超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス 作:友(ユウ)
先日の春万との騒動から数日。
今日は日曜日でIS学園も休みである。
そして現在、紫苑達は街中に来ていた。
その理由は、今朝一番にネプテューヌが発した鶴の一声が原因だった。
「おっはよー! シオン! せっかくの休みだから何処か連れてってー!」
その一言で紫苑は連れ出され、こうして街に来ていたのだ。
「えへへ~♪ 久しぶりだね、シオンとデート♪」
ネプテューヌは紫苑の腕に抱き着きながらそう言うが、
「………………いや、これだけ人数いてデートも何も無いだろう………?」
紫苑の言葉通り、この場には紫苑とネプテューヌの2人だけでは無く、ネプギアはもちろんの事、一夏、ブラン、フィナンシェとミナ、ロムにラムまで、ゲイムギョウ界組が勢ぞろいしていた。
更には翡翠、アリン、エミリもいる。
「考えることは一緒だったみたいね…………」
ブランがそう呟く。
一夏もブラン達に案内する様に頼まれ、出発するときにバッタリと出くわし、こうして一緒に街を回ることになったのだ。
「ま、いいか」
紫苑は苦笑しつつも状況を受け入れ、楽しむことにした。
最初に向かったのはネプテューヌのリクエストで当然というべきかゲームセンター。
この辺りはプラネテューヌとさほど方向性は変わりないので特に説明なくネプテューヌ達も遊べている。
「おりゃー! そこー!」
「負けないよ! お姉ちゃん!」
ネプテューヌとネプギアは対戦格闘ゲームで白熱している。
「お兄ちゃ~ん! あれ取って~!」
「私も………あれ欲しい………!」
ロムとラムがクレーンゲームの前で一夏にぬいぐるみを取って欲しいとせがんでいた。
「はぁぁぁぁ……………オラァッ!!」
ブランがパンチングマシンを物理的に破壊し、
「お兄ちゃん、一緒に撮ろ!」
翡翠は紫苑をプリクラに誘う。
「へ~、これが人間の娯楽ね~」
「こういうので遊ぶんだね」
アリンとエミリは物珍しそうにゲームを見て回っている。
そんなこんなであっという間に時間が過ぎ去り、既に正午近く。
その事に気が付いたのもネプテューヌだった。
ぐぅ~、とお腹が鳴る。
「シオ~ン………お腹すいた~」
「そろそろ昼か……………一夏、昼飯は何にする? その辺でハンバーガーでも買って食うか?」
紫苑が一夏にそう聞くと、
「……………いや、ちょっと行きたい場所がある」
一夏は少し考えるとそう言った。
少し歩いて辿り着いたところは、一軒の大衆食堂だった。
掲げられている看板には『五反田食堂』と書かれている。
「……………………………」
一夏は感慨深そうな表情でその看板を見上げていた。
「ここは…………?」
ブランがそう聞くが、一夏はその問いには答えずに店の扉を開けて中に入った。
すると、
「へい! らっしゃいっ!」
店内から元気のいい少年の声が聞こえてきた。
その少年は高校生ほどの年齢で赤い長髪と額にバンダナを巻いている。
「何名様で……………!?」
その少年は慣れた口調で何人かを尋ねようと一夏の方に顔を向けた瞬間、その表情は驚愕に染まった。
「………………よお」
一夏はぎこちなく右手を挙げてそう挨拶する。
「………………………い、一夏……………?」
その少年は呆然と訊ねる。
「……………………………おう」
一夏は少々バツが悪そうに肯定する。
「……………………………………………」
少年は俯くと、拳を握ってプルプルと震えている。
そして、
「………………生きてやがったかこの野郎っ!」
少年は直立したまま勢いの無い右の拳を繰り出す。
一夏はそれを左手で受け止めた。
少年の目には涙が溜まっており、今にも泣きそうなのを我慢しているのが見て取れた。
「…………すまん。心配をかけたな」
「うるせぇっ………! 心配なんかしてねーよ………!」
「弾………………」
震えながらそう言う声に、一夏は少年の名を呟く。
その時、
「あ~、すまん。空気読んでないのは自覚しているが、状況を説明してくれると助かる。どうやら一夏の知り合いみたいだけど…………」
紫苑がそう発言する。
「あ、すまん。こっちは五反田 弾。俺の中学の時の友達だよ」
一夏はそう言う。
