超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス 作:友(ユウ)
ネプテューヌ達が朝起きて共に渡り廊下を歩いていると、一夏と紫苑が何か見ていた。
「シオン、イチカ、おはよう。 どうかしたの?」
ネプテューヌが2人にそう声をかける。
「ネプテューヌ、おはよう」
「おはよう皆。いや、どうしたって訳じゃ何だが………」
一夏が歯切れ悪くそう言いながら視線を地面に落とす。
そこには、『引っ張ってください』と書かれた看板と、何故か地面に埋まっている機械的なウサ耳。
「何これ?」
ブランが声を漏らす。
「いや、ちょっとな………」
一夏はそう呟いて渡り廊下から降りると、そのウサ耳を掴み、
「でぇい!」
思い切り引っ張った。
その下から何か出てくるのかと思ったが、実際は何も付いていなく、見事にすっぽ抜け、一夏は尻餅をつく。
「おわっ!?」
一夏は痛みに顔をしかめるが、
ゴォォォォォォっと、何やら空気を切り裂く音が聞こえる。
「ッ!?」
紫苑とブランは反射的にインベントリから武器をコールした。
次の瞬間、赤い何かが猛スピードで落下してくる。
すると、ブランが飛び出し、
「おらぁああああああっ!!」
気合の入った声と共にハンマーを振り抜いた。
『ふぎゃっ!?』
振り抜かれたハンマーは、スコーンと気持ちのいい音を立てて落下してきた『何か』を撃ち返す。
その際にその『何か』から声が聞こえた気がしたが。
「あっ」
一夏がそれを見て声を漏らす。
打ち返された『何か』は明後日の方向へ飛んでいき、遥か彼方に墜落した。
そのまま着地したブランがハンマーを肩に担ぎ直すと、
「………何だったのかしら?」
まるで何でもないようにそう言ったのだった。
それから暫くして、海岸に生徒達が集合し、臨海学校の目的である各種装備試験運用及びデータ取りが始まろうとしていた。
専用機持ちは他の生徒とは別の場所に集められ(邪魔をしないという条件でネプテューヌ達ゲイムギョウ界組も)、千冬の指示を待つ。
「よし、専用機持ちは全員集まったな」
千冬がそう言うと、
「ちょっと待ってください。 箒は専用機を持ってないでしょう?」
鈴音がそう発言する。
「それにラウラも今は専用機持ちじゃないんじゃ…………」
シャルロットも少し言い辛そうにそう言う。
「私も突然呼ばれただけで何が何だか…………」
箒も良く分かっていないようでそう呟く。
「私から説明しよう。 ラウラについては専用機こそ無いが、その実力と知識は確かなものだ。故にアドバイザーとして居てもらうことになる。そして篠ノ之だが、実はだな……」
千冬がそう言ったところで、
「やっほ~~~~~~~~~~~~~~~~~!」
何処からともなく声が聞こえた。
その瞬間嫌な顔をする箒と千冬。
見れば誰かが岩の崖とも言える斜面を駆け下りてきていた。
そして、本当に人間かと思えるぐらいの跳躍力で飛び上がる。
「ち~~~~~~~~ちゃ~~~~~~~~ん!!」
それは束であった。
そのまま一直線に千冬に向かって飛びこんできて、
ガシィっと千冬が容赦なく右手で顔面を掴んで止めた。
そして、そのまま手に力を込め、アイアンクローへと移行する。
だが、束はまるで効いてないと言わんばかりに、
「やあやあ、会いたかったよちーちゃん! さあハグハグしよう! 愛を確かめよう!」
顔を掴まれたままそうまくし立てる。
「うるさいぞ束」
千冬は手に更に力を込める。
「相変わらず容赦のないアイアンクローだね!」
すると、束はアイアンクローから抜け出し、箒に駆け寄る。
その箒は、頭を抱えていた。
「じゃじゃ~ん! やあ!」
「ど、どうも……」
「ふさしぶりだね~! こうして会うのは何年ぶりかな~? 大きくなったね箒ちゃん! 特におっぱ………」
そう言いかけた束を箒は何処からともなく取り出した木刀で殴り飛ばす。
「殴りますよ!?」
「殴ってから言ったあ! 箒ちゃんひどい~~~! ねえ、いっくん酷いよね~?」
「は、はあ……」
いきなり振られた一夏は曖昧に返事を返す。
「おい束。 自己紹介ぐらいしろ!」
千冬がそう言うと、
「おっと、そうだったね。私が天災の束さんだよ! よろしくね!」
