超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス   作:友(ユウ)

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第17話 緑の(シスター)

 

 

 

 

 

翡翠はアリーナにいた。

 

「えっ………? ここって…………」

 

翡翠は自分が何故こんな場所にいるのか思い出そうとする。

その時、突如として連続した銃声が聞こえた。

翡翠は思わず振り返ると、そこには、

 

「お、お兄ちゃん!?」

 

自分の兄である紫苑が生身でISと対峙していた。

しかも、ISに乗っているのは3年前のテロ事件の時のあの女だ。

 

「お兄ちゃん!」

 

翡翠は思わず叫ぶが、紫苑は聞こえていないのかその女と対峙を続ける。

何故紫苑があの女と対峙しているのか。

なぜ紫心を纏っていないのか。

翡翠に疑問は尽きないが、目の前の光景はその疑問を全て吹き飛ばした。

女がグレネードランチャーを呼び出し、それを紫苑に向けた。

 

「お兄ちゃん! 逃げて!」

 

翡翠が叫んだ瞬間、引き金が引かれ、

 

「お兄ちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

紫苑が爆発に呑み込まれた。

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん!」

 

翡翠は叫びながらベッドから飛び起きた。

 

「はぁ………はぁ………ゆ、夢……………?」

 

翡翠は酷く汗を掻きながらそう呟く。

 

「翡翠さん…………うなされてたけど、大丈夫?」

 

ルームメイトである簪が心配そうに翡翠のベッドの横から声を掛けた。

 

「簪ちゃん………………」

 

翡翠は真っ青な顔で簪を見る。

 

「もしかして………またあの夢を………?」

 

簪がそう聞くと、翡翠はフルフルと首を横に振った。

 

「ううん…………似てたけど、あの夢じゃなかった……………な、何でだろうね………? 今のお兄ちゃんはISだって使えるし、もし現実にあの女が目の前に出てきたとしても、簡単に倒せちゃうはずなのに…………」

 

翡翠は自分に言い聞かせようとしているのか、若干震えた声でそう呟く。

 

「翡翠さん……………」

 

簪が心配そうな表情を翡翠に向ける。

 

「あっ、心配させちゃった? ごめんね。ただの夢だし、気にしないで」

 

翡翠はそう言って無理に笑顔を作って見せる。

 

「起こしちゃってゴメンね。明日は学年別トーナメント本番だから、ちゃんと寝て明日に備えよう?」

 

「う、うん…………」

 

簪は少し心配だったが、言われた通り自分のベッドに戻って横になる。

 

「お休み、簪ちゃん」

 

「はい、お休みなさい。翡翠さん」

 

2人はそう言って再び目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

学年別トーナメント初日。

この学年別トーナメントには、3年生のスカウトや2年生の1年間の成果の確認の為に各国の要人も来ているため、VIP席が設けられている。

ペアを組んでいる翡翠と簪は一緒に更衣室で組み合わせの結果を待っており、男として学園に居るシャルロットを含む紫苑達男子生徒も男子用更衣室で抽選の結果を待っていた。

まあ、紫苑と一夏は予めシード選手として決められているが。

やがて組み合わせが決まり、画面に表示される。

 

「ッ!」

 

シャルロットはそれを見て思わず目を見開いた。

その1回戦に表示されていたのは、

『月影 翡翠、更識 簪×ラウラ・ボーデヴィッヒ、シャルル・デュノア』

であった。

 

「これはまた意外な組み合わせだな………」

 

紫苑もこれは予想外だと頬を掻く。

 

「まさかボーデヴィッヒさんと組むことになるなんて……………しかも相手が翡翠達だよ………」

 

シャルロットは紫苑の妹である翡翠が対戦相手と知り、若干のやりにくさを感じていた。

 

「一応言っておくが手加減なんて考えるなよ。舐めてかかれば負けるのはお前だ」

 

シャルロットの心情を読んだかのように紫苑が発言する。

 

「えっ?」

 

