

最後の一撃で地面に叩き落とされる一夏。

砂煙が舞い、一夏の姿を覆い隠す。

だが次の瞬間、

 

「うぉおおおおおおおっ!!」

 

砂煙を切り裂くが如く、一夏が回転しながら戦斧を振り回し、勢いを付けて飛び出してきた。

 

「テンツェリントロンベ!!」

 

「ッ!?」

 

紫苑は咄嗟に刀剣で防御するが、一夏の一撃は凄まじく防御毎紫苑を吹き飛ばした。

 

「ぐうぅっ!?」

 

壁際の地面に叩きつけられる紫苑。

先程の一夏と同じように砂煙に包まれた。

 

「どうだ!」

 

今の一撃に手応えを感じた一夏。

だが、

 

「なっ!?」

 

砂煙を切り裂き、輝くエネルギーの斬撃が飛んできた。

 

「ぐっ………ぐうっ………!」

 

袈裟懸け、逆袈裟と2連続で飛んできたエネルギーの斬撃を咄嗟に防御する一夏。

すると、紫苑を覆っていた砂煙が吹き飛び、エネルギーを纏わせて刀剣を腰溜めに構えた紫苑の姿が見えた。

次の瞬間、

 

「デルタスラッシュ!!」

 

横一文字の斬撃を放ち、一夏への攻撃が三角形を描く形になり、

 

「ぐあああっ!!」

 

その斬撃のエネルギーが共鳴し、爆発を起こした。

爆発の中から姿を見せた一夏は、ダメージは受けたものの、まだ余裕が伺えた。

すると、爆発的な歓声が巻き起こる。

ほんの一瞬の出来事だったが、生徒達にもこれがどれだけレベルの高いやり取りだったかを肌で感じたようだ。

紫苑は空中へ浮かび、一夏と同じ高さに立つ。

一瞬視線が交錯すると、互いに笑みを浮かべた。

一夏が動く。

左手を上から下へ翳していくと、青白く輝くエネルギーの球体が複数個生み出される。

 

「弾幕はパワーだぜ!」

 

そう言うと、一夏は戦斧を野球のバットのように振りかぶり、

 

「ゲフェーアリヒシュテルン!!」

 

そのエネルギー球を打ち出した。

散弾の如く打ち出されたそのエネルギー球を紫苑は回り込むように避けながら一夏へと接近する。

 

「ヴィクトリースラッシュ!!」

通り抜けざまにVの字に斬撃を放つ紫苑。

 

「ぐっ………!」

 

一夏はその斬撃をまともに受けてしまうが、

 

「ツェアシュテールング!!」

 

技を放った後の紫苑の僅かな隙に大振りの一撃を叩き込む。

 

「がっ!?」

 

大きく吹き飛ぶ紫苑。

それを追うように一夏は飛び出し、紫苑の手前で飛び上がると戦斧を真上に振り上げ、

 

「ゲッターラヴィーネ!!」

 

落下スピードもプラスした渾身の一撃を振り下ろした。

 

「チッ………!」

 

紫苑は咄嗟に飛び退いて直撃は免れるが、振り下ろされた戦斧が地面を砕き、その衝撃波に吹き飛ばされる。

 

「ぐあっ!?」

 

壁に叩きつけられる紫苑。

一夏は更に追撃を掛けようと地面から戦斧を引き抜くが、

 

「………ッ」

 

壁に叩きつけられた紫苑が右手を空に掲げていた。

思わずその先を見上げる一夏。

そこにはエネルギーで作り出された巨大な剣が浮かんでいた。

 

「しまった………!」

 

一夏は自らの失態を悟る。

 

「32式エクスブレイド!!」

 

紫苑が右手を振り下ろすと、巨大なエネルギーの剣が一夏に向かって落下してくる。

 

「ぐあああああああああっ!?」

 

それに直撃した一夏は大ダメージを受けた。

 