弾と呼ばれた少年は、一夏から紫苑達の方へ視線を向け、ピシリと固まった。
弾は紫苑………ではなく、その後ろにいるネプテューヌやブラン達を見て固まったのだ。
「…………………おい一夏…………! お前はこの2年間いったい何処で何をしていたぁっ!?」
弾の叫びがその場に響いた。
一同は大きめのテーブルに着き、今までの事を説明していた。
「するとなんだ? お前は千冬さんの試合の応援に言ったら誘拐されて、そのげいむぎょうかいとか言う異世界に飛ばされた挙句、そこのブランちゃんやフィナンシェちゃん、ミナさんを『嫁』にしたと?」
「あ、ああ…………まあな……………何で強調するのがそこなのかは分からないが…………」
すると弾は再び拳を握ってプルプルと震え出し、
「一夏、やっぱり一発殴らせろ…………!」
冗談でも何でもなく、本当に殴りかかって来そうな雰囲気でそう言った。
「お、おい…………落ち着けよ弾…………」
「うるせえっ! このリア充野郎が! 爆発しろ!!」
「うわっ!? 何怒ってんだよ!?」
突然叫んだ弾に一夏は狼狽える。
だが、
「そりゃ怒るだろうな………」
紫苑が納得したように頷く。
「あはは…………あの子、見るからに残念なイケメンって感じだしね」
ネプテューヌも苦笑する。
「顔は悪くないし、性格もいい方だとは思うんだけど、付き合いたいかって言われると悩むね」
翡翠もそう駄目出しする。
その瞬間、
「うるせえぞ弾! 店の中では静かにしろい!!」
厨房から怒号と共に何かが飛んできた。
その『何か』は一直線に弾の頭に向かってきて………………
弾の額に当たる紙一重で停止した。
「い……………………………!?」
弾は自分の目前で止まった『それ』、オタマに気付いた瞬間顔を青くする。
それは弾の祖父である厳が投げ放ったものであり、本来なら弾の額に直撃していた所だったのだが、それを止めた者が居た。
「危なかったな、弾」
それは目視せずとも気配だけでそれを察知し、飛んでくるオタマを掴んだ一夏だった。
一夏は振り返ると、
「お騒がせしてすみません。静かにします!」
それだけ言うと元に向き直る。
「大丈夫だったか?」
未だに放心している弾に声を掛ける。
「お、おう…………」
弾は呆然と返事を返した。
「とりあえず飯食おうぜ。折角の料理が冷めちまう」
気を取り直して食事を始める一同。
「それにしても、お前後ろを見ずに飛んできたオタマを掴むとか、アニメかよ?」
「まあ、これでもそれなりに修羅場くぐって来たし…………」
「何か『修羅場』の意味が違う意味に聞こえてくるんだが………?」
「は………?」
そんな事を話し合っていると、店の扉が勢いよく開き、
「ただいま!」
少女の声が響いた。
「おう、蘭。お帰り!」
弾が手を挙げてそれに答える。
「あれ? お兄、お客さん?」
蘭と呼ばれた少女が弾の周りにいる集団に気付く。
すると、一夏が振り返り、
「よ、蘭。久しぶりだな」
「…………………い、一夏さん!?」
「ああ。元気にしてたか?」
「えあっ? は、はい!」
「そりゃよかった。おっ、背も伸びたな」
「は、はい………少し…………」
「こりゃ俺の背はもうすぐ抜かされそうだ」
一夏は残念そうにそう言うが、その顔は笑っている。
「い、いえ、そんな…………一夏さんもまだ伸びるのでは………?」
「残念なことに俺の成長はもう止まってるからな。これ以上背が伸びることは無いんだ」
一夏と蘭はそう言いながら会話に花を咲かせる。
一夏と話す蘭の顔は赤く染まっていた。
その顔を見れば、彼女もまた一夏に惚れていることは明白だろう。
「イチカ…………やっぱり昔からモテてたのね…………」
ブランがボソッと呟く。
「ですが、見る目がある女性なら、旦那様を好きになるのは当然では?」
フィナンシェがそう言い、
「確かにそうですね。一夏さんはあの双子の弟さんの影に隠れていたらしいですが、ちゃんと見る目がある人なら好意を持ってもおかしくないかと」
ミナもそう言う。
因みにこの後、ブラン、フィナンシェ、ミナの3人が一夏の嫁という事を知った蘭の絶叫という名の悲鳴が辺りに響いたのは当然という名の余談である。
第13話です。
短いです。
弾と一夏の再会でした。
次回こそはフランス貴公子達の出番。
さてどうなる事やら。