「翡翠は元より、簪だって代表候補生だ。その実力は本物だ。それにあいつらは仲が良いからな。案外凄いコンビネーションを見せるかもしれないぞ。そう言えば、つい先日翡翠のISが二次移行(セカンドシフト)したって言ってたな」

 

「えっ? そうなの?」

 

「ああ、俺も実際にはまだ見てないんだが…………本番でのお楽しみと言われた」

 

「あはは、翡翠ってそう言うところあるよね」

 

「……………まあ、そうだな」

 

若干の沈黙の後そう答える紫苑。

 

「やっぱり兄妹で似てるところあるよな、お前ら」

 

一夏が話に入ってくる。

 

「………………………」

 

一夏に言われた事を自覚していたのか黙り込む紫苑。

 

「………まあともかく、あいつがパートナーとなると、やりにくい所もあるかもしれないが…………」

 

「わかってる。抽選の結果だけど、『仲間』だからね。できるだけ力を合わせて見るよ」

 

「ああ。頑張れ」

 

「うん!」

 

紫苑の言葉にシャルロットは元気よく頷くと、試合の準備の為に指定されたピットへと向かった。

 

 

 

 

 

シャルロットがピットへ行くとそこには既にラウラが居た。

 

「フン。貴様がペアか」

 

腕を組みながら不遜な態度でそう言うラウラ。

それでもシャルロットは笑みを浮かべ、

 

「ボーデヴィッヒさんだね。知ってるかもしれないけど僕はシャルル・デュノア。大会中はよろしくね」

 

シャルロットはそう言って握手の為に手を差し出す。

しかし、

 

「貴様と慣れ合う気は無い。私がペアを組むのはそれがルールだからだ。精々私の邪魔をしない様に隅で大人しくしていることだ」

 

ラウラは握手に応えようとせず、そう言って背を向ける。

 

「………………まいったな」

 

シャルロットは困った様に頭を掻いた。

 

(ボーデヴィッヒさんの実力は認めるけど、一般生徒はともかく、今回の相手はあの翡翠と代表候補生だよ。単独で戦って勝てる程甘い相手じゃない…………)

 

そう思いながらカタパルトへ向かうラウラの背を眺める。

 

「……………僕に出来ることは………」

 

 

 

 

 

 

 

試合の準備が整い、それぞれが発進準備に入る。

ラウラは無言で専用IS『シュヴァルツェア・レーゲン』を纏い、そのままアリーナ内へ向かい、シャルロットもその後を追った。

一方、翡翠と簪もISを纏う所だった。

 

「頑張ろうね、簪ちゃん」

 

「はい、翡翠さん」

 

簪は右手の中指に通されている指輪を前に突き出し、

 

「来て、『打鉄弐式』………!」

 

水色のISを身に纏う。

 

「行こう、『緑心』!」

 

翡翠がそう言うと胸に付けられているブローチが輝く。

そのISは通常のISよりも装甲面積が少なく、白い装甲に翠色のラインが描かれ、背中にはピンク色の剣のような形をしたエネルギーウイングが3対6枚あった。

そして。その手には翠色に輝く刃を持った槍が握られている。

 

「行くよ! 簪ちゃん!」

 

「はい!」

 

2人は互いに頷いてアリーナ内へと飛び出していった。

 

 

 

 

 

アリーナに飛び出してくる翡翠達を紫苑達は観客席から眺めていた。

 

「ヒスイちゃーん! しゃるるん! 頑張れー!」

 

紫苑の隣ではネプテューヌが手を振りながら応援している。

その反対側では、

 

「簪ちゃん! ファイトよ!」

 

刀奈が簪を応援していた。

 

その横では一夏、ブラン、ロム、ラム、フィナンシェ、ミナ、マドカ、ネプギアも見守っている。

そこで、一夏がふと気になった事を口にした。

 

「あれが翡翠の二次移行(セカンドシフト)したISか…………って言うか、あのISの形って……………」

 

「間違いなくベールの姿が元になってるわね」

 