「ぐっ………まだまだっ!」

 

だが、一夏は諦める事無く再び立ち上がる。

ダメージを受けているのは紫苑も同じだ。

ならば諦める道理はない。

 

「行くぞ! メツェライシュラーク!!」

 

一夏は突進力を乗せた回転斬りを繰り出す。

 

「クリティカルエッジ!!」

 

その一撃を、紫苑は三連撃で相殺する。

その衝撃で、互いの間合いが開いた。

 

「「………………………」」

 

互いに相手を見据え合う2人。

すると、一夏が戦斧を地面に叩きつけると、

 

「……………勝負だ! 紫苑!」

 

そう言い放つ。

紫苑は刀剣を両手で持ち、顔の前で祈るような仕草をした後、刀剣を高く掲げる。

 

「受けて立つ!」

 

紫苑も堂々と言い放った。

 

「女神さえも叩き切る! 超ド級の戦斧の一撃!!!」

 

一夏は戦斧を地面に擦り付けながら飛び出す。

 

「ネプテューンブレイクで決める!」

 

紫苑も全力で飛び出した。

 

「おおおおおおおおおっ!!」

 

「はぁあああああああっ!!」

 

一夏の戦斧と紫苑の刀剣がぶつかり合う。

威力は一夏の方が上だが、紫苑は刃を滑らせるように戦斧の刀身の横を通り過ぎ、そのまま一夏の後方へ。

だが、跳ね返るように即座に反転するとそのまま超スピードで一夏に斬りかかった。

それを幾度も繰り返す言わば斬撃の牢獄。

しかし、一夏は攻撃を受けることも厭わずに戦斧を振り回し、思い切り地面に叩きつけた。

地面が爆砕し、砕かれた地面が隆起する。

その勢いで紫苑は遠くへ飛ばされた。

 

「うおりゃぁああああああああああっ!!」

 

その紫苑へ向けて一夏は回転しながら勢いを付けると、その手の戦斧を投げつけた。

回転しながら紫苑へ向かって飛ぶ戦斧。

そのまま直撃するかと思われた時、

 

「はぁっ!」

 

紫苑が振り向き様に刀剣を薙ぎ払い、飛んできた戦斧を弾いた。

弾かれた戦斧はそのまま地面に落下し、地面に突き刺さる。

だが、その落下地点に一夏が突っ込んできており、即座に戦斧を引き抜くとその場で高く跳び上がった。

それと同時に紫苑も急上昇と共に間合いを空ける。

そして、

 

「ハードブレイク!!!」

 

一夏が縦に回転しながら紫苑に向かって突っ込み、

 

「止めだ! 覚悟っ!!」

 

紫苑も一直線に刀剣を突き出しながら突撃した。

アリーナの中央でぶつかり合う2人。

その衝撃は、観客を護るアリーナのシールドを僅かに揺らがせた。

試合の結果は、

 

『両者、シールドエネルギーゼロ。この試合、引き分けとする』

 

千冬のアナウンスが入る。

こうして、2人のISでの初対決は引き分けに終わった。

 

 

 

 

 

 

その夜。

色々と一悶着あったが、紫苑はIS学園の生徒として認められた。

そして紫苑は寮の部屋へと向かっている訳なのだが、

 

「……………翡翠、いい加減離れてくれないか?」

 

「やだ!」

 

紫苑の言葉に即答で否定する翡翠。

翡翠は先程から紫苑の腕に抱き着いたまま離れようとはしない。

そして更に翡翠は『お兄ちゃんと寝る!』と言って聞かない。

そこで千冬は妥協案としてルームメイトの許可を得ることが出来たら許可するという条件を出した。

その為現在は翡翠の部屋に向かっている最中だ。

尚、楯無はいつの間にか姿を消していた。

2人が翡翠の部屋の前に来ると、翡翠がドアを開ける。

すると、

 

「お帰りなさい。お風呂にする? ご飯にする? それとも、わ・た・し?」

 