ポーズを取って明るい声でそう挨拶した。
「「「「「………………………」」」」」
束を初めて見る者達はそのハイテンションに呆気に取られている。
「束って……」
「ISの開発者にして天才科学者の……」
「篠ノ之 束?」
それぞれが声を漏らす。
すると、束はキョロキョロと周りを見渡すと、ブランをその視界に捉える。
束はニコッと笑みを浮かべると、
「や~や~! 君が話に聞いたブランちゃんだね。いっくんのお嫁さんの!」
そう話しかけた。
「そうよ。そう言うあなたはこちらの世界に飛ばされたばかりのイチカ達を保護してくれたそうね」
ブランもそう返す。
「まあね~……………それよりも酷いよブランちゃん!」
「え?」
いきなりそんな事を言われて声を漏らすブラン。
「出会い頭にいきなりハンマーで吹っ飛ばされるなんて流石の束さんも予想外だったよ!」
「??」
何の事か分からなブランが首を傾げていると、
「あ~、ブラン? 今朝方上から降ってきたものを打ち返しただろ?」
「………そういえば」
一夏の言葉にポンと手を打つブラン。
「あれに乗ってたの束さんなんだよ」
「……………てっきり敵の奇襲かと」
「てっきりでハンマーで殴り飛ばすのはどうかと思うよ?」
ブランの言葉に束が突っ込む。
「紛らわしい登場の仕方をしたあなたもあなた」
「………………だってビックリさせたくて!」
テヘッと言わんばかりにおどけて見せる束。
「もう一回殴り飛ばしてあげましょうか?」
その手にハンマーをコールして振りかぶって見せるブラン。
「わーわー! タンマタンマ! それはもう勘弁だよ~!」
慌てて手を振りながら必死に宥める束。
「…………束! 話が進まん! さっさとここに来た目的を言え!」
千冬が束を促す。
「は~い! それでは皆さん! 大空をご覧あれ!」
束が空を指差しながらそう叫ぶと、その場の全員が空を見上げた。
すると、ドゴーンと派手な音と砂煙を上げて、地面の下から銀色のクリスタル型のケージが現れた。
「「「うおっ!?」」」
「「「「「きゃぁっ!?」」」」」
「「「「「わあっ!?」」」」」
それに思わず驚愕する一同。
「あはははは! 引っかかった引っかかった!」
束は可笑しそうに笑う。
すると、
「やっぱぶっ飛ばす…………!」
ブランが目を赤く光らせながらハンマーを素振りしていた。
「まあまあブラン」
一夏がブランを宥める。
「じゃじゃ~ん! これぞ箒ちゃん専用機こと、紅椿! すべてのスペックが現行ISを上回る束さんお手製だよ!」
ケージが量子分解され、内部のISが露わになる。
その名の通り紅に彩られた機体だった。
「何て言ったって紅椿は天才束さんが作った第四世代型ISなんだよ~!」
その言葉に一同は驚愕する。
「第四世代!?」
「各国で、やっと第三世代の試験機が出来た段階ですわよ……」
「なのにもう……」
それぞれが声を漏らす。
「そこがほれ! 天才束さんだから。 じゃあ箒ちゃん。 これからフィッティングとパーソナライズを始めようか!」
束がリモコンを操作すると、紅椿のコクピットが開く。
「さあ、篠ノ之」
千冬の言葉で、箒が紅椿の前に歩いてくる。
箒はまるで圧倒されるようにその機体を見つめた。
すると、束の方を向き、
「姉さん…………何故、これを私に?」
そう尋ねた。
「え? だって箒ちゃん、最近はいっくんやしーくんとの特訓で操縦の腕が上がってきてるし、心構えもしっかりと学んでるから、昔みたいに力に溺れるなんてことは無いでしょ?それにそろそろ量産機じゃ動かしにくくなってきた所じゃない?」
「それは………そうですが…………」
図星を言い当てられ、気まずそうに俯く。
「そして一番大事な事は、アリンちゃんやエミリちゃんを見て、ISはただの道具じゃないって事を知った事だよ。だから私も箒ちゃんに専用機を上げようと思ったの。それにほら、今日は箒ちゃんの誕生日でしょ? だから誕生日プレゼントも兼ねて、だよ」
そう言って束は笑って見せる。
「ッ…………!」
何だかんだで、自分の事をよく見ている束に、箒は何とも言えない気持ちになる。
ただ、
「ありがとう………ございます…………」