一夏の言葉にブランが呟く。

 

「多分、お兄ちゃんやイチカさんの記憶をコアネットワークで読み取ったヒスイちゃんのISが、同じくお兄ちゃん、イチカさん、マドカちゃんのISのデータを元に形態変化をしたんだと思います」

 

ネプギアが自分の推論を口に出す。

 

「ほう…………という事は、あのISも『心』の名を関しているという事だな」

 

マドカがそう言う。

 

「だな。多分、十中八九『緑心』だと思うけど…………」

 

一夏がほぼ確信を持って呟いた。

 

「……………ん? そう言えば、マドカは誰と組んだんだ?」

 

一夏が思い出したようにそう聞く。

 

「私は箒と組んでいる。まあ、あっちから頼んできて私にも断る理由は無かったからな」

 

「箒とマドカか…………超近接戦闘コンビだな…………ハマれば強そうだ」

 

「私とて、打倒兄さんを掲げているからな」

 

「ははは。手加減は無しで行くさ」

 

そう話しているうちに選手達が開始位置に着き、睨み合う。

ラウラとシャルロットペアは、ラウラが前衛、シャルロットが後衛。

対する翡翠、簪ペアは、翡翠が前衛、簪が後衛だ。

そして、試合開始のカウントダウンが始まり、

 

「叩きのめしてやる!」

 

ラウラの宣言と同時にカウントがゼロになった。

その瞬間、翡翠はラウラの目の前にいた。

 

(なっ!? 速過ぎる!?)

 

「はあっ!」

 

翡翠の槍の一突きを受けるラウラ。

 

「ぐっ!? この程度で!」

 

だが即座に気を取り直すと、翡翠をAICで捕らえようと右手を前に出す。

だが、その瞬間には既に翡翠はその場には居なかった。

 

「ここっ!」

 

その代わり、離れた所から簪が荷電粒子砲『春雷』を放つ。

 

「くっ!?」

 

AICもエネルギー兵器には効果が薄いため、防御姿勢を取るラウラ。

爆煙に包まれ、怯んだ瞬間、爆煙を切り裂いて翡翠がラウラの目の前に現れた。

 

「なっ!?」

 

「狂瀾怒濤の槍! レイニーラトナピュラ!!」

 

槍が分身して見える程のスピードで、槍の突きが連続して放たれる。

 

「ぐああああっ!!」

 

それをもろに受けて吹き飛ぶラウラ。

更に翡翠は追撃をかけようとして、

 

「それ以上はやらせないよ!!」

 

ラウラを庇うようにシャルロットが前に出てアサルトライフルとマシンガンを両手に持って乱射し、弾幕を張る。

 

「わわっ!?」

 

翡翠は何発か貰いつつ距離を取って体勢を立て直す。

 

「シャルちゃん!」

 

「わっ! 翡翠!」

 

(翡翠! 今の僕は男なんだからちゃん付けは拙いよ!)

 

シャルロットは慌てながら翡翠にプライベートチャネルで呼びかける。

 

(あはは、ゴメンゴメン。つい…………)

 

翡翠は苦笑しながら謝った。

 

「くっ…………おのれっ!」

 

ラウラが起き上がると、翡翠達を睨みつつ射線軸上にシャルロットが居るにも関わらず6本のワイヤーブレードを放つ。

 

「「わっ!?」」

 

「きゃっ!?」

 

巻き込まれそうになったシャルロットも含め、3人は咄嗟に飛び退く。

 

「ちょっとラウラちゃん! 今のはシャルちゃ………シャル君にも当たるところだったよ! 危ないよ!」

 

翡翠は思わずラウラに向かってそう叫ぶ。

 

「フン! 私の前にいる方が悪い! 私の邪魔をするなら共に排除するまでだ!」

 

ラウラはそう言いつつ翡翠に向かってレール砲を撃つ。

 

「っと………!」

 

放たれたレール砲を超スピードで避ける翡翠。

 

