超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス   作:友(ユウ)

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第14話 金と銀の転校生(トランスファー)

 

 

 

ネプテューヌ達がこの世界にやってきてから幾日かが過ぎたある日。

 

「ええとですね。 今日は転校生を紹介します。 しかも2名です」

 

真耶の言葉に、教室がざわめく。

そして、教室のドアが開き、2人の転校生が入室して来た。

 

「失礼します」

 

「……………」

 

クラスに入ってきた転校生を見たとたん、教室が静まり返る。

何故なら、入ってきた転校生の内1人が、男子の制服を身に纏っていたからだ。

 

「シャルル・デュノアです。 フランスから来ました。 この国では不慣れなことも多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」

 

シャルルと名乗った男子の制服を着た金髪の転校生は笑顔でそう一礼した。

 

「お、男…………?」

 

誰かが呟く。

 

「はい。 こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国より転入を……」

 

その言葉に答えるように、シャルルがそう言いかけたその時、

 

「きゃ………」

 

誰かが声を漏らす。

そして次の瞬間、

 

「「「「「「「「「「きゃぁあああああああああああああああああああああっ!!」」」」」」」」」

 

歓喜の叫びが、クラス中に響き渡った。

 

「男子! 4人目の男子!」

 

「しかもうちのクラス!」

 

「美形! 守ってあげたくなる系の!」

 

「地球に生まれて良かった~~~~~!」

 

女子生徒達が黄色い声を上げる中、紫苑は訝しむ様な視線をシャルルに向けていた。

 

(アイツ本当に男か?)

 

内心そう思う紫苑。

 

(声も高いし、顔も中性的からやや女子寄り。体格も線の細い男って言うよりも女っぽいし……………)

 

次々と男子にしては違和感を感じるところを挙げていく紫苑。

 

「あー、騒ぐな。 静かにしろ」

 

すると、鬱陶しそうに千冬がぼやく。

 

「み、皆さんお静かに! まだ自己紹介が終わってませんから~!」

 

真耶が必死に宥めようとそう言う。

もう一人の転校生は、長い銀髪に、左目には黒眼帯。

冷たい雰囲気を纏うその少女の印象は、『軍人』とも言うべきものだった。

 

「…………………」

 

その本人は、先程から一言も喋っていない。

ただ、騒ぐクラスメイトを、腕を組んで下らなそうに見ているだけだ。

しかし、

 

「……挨拶をしろ、ラウラ」

 

「はい、教官」

 

千冬の一言で、いきなり佇まいを直して素直に返事をするラウラと呼ばれた転校生。

 

「ここではそう呼ぶな。 もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。 私の事は織斑先生と呼べ」

 

「了解しました」

 

そう言うと、ラウラはクラスメイト達に向き直り、

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

それだけ言って黙り込むラウラと名乗った少女。

 

「あ、あの………以上ですか?」

 

「以上だ」

 

真耶の問いかけにラウラは短く即答する。

その対応に冷や汗を流す真耶。

と、その時ラウラと一夏の目が合った。

すると、

 

「ッ! 貴様が……」

 

ラウラがつかつかと一夏の前まで歩いていき、突然右手を振り被った。

周りの生徒達が一夏が叩かれるとビクついたが、頬を叩く乾いた音はいつまで経っても聞こえて来ず、

 

「……………貴様………!」

 

代わりにラウラのやや憎々し気な呟きが聞こえた。

見れば、一夏は振るわれたラウラの右の平手が頬に当たる寸前に、左手でラウラの右手首を掴み、止めていたからだ。

 

「……………初対面の相手に随分な挨拶じゃないか」

 

一夏はやや睨み付ける様にそう言う。

ラウラは悔しそうな表情をして掴まれた腕を振りほどくと、

 

「私は認めない。 貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」

 

ラウラはそう言い放つと、つかつかと歩いて行き、空いている席に座ると、腕を組んで目を閉じ、微動だにしなくなる。

 

「あー………ゴホンゴホン! ではHRを終わる。 各人はすぐに着替えて第二グラウンドへ集合。 今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。 解散!」

