超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス   作:友(ユウ)

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第7話 転校生の幼馴染(チャイニーズ)

 

 

 

 

クラス代表決定戦の翌日。

朝のHR前の時間。

既に登校してきた何人かの生徒達がグループを作ってお喋りを楽しんでいる。

すると、教室の扉が開いて1人の生徒が入ってくる。

その生徒は月影 翡翠。

少ない口数と他人を拒絶する雰囲気を纏っていたことで、クラスから孤立していた少女。

その少女が入室して来たことで、教室内のざわめきが静まり返る。

いつもなら翡翠はそのまま無言を貫いて自分の席に座るのだが……………

翡翠は息をすぅっと吸い込むと、

 

「おはよう!」

 

満面の笑みでそう挨拶した。

 

「「「「「「ッ………………!? お、おはよう………………」」」」」

 

教室内にいた生徒達は呆気にとられたまま挨拶を返した。

あの暗く、無表情を貫いていた翡翠が満面の笑みで挨拶をしたのだ。

前日の試合で大泣きしたとはいえ生徒達の驚愕は一押しだろう。

その時、翡翠の後ろから一夏とマドカ、箒が入室してくる。

 

「おはよう!」

 

一夏も教室内の皆に向けて挨拶をした。

 

「あっ! 一夏君、おはよう!」

 

その挨拶にいの一番に挨拶を返したのはこれまた翡翠だった。

更に、

 

「マドカちゃんと箒ちゃんもおはよう!」

 

一夏と一緒に居るマドカと箒にも挨拶をする。

 

「ああ、おはよう…………」

 

「お、おはようございます…………」

 

マドカと箒も若干呆気にとられた声で挨拶を返す。

 

「………………先日までとはまるで性格が違うな」

 

マドカが思わずポツリと呟く。

 

「こっちが彼女の地なんだろう。紫苑からは、翡翠は元々明るい性格だと聞いていたしな」

 

「え~っと……………あはは…………無視しててごめんなさい」

 

翡翠は苦笑した後に頭を下げる。

 

「これからは仲良くしてくれると………嬉しいかな?」

 

翡翠は少しバツが悪そうな顔をしながら皆にそう言った。

教室が一瞬静まり返るが、

 

「…………えっと………よろしく、月影さん」

 

生徒の1人が翡翠に話しかけた。

それを皮切りに翡翠に話しかける生徒達が何人も続き、翡翠はあっという間に生徒の輪の中に入っていった。

既に笑顔でお喋りを楽しんでいる。

 

「…………あの順応性は凄いな」

 

マドカがポツリと漏らす。

 

「マドカと箒も見習わなきゃな」

 

「「うっ………」」

 

一夏の言葉に2人が言葉に詰まる。

この2人は人付き合いが得意ではなく、孤立しているわけでは無いが気兼ねなく話せる友達というのは少なかった。

それから暫くすると、朝のHRが始まる。

そこで遅れてきた入学生という事で紫苑の事が紹介された。

 

「月影 紫苑だ。こんな形でもそこにいる翡翠の兄で17歳だ。別に言葉使いは普通でいいが子ども扱いは止めてくれ。少しの間よろしく頼む」

 

紫苑はそう言って自己紹介をする。

そして次の連絡事項の時、

 

「では、1年1組代表は、織斑 春万君に決定です」

 

真耶が笑顔でそう言った。

クラスの女子達も大いに盛り上がる。

すると、春万が手を挙げた。

 

「先生、質問です」

 

春万が発言する。

 

「はい、織斑君」

 

「何故俺がクラス代表になっているのでしょうか?」

 

春万がそう問いかける。

その問いに答えたのは千冬だった。

 

「ハッキリ言えば、決勝に残った2人ではレベルが高すぎるという事だ。あの2人は国家代表どころか世界ランクでも上位に食い込む実力を持っていると言っていい。学生レベルでそのレベルを相手にすれば、成長どころか心を折ってしまう可能性が高い。その為その2人を除いた中でオルコットに勝ったお前が代表に選ばれたということだ」