「もう、ラウラちゃんってば…………」

 

ラウラのやり方に顔を顰める翡翠。

 

「でも、これはチャンス。2人が協力しないなら、私達の方が有利………」

 

簪がそう言う。

 

「そうだね。私達で教えてあげよう! 協力することの大切さを!」

 

2人はラウラに向き直る。

 

「何が協力だ!? 1+1は所詮は2! 慣れ合わなければ何もできないという『弱さ』の表れだ!!」

 

ラウラはそう言いながらレール砲を放つ。

それを2人は互いに反対方向へ飛び退いて避けた。

 

「それは違うよ! ラウラちゃん!」

 

翡翠はそのまま回り込んでラウラに接近する。

そして槍を突き出そうとして、

 

「甘い!」

 

「くっ」

 

ラウラのAICに捕まった。

 

「初見ではその速さに後れを取ったが、分かっていれば対処は容易い!」

 

ラウラはニヤリと笑いつつレール砲を至近距離で翡翠へと向けた。

だが、翡翠は焦りを見せず、

 

「私にばかり目を向けてていいのかな?」

 

「何?」

 

ラウラが怪訝な声を漏らした瞬間、

 

「やぁああああああああああっ!」

 

真上から簪が高周波ブレードの薙刀、『夢現』を手に急降下してきた。

そのままその刃がレール砲に突き刺さり、爆発を起こす。

 

「ぐあっ!?」

 

怯んだその一瞬にAICが解け、翡翠はそのまま瞬時加速(イグニッション・ブースト)で至近距離から槍を突き出した。

 

「がぁあああっ!?」

 

腹部に諸に受け、苦しそうな声を上げるラウラ。

 

「はぁああああっ!!」

 

続いて追撃をかける簪。

 

「行くよ! 簪ちゃん!」

 

「はい!」

 

翡翠の合図に簪が頷く。

 

「緑心のスピード、見せてあげる!」

 

翡翠が超スピードでラウラに突っ込み、弾き飛ばす。

 

「くっ! だが、お前の攻撃は軽い!」

 

今までくらったダメージが、思ったよりも小さい事に気付いたラウラは、即座に体勢を立て直そうとする。

しかし、その瞬間別方向から荷電粒子砲の直撃を受けた。

 

「があっ!? くっ! 猪口才な!」

 

そこには簪が春雷を構えている。

ラウラは簪にワイヤーブレードを放とうとして、

 

「ぐぅっ!?」

 

背後から一閃を受ける。

 

「なっ!?」

 

翡翠のスピードは、槍の刃から洩れる光がまるで線を描くように目が錯覚するほど。

翠の光の線が空中を縦横無尽に駆けまわり、ラウラを幾度も弾き飛ばしていく。

更にラウラが体勢を立て直そうとしても、簪の的確な援護射撃がそれを許さない。

 

「ラウラちゃん! 協力することは決して『弱さ』なんかじゃない! 『仲間』は『強さ』! 『仲間との強さ』は足し算なんかじゃ計れない! 自分の力を何倍にもしてくれる!」

 

ラウラを一閃して大きく体勢を崩した時、翡翠は簪と合流する。

 

「簪ちゃん! タイミングを合わせて!」

 

「はい! 翡翠さん!」

 

簪は再び夢現をその手に呼び出す。

 

「「せぇーのっ!」」

 

互いに掛け声を掛け合い、同時に瞬時加速(イグニッション・ブースト)でラウラに突撃する。

翡翠の槍と、簪の薙刀の刃が同時にラウラに決まった。

 

「がぁあああああああああああああっ!?」

 

ラウラは大きく吹き飛ばされ、アリーナの壁に激突する。

 

「ぐぅぅ…………馬鹿な………何故この私がこうも一方的に…………!?」

 

ラウラは何故一方的にやられているのか理解できずに困惑する。

 

「ラウラちゃんには悪いけど、このまま一気に………!」

 

翡翠は追撃の手を休めず、ラウラに向かって飛翔する。

翡翠はラウラに止めを刺そうと槍を突き出し、

 