 

千冬がそう言ってHRを終了させた。

 

「おい、織斑兄弟、月影兄。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう」

 

すると、シャルルが一夏の前に行き、

 

「君が織斑君? 初めまして。 僕は………」

 

「ああ、いいから。 とにかく移動が先だ。 女子が着替え始めるから」

 

一夏に自己紹介をしようとすると、一夏がそう言って中断させ、シャルルの手を取ると、

 

「ひゃっ?」

 

シャルルが軽く驚いた反応を見せる。

その反応に対し、やはり怪訝な目を向ける紫苑。

 

「紫苑、行くぜ」

 

「………ああ」

 

シャルルに対し、ますます疑惑が深まる紫苑だったが、とりあえず授業に遅れるわけにはいかないので返事をして揃って教室を出る。。

その後ろに春万も続く。

その道中で、一夏はシャルルに説明を始めた。

 

「とりあえず男子は空いているアリーナの更衣室で着替え。 これから実習の度にこの移動だから、早めに慣れてくれ」

 

「う、うん………」

 

やや困惑していたシャルルが頷く。

すると、

 

「ああっ! 転校生発見!」

 

「しかも月影君や織斑君達とも一緒!」

 

同学年の他クラスだけでなく、2、3年のクラスからも男子転校生の噂を聞きつけた生徒達がやってきたのだ。

 

「いたっ! こっちよ!」

 

「者共、出会え出会えい!」

 

まるで武家屋敷のような掛け声をする生徒達。

 

「織斑君達や月影君の黒髪もいいけど、金髪っていうのもいいわね」

 

「しかも瞳はエメラルド!」

 

「きゃああっ! 見て見て! 一夏君とデュノア君! 手繋いでる!」

 

「日本に生まれてよかった! ありがとうお母さん! 今年の母の日は河原の花以外のをあげるね!」

 

叫びながら4人を追ってくる生徒達。

 

「な、何? 何で皆騒いでるの?」

 

状況が飲み込めないシャルルが一夏に説明を求める。

 

「そりゃ、男子が俺達だけだからだろ」

 

「………?」

 

言われたことが理解できないのか、首を傾げるシャルル。

 

(……………それを理解できないのか?)

 

「いや、普通に珍しいだろ? ISを操縦できる男って今の所俺達しかいないんだろ?」

 

一夏がそう言うと、

 

「あっ! ……ああ、うん。 そうだね」

 

シャルルは忘れていたことを思い出したかのように慌てるそぶりを見せた。

 

(…………………一夏は元来の性格から疑ってはいない様だが、明らかに怪しいな)

 

紫苑は益々シャルルへの疑惑を増していく。

その時、先回りしていた女子達が道を塞いだ。

 

「げっ!」

 

思わず声を漏らす一夏。

 

「ど、如何するの?」

 

シャルルが困惑の声を上げるが、

 

「………………仕方ない。紫苑!」

 

一夏は一瞬思案した直後に紫苑へ呼びかける。

 

「ま、仕方ないか…………」

 

紫苑はそう呟くと走る速度を上げて正面の女子達へ向かって行く。

 

「来るわよ皆!」

 

「捕獲準備!」

 

「来なさい月影君!」

 

「逃がさないわ!」

 

自分達の方に向かってくる紫苑に対し、数で攻めて捕まえようとする女子達。

その時、

 

「……………シェアリンク」

 

紫苑はボソッと呟き、ネプテューヌとのリンクの結び付きを強め、身体能力を上げる。

次の瞬間、紫苑は地面を蹴り、

 

「えっ!?」

 

「嘘ッ!?」

 

連続前方宙返りを決めながら女子の頭上を通過する。

そのまま女子達の後方にシュタっと着地した。

 

「「「「「「「「「「…………………………」」」」」」」」」」

 

その様子をポカーンと眺める一同。

更に、

 

「シャルル! 口を閉じろ! 舌を噛むぞ!」

 

「へっ…………?」

 

一夏の声にシャルルが声を漏らした瞬間、

 

「シェアリンク! そりゃぁああああっ!!」

 