 

それを聞くと、春万はムッとした。

 

「ちふ………織斑先生。レベルが高すぎるという理由なら自分も当てはまるのではないでしょうか?」

 

春万からしてみれば、落ちこぼれの筈の一夏が強すぎるという理由で代表を外されたのに、自分が代表に選ばれたという事に納得がいかなかった。

しかし、

 

「自惚れるな馬鹿者。確かにお前は才能を持っている。だが、現時点で精々代表候補生上位止まりだ。国家代表どころか学生レベルの域を出ていない。才能だけで勝ち続けられるのは中学レベルまでだ。織斑兄に一方的に敗北したことを忘れたのか? この先も勝ち続けたいなら研鑽を積むことだな」

 

千冬はそう言って相手にしなかった。

 

「とにかくクラス代表は織斑 春万。 異存はないな?」

 

「「「「「「「「「「はーい」」」」」」」」」」

 

クラスの女子生徒達の声が唱和した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけでっ! 織斑君クラス代表決定おめでとう!」

 

「「「「「「「「「「おめでと~!」」」」」」」」」」

 

パパパァンというけたたましい音が鳴り響き、クラッカーが乱射される。

 

「………………………」

 

で、このパーティーの主役である春万はと言うと、やや不満げな顔で席に座っていた。

代表に選ばれた理由に納得していないのだ。

 

「いやー、これでクラス対抗戦も盛り上がるねえ」

 

「ほんとほんと」

 

「ラッキーだったよね~。 同じクラスになれて」

 

「ほんとほんと」

 

そんな事を言うクラスメイト。

因みに先程から相槌を打っている生徒は2組の生徒だったりする。

紫苑や一夏達もクラスメイトとの交流という事で翡翠、マドカ、箒達と共に参加している。

そして何故か、紫苑の隣には腕に抱き着く楯無の姿があった。

すると、

 

「はいはーい! 新聞部でーす! 話題の新入生、織斑 春万君と織斑 一夏君、月影 紫苑さんに特別インタビューをしに来ました!」

 

突然の言葉におお~っと食堂内が盛り上がる。

 

「あ、私は2年の黛 薫子。 よろしくね。 新聞部副部長やってまーす。 はいこれ名刺」

 

差し出された名刺を春万と一夏と紫苑は流れ的に受け取ってしまう。

 

「ではではずばり春万君! クラス対抗戦への意気込みを、どうぞ!」

 

ボイスレコーダーを突き出しながら春万に迫る薫子と名乗った女子生徒。

春万は内心面倒くさいと思っていたが、

 

「選抜戦では惜しくも負けてしまった身ですが、クラス皆の期待に応えられるよう精一杯頑張りたいと思います!」

 

猫かぶりの優等生らしい言葉でそう答えた。

因みに試合中の言動は、ISに乗ると一種のトランス状態になってしまってああいう言動をしてしまったと言い訳をしている。

 

「ふむふむ………まあ普通だね。じゃあ次は一夏君。何かコメント頂戴! 決め台詞みたいなのだとなお良し!」

 

一夏にボイスレコーダーを突き出しながらそう聞いた。

一夏は少し考えると、

 

「それじゃあ…………俺の邪魔をする奴は、叩き切る!!」

 

少し凄みを出しながらそう言い放った。

その瞬間、その場の生徒達が何かに押されるような感覚を覚えた。

紫苑は余裕で受け流していたが。

 

「……………お、おおっ………! 単純だけど、なんかすごい迫力があったね! よし、その台詞はそのまま頂き!」

 

薫子は満足そうに頷くと、紫苑へ視線を向けた。

すると、

 

「いぇーい! 薫子ちゃん!」

 

紫苑の腕に抱き着いていた楯無が片手を上げて薫子を迎える。

 