礼を言って受け取った。
紅椿に乗り込む箒。
箒が紅椿を装着すると、束が操作を始める。
しかもその操作のスピードに全員が再び驚く。
そして、あっという間にフィッティングが終了した。
「それじゃ、試運転もかねて飛んでみてよ。 箒ちゃんのイメージ通りに動くはずだよ」
束の言葉に、
「ええ、では、試してみます」
箒はそう言って意識を集中させると、紅椿は猛スピードで上昇を始めた。
そのスピードにそれぞれが驚く。
「どお? 箒ちゃん?」
「え、ええ、まあ………まだ機体に振り回されている感じはありますが、量産機よりもずっと動かしやすいです………」
歯切れ悪く返事を返す箒。
束への苦手意識は拭えていない様だ。
その後は武装の試しに映る。
武装も強力で、雲を穴だらけにしたり、無数のミサイルを打ち落としたりしていた。
それを束はうんうんと見つめていた。
すると、
「束さん!」
今まで沈黙を保っていた春万が束へ呼びかけた。
「………何かな? 春万君?」
束は作った笑みを浮かべて春万に応える。
「俺の白式をもっと強くしてください!」
「…………何を言ってるかな君は?」
「あなたは落ちこぼれの一夏に同情して強力なISを一夏に与えたんでしょう? そうでなければ俺が一夏に負けることなんてあり得ないんです! それを一夏は強力なISを持ってるからって、それを自分の『力』みたいに勘違いしてるんです!」
その言葉を聞いていたブラン、フィナンシェ、ミナの殺気が高まった。
「何言ってんだ…………奴は………!?」
「旦那様の事をあんな風に…………!」
「イチカさんがどれほど努力してきたと思ってるんですか………!」
今にも春万に襲い掛からんとする雰囲気だったのだが、
「まあまあ」
一夏が3人を必死に宥めていた。
すると、束は溜息を吐き、
「ハッキリ言うけど、白式と白心とのスペックに大した差は無いよ。出力はほぼ同等だし、武器も同じ近接が主体。まあ大剣、戦斧と片手剣っていう差はあるけど、それは一長一短だし。射撃武器も白心にあるにはあるけど、あくまでいっくんからすれば牽制程度だしね。それよりも、『
「なっ!? そ、そんな筈は…………」
「そういうことは白式の能力を100%以上引き出してから言ってほしいね。第一、『
そう言って春万から興味を無くしたように視線を切った。
その時だった。
「織斑先生――ッ! 大変ですーーーーっ!」
真耶が端末を片手に慌てた表情で走ってきた。
息を切らせながら千冬に端末を渡すと、千冬は端末を操作して内容を確認すると、
「テスト稼働は中止だ! お前たちにやってもらいことがある」
千冬はその場のメンバーにそう呼びかける。
その場に不穏な空気が流れ始めた。
紫苑達は旅館の大部屋の一室に集められた。
その部屋は、パソコンやモニタ―などが運び込まれて一つのブリーフィングルームのような部屋になっている。
「では状況を説明する。2時間前、ハワイ沖で試験稼働だったアメリカ、イスラエルの共同開発の第三世代の軍用IS『
千冬がそう言うと、一同が驚く。
「その後、衛星による追跡の結果、福音はここから2km先の空域を通過することが分かった。 時間にして50分後。学園上層部の通達により、我々がこの事態に対処することになった。 教員は学園の訓練機を使って、空域及び海域の封鎖を行う。よって、この作戦の要は、専用機持ちに担当してもらう」
千冬の言葉に全員が気を張り詰める。
「それでは作戦会議を始める。意見がある者は挙手するように」
「はい」
千冬の言葉に、早速手を挙げたのはセシリア。
「目標ISの詳細なスペックデータを要求します」
「うむ。 だが、決して口外するな。情報が漏えいした場合、諸君には査問員会による裁判と最低でも2年の監視がつけられる」
千冬は頷き、同時に注意する。
「了解しました」
セシリアが了承すると、モニターに情報が映し出されていく。
「広域殲滅を目的とした、特殊射撃型………わたくしのISと同じ、オールレンジ攻撃を行えるようですわね」
「攻撃と機動の両方を特化した機体ね。厄介だわ」
「この特殊武装が曲者って感じはするね。連続しての防御は難しい気がするよ」