「うわぁああああああああああっ!?」

 

一夏が一本背負いの要領でシャルルを投げ飛ばした。

女子達の頭上を飛んでいくシャルル。

だが、当然ながらシャルルは空中で狼狽えており、まともな受け身など取れそうにない。

このままでは床に激突して大怪我を負いかねなかったが、

 

「よっと!」

 

反対側で待ち構えていた紫苑が空中でシャルルをキャッチ。

無事に床に着地した。

尚、その状態が俗にいうお姫様抱っこだったので、

 

「えっ? あれ? えええええええええっ!?」

 

混乱しつつも現状を何とか把握したシャルルが赤くなりながら声を上げた。

すると、

 

「ほいっと」

 

先程の紫苑と同じように女子達の頭上を飛び越えてきた一夏がすぐ傍に着地すると、

 

「さ、行こうぜ!」

 

何でもないように駆け出すと、紫苑もそれに続いて駆け出す。

シャルルを抱き上げたまま。

それを見た女子達が黄色い声を上げていたが、

 

(……………この線の細さ………やっぱりシャルルって………)

 

シャルルに抱いていた疑惑がますます確信に近付いていた。

なお、その道中、

 

「ねえ、そう言えばもう1人の織斑君は?」

 

「「あ」」

 

シャルルの言葉に春万の事を忘れていた事を思い出した2人だった。

 

 

 

 

 

結局春万はものの見事に授業に遅刻し、千冬からの制裁(出席簿アタック)を受ける羽目になった。

 

「では、本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する」

 

「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」

 

「まずは戦闘を実演してもらおう。 実演者は…………そうだな、織斑弟!」

 

「はい!」

 

千冬に指名され、春万は返事をする。

 

「専用機持ちならすぐに始められるだろう。 前に出ろ!」

 

千冬にそう言われ、

 

「ったく、何で俺が………」

 

春万はぶつくさ言いつつ前に出る。

そのまま千冬の傍を通りすぎるとき、

 

「仮にもクラス代表だ。他の生徒の模範になる態度を見せろ」

 

千冬にそう言われ、春万は渋々背筋を伸ばして表面上は真剣な顔をする。

 

「春万の奴、面倒くさがってるな」

 

それを見ていた一夏はそう呟く。

 

「春万って、一夏といろんな面で正反対だね」

 

一夏の隣にいるエミリがポツリとそう言う。

 

「ああ、それ私も思ったわ。性格とか真逆よね」

 

その言葉に紫苑の隣にいるアリンも同意する。

 

「最近まで挫折と言える挫折が無かったんだろ」

 

紫苑はまるで興味が無いと言わんばかりに答える。

そんな4人の話す姿をシャルルは興味深そうに見ていた。

 

「どうかしたか? シャルル」

 

その視線に気付いた紫苑が尋ねると、

 

「あっ、ううん。本当にISのコアが人の姿になって自由に行動できるんだなって思って………」

 

シャルルはアリンとエミリを見ながらそう言う。

 

「いや、俺達にも何でこうなったのかは分からないからな」

 

一夏がそう補足する。

 

「でもこれは凄い事だよ。今まで意識のようなモノがあると言われていたISのコアだけど、それがハッキリと証明されたんだから!」

 

シャルルはやや興奮気味にそう言う。

その時、

 

「それで千冬ね………織斑先生。俺の相手は?」

 

「慌てるな、馬鹿者。 対戦相手は………」

 

千冬がそう言いかけたところで、キィィィィィィィィンという何処からか空気を切り裂く音が聞こえた。

 

「ああああああああああああああああああああああああっ!!」

 

聞こえてきた声に空を見上げると、

 

「ああああああーーーーっ! 退いてくださいーーーーっ!!」

 

量産型IS『ラファール・リヴァイヴ』を纏った真耶が一直線に飛んできた。

しかも、様子を見るに操縦をミスって操作不能らしい。

更に真耶は生徒達が密集している場所に向かって真っ逆さまに落ちてくるでは無いか。

女子生徒たちは蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。

 

「……………このままじゃ怪我人が出る可能性があるか…………一夏!」

 

