超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス   作:友(ユウ)

8 / 110
第7話 少年の覚悟(デッドエンド)

 

 

 

 

 

数日後。

パープルハートが捕らえられたことは国民には秘匿されていたが、救出の協力を仰ぐために他の女神には事実を報告していた。

だが、他の3国には最近無視できない数のモンスターの群れが度々襲撃してきて、手が離せないらしく、救援は今しばらく無理そうだという答えが返ってきた。

当然だがこれは単なる偶然では無く、あらかじめマジェコンヌが他の国の女神に邪魔されないように手を回した妨害工作だ。

そして紫苑の怪我がほぼ完治した頃、再び知らないアドレスからメールが届き、とある場所の座標だけが記されていた。

 

「………場所は街から余り離れていない森の中だけど…………どうする?」

 

アイエフがネプギア、コンパ、そして紫苑に問いかける。

 

「もちろん行きます! お姉ちゃんを助けないと!」

 

「ねぷねぷを助けるですぅ!」

 

「……………………」

 

紫苑は無言だったがその雰囲気から行かないという選択肢はあり得ないだろう。

 

「まあ、聞くまでも無かったわね…………」

 

罠だろうと分かっていつつも迷いなく行くことを決めた3人にアイエフは溜息を吐く。

とはいえ、その気持ちはアイエフも同じである。

 

「なら、皆でネプ子を助けに行きましょう!」

 

その言葉に全員が頷いた。

 

 

 

 

 

移動は変身したネプギアがコンパを抱き上げて運び、紫苑はアイエフのバイクに2人乗りで乗っている。

プラネテューヌからはさほど離れてはいないため、大した時間もかからずに指定された座標に到着する。

するとそこには、

 

「お姉ちゃん!」

 

ネプギアが叫んだ。

指定された座標の森の中にはに小さな広場があり、そこに後ろを向いて佇むパープルハートの姿があった。

ネプギアは地上に降りてコンパを下ろし、パープルハートに向かって駆け出す。

 

「良かったお姉ちゃん! 無事だったんだね!」

 

そう言いながらパープルハートに駆け寄ろうとした。

丁度その時アイエフと紫苑もバイクでその場所に到着し、紫苑は飛び降りるように地面に着地した。

すると、ネプギアの声に反応したのかパープルハートがゆっくりとこちらを振り向く。

ネプギアは笑みを浮かべてそのまま駆け寄ろうとしている。

だが、

 

「ッ!? ネプギア! 止まれっ!!」

 

パープルハートの目を見た瞬間、紫苑が強い口調で叫んだ。

 

「えっ?」

 

紫苑の珍しく強い口調にネプギアは思わず足を止め、紫苑に振り返ろうとした。

その瞬間、ネプギアの眼前を紙一重で何かが通過する。

 

「………………え?」

 

ネプギアは呆けたように声を漏らした。

何故なら、今ネプギアの眼前を通り過ぎたのはパープルハートが振るった刀剣だったからだ。

紫苑が呼び止めなければ、確実にネプギアに直撃していた。

 

「お、お姉ちゃん………?」

 

ネプギアは震えた声を漏らしてパープルハートを見た。

その顔に表情は無く、目にも光が宿っていない。

 

「お、お姉ちゃん………どうして………?」

 

ネプギアは目の前の現実が信じられず、縋るような眼を向ける。

そんなネプギアに紫苑が駆け寄ると、

 

「どうしたもこうしたも………こんな悪趣味な事をする奴なんて決まっているだろう。出てこいマジェコンヌ!!」

 

紫苑は辺りの森に向かって叫んだ。

すると、

 

「よく気が付いたと誉めてやろう」

 

その言葉と共に、パープルハートの後ろの木の影からマジェコンヌが姿を現す。

 

「お姉ちゃんに、何をしたんですか!?」

 

ネプギアが問いかける。

 

「ククク………なぁに、少しばかり洗脳して言う事を聞いてもらえるようにしただけだ」

 

マジェコンヌは調子に乗っているのかスラスラと話す。

 

「そんな!? 女神を洗脳なんて出来るはずが………!」

 

「忘れたのか? 私は以前にも貴様が不可能を想っていたことを成し遂げたことがあるのだぞ? まあ、その為にアンチクリスタルを1つ消費してしまったがな」

 

まるで自慢するような口調でそう言うマジェコンヌ。

 

「女神の力を封じるアンチクリスタルのアンチエナジーを応用し、女神の意思を弱めれば、洗脳も容易い事だ」

 

