超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス 作:友(ユウ)
マジェコンヌを逃したバーニングナイトは空を見上げていた。
しかし、すぐに視線を切ると振り返る。
「お前達、怪我は無いか?」
そう言いながら、翡翠、刀奈、簪、シャルロット、アリンに歩み寄った。
ラウラは未だにシャルロットの腕の中で気絶している。
「う、うん………あの………本当にお兄ちゃんなんだよね?」
翡翠は自分より背が高くなった紫苑を見上げながらそう問う。
「まあ、この姿を見て最初はそう思うのも無理は無いが、俺は間違いなくお前の兄、月影 紫苑だ。今はパープルハートの守護者、バーニングナイトだが」
バーニングナイトはそう説明する。
「ウフフ………変身する前もよかったけど、今の姿もカッコいいわよ紫苑さん」
刀奈が笑いながらそう言い、
「もし普通に成長してたら、その位背が高くなってたのかなぁ………?」
シャルロットが自分とバーニングナイトの背を比べながらそう呟く。
「何て言うか…………その変身が出来るって事になると、私の立場が無い気が…………」
アリンが自分の存在意義の危機にやや寂し気な声を漏らす。
「…………か、かっこいい………………」
簪はキラキラした目でバーニングナイトを見ていた。
アニメやヒーロー特撮ものが好きな彼女にとって、実際に変身して敵を打ち破った今のバーニングナイトは自分の理想そのままだった。
「フフッ、大人気ね、シオン」
パープルハートがそう言いながら笑う。
「狙ってるわけじゃないんだがなぁ…………」
意識せずとも少女達の好感度を上げている自分にやや呆れた溜息を吐く。
すると気を取り直し、
「一先ず今はラウラを保健室に連れて行こう」
皆にそう言った。
夕日が差し込む保健室のベッド。
ラウラはそこで目を覚ました。
「う……………私は…………」
体に力が入らない為、ラウラは視線だけを動かして周りの様子を伺うと、すぐ隣に千冬が居ることに気付いた。
「何が………起きたのですか…………?」
ラウラは千冬に問いかけた。
「………一応重要案件である上に、機密事項なのだがな………VTシステムは知っているな?」
「ヴァルキリー………トレースシステム………?」
千冬の言葉にラウラは軽く驚いた顔をする。
「そうだ。IS条約でその研究は愚か、開発、使用、全てが禁止されている。それがお前のISに積まれていた………………精神状態、蓄積ダメージ、そして…………操縦者の意志…………いや、願望か。それらが揃うと発動する様になっていたらしい」
千冬の言葉に、ラウラは自分に掛けられていたシーツを握りしめる。
「それは………私が望んだからという事ですね…………?」
ラウラは悔しさで胸が張り裂けそうになった。
「…………………本来ならな」
しかし、千冬の言葉には続きがあった。
「えっ?」
「今回の発動には、外部から強制的にシステムを起動させられた形跡があった。何より、あの時のお前はデュノアの奴に後を託したのだろう?」
「あっ…………」
千冬に言われてその事を思い出すラウラ。
「それから、月影兄には礼を言っておけ。お前をVTシステムから救い出したのは奴だ」
「月影………紫苑が………?」
「VTシステムを追い詰めていたのは春万だがな………あいつはお前の救出など考えていなかったらしい…………」
千冬は嘆かわしいと溜息を吐く。
「その後にも色々と問題があったが、今は置いておこう……………そして、お前には辛い事実を突き付けねばならん…………」
千冬は言いにくそうにそう言うと、一呼吸間を置き、
「ドイツ政府は今回の問題を、ラウラ・ボーデヴィッヒ個人の独断として処理した」
「なっ………!?」
「ラウラ・ボーデヴィッヒは本日を以って代表候補生、及びドイツ軍少佐としての地位を剥奪。専用機も没収されることとなった。更に、ラウラ・ボーデヴィッヒを国外追放とする…………だそうだ」
「そ………そんな…………」
ラウラは絶望したように顔を蒼白にし、唇を震わせる。