そんな中でも紫苑は冷静に状況を分析し、一夏へ呼びかける。

 

「おう!」

 

一夏も返事を返し、

 

「アリン!」

 

「エミリ!」

 

それぞれの相棒の名を呼ぶ。

 

「分かったわ!」

 

「うん!」

 

アリンとエミリは光の粒子となってそれぞれのパートナーの身体を覆うと、一瞬にしてISとなって顕現した。

紫苑と一夏はISを纏うと空へ飛びあがり、

 

「よっ!」

 

「ほっ!」

 

それぞれが真耶の体勢に合わせて機体を操作し、それぞれ真耶の左右の腕を掴むと、真耶に負担が掛からないように減速し、地上に着地する。

 

「山田先生、大丈夫ですか?」

 

一夏がそう声を掛けると、

 

「あっ、一夏君に月影君。助かりましたぁ!」

 

真耶は少々情けない声でお礼を言う。

千冬はそれを見て少し溜息を吐くと、

 

「お前の相手は山田先生だ」

 

春万に向かってそう言った。

 

「えっ? 山田先生が………? いや、でも…………」

 

普段の真耶を見て相手には不足と感じているのか少し言いどもる春万。

 

「安心しろ。山田先生は元代表候補だ。舐めてかかれば一瞬でやられるぞ」

 

千冬が自信を持ってそう言うと、

 

「昔の事ですよ………それに、候補生止まりでしたし…………」

 

真耶は謙遜しているのか照れながらそう言う。

 

「さて、早く始めるぞ」

 

千冬の言葉でそれぞれは生徒に被害が及ばないように空へと上昇していく。

 

「それでは…………始め!」

 

千冬の合図で2人は戦闘態勢に入る。

 

「手加減はしない!」

 

自信を持ってそう言う春万に対し、

 

「い、行きます!」

 

真耶は少し緊張しているのかどもりながら答えた。

春万は即座に雪片を展開すると、『零落白夜』を発動させて斬りかかっていく。

 

「っ!」

 

対する真耶はその一撃を反転しながら軽やかに躱すとアサルトライフルを展開。

春万に向かって発砲する。

 

「くっ!?」

 

春万は咄嗟にそれを躱すと、体勢を立て直して再び突撃しようとする。

だが、真耶は反対側の手にもアサルトライフルを展開し、両手で弾幕を張る。

 

「くぅぅ………!」

 

流石にそれは春万にも避け切ることは出来ず、少ないながらもダメージを負っていく。

 

「くそっ!」

 

春万は回り込みながら距離を詰めて行こうとするが、真耶も弾幕を張りながら後退を続け、距離を詰めることを許さない。

無理に距離を詰めようとしても、弾丸を集中されて少なくないダメージを負ってしまう。

それを分っているので春万も中々距離を詰めることが出来ないでいた。

しかし、その間にも白式のシールドエネルギーは削られていき、半分を切ろうとしていた。

その時、カキンという音と共に銃弾が止まる。

 

「あっ!」

 

真耶はしまったというように声を上げて手に持った銃を見た。

両方のアサルトライフルが弾切れになったのだ。

 

「チャンス!!」

 

これを好機と見た春万は瞬時加速(イグニッション・ブースト)を発動。

一気に接近し、雪片を大きく振りかぶった。

 

「貰った!」

 

春万は勝利を確信する。

だがその時、真耶が笑みを浮かべた。

 

「そう来るのを待っていました!」

 

いつもとは違う自信を持った笑みを浮かべ、真耶は背面の実体シールドを前面に展開する。

雪片の刃がシールドに当たった瞬間、真耶はシールドを斜めに構えて雪片の刃を受け流すように逸らしていく。

 

「なっ!?」

 

その事に春万が驚愕した瞬間、真耶は反転しながらスナイパーライフルを展開。

隙だらけになった春万の背中に狙いを定めて引き金を引く。

至近距離からのスナイパーライフルの弾丸を受けた春万は吹き飛ぶ。

 

「がっ!?」

 

「逃しません!」

 