「させないよ!」

 

ラウラの前に割り込んできたシャルロットが実体シールドで翡翠の槍を防いだ。

 

「シャル君!?」

 

思わず驚愕する翡翠。

 

「今!」

 

シャルロットはシールドを斜めに構えて翡翠の矛先を受け流す。

 

「あっ!?」

 

そのまま前に体勢が崩れた翡翠の腹部目掛け、シールドの外部装甲をパージさせながらその下にあるパイルバンカーを押し当てた。

その瞬間、撃鉄が叩き落され、杭が打ち出された。

 

「がふっ!?」

 

その一撃を諸に受けた翡翠は逆に吹き飛ぶ。

 

「翡翠さん!」

 

吹き飛ばされる翡翠を簪が受け止める。

 

「げほっ! げほっ!」

 

衝撃が体に伝わった翡翠は咳き込む。

 

「大丈夫ですか!?」

 

簪は心配そうに声を掛ける。

 

「わ、私は何とか………でも、今ので緑心のシールドエネルギーが半分以上削られちゃった………」

 

「仕方ありません。ラファールのパイルバンカーは第二世代型でも威力だけなら第三世代の武器に勝るとも劣りませんから…………それを緑心の紙装甲に直撃を受ければその位は削られます……………」

 

「ううっ…………分かってるけど紙装甲って言わないで…………」

 

ズバッと指摘された緑心の欠点に翡翠は思わず項垂れる。

翡翠の緑心はいわばスピードにパラメーターを極振りした高速機動IS。

その為攻撃力も低く、防御力も現行ISの中では最低クラス…………というより明らかに最低だろう。

その代わりスピードだけは最速だ。

つまり、『当たらなければどうという事は無い』を地で行くため、逆に当たってしまえは通常の兵器でも致命的なのだ。

 

「大丈夫? ボーデヴィッヒさん?」

 

シャルロットはアサルトライフルで牽制しつつ、ラウラを気遣う。

 

「お、お前…………」

 

「あの2人に1人で立ち向かうなんて無茶だよ! こっちも2人で戦わないと!」

 

シャルロットはそう呼びかける。

だが、

 

「ッ………! そ、その必要は無い! 私は1人でも戦える! 1人でも勝つ!」

 

ラウラは意地になってそう言う。

それを見ると、シャルロットは呆れて溜息を吐く。

 

「はぁ…………だったら勝手にすればいいよ」

 

シャルロットがそう言うと、

 

「言われなくとも!!」

 

ラウラは両手にプラズマブレードを発生させ、2人に斬りかかる。

翡翠と簪が飛び退くと、ワイヤーブレードを操り、追撃をかける。

だが、翡翠のスピードには追いつくことが出来ず、簪には夢現も巧みに使いながら弾かれる。

そのまま2人がラウラに向かって攻撃しようとした。

このタイミングならどちらかの攻撃は当たる。

 

「ぐっ………!」

 

避け切れないことを悟ったラウラは声を漏らした。

だがその時、ラウラへの道を遮るように無数の銃弾が2人の目の前を通過する。

 

「シャル君!?」

 

翡翠がその援護を行った人物へ顔を向ける。

 

「ボーデヴィッヒさん! 君が勝手に戦うって言うのなら、僕も勝手に合わさせてもらうよ!」

 

「お前…………」

 

驚愕の表情のラウラ。

 

「来るよ!」

 

シャルロットの言葉にラウラは気を引き締め直して前を向く。

簪が残りシールドエネルギーの少ないラウラに向かって春雷を構える。

 

「させない!」

 

シャルロットがシールドを構えながらラウラの前に立ちはだかる。

爆煙に包まれるシャルロット。

次の瞬間、爆煙に紛れる様にラウラのワイヤーブレードが伸びて来た。

 

「ッ!? きゃあっ!?」

 

爆煙の所為で反応が遅れた簪は避け切ることが出来ずにその攻撃を受ける。

 