「いぇーい! たっちゃん! ご機嫌だね!」

 

薫子はその手に右手を合わせてハイタッチすると、

 

「では月影 紫苑さんに質問です! ズバリ、たっちゃんとの関係は!?」

 

前の2人とは違い、明確な質問が来た。

 

「……………………まあ、つい先日告白されたな」

 

「おおっ!? それで答えは!?」

 

「……………………こいつの姿を見て察してくれ………」

 

楯無は相変わらず紫苑の腕に抱き着きながらニコニコと笑みを浮かべている。

 

「こんな幸せそうなたっちゃんは初めてだね! って事は、気持ちは通じたって事だから……………というよりこれって記事にしちゃっていいの?」

 

「俺は別に構わんが………?」

 

紫苑としてはプラネテューヌでネプテューヌとの関係を記事に書かれることなど日常茶飯事だったので、今更女性との関係を記事にされることなど特に何も感じなかった。

 

「私もオッケーだよ!」

 

楯無もサムズアップしながら許可を出す。

楯無からしてみれば関係を公にすることで紫苑を狙う者達への牽制が目的だ。

 

「いやぁ、良い記事になりそうだね! それよりも意外だったなぁ」

 

「何が?」

 

薫子の言葉に楯無が尋ねると、

 

「まさかたっちゃんがショタコ…………」

 

薫子がそこまで言いかけた瞬間、パァンと小気味いい音が鳴り響いた。

見れば、紫苑が右手にハリセンを持っており、それを振り抜いた体勢だった。

そして薫子は頭を押さえて蹲っている。

 

「子ども扱いはするな。その事も記事にしておいてくれ」

 

紫苑はそう言うとハリセンをインベントリへとしまう。

 

「は、はい…………」

 

その姿を見た他の生徒達は、紫苑を子ども扱いするのは止そうと心に誓うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫くの時が経ち、

 

「織斑君、おはよー。 ねえ、転校生の噂聞いた?」

 

紫苑が教室に入ると、クラスメイトが一夏に話しかけている所だった。

 

「転校生? 今の時期に?」

 

「そう、なんでも中国の代表候補生なんだってさ」

 

「ふーん」

 

「あら、わたくしの存在を今更ながらに危ぶんでの転入かしら」

 

セシリアがそう言うが、

 

「いや、それは無いだろう。代表候補生なら何人もいることだしな。強いて言うならそれ以外の特殊事例…………兄さんたち男性操縦者に関係する可能性の方が高いだろう」

 

マドカがそう答える。

 

「…………マドカさん、単なる冗談に正論で返されると逆に困ってしまいますわ…………」

 

セシリアが脱力しながら言う。

 

「このクラスに転入してくるわけではないのだろう? 騒ぐほどの事でもあるまい」

 

箒がそう言うと、

 

「どんな奴なんだろうな?」

 

一夏がポツリと呟く。

 

「む………気になるのか?」

 

「ん? ああ、少しは」

 

「ふん………」

 

一夏の言葉に箒は若干不機嫌な表情をする。

すると別の場所で、

 

「そうだね。 頑張ってね織斑君!」

 

「フリーパスの為にもね!」

 

「今の所、専用機持ちのクラス代表って1組と4組だけだから、余裕だよ」

 

楽しそうに話す女子達の話の中心にいる春万。

 

「任せておいてくれ。どんな相手でもこの俺にかかれば楽勝さ!」

 

春万は自信たっぷりにそう言う。

その時、

 

「その情報、古いよ」

 

教室の入り口から声が聞こえた。

その言葉に教室の視線が集中する。

そこには腕を組み、片膝を立ててドアにもたれ掛かっているツインテールの少女がいた。

 

「2組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

 

その少女はそう言う。

すると、

 

「おやあ? どこかで聞いた声だと思えば鈴じゃないか!」

 

春万が立ち上がりながらそう言った。

すると、その少女は露骨に嫌そうな顔をして、

 