真耶は続けて2発3発と発砲する。

 

「がっ! くっ! このっ!」

 

4発目を何とか躱した春万。

しかし、

 

「読み通りです!」

 

回避先を読まれ、そのまま放たれた弾丸に撃ち抜かれ、白式のシールドエネルギーはゼロになった。

 

「そこまで!」

 

千冬が終了の合図を出す。

 

「そんな………この俺が山田先生なんかに…………?」

 

春万は信じられない表情で空から降りてくる。

 

「フン、私の真似をすれば勝てると思っていたお前の浅はかさが招いた事だ。それにお前は私の言った事をよく理解していなかったようだな?」

 

「えっ?」

 

千冬の言葉に理解できなかった春万が声を漏らす。

その時、空から真耶が降りてくる。

 

「流石織斑先生の弟さんですね。剣筋や動きが織斑先生そっくりでしたよ」

 

真耶は楽しそうにそう言った。

 

「山田先生は元代表候補だと言っただろう? 山田先生の現役時代の日本代表はこの私だ。当然だが代表を賭けて私と対戦したことなど何度もある。故に私に勝つために私の動きなど研究し尽くしているさ」

 

「それでも織斑先生には一度も勝てませんでしたけどね」

 

真耶はアハハと笑いながらそう答える。

 

「私とて当時の山田先生には手を焼かされた。少しでも気を抜けば負けていたと思った事など何度もある。そんな山田先生相手に経験の乏しいお前が舐めてかかれば一方的に負けるのは当然の事だ」

 

「そんな! 俺は舐めてなんて………!」

 

その言葉に春万は否定しようとしたが、

 

「お前は先程、『山田先生“なんか”に』と言っていただろう? それが舐めている証拠だ」

 

「うぐっ…………」

 

「これで諸君にも、教員の実力は理解できただろう。 以後は敬意をもって接するように」

 

千冬はそう言うと、

 

「次はグループになって実習を行う。 リーダーは専用機持ちがやること。では、分かれろ!」

 

千冬はそう指示を出す。

それぞれのグループに分かれるが……………

 

「織斑君! 一緒に頑張ろ!」

 

「デュノア君の操縦技術を見たいなぁ~!」

 

「月影君! 手取り足取り教えて!」

 

やはりと言うべきか紫苑と一夏、シャルルの組に生徒が集中する。

そんな生徒たちの姿を見ていれば、千冬の雷が落ちるのも当然であった。

尚、春万の組にも来る生徒は居たが、男子の中では一番少数だった。

 

 

 

 

 

 

その日の昼休み。

一夏の発案で、屋上で皆で集まって昼食を食べることにした紫苑達。

そのメンバーは、紫苑、一夏は当然だが、ネプテューヌ、ブラン、フィナンシェ、ミナの嫁組。

翡翠、ネプギア、ロム、ラム、簪の妹組。

刀奈、箒、セシリア、鈴音の戦姫候補者達にシャルルを加えた16人という結構な人数が集まっていた。

 

「ええっと…………本当に僕が同席して良かったのかな?」

 

シャルルがポツリと呟く。

 

「良いに決まってるだろ。良く無きゃ誘って無いし」

 

「そうそう。気にするなって! 同じ男子なんだしさ!」

 

その言葉に紫苑と一夏が答える。

 

「ありがとう! 2人とも優しいね」

 

シャルルはそう言って笑みを浮かべる。

 

「ッ!?」

 

その笑みに一夏は思わずドキリとし、

 

「…………………」

 

紫苑はほぼ確信を持っていた。

 

「ねえねえシオン! お弁当早く!」

 

ネプテューヌが紫苑にお弁当を出すように催促する。

 

「ああ、悪い。今出すよ」

 

そう言って紫苑が後ろから前に出したのは大きめの三重の重箱。

それから4つに小分けされた保温容器だった。

紫苑がそれを広げると、

 

「わぁ! 凄い………!」

 

シャルルが声を漏らす。

重箱には色とりどりのおかずの品々。

保温容器にはそれぞれ一人分ずつの温かいご飯が入っていた。

因みにこれは紫苑、ネプテューヌ、ネプギア、翡翠の分である。

 