堂々と言い張るマジェコンヌ。

 

「一体、何のために!?」

 

「女神を纏めて葬る計画は貴様たちに邪魔されてしまったのでな。面倒だが1人ずつ始末していく計画に切り替えたのだ。まず手始めに、貴様たちのプラネテューヌだ」

 

すると、マジェコンヌはとある方向に視線を向ける。

そこには、テレビカメラを構えたワレチューの姿。

 

「コンパちゅわ~~ん! 久しぶりっチュ!」

 

のはずが、そのワレチューはテレビカメラそっちのけでコンパにアピールしている。

 

「は、はいですぅ………」

 

どういう反応を返していいか困るコンパ。

 

「おいネズミぃ! ちゃんとカメラを回せ!!」

 

「まったく……仕方ないっチュね」

 

ワレチューがやれやれと言わんばかりにカメラを構えなおす。

マジェコンヌは気を取り直すと、

 

「この状況はプラネテューヌ全土にリアルタイムで中継されている。女神が我が手に落ち、妹たちを攻撃したとなれば、いったいどれほどの影響が出るのかな?」

 

「ッ!?」

 

その言葉にネプギアは戦慄を覚える。

確かにこの事がプラネテューヌ全土に広まれば、シェアの急激な低下は避けられない。

 

「さあ! やれぃ! 女神パープルハート!!」

 

マジェコンヌの命令を切っ掛けに、パープルハートが刀剣を構え、突っ込んでくる。

 

「お姉ちゃん………! きゃあっ!?」

 

ネプギアはビームソードで受け止めるが、パープルハートの容赦のない一撃に後ろに後退する。

 

「お、お姉ちゃん! 止めて!」

 

ネプギアは必死に呼びかけるが、パープルハートは止まる気配を見せない。

パープルハートが振るう刀剣を、ネプギアは必死に捌いていくが、実の姉を攻撃することなどネプギアに出来るはずもなく防戦一方だ。

 

「ッ………ネプテューヌ…………!」

 

女神同士の闘いに紫苑は割って入ることが出来ずに、紫苑は歯噛みする。

命に代えてもネプテューヌを助けるとは誓ったが、勝ち目のない戦いに身を投じてもそれは単に無駄死にするだけに過ぎない。

せめて、助けられる可能性が僅かでもなければ命を懸けるわけにはいかない。

紫苑は今にも飛び出しそうな気持を必死に抑え、動向を見守る。

 

「お姉ちゃん! お願い! 目を覚まして!!」

 

ネプギアはパープルハートの剣戟を必死に防ぎながら呼びかけを続ける。

 

「無駄だ無駄だ! 呼びかける程度で私の洗脳は解けはしない!」

 

マジェコンヌは自信に溢れた口調でそう言った。

 

「そんなの! やってみなきゃ分からない!」

 

ネプギアはそう言い返す。

 

「フッ…………ならばその理由を教えてやろう。本来洗脳というものは完璧を求めれば求めるほど難易度が高くなり、それ故に僅かな切っ掛けで目を覚ましてしまうことが多い。しかしな、私はあえて洗脳が解ける穴を自ら作ることにより、それ以外による洗脳の解除の確立を極めて低くすることに成功したのだ」

 

「それって………」

 

「つまり、私の決めた解除方法以外では、女神の洗脳が解除される確率は極めて低いという事だ!」

 

「そんな………!」

 

ネプギアは絶望的な表情をする。

 

「ククク………いい表情(カオ)だ…………その表情(カオ)に免じて女神の洗脳の解除方法を教えてやろう…………」

 

「えっ………? どういうつもりですか!?」

 

「なぁに………この私のせめてもの優しさという奴だよ……………女神の洗脳を解く方法は………………」

 

マジェコンヌは勿体ぶるように一呼吸置き、

 

「『誰かの心臓を刺し貫くこと』さ…………!」

 

「なっ!?」

 

その一言に驚愕の声を漏らすネプギア。

 

「どうした…………? 誰か1人殺すだけでお前の姉は元に戻るのだぞ? 簡単な話だと思わんのか?」

 

クククと笑いを零しながらマジェコンヌは言った。

 

「そ、そんな事……………」

 

「お前たちの様な甘ちゃんには出来まい。仮に出来たとしても、罪なき者を女神が殺めたとなれば間違いなくシェアは低下し、女神自身も正気に戻った時点で己のした事に嘆き苦しむだろう……………そうなれば女神を始末することなど容易い」