「うげっ!? 春万!? そう言えばアンタも1組…………くっ! 迂闊だったわ!」

 

嫌だという気持ちを隠そうともせずに堂々と態度で表す少女。

 

「酷い言い草だな、鈴。久し振りに会った幼馴染に対して………」

 

「うっさい! あたしはあんたの事幼馴染なんて思って無いわよ! それとあんたに鈴って呼ぶ許しを出した覚えなんて無いし! 何度も言うけどあたしはあんたのことが嫌いなの! あんたが一夏にやってた仕打ちをあたしは忘れてないからね!」

 

春万に対して嫌悪感どころか敵意すら見せる少女。

 

「相変わらずだな鈴。落ちこぼれのあいつを…………」

 

「だから鈴って呼ぶな!」

 

春万に対して喧嘩腰な少女。

その時、

 

「そろそろ落ち着けよ、鈴」

 

一夏が少女に話しかけた。

 

「ッ……………!?」

 

その瞬間、先ほどまで吠えていた姿が嘘のように静まり返り、少女は一夏の顔を見て固まっていた。

 

「…………い、いちか………よね…………?」

 

少女の口から言葉が漏れる。

 

「ああ、俺だよ。鈴」

 

一夏がそう答えると、少女が感極まった様に涙を流した。

 

「一夏ぁっ!!」

 

少女は一夏に抱き着く。

 

「いちか………! 一夏だぁ………! 本物よね!? 生きてるわよね!? 幽霊じゃないわよね!?」

 

続けて少女は一夏の体を確かめる様に触りながらそう聞く。

 

「ああ、生きてるよ。ほら、足もあるだろ?」

 

一夏は見せびらかすように足を上げる。

 

「一夏ぁっ………!」

 

少女は再び一夏に抱き着いた。

一夏は困った様に後頭部を掻いていると、

 

「何の騒ぎだ? そろそろHRの時間だぞ?」

 

時間になったので千冬が教室に入ってきた。

そして一夏に泣き付いている少女を見ると溜息を吐き、

 

「凰か…………まあ、気持ちは分からんでもないが時間は時間だ。織斑兄、凰を2組まで送り届けてこい。遅刻は付けないでおいてやる」

 

「わかった」

 

一夏はそう言って少女を連れて2組の教室へ向かって行った。

 

 

 

 

―――昼。

 

「待ってたわよ! 一夏!」

 

朝の姿が嘘のように堂々とした姿でそこに立つ少女。

一夏は紫苑、翡翠、マドカ、箒、セシリアのメンバーで食堂に昼食を食べに来たのだが、その少女が食券販売機の前で仁王立ちしていたのだ。

 

「待たせたみたいだな。積もる話もあるだろうし飯を食いながら話そうぜ」

 

「え、ええ………」

 

普通に返した一夏に調子を狂わされた少女は少し呆気にとられながら返事をした。

一同は空いているテーブルを見つけ、そこで昼食を摂り始めると、

 

「改めて久しぶりだな。鈴」

 

「ええ、久しぶりね、一夏。無事で安心したわ」

 

始めにそう言いながら改めて挨拶を交わす。

すると、

 

「それで、アンタは今まで何処にいたのよ!? 何で連絡1つ寄越さなかったのよ!? 私がどれだけ心配したか分かってるの!?」

 

少女は我慢できなくなったのか次々と言葉を並べる。

 

「あ~~……………連絡できなかったのは素直に謝るよ…………すまん………」

 

一夏はそう言って頭を下げる。

 

「あ……うん…………無事に帰って来てくれたから許してあげるけど…………」

 

素直に頭を下げた一夏に少女は先程から調子を狂わされてばかりだ。

 

「…………一夏、アンタ変わった?」

 

「そうか? 自分じゃ良く分からねえけど…………」

 

「ええ、何て言うか…………落ち着いたというか………地に足が着いたというか…………ああ、もちろんいい意味でね」

 