「しかも、このデータでは格闘性能が未知数だ。偵察は行えないのですか?」
それぞれが意見を述べる。
「無理だな。この機体は現在も超音速飛行を続けている。アプローチは、1回が限界だ」
「1回きりのチャンス………という事はやはり、一撃必殺の攻撃力を持った機体で当たるしかありませんね」
千冬と真耶がそう言う。
「一撃必殺というと…………」
その言葉に、全員の視線が春万に集中する。
「俺の『零落白夜』の出番って訳だな!」
春万は自信を持ってそう言うが、
「「「「「「「はぁ~~~~~~~……………」」」」」」」
箒、セシリア、鈴音、シャルロット、ラウラ、簪、翡翠は深く溜息を吐いた。
「果てしなく不安ですわ」
「実力はあるかもしれないけど詰めが甘いのよ」
「相手を驕るのも悪い癖だ」
「慎重さが足りん」
散々な言い様である。
すると、簪がおずおずと手を挙げ、
「あの、思ったんですけど、紫苑さんやネプテューヌさん達で倒しちゃうって言うのは駄目なんですか?」
そう意見する。
すると千冬が、
「それは最終手段だ。女神の姿を見られると後々の説明が面倒だ。まあ、最悪束に特殊なISだと言い張って貰えば済むと思うが、あまりあいつに借りを作るとこちらも面倒だ」
千冬は溜息を吐きながらそう言う。
生徒の命には代えられんから、その時は迷うことは無いが………
と心の中で付け加える千冬。
「そうなると、やっぱり春万の『零落白夜』が適任って事になるわね」
鈴音がそう言う。
「不安が残るが仕方あるまい」
箒も不満を言いながらも承諾する。
「お前らなぁ…………!」
怒りを募らせる春万。
「よし。 それでは作戦の具体的な内容に入る。 現在、この専用機持ちの中で最高速度が出せる機体はどれだ?」
千冬の言葉にセシリアの手が上がった。
「それなら、わたくしのブルー・ティアーズが。 丁度イギリスから強襲用高機動パッケージ『ストライク・ガンナー』が送られて来ていますし、超高感度ハイパーセンサーもついています」
「ふむ………超音速下での戦闘訓練時間は?」
千冬が思案し、再び問いかける。
「20時間です」
それを聞いて再び考え込む千冬。
「翡翠さんの緑心も相当なスピードが出せるんじゃ?」
簪が翡翠にそう尋ねると、
「えっと、私の緑心はスピードはあるけどパワーが無いから、他の機体を引っ張っていくことになると、スピードがガタ落ちしちゃうから無理かな………」
「そうですか…………」
簪がそう言って引く。
「束、お前に良い案は無いか?」
「あ~、うん。あるにはあるんだけど…………」
気が進まないなー、と言い淀む束。
「箒ちゃんに上げた紅椿。あれならパッケージ換装無しで超音速飛行が可能なんだけど…………」
「その準備にかかる時間は?」
「私の手に掛かれば7分あれば余裕だね!」
「…………で? 気が進まないというのは?」
「だって、箒ちゃんはまだ紅椿に慣れてないから、いきなり実戦に出すのはちょっと………」
心配そうな視線を箒に向ける束。
「心配しなくても大丈夫ですよ束さん! 俺に任せておけば一発で決めて見せます!」
そんな束に春万は自信を持ってそう言う。
「逆に君の方が心配なんだけど……………」
束が溜息を吐きながらボソッと呟く。
すると、
「ですが、少しでも可能性が高くなるならやるべきです」
そう言ったのは箒自身だ。
「箒さん!?」
セシリアが驚いたように叫ぶ。
「何故!? 少なくともわたくしの方は超音速下での戦闘訓練を…………」
そう言いかけたが、
「運ぶのはあの春万だぞ」
「ッ!?」
箒の一言にセシリアは言葉を詰まらせる。
セシリアは過去に春万に奴隷にされそうになったことがあり、その際に胸や体を触られると言った辱めを受けており、春万に対する苦手意識は完全には拭い切れていない。
箒も襲われそうになった事はあるが、その時には一夏によって助けてもらい、尚且つ春万のその時の記憶は飛んでいるので、セシリア程の苦手意識は持っていなかった。
「そ……れは…………」
運ぶ相手が春万と改めて聞いて体を震わせるセシリア。
「無理をせずに私に任せておけ。心配せずとも機体に慣れていないことは私自身が良く分かっている。無理はしないさ」
そう言う箒。
それから千冬に向き直ると、