「では、私からも……………」

 

フィナンシェがそう言ってバスケットを取り出し、その中からサンドイッチやサラダ、フライドチキンなどとても弁当として作ったとは思えない品々だった。

 

「こ、こっちも凄いですわね………」

 

セシリアが思わず声を漏らす。

 

「さ、流石はデキるメイドさんね………」

 

鈴音もやや敗北感を覚えながらそう呟く。

 

「ロム様とラム様はこちらです」

 

そう言ってロムとラムの2人に差し出されたのはどう見てもお子様ランチ。

 

「本職顔負けだな」

 

箒も最早呆れている。

 

「フフッ、これが私の従者の実力よ」

 

ブランが勝ち誇った顔をする。

何とも言えない雰囲気が漂う中、パンッと手を叩く音が響き、

 

「とりあえず食べましょう? 休み時間にも限りがあるから」

 

刀奈がそう言って食事を勧めた。

それが切っ掛けで食事が始まる中、

 

「………うん! 美味しい!」

 

翡翠が笑顔でそう言った。

ふと、その顔を不思議そうに見る一夏。

 

「ん? 一夏君、どうかした?」

 

その視線に気付いた翡翠が尋ねると、

 

「あ、いや………翡翠って味覚障害じゃなかったけ?」

 

一夏は以前の出来事を思い出してそう聞く。

 

「あれ? 言ってなかったけ? 私の味覚障害は精神的ストレスが原因みたいだったから、お兄ちゃんが生きてたと分かった時点で治ったよ」

 

翡翠があっけらかんとそう言う。

 

「そうだったのか………」

 

「そう言えば翡翠さんは、入学した時点ではかなり険しい様子でしたものね」

 

セシリアもそう言う。

 

「アタシは今の翡翠しか知らないんだけど、そんなに酷かったの?」

 

「かなりな。誰とも打ち解けようとせず、ただ闇雲に目的に向かって突き進もうとしていた危うい状態だった」

 

「あ、あはは………」

 

箒の言葉に翡翠は乾いた笑いを零す。

 

「それでもまだマシな方よ。1年前に目覚めたばかりの頃の翡翠ちゃんは、生きる気力すら無かったんですもの。何とか復讐心を焚きつけて生きる目標にしたけど、ほんっと酷かったから」

 

「私達で必死に面倒見てた」

 

「あうう………ごめんなさい」

 

刀奈と簪の言葉に翡翠は項垂れる。

 

「そこまでだったのか…………刀奈、簪、改めて礼を言う」

 

紫苑はそう言って頭を下げる。

 

「そ、そんな! 紫苑さんに頭を下げて欲しい訳じゃ………!」

 

「あ、頭を上げてください………!」

 

そんな紫苑に刀奈と簪は慌てる。

 

「いや、これは俺の気持ちだ。本当にありがとう」

 

「分かりました! 分かりましたから、頭を上げて!」

 

刀奈は必死にそう言う。

 

「そう言うシオンも似たような状態だったけどね~」

 

ネプテューヌがここぞとばかりにそう言った。

 

「……………ああ、そうだな」

 

紫苑は頭を上げるとネプテューヌを見る。

 

「俺がこうして生きているのも、全部お前のお陰だ」

 

笑みを浮かべる紫苑。

 

「ね、ねぶぅ~~~~~…………………」

 

ちょっとからかうつもりだったのだが、真正面から感謝の気持ちを伝えられ、途端に恥ずかしくなり何も言えなくなるネプテューヌ。

その後、笑いに包まれた一同は楽しいひと時を過ごしたのだった。

 

 

 

 





第14話です。
久々にそこそこ手応えのある話が書けました。
まあ、相変わらずコピペも多いですが。
シャルルもといシャルロットの登場。
因みにラウラと一緒に紫苑と一夏のどっちに宛がうかはもう決めました。
あと、山田先生の現役時代の代表が本当に千冬さんだったのかは知りません(爆)。
さて次回はシャルルの性別バレ。
お楽しみに。
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