 

得意げに説明するマジェコンヌ。

どうすればいいか分からないネプギアはただパープルハートの攻撃を受け止め続けるしかなかった。

少し離れた場所で、アイエフが口を開く。

 

「ねえシオン…………あのオバサンが言ったこと、本当だと思う?」

 

その言葉に、

 

「奴の言動や態度には微塵も揺らぎは無かった……………おそらく本当の可能性は極めて高い………」

 

「ど、どうすればいいですぅ~?」

 

冷や汗を流す紫苑に狼狽えるコンパ。

パープルハートの攻撃を受け止め続けるネプギア。

その時、

 

「ッ……………!? 力が……………!」

 

ネプギアの身体から、徐々に力が抜けていく感覚がした。

 

「ほう、どうやらもう影響が出始めたらしいな…………」

 

マジェコンヌは何が起こっているのか理解している口調で言う。

 

「これは……………まさかシェアが…………!」

 

女神の力の源のシェアは人々の信仰心。

この光景はプラネテューヌ全域に放送されており、操られているとはいえネプギアに対して攻撃を続けるパープルハートから人々の心が離れ始めているのだ。

とはいえ、

 

「くっ!?」

 

パープルハートの力も弱まっているため、ネプギアが不利になることは無いが、このままではシェアが低下していくだけでジリ貧だ。

 

「一体………どうすれば…………」

 

解決の糸口すら見つからないネプギアは、ただ攻撃を防ぎ続けるしかなかった。

 

「………………………」

 

その光景を何かを思うように見つめ続ける紫苑。

 

「ネプ子! お願い、目を覚まして!!」

 

「ねぷねぷ! 元に戻ってほしいですぅ~!」

 

アイエフとコンパは必死に呼びかけを続けている。

 

「くぅ………! きゃっ!?」

 

ネプギアも苦しそうな表情でパープルハートの攻撃を凌ぎ続ける。

 

「……………………………」

 

紫苑は一度目を伏せ、何かを思案するように軽く俯いた。

そして、

 

「……………………ッ!」

 

何かを決意したように目を見開き、前を向いた。

紫苑は前に一歩踏み出す。

 

「シオン………!?」

 

「シオ君………!?」

 

アイエフとコンパは驚いたように呼び止める。

すると、

 

「大丈夫だ………作戦がある!」

 

そう言いきって紫苑は再びパープルハートとネプギアの戦いの場に足を向けた。

 

「ネプギア! 下がれ!」

 

「シオンさん!? でも…………!」

 

「ここは俺に任せて欲しい。ネプテューヌを正気に戻してシェアも失わせない方法がある」

 

「そんなことが…………でも、いったいどうやって………!?」

 

「説明している時間は無い。とにかく任せてくれ!」

 

自信を持って言う紫苑の言葉に、ネプギアは少し迷った後に頷き大きく飛び退いて紫苑の後ろに着地する。

 

「シオンさん、何か私に出来ることはありますか?」

 

そう尋ねるネプギア。

 

「………………強いて言うなら、俺を信じて任せて欲しい………かな?」

 

「…………分かりました」

 

ネプギアが頷いた事を確認して、紫苑は刀を抜くといつもの霞の構えでパープルハートに向かって構える。

 

「ほう、小僧。この状況でどのような策があるというのかな…………?」

 

「……………………」

 

紫苑はマジェコンヌの言葉には反応せず、ただ黙ってパープルハートを見据え続ける。

 

「フッ…………ならば見せてもらおうではないか。やれっ!」

 

マジェコンヌの号令で一気に飛び込んでくるパープルハート。

紫苑もパープルハートに向かって駆け出した。

圧倒的なスピードで紫苑を刺し貫こうとするパープルハートと、それに真っ向から向かって行く紫苑。

両者が激突する。

そう思われた瞬間、

 

「ッ…………!」

 

突如紫苑が自分の刀を投げ捨てたのだ。

 

「えっ?」

 

「シオンさん!?」

 

「シオ君!?」

 

驚愕に声を漏らす3者だったが、紫苑はまるでパープルハートを受け入れるかのように両手を横に広げ……………

 

「そ、そんな……………」

 

「嘘…………」

 

「シ、シオ君…………」

 

次の瞬間には、パープルハートの刀剣によって胸を刺し貫かれていた。

しかし、その行為によってパープルハートの目に光が戻る。

 

「うっ………私は………………えっ?」

 