「要はお前に全責任を被せ、本国への弾除けにされたのだろう」
「……………フフフ…………アッハッハッハッハッハ!」
ラウラは突如笑い出す。
しかし、その目からは涙が流れだしていた。
「惨めだ…………何と惨めなんだ私は…………! 私は今まで本国の為に戦ってきた………! 戦うための兵士として生み出され、国の為に戦ってきた…………! それなのに…………その仕打ちがこのザマか…………!」
「ラウラ…………」
千冬は心配そうにラウラを見つめる。
「私は今まで何のために戦ってきたのだ……………何のために生きてきたのだ……………?」
「ラウラ………」
「本国から捨てられた私は、これからどうすればいいんですか!?」
まるで吐き捨てる様に千冬に向かって叫ぶラウラ。
千冬が何とかラウラに声を掛けようとした、その時だった。
「失礼します」
保健室のドアが開き、紫苑がネプテューヌを伴って入室して来た。
「月影…………!」
「月影………紫苑………」
2人が驚いたように紫苑とネプテューヌを見る。
「すみません。盗み聞きするつもりは無かったのですが、廊下まで聞こえてきたのでつい………」
紫苑が謝りながらそう言うと、ラウラを見る。
「何だ? 本国から捨てられた私を笑いに来たのか? 笑えばいいさ。こんな惨めな私など笑い話になるかどうかも分からんがな………」
まるで自分を嘲笑うかのようにそう言うラウラ。
「何か勘違いしている様だが、別に笑いに来たわけじゃない」
「だったら何だ?」
ラウラは紫苑を突き放すような態度で目を合わせずに答える。
「要はお前は、行く当てがないんだろう?」
「それが如何した?」
「なら、ウチの国に来ないか?」
「「ッ!?」」
その言葉にラウラと千冬が驚愕して紫苑を見る。
「それは、日本の国民になれという事か?」
ラウラがそう問いかけると、
「あ~、違う違う。俺が言ってるのはゲイムギョウ界のプラネテューヌに来ないかと言っているんだ」
「は? ゲイム………? プラネ………?」
ラウラは聞いた事のない国名に怪訝な声を漏らす。
「私が治めている国だよ! ラウラちゃんが望むなら、私はいつでもオールオッケー!」
ネプテューヌが三本指のピースサインでビシッと決める。
それでも怪訝な表情を続けるラウラに、紫苑はゲイムギョウ界について説明をした。
「別次元の世界に女神だと…………? ハッ! 俄かには信じられんな!」
ラウラはそう言って鼻で笑う。
「まっ、その反応は当然だけどな………」
紫苑はそう言いながらネプテューヌに目配せする。
ネプテューヌは頷くと光に包まれ、
「私がプラネテューヌの女神、パープルハートよ」
ラウラの目の前で女神化した。
「なっ!?」
ラウラは目を見開いて驚愕する。
「これで少しは信じる気になっただろう?」
「…………………ッ」
ラウラは驚いた表情を引き締め、気を取り直すと、
「……………それで? 仮に先程の話が本当だとして、何故私をお前達の国に招き入れる? お前達に何の得がある? 私の知りうる機密情報を聞き出そうとでもいうのか?」
その言葉を聞くと、紫苑は少し困った顔をして、
「残念だがプラネテューヌの科学力は地球の科学力の10歩以上先を行ってる。そんなものに価値は無い」
「ならば何故だ!? 何故私を招き入れようとする!?」
ラウラは怒鳴るように叫ぶ。
すると、
「そんなの、お前がほっとけないからに決まってるだろ?」
「な………に……………?」
「悪いが俺達は損得勘定で動くほど頭が良くないんでね。多少のリスクは考えるが、基本的に俺達は感情で物事を決める。要はやりたいと思った事をやる。だから、お前を助けたいのは俺達がお前を助けたいと思ったからだ」
「私を………助けたいだと…………?」
「そうだ。さっきのお前の叫びを聞いて、放っておけないと思った。それだけだ」
「たった………それだけのことで……………」
「俺たちにとっては十分な理由だ」
「ええ」
紫苑の言葉にパープルハートも頷いた。
すると、紫苑はラウラの前に手を差し出す。
「俺達が出来るのは、手を差し伸べることまでだ。この手を掴むかどうかは、お前が決めろ」