「ここっ!」

 

シャルロットは高速切替(ラピッド・スイッチ)で持つ武器を即座にスナイパーライフルに変更すると、簪に狙いを定め、撃ち抜く。

 

「きゃぁあああっ!?」

 

直撃を受けた簪は大きく怯んだ。

 

「このぉっ!」

 

翡翠がシャルロットに向かって槍を突き出す。

シャルロットが飛び退いた瞬間、ラウラが突進してきて翡翠と切り結ぶ。

ラウラのプラズマブレードの二刀流は翡翠の槍捌きでは対処しきれず、翡翠は咄嗟に距離を取ろうとした。

だが、

 

「えっ?」

 

体の動きが止まる。

見れば、ラウラが右手を前に向けてAICを発動させていた。

 

「捕まえたぞ!」

 

「やばっ!」

 

ラウラは使えなくなったレール砲の代わりにワイヤーブレードで狙いを定める。

 

「翡翠さん!」

 

体勢を立て直した簪が春雷でラウラに狙いを定める。

 

「やらせない!」

 

シャルロットがアサルトライフルを展開し、弾幕を張る。

 

「くっ!」

 

何発かが簪に当たりながらも引き金を引く。

しかし、狙いが逸れたのかラウラには直撃せず、少しずれた所に着弾した。

だがそのお陰でラウラの気が一瞬逸れ、その一瞬で翡翠はAICの拘束から脱出する。

 

「ふう………危ない危ない…………」

 

翡翠はホッと息を吐く。

 

「油断大敵だよ!」

 

シャルロットがグレネードランチャーを構えた。

咄嗟に飛び退く2人だが、爆煙によって視界が遮られる。

次の瞬間、間髪入れずにラウラのワイヤーブレードが襲い掛かってきた。

 

「このっ!」

 

翡翠は槍を回転させてワイヤーブレードを弾く。

しかし、その隙にシャルロットが接近してきてマシンガンとショットガンをその手に構えていた。

 

「これでっ!」

 

翡翠は槍の回転で何とか防ごうとするが、完全に防ぎきることが出来ずにいくつかの弾丸を通してダメージを受けてしまう。

 

「くっ………シールドエネルギーが…………!」

 

受けた銃弾の数は少ないものの、先ほどのパイルバンカーの一撃と、装甲の薄さが相まって危険域に突入する。

 

「ラウラ! 今だよ!!」

 

いつの間にか背後からラウラが接近してきていた。

 

(拙い! 捕まったら終わりだ!)

 

翡翠はそう判断したが、気を抜けばシャルロットに押し切られる。

その時、

 

「翡翠さん!」

 

簪がシャルロットを牽制する。

弾幕が途切れた瞬間にその場を離脱する翡翠。

しかし、

 

「えっ?」

 

簪が声を漏らす。

その足にはラウラのワイヤーブレードが絡みついていた。

そのまま思い切り振り回される簪。

 

「きゃぁああああああああっ!」

 

そして、その振り回した方向にはシャルロット。

シャルロットは左腕のパイルバンカーを構えていた。

 

「はぁあああああああっ!!」

 

向かって来る簪にパイルバンカーを繰り出す。

 

「きゃぁああああああああああああああああっ!?」

 

その一撃は見事に絶対防御を発動させ、簪に大ダメージを与えた。

 

「簪ちゃん!」

 

吹き飛ばされる簪を受け止める翡翠。

 

「簪ちゃん! 大丈夫!?」

 

「は、はい………かなりのダメージを受けましたが、まだやれます………」

 

何とか体を起こす簪。

 

「…………簪ちゃん、気付いた?」

 

「はい、ボーデヴィッヒさんの動きですね?」

 

「最初はシャル君が合わせてるだけだったんだけど、今はラウラちゃんからも合わせようとしてる。意識してるかどうかわからないけど………」

 

「これ以上時間を掛けると掛けただけ、向こうのチームワークが増すという事ですね?」

 

