超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス 作:友(ユウ)
ある夜、
「ううっ…………み、皆…………」
翡翠は自室のベッドでうなされていた。
その内容は……………
翡翠は紫苑やネプテューヌ、刀奈といった女神と関係がある者達と一緒に歩いていた。
翡翠も一緒に笑い合っていたが、突如として自分が皆に遅れていることに気付いた。
翡翠は走って追いかけようとしたが、どうしても身体が前に進まない。
「ま、待って! 皆!」
そう叫んでも紫苑達は止まらない。
「待って!」
翡翠は左手を伸ばして追いすがろうとする。
だがその時気付いた。
伸ばした左手が皺になっていたことに。
「えっ?」
翡翠は思わず立ち止まって自分の左手を見る。
自分の手が干からびるように細く…………
いや、翡翠自身が急速に老いていっていた。
「あ…………あ……………!」
そんな翡翠に気付くこともなく、紫苑達は変わらぬ姿のままどんどんと先へ進んでいってしまう。
「お、お兄ちゃん! 待って!」
それでも紫苑達は止まらない。
「待って! 皆! 待ってよぉ!!」
翡翠は必死に叫んだ。
「…………………はっ!?」
そこで翡翠は目を覚ました。
「夢……………?」
翡翠は夢で逢った事に一瞬ホッとした。
だが、
「……………ううん、夢じゃない……………いつかはああなる時が来る…………」
翡翠はいずれ今の夢が現実になる時が来ることに気付いていた。
人はいずれ老いて死ぬ。
それは翡翠も分かっていたことだ。
女神であるネプテューヌや守護者である紫苑達も、『不老』ではあるが『不死』ではない。
人の心は移りゆくもの故、いつかは信仰も薄れて次の女神に移り行き、やがて力を失って『死』を迎える。
それは変わらない。
ただ、それが数百年から千年単位であるだけ。
しかし、その寿命の違いは老いとなって顕著に表れる。
翡翠もゲイムギョウ界に行くつもりだが、刀奈を始めとして親しい間柄である者達は皆、戦姫となっている。
翡翠だけが生身の人間の為、取り残されている気がしていたのだ。
翡翠は再びベッドに横になる。
「………………私は……………」
ラウラと刀奈の模擬戦の後日。
シャルロットと簪は紫苑と。
箒、セシリア、鈴音は一夏と戦姫の契約を結び、彼らの『妻』となっていた。
それから少しの時が流れ、IS学園も少し遅い夏休みに突入した頃。
ある夜、紫苑は珍しく1人で眠ろうとしていた。
ネプテューヌは、プルルート、刀奈、簪、シャルロット、ラウラと共に、嫁同士の親睦を深めるという事で一緒にお泊りをしている。
紫苑が眠る為に電気を消し、ベッドに潜り込もうとした時、コンコンと部屋のドアがノックされた。
「ん? 誰だ?」
紫苑がそう呟くと、
「お兄ちゃん? 起きてる?」
翡翠の声でそう呼びかけてきた。
「翡翠?」
紫苑は扉の方に歩いていき、少し扉を開けて様子を伺う。
そこには、パジャマ姿の翡翠が居た。
「こんな時間にどうした?」
紫苑が尋ねると、
「うん…………今日、一緒に寝てもいいかな?」
そう言った。
「…………まあいいけどさ。お前もいい加減こういう事は控えろよ。高校生にもなって兄と一緒に寝たいだなんて、変な噂が立つぞ」
翡翠は紫苑が生きていると知ってから、時折一緒に寝ることをせがんでいたので、紫苑はそれだけを言って了承した。
「…………………………」
翡翠は軽く俯きながらも紫苑の部屋に入る。
紫苑はそのままベッドに入ろうとしたが、後ろからシュルシュルと布すれの音が聞こえ、翡翠が何をやっているのかと後ろを振り向いた瞬間、
「ッ!?」
翡翠にベッドに押し倒された。
しかも、翡翠は衣服を身に着けてはいなかった。
「ッ!? 翡翠、何を!?」
紫苑は予想外のことに驚愕しながらもそう聞く。
すると、翡翠は紫苑を見下ろし、
「お兄ちゃん……………私を、お兄ちゃんの『戦姫』にして!」
紫苑も思いもしなかった言葉