「織斑先生。私が春万を運びます」
そう宣言する。
「いいのか?」
襲われかけたことを知る千冬は改めて箒に問いかける。
「はい」
箒は迷わずに頷いた。
「…………わかった。それでは織斑弟を運ぶ役目は篠ノ之に任命する。各員、準備を急げ!」
海岸へ移動し、ISを展開する。
他のメンバーも、もしもの時の為に海岸で待機している。
「じゃあ箒。 よろしく頼む」
春万は笑みを浮かべてそう言うが、
「これは任務だ。私はお前に気を許したわけでは無いことを忘れるな」
「そんなつれない事言うなよ。今からだって遅くないぜ。あんな奴じゃなくて俺に………」
「黙れ。今は任務中だ。関係の無い私語は控えろ」
箒は警戒心を隠そうともせずにそう言う。
「ははっ! そんなに気を張らなくても俺に任せて箒は大船に乗ったつもりでいればいいさ」
「今までの無様な姿をさらしながらよくそこまで自信が持てるものだ…………間違いなく泥船だろうに…………」
箒がボソッと呟く。
2人がそんなやり取りをしていると、
『織斑弟、篠ノ之、聞こえるか?』
千冬から通信が入った。
「はい」
「よく聞こえます」
『お前たちの役目は、一撃必殺だ。短時間での決着を心掛けろ。討つべきは『
「「了解」」
2人が返事をすると、
『では、始め!』
千冬が作戦開始の号令をかける。
春万が箒の背に乗り、肩を掴む。
「いくぞ!」
「おう!」
箒の言葉に春万が応え、紅椿は急上昇を始めた。
暫く飛ぶと春万と箒は、レーダーに福音を捉える。
「暫時衛星リンク確立。 情報照合完了。 目標の現在位置を確認。 春万、一気に行くぞ」
「おう!」
箒は紅椿を加速させる。
だがその時、思い掛けないことが起きた。
突如として福音の反応が消失したのだ。
「福音の反応が消えた!?」
「何だって!?」
箒は驚愕する。
『2人とも、聞こえるか?』
千冬から通信が入る。
「織斑先生! たった今福音の反応が………!」
『分かっている。福音の反応が消えたことはこちらでも捉えた。不測の事態だ。残りの専用機持ち、及びネプテューヌ達を急行させる。お前達はその場で待機。織斑兄達と合流後、何が起きたのか現場へと確認に向かえ』
「了解しました」
箒はそう了承したが、
「待つ必要なんかない。俺が今すぐに行って確かめてやる!」
春万がそう言って勝手に飛び出して行ってしまう。
「おい! 待て春万! 命令違反だぞ!」
箒がそう呼び止めようとするが春万は聞こうとはしない。
「くっ! すみません千冬さん! 春万が独断先行しました! 引き留めに向かいます!」
『篠ノ之!』
箒も千冬の制止を振り切って春万を追う。
「止まれ! 春万!」
箒が追いかけながら叫ぶ。
だが、春万は止まらずに福音の反応が消失した地点へ到着してしまう。
すると、
「ん?」
春万が何かを見つけた。
それは空中に佇む2つの人影。
1人は菫色の長い髪を靡かせ、黒いボンテージを身に纏い、右手に紫色に輝く刃の剣を持ち、背中には菱形の実体翼がある妖艶な美しさを醸し出す女性。
もう1人は、黄色い髪を靡かせ、白いボディスーツを身に纏い、両手に光のクローを装備した女性。
その女性の手には、福音の操縦者であろう女性が首根っこを引っ掴まれて無造作にぶら下げれれている。
「何だ………? あの者達は…………?」
箒もその2人を確認して声を漏らす。
「ふん、誰かは知らないが俺が一発で決めてやる!」
春万がそう言いながら雪片を構える。
「おい! まだ敵かどうかも分からないんだぞ! 軽率な行動は止めろ!」
「はっ! あんな格好をするような女が味方の筈無いだろう! どっからどう見ても悪の女幹部じゃないか!」
春万は見た目だけで決めつけ、剣を構えて突撃していく。
「でぇえええええええええええええええいっ!!」
春万は叫びながらその女性へと斬りかかり、
「あら…………?」
菫色の髪の女性は春万に気付くと、
「フフッ……………」
妖艶な笑みを浮かべるのだった。
第24話です。
福音接敵とか言っときながら接敵前に消えました。
まあどうやって箒を春万と組ませるか悩みましたがこんな感じに。
さて、最後に出てきた2人……………誰だかわかりますか?
春万の運命や如何に!?