「そうか………」

 

2人でそうやって話し合っていると、

 

「一夏、そろそろどういう関係か説明してほしいのだが?」

 

箒が我慢できずにそう尋ねた。

 

「そうですわ! 一夏さん、まさかこちらの方と、つ、付き合ってらっしゃるの!?」

 

セシリアもそう問いかける。

すると、少女は顔を赤くしてあたふたと慌てながら、

 

「べ、べべ、別に私は付き合ってる訳じゃ……」

 

どもりながらそう口に出す。

 

「……………………………」

 

だが、一夏は軽く俯いて何か考えるような仕草をすると、

 

「…………確かに付き合ってたわけじゃないし、ただの幼馴染なんだけどさ………」

 

そう口に出すと少女が一夏をギロっと睨む。

だが、

 

「…………………今思えば、友達以上の感情は持たれてたと思う…………それが親友としてなのか、それとも異性としてなのかは別にしてな」

 

「…………………………」

 

続けて言われた一夏の言葉に少女は呆気にとられた顔をしたあと、ボッと顔を赤くした。

 

「……………すまんブラン。いくら俺でも出会う前から立ってたフラグを折るのは無理だ…………」

 

紫苑は誰にも聞こえない小声でそう呟く。

既に箒、セシリアと2人の少女が一夏に好意を持っていることに気付いた紫苑は、これ以上ブランが居ない所で一夏の女が増えるのはややこしい事になると思っていたので、極力フラグ折りに協力しようと思っていた。

だが、目の前の少女は紫苑が一夏と出会う前から好意を持っていたようで、それを防ぐことは根本的に無理だった。

 

「…………っと、そう言えばまだ皆にはちゃんと紹介して無かったな。俺の幼馴染で凰 鈴音だ」

 

「…………えあっ………!? っと、ファ、凰 鈴音よ! よ、よろしく!」

 

一夏の紹介に少女こと鈴音が慌てながら名乗る。

 

「幼馴染?」

 

幼馴染と聞いて箒が怪訝そうな顔で漏らした。

 

「ああ。 箒が引っ越したのは小4の終わりだったろ? 鈴が転校してきたのは小5の頭だよ」

 

箒にそう説明すると、一夏は鈴音に向き直り、

 

「で、こっちが箒。 ほら、前に話しただろ? 小学校からの幼馴染で、俺の通ってた剣術道場の娘」

 

鈴音に箒を紹介する。

 

「ふうん、そうなんだ」

 

じろじろと箒を見る鈴。

逆に箒も負けまいと睨み返している。

 

「初めまして。 これからよろしくね」

 

「ああ。 こちらこそ」

 

穏やかに挨拶を交わす2人だが、2人の間で火花が散ったように見えたのは気の所為では無いだろう。

すると、

 

「ンンンッ! わたくしの存在を忘れてもらっては困りますわ。 中国代表候補生、凰 鈴音さん?」

 

セシリアが自己主張する様に咳ばらいをすると、そう発言する。

 

「……誰?」

 

「なっ!? わ、わたくしはイギリス代表候補生、セシリア・オルコットでしてよ!? まさかご存じないの!?」

 

「うん。 あたし他の国とか興味ないし」

 

「な、な、なっ………!?」

 

セシリアは怒りで顔を赤く染めている。

 

「い、い、言っておきますけど、わたくしあなたのような方には負けませんわ!」

 

「そ。 でも戦ったらあたしが勝つよ。 悪いけど強いもん」

 

自信たっぷりにそう言う鈴音。

 

「い、言ってくれますわね……」

 

拳を握りしめながら対抗心を燃やすセシリア。

すると、

 

「………で、そっちの千冬さんのそっくりさんは?」

 

視線をマドカに移した鈴音がそう尋ねると、

 

「織斑 マドカだ。一応、兄さん………織斑 一夏の親戚だ」

 

マドカがそう言うと、

 

「えっ? 親戚?」

 