洗脳中に意識は無かったのか、一瞬どの様な状況にあるか理解していなかったパープルハート。

だが、手に感じる生暖かい感触と、その手に持つ刀剣の先を確認した瞬間、パープルハートの顔から一気に血の気が引いた。

 

「え………シオン………嘘…………なん…………私…………」

 

パープルハートは理解できない。

いや、したくない。

何故紫苑が刀剣に貫かれているのか。

何故その刀剣を自分が握っているのか。

これではまるで、“自分が紫苑を殺した”様ではないか。

 

「うぅ……………」

 

ネプギアは酷い脱力感に襲われて膝を着く。

 

「シェアが…………失われていく……………」

 

シェアが急激に減っていくのを感じ、ネプギアは悲痛な声を漏らす。

 

「クハハハハハハッ! 何をするかと思えば、自ら刺されに行くとは馬鹿な奴だ! 例え女神が正気に戻ったとしても、シェアが失われればその力も失われ、結局はこの私に倒されるだけだというのに………!」

 

紫苑の行動を見て大笑いするマジェコンヌ。

 

「わ、私が…………シオンを……………?」

 

その答えに行きつくパープルハート。

 

「その通りだ! 貴様がその剣でその小僧の胸を刺し貫いたのだ!」

 

マジェコンヌの口から語られる事実に、パープルハートは身を震わせる。

 

「わ、私が…………殺した…………」

 

パープルハートの心は今にも崩壊しそうな勢いだった。

だが、貫かれた刀剣に支えられる状態だった紫苑の身体。

その力が抜けて垂れさがった手先がピクリと震え、続いて強く握りしめられた。

 

「ぐ………うぅ…………ネプ………テューヌ…………」

 

紫苑は顔を上げ、声を発する。

即死していてもおかしくない………

いや、即死していなければおかしい筈の状況なのにも関わらず、紫苑はまだ生きていた。

 

「まだ生きていたのか? しぶとい奴だ………」

 

とは言え、事切れるのも時間の問題だろう。

マジェコンヌはそうタカを括って傍観に徹する。

 

「シオンッ………!? ごめんなさいっ…………! 私………私っ…………!」

 

パープルハートは涙を流しながら謝罪の言葉を口にする。

紫苑は今にも尽きそうな命を燃やして、必死に手を上げ、パープルハートの肩を掴むようにして身体を支える。

 

「……ネプ……テューヌ…………お、お前が………気に病む必要は無い………ぐっ………」

 

「シオンッ………でもっ…………私っ…………」

 

「俺が初めて………ゲイムギョウ界に来た時…………俺は絶望の中にいた…………あのままだったら…………俺はとっくの昔に死を選んでいただろう………………そんな俺を救ってくれたのは…………お前だ……………だから…………ずっと前から…………俺の命はお前の為に使うと決めていた…………」

 

「そんな………シオン………シオン…………」

 

パープルハートの瞳からは涙が溢れ続ける。

 

「…………そろそろ………お別れだな…………」

 

身体は元より、精神的にも限界を悟る紫苑。

 

「嫌…………シオン…………死なないで…………お願い………!」

 

パープルハートは縋るような思いでその言葉を口にする。

しかし、パープルハートの肩を掴む紫苑の手からは徐々に力が抜けていく。

涙を流すパープルハートの表情を見て、紫苑は最期に言葉を付け足した。

それは決して彼女に伝える気の無かった自分の想い。

しかし、最期の最後で耐えきれなくなってしまった。

 

「ネプテューヌ……………俺は…………お前を……………………」

 

紫苑の身体から力が抜け、パープルハートの肩を掴んでいた手も滑り落ち、紫苑の身体がぐらりと傾く。

そのまま紫苑はパープルハートに向かってもたれかかる様に崩れ落ち、

 

「………………………愛している…………!」

 

その言葉を口にした。

 

「ッ…………!?」

 

その言葉に目を見開くパープルハート。

崩れ落ちる紫苑の身体を抱きしめるように受け止めるが、紫苑の胸に突き刺さった刀剣が邪魔になり、うまく支えることが出来ず、膝から崩れ落ちるように座り込むと、丁度仰向けになった紫苑をパープルハートが抱き起す形となった。

 

「死んだか…………犬死だな…………」

 

マジェコンヌは嘲笑うようにそう言った。

 

「くっ………!」

 

「シオ君………死んじゃったですぅ………?」

 

「シオンさん…………」

 