裸エプロン姿の楯無がそこにいた。

 

「かっ、刀奈ちゃん!? 何でそんな恰好!?」

 

翡翠が楯無の姿に驚く。

翡翠は動揺していたが、

 

「…………………………はぁ~、何やってるんだお前は?」

 

紫苑は動揺することなく呆れる声を漏らした。

 

「むぅ…………紫苑さんの反応が思ってたものと違う…………」

 

楯無は不満そうに呟く。

 

「刀奈ちゃん! そんな恰好はしたないよ!」

 

「あはは、大丈夫大丈夫。ちゃんと水着着てるから!」

 

そう言いながらエプロンを捲ると、言った通りその下には水着を着用していた。

 

「お姉ちゃん、それでも恥ずかしいから早く着替えて」

 

もう1人の少女の声が響いた。

それは以前一夏と一緒に相席になった簪だ。

簪が翡翠のルームメイトなのである。

 

「むう、分かったわよ…………せっかく紫苑さんを悩殺しようと思ってたのに………」

 

楯無はぶつくさ言いながら洗面所に入り、すぐに着替えて出てくる。

 

「何が目的かは知らないけど、ガキじゃないから俺にはそういうハニートラップは通じないと思ってくれ」

 

紫苑は呆れが抜けきらない表情でそう言う。

 

「ところで君は?」

 

紫苑が簪の方を向いてそう聞く。

 

「あ………更識 簪です…………お姉ちゃん………更識 楯無の妹で、翡翠さんのルームメイトです」

 

「なるほど、君が話に聞いていた刀奈の妹さんか。知ってると思うが俺は月影 紫苑。翡翠の兄だ。翡翠が世話になったな」

 

「いえ…………」

 

簪がそう呟くと、

 

「じゃあお兄ちゃん。今まで何処にいたのか教えて!」

 

翡翠は紫苑に向かってそう言う。

 

「…………わかった…………それじゃあ…………」

 

そうして紫苑は語りだした。

3年前、ゲイムギョウ界と呼ばれる異世界に跳ばされたこと。

その世界を治める4人の守護女神の事。

その内の1人、『プラネテューヌ』を治める『ネプテューヌ』に救われた事。

そして、自分がそのネプテューヌの守護者になった事を。

 

「…………………じゃ、じゃあ紫苑さんはそのネプテューヌっていう女神と…………」

 

話を聞いた楯無が若干元気をなくしたように軽く俯く。

 

「ああ。事実上結婚してるって事になる。そして俺自身もあいつをずっと守っていきたいと思ってる。だから俺は、何があろうと向こうの世界へ帰るつもりだ」

 

「お兄ちゃん……………」

 

「翡翠、お前は如何する? お前が望むなら一緒に行くことも可能だが、おそらくはそうそう簡単にはこちらの世界と行き来は出来ない筈だ。一緒に来るなら、こちらの知り合いや友達とは別れる覚悟をした方が良い」

 

「えっ…………そ、それは……………」

 

翡翠は今まで面倒を見てくれた楯無や簪の方を見る。

 

「まあ、答えは今すぐじゃなくても良いが、俺はいつ帰るチャンスが来るかも分からない。答えはなるべく早く出してくれ」

 

「…………うん」

 

翡翠が俯きながらも頷く。

その時だった。

 

「…………ッ!?」

 

紫苑が何かに反応する。

 

「…………? 紫苑さん?」

 

「シッ…………!」

 

気になった楯無が尋ねるが、紫苑は人差し指を立て、静かにするよう伝える。

その真剣さに3人は黙り込むが、

 

『………こえ……か……………んさ……………か…ん……………』

 

ノイズ交じりの声が聞こえた。

 

「声…………?」

 

翡翠が呟く。

 

『聞こえ……か? し…んさん………いちか…ん………』

 

先程よりもハッキリと声が聞こえる。

 

「この声………まさか!」

 