鈴音が驚いたようにキョトンとする。

 

「あんた親戚居たの?」

 

鈴音が一夏に問いかけると、

 

「俺も知ったのはつい最近だよ」

 

一夏は苦笑する。

すると鈴音は更に視線を移動させ、紫苑を見た。

 

「それで、アンタが3人目の男性操縦者の………」

 

「月影 紫苑。こんな形でも17歳だ」

 

「俺の親友だよ」

 

紫苑が名乗り、一夏が付け足す。

 

「嘘っ!? 17歳!? そんなにちっちゃいのに!?」

 

「あまり背丈が変わらない奴にちっちゃいとか言われたくない…………」

 

鈴音の言葉に紫苑は溜息を吐きながら思わず突っ込んだ。

鈴音の視線はそのまま隣の翡翠に向き、

 

「私、月影 翡翠! 鈴ちゃんって呼んでもいいかな!?」

 

翡翠は明るい笑顔と声でそう話しかけた。

 

「え、ええ、いいわよ。代わりに私も名前で呼ばせてもらうわ」

 

突然の翡翠の言葉に一瞬詰まるが、鈴音はすぐに了承する。

 

「うん、いいよ! これからよろしくね!」

 

「ええ、よろしく」

 

翡翠の差し出した手に自然と握手する鈴音。

 

「相変わらずお前の妹さん、コミュ力高いよな~」

 

一夏が感心したような声でそう零す。

 

「俺もそう思う………」

 

紫苑も翡翠の友達作りの上手さには素直に凄いと思っていた。

そのまま暫く談笑したあと、

 

「…………ねえ、一夏」

 

「何だ? 鈴」

 

鈴音が一夏に話しかけた。

 

「噂で聞いたんだけど、アンタと紫苑が強すぎてクラス代表に選ばれなかったって言うのは、本当なの?」

 

確かめる様にそう聞いてくる。

 

「ああ、千冬姉からそう言われたけど…………」

 

一夏がそう答えると、

 

「じゃあ………アンタはあの春万に勝ったって事よね?」

 

「そうだけど?」

 

何度も確かめる様に聞いてくる鈴音に一夏は怪訝に思う。

 

「そうなんだ……………」

 

鈴音はそう呟くと少し俯いて目を瞑り、考えるような仕草をした。

すると、すぐに顔を上げて目を開けると、

 

「一夏、お願いがあるの」

 

「お願い?」

 

鈴音が真っ直ぐな瞳でそう言う。

 

「アタシを鍛えてくれない?」

 

「ッ!」

 

「なっ!?」

 

「何を!?」

 

鈴音の言葉に一夏はその言葉を受け止め、箒とセシリアは声を漏らした。

 

「認めたくないけど、春万の才能はピカ一よ。多分、今のままのアタシじゃかなわないと思う………だけど、あいつだけには負けたくないの!」

 

「何を言っているんだお前は!?」

 

「そうですわ! 敵に塩を送る真似など…………!」

 

箒とセシリアが食って掛かろうとしたが、

 

「いいぞ」

 

一夏はあっけらかんと了承した。

 

「「一夏(さん)!?」」

 

2人は思わず一夏の顔を見る。

 

「鈴は数少ない俺の味方だった…………その鈴が助けて欲しいって言うのなら、もちろん協力するさ」

 

一夏はそう言い切る。

その真剣な表情に、

 

「「「ッ!?」」」

 

箒、セシリア、鈴音の三人は顔を真っ赤にした。

 

「じゃあ、早速今日の放課後からでいいか? 俺が頼めばアリーナも優先的に借りられるらしいし…………」

 

「え、ええ………頼むわ…………」

 

鈴は何とかそう返した。

 

 

 

 

 

 






どうも、EXルート第7話です。
遅れて申し訳ありません。
今回は淡々と終わってしまいましたが、次回は鈴音と一夏のバトルが入ります。
お楽しみに。

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