「うん、決めるなら短期決戦だよ!」

 

「……………なら翡翠さん。『山嵐』を使います。上手くすれば残りのシールドエネルギーを全部削れるかも……………」

 

「そうだね。少なくとも隙はできると思うから、その時は私が決めるよ」

 

「お願いします」

 

すると、簪は空間パネルを呼び出し、それを操作する。

 

「ターゲット………マルチロック………!」

 

打鉄弐式の両肩にある非固定部位の装甲が展開し、その下から現れたのは48発のミサイル発射口。

 

「『山嵐』…………発射!」

 

そこから放たれる無数のミサイル。

 

「「ッ!?」」

 

シャルロットとラウラは驚愕で目を見開く。

シャルロットは即座に武器をマシンガンとアサルトライフルに変更。

迎撃の為に弾幕を張る。

だが、不規則に動き回るミサイルに、流石のシャルロットも思うようにミサイルを打ち落とすことが出来ない。

 

「ッ………! 防ぎきれない!」

 

シャルロットは被弾を覚悟する。

その時だった。

シャルロットの前にラウラが立ちはだかり、AICでミサイルを防ぐ。

 

「ラウラ!?」

 

しかし、ラウラは無言で空を見ると、プラズマブレードを突き出した。

そこには、同時に突っ込んできていた翡翠がおり、翡翠の突き出した槍とラウラのプラズマブレードが互いの体にヒットしており、2人のISは同時にシールドエネルギーをゼロにした。

 

「ラウラ!? どうして………!?」

 

シャルロットが思わず問いかけた。

 

「さあな。体が勝手に動いてしまった…………私らしくもない…………」

 

ラウラは自嘲する様に鼻で笑う。

すると、

 

「シャルル・デュノア」

 

「な、何………?」

 

突然名を呼ばれたシャルロットは困惑する。

 

「……………後は任せた」

 

「…………………うん!」

 

シャルロットはその言葉に一瞬呆けてしまったが、すぐにハッキリと頷いた。

 

「ごめん簪ちゃん………やられちゃった」

 

翡翠が申し訳なさそうに言う。

 

「いいえ、仕方ありません…………シールドエネルギーは負けてますが………最後まで頑張ります!」

 

簪も気合を入れる。

シャルロットと簪は向かい合った。

 

「行くよ! 更識さん!」

 

「負けない………!」

 

シャルロットと簪の一騎打ちが開始された。

 

 

 

 

 

 

VIP席。

ドイツから来た男の1人が忌々しそうにラウラを見ていた。

 

(チッ! 学生レベルの試合で負けるとは…………我が国の面汚しめ………所詮不良品は不良品だったか………………しかし、廃棄するにしても、最後まで役に立ってもらうぞ………!)

 

男はポケットに手を突っ込むと、そこに忍ばせていたスイッチを押した。

 

 

 

 

 

それと同時にラウラのシュヴァルツェア・レーゲンに変化が起こった。

突然モニターが表示され、文が表示された。

 

Damage Level …………D.

 

Mind Condition …………Uplift.

 

Certification …………Clear.

 

≪Valkyrie Trace System≫…………boot.

 

 

「な、何だ………? このシステムは…………? ヴァルキリー………トレースシステム………ッ!?」

 

ラウラにもそのシステムの名は聞いたことがあった。

しかしそれは条約で禁止されている筈の代物である。

それが自分のISに表示された事にラウラは驚愕した。

しかしその瞬間、

 

「ああああああああああああっ!!!」

 

ラウラのISが紫電を放った。

 

 

 

 





第17話です。
はい、皆さんのご希望通り緑心が出てきました。
使い手は翡翠です。
さて、いきなりラウラとシャルロットが組むことになると予想した人は何人いるでしょうか?
因みに俺は学年別トーナメントでシャルロットとラウラが組む小説は見た事ないです。
まあ、自分の読む数が少ないってのもありますが………
さて、VTシステムが発動してしまいましたが次回は如何なる?
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