紫苑は何かに気付くと、ポケットからNギアを取り出した。

 

『シオンさん、イチカさん! 聞こえますか?』

 

その声は確実にそれから聞こえている。

紫苑はNギアを操作し、通信を繋いだ。

空中に空間ディスプレイが表示され、そこにイストワールが映った。

 

「イストワール!」

 

紫苑は思わず叫ぶ。

 

『あっ! ようやく繋がりましたね。お久しぶりですシオンさん。ご無事で何よりです』

 

通信が繋がったイストワールは紫苑を労う。

 

「ああ。ここには居ないが一夏も無事だ」

 

『そうですか。それは何よりです』

 

イストワールはホッとした表情になる。

その時、

 

『いーすん! シオンと連絡が取れたの!?』

 

通信機の向こう側で騒がしい声が聞こえた。

 

『あっ! ちょっと! ネプテューヌさん! これから大事な話が…………!』

 

『シオン!? シオン無事なの!?』

 

空間ディスプレイにネプテューヌの姿が映る。

 

「ネプテューヌ…………」

 

その姿を見て、紫苑の表情が自然と柔らかくなる。

 

『シオン! 無事!? ケガしてない!?』

 

「ああ、この通り無事だ。ケガもない」

 

『そーなんだー! よかったー!』

 

あからさまにホッとした表情を見せるネプテューヌ。

 

『シオン、今どこにいるの?』

 

ネプテューヌが一番気になるであろうことを聞いてきた。

 

「ああ。俺と一夏は、俺達が元居た世界に居る」

 

『シオンの元居た世界?』

 

「そうだ。何の因果か戻って来ちまってな…………」

 

『そうなの…………じゃあ』

 

『ちょっとネプテューヌさん!』

 

2人の話にイストワールが割り込んできた。

 

『ねぷっ!? いきなりどうしたのいーすん?』

 

『どうしたじゃありません! せっかくこれからシオンさんと重要な話をするところだったのに、邪魔しないでください!』

 

『あうう………ごめんなさい』

 

イストワールの説教にネプテューヌは小さくなる。

すると、イストワールは佇まいを直して紫苑に向き直る。

 

『お待たせしました。それで、お2人をこちらの世界に戻す方法なのですが…………何でもいいので転送装置があれば3分ほどでこちらの世界に戻すことが出来るのですが…………』

 

「生憎こちらの世界の技術レベルは転送装置を作れるレベルには達していない」

 

『そうですか……………それならば……………』

 

イストワールは少し考えを巡らす仕草をすると、

 

『シオンさん、今しばらく時間を貰えますか? 必ずお2人を連れ戻す方法を見つけます』

 

「わかった。出来るだけ早く頼む」

 

『はい。承りました』

 

紫苑の言葉にイストワールは頷く。

と、その時映像が乱れる。

 

「イストワール!?」

 

『ああ、そろそろ時間のようですね。やはり3分ほどしか通信を繋げれないようです。シオンさん、すみませんがお話は次の機会に……………』

 

イストワールがそう言い残すと通信が切れた。

通信が切れたNギアをじっと見つめていた紫苑はどこか嬉しそうな表情をしていた。

 

「…………………………」

 

その表情を見た楯無が、何処か心苦しそうに俯く。

だがその時、

 

「…………………紫苑さん!!」

 

顔を上げた楯無が、まるで何かを決意したような眼をしながら紫苑に呼びかけた。

 

「何だ?」

 

普通に答える紫苑。

すると、

 

「私は……………紫苑さんが好きです!!」

 

「いきなり告白!?」

 

突然の楯無の告白に流石の紫苑も声を上げた。

 

「いきなりじゃありません! 私は………ずっと紫苑さんの事が好きだったんです! 3年前、紫苑さんが死んだと聞かされた時は、何で想いを伝えなかったんだろうってずっと後悔してました!!」

 