その言葉を聞いてラウラは迷いを見せる。
「………………教官………」
ラウラはまるで縋るように千冬を見る。
しかし、
「決めるのはお前だ、ラウラ。教師とは生徒が目指したい道を歩む支えになる事。そして、道を踏み外さないようにするのが役目だ。この選択はお前の未来を決める選択。私に答えを出す権利はない…………いや、あったとしても出してはいけない。そう言う選択だ」
そう言って選択をラウラに委ねる。
「あ………う…………」
基本的に命令ばかりを聞いて生きてきたラウラにとって自分で選択することなど数えるほどしかなかったのだろう。それが突然自分で選べと言われ、更にその選択は自分の未来を左右する選択なのだ。
戸惑うのも無理はない。
ラウラが悩んでいると、
「そう難しく考えることは無いぞ」
紫苑がそう言った。
「先の事をいくら考えても答えなんか分からない。いや、正解なんて無いのかもしれない。だったら、今自分がしたい様にする。それでいいじゃないか」
「今………自分の………したい様に………?」
「ああ、お前は如何したい? このまま地球に残って今まで通り………とはいかないが、一般人として生きていく道…………それとも、俺達と来て心機一転新しい生活を始めてみるか……………お前はどっちがいい?」
「私………は……………」
ラウラは一度俯くと再び顔を上げ、
「一つ聞きたい」
「何だ?」
「私は戦う事しか知らない人間だ。そのような私でも、お前達の国に出来ることはあるのか?」
ラウラはそう問いかける。
「そう慌てなくても出来ることはゆっくりと探していけばいい。俺も手伝う。それでもなお戦う事しか出来ないというのであれば、国の衛兵になってくれればありがたい。プラネテューヌは頻繁にモンスターに襲われるからな。腕の立つ人間はいくらいても困らないさ」
「そうか…………」
ラウラはそう言うと肩の力を抜く。
そして、
「よろしく頼む…………」
その言葉と共に、ラウラは紫苑の手を取った。
「ああ。こちらこそ」
「プラネテューヌの女神として、あなたを歓迎するわ。ラウラちゃん」
紫苑と入れかわるようにパープルハートもラウラと握手を交わした。
すると、
「それにしても、お前の左目は金色だったんだな。キラキラしてて綺麗じゃないか」
ラウラの目を見た紫苑が率直な感想を口にする。
「えっ? この目が………綺麗………?」
「ああ。お前の銀髪とよく合ってて似合ってると思うぜ」
「…………そ、そうか………綺麗か…………そのような事を言われたのは初めてだ………」
ラウラは恥ずかしくなったのか、シーツで顔半分を隠す。
「ククッ………」
そんなラウラを見て、千冬は笑いを零した。
「月影、1つ教えといてやる」
「はい?」
千冬の言葉に紫苑が返事をすると、
「ラウラは生まれた時から軍人としての教育を受けている。まともな女の扱いを受けた事など皆無だ」
「はあ…………?」
「更にラウラが所属していた部隊は女だけ。つまりは男と関わる事は殆ど無い………精々上官と話をするぐらいだろう。それは男に対する免疫が低いという事だ」
「……………つまり?」
紫苑は何となく千冬の言いたいことに予想がついたが念のために聞き返す。
「つまり………………チョロいという事だ」
「もうちょっと言い方如何にかなりませんかね?」
千冬の言葉に紫苑は項垂れる。
「ククク…………精々責任は取ってやれよ」
千冬は可笑しそうに笑いながら保健室を出ていった。
残された者達はというと、
「シオンもイチカの事言えないわね」
パープルハートの一言がグサッと紫苑の胸に突き刺さる。
「…………すまん」
紫苑は謝ることしか出来なかった。
第21話の完成。
ラウラの処遇の回でした。
何とラウラがIS没収&追放に。
そこでプラネテューヌに拾われました。
さてさてこの先どうなる?
あと、前回書き忘れてましたが、フィナンシェとミナの変身は、フィナンシェがフェアリーフェンサーエフADFのロロのフェアライズ。
ミナが同じく同作のシャルマンのフェアライズ状態となります。