アイエフは思わず目を逸らし、コンパは涙を流しながら呟く。

ネプギアも涙を滲ませながら紫苑の名を呟く。

すると、マジェコンヌがパープルハートへと歩き出す。

その途中で変身すると、武器を刀剣へと変化させパープルハートに突きつけた。

 

「それにしても馬鹿な小僧だ。女神に情愛を抱くなど…………身の程知らずとはこのことだな……………!」

 

マジェコンヌは刀剣を振り上げると、

 

「シェアを失った女神など私の敵ではない………! 死ねっ!」

 

マジェコンヌが刀剣を振り下ろそうとした瞬間、

 

「なっ!?」

 

突如としてパープルハートの身体中からシェアエナジーが溢れ出た。

 

「何だと!? 馬鹿な、シェアは失ったはずでは…………!?」

 

驚愕するマジェコンヌは咄嗟に後退してしまう。

そして、そのシェアエナジーの高まりはネプギアも感じていた。

 

「これは…………失われたシェアが戻って…………ううん、それ以上のシェアが…………一体どうして?」

 

ネプギアが疑問を口にする。

すると、

 

「おそらくきっと…………これがシオンの『作戦』…………」

 

アイエフが辛そうに言葉を絞り出す。

 

「どういうことですぅ?」

 

「今のシオンの行動は、多くの人々の心を揺り動かしたはずよ…………それがネプ子に対する失望感を払拭して、逆にネプ子を応援するようになったの……………」

 

「それが…………シオンさんの作戦…………」

 

「ええ…………その名の通り、命を懸けた…………ね…………」

 

アイエフの言葉にその場の3人が紫苑が死んだ現実を思い出し、俯く。

その時、

 

「立ちなさい、ネプ子!」

 

アイエフがパープルハートに向けて叫んだ。

 

「立って戦うの! シオンの仇を取るのよ! ネプ子!」

 

「シオンの………仇…………?」

 

パープルハートが僅かに反応する。

 

「ええそうよ! そこのオバサンがシオンが死ぬことになった元凶よ! 今のあなたの力なら出来るはずよ!」

 

アイエフは悔しそうな表情を浮かべながらマジェコンヌを指さし、叫ぶ。

だが、

 

「……………………違う…………!」

 

パープルハートはその言葉を否定した。

 

「シオンを殺したのは………………私…………」

 

パープルハートは虚ろな瞳で呟く。

 

「私の弱さが……………シオンを殺した…………」

 

パープルハートはそう言って動こうとしない。

 

「クッ………クハハハハハハッ! そうだ! その通りだ! その小僧は貴様が殺したのだ!」

 

マジェコンヌはパープルハートの様子に何か気付いたように確信すると、笑い声を上げて調子を上げてくる。

すると、懐からアンチクリスタルを取り出し、呪文を唱えるとそのアンチクリスタルを包むように赤黒い炎がマジェコンヌの手で燃え上がった。

 

「小僧を殺したのは貴様の罪………! 罪を犯した者は罰を受けねばならん! その罰は私がくれてやろう……………」

 

マジェコンヌの手で激しく燃え盛る赤黒い炎。

 

「この炎はアンチエナジーを媒体に生み出された女神を殺す呪いの炎。一度その炎に包まれればその全てが灰となるまで決して消えることは無い…………!」

 

マジェコンヌは空中に飛び上がるとパープルハートを見下ろす。

 

「さあ、呪いの炎の中で、灰となるが良い!!」

 

その炎をパープルハートへ向けて放った。

 

「お姉ちゃん!!」

 

「ネプ子!」

 

「ねぷねぷ!」

 

3人が叫ぶが、パープルハートはそれでも動こうとしなかった。

放たれた炎はパープルハートを囲むように燃え上がる。

その炎の中、パープルハートは紫苑を抱き上げながらその顔をずっと見つめていた。

紫苑の表情は、優しい微笑みを浮かべている。

 

「…………………言われてから…………気付くなんてね………」

 

パープルハートは紫苑の頭を左手で支えながら、右手を頬に添える。

涙を流し続けるその顔を、徐々に紫苑の顔に近付けていく。

 

「私も……………私も愛してるわ…………シオン………」

 

パープルハートも自分の想いを口に出し、紫苑の唇に口付けた。

その瞬間、激しく燃え上がった炎にパープルハートの姿は覆い隠される。

 

「ッ…………! お姉ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

それを目撃したネプギアの悲痛な叫びが響いた、

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。