「ああ………刀奈ちゃん、やっぱりお兄ちゃんの事好きだったんだ」

 

翡翠はまるで納得したように頷く。

 

「でも、こうして紫苑さんが目の前にいるんです! 告白する以外の選択肢はありません!」

 

「いや、ちょっと待て! さっきも言ったが俺にはもうネプテューヌという永遠を誓い合った相手が……………」

 

「奪います!」

 

「おい!?」

 

「それでダメなら寝取ります!!」

 

「待てコラ!」

 

次から次へと出てくる楯無の言葉に紫苑が突っ込む。

 

「わ~~~…………刀奈ちゃん積極的」

 

「あれは積極的というより半分病んでるんじゃ…………?」

 

楯無の行動に何故か感心する翡翠とやや呆れ気味の簪。

 

「それでも駄目なら愛人で我慢します!!」

 

「だから待てと…………!」

 

次から次へと出てくる刀奈の言葉に紫苑が頭を悩ませていると、

 

「………………………はぁ」

 

紫苑は観念したのか一度溜息を吐く。

 

「刀奈」

 

「はい」

 

「改めて聞くが本気か?」

 

「本気です」

 

「俺の一番がネプテューヌに向いてると分かっていてもか」

 

「その程度で諦めきれません!」

 

「…………そうか」

 

「逆に聞きますが、紫苑さんは私の事、嫌いですか?」

 

「いや、嫌いじゃないさ。むしろ好きなんだろう。ネプテューヌに出会う前に告白されていれば、多分受け入れていたであろうぐらいには…………」

 

「紫苑さん…………」

 

その言葉に楯無は嬉しそうな顔をする。

 

「………………話を続けるが、俺が一番愛しているのはネプテューヌだ。それは揺るぎない事実だ」

 

「……………………」

 

紫苑の言葉に楯無は彼をジッと見つめる。

その目を見た紫苑は言葉を続けた。

 

「さっきは言っていなかったが、ゲイムギョウ界は何故か女性の方が出生率が高い。その為に重婚が認められている」

 

「えっ!?」

 

その言葉に楯無は目を見開いた。

 

「まあ、何と言うか………だから………」

 

「構いません!」

 

楯無が力強く答えた。

 

「2番目でも構いません! 私を紫苑さんのお嫁さんにしてください!」

 

そう言い放つ楯無。

すると、紫苑はバツの悪そうな顔をして、

 

「いや、その………な? 2番目はもう決まっているんだ………だから、3番目って事になるんだが………」

 

紫苑が言いにくそうにそう言うと、

 

「では3番目で」

 

楯無は戸惑わずにそう言い切った。

 

「……………それともう1つ」

 

「何でしょう?」

 

「先程説明した中に、俺が女神の守護者だという話があったわけだが……………女神に認められ、守護者の伴侶となった女性は、『戦姫』と呼ばれる存在になる」

 

「センキ…………ですか?」

 

「戦姫は守護者と命と力を共有し、守護者と女神を護る『剣』のような存在だ。守護者や女神が命を失った場合、共に命を失うが、その逆は無い。だが、寿命は無くなり、女神や守護者と同じく『不老』の存在となる。それでも構わないか?」

 

「もちろんです! むしろ望むところです!」

 

それでも楯無は迷わなかった。

 

「……………わかった。そこまで言うなら受け入れよう。まあ、ネプテューヌに認められてから、だがな」

 

「ッ…………はい!!」

 

楯無は満面の笑みで頷いた。

 

 

 

 

 

「……………ねえ簪ちゃん。私達見事に空気だね」

 

「……………言わないで」

 

 

 

 

 





第6話です。
紫苑と一夏のバトル及び+αでした。
如何でしたでしょうか?
皆様はGW何連休だったので?
こちとらGW何それ美味しいのって感じで申し訳程度に3連休があるだけでした。
なので更新はいつも通り。
後今回は何故か気力が無いので返信はお休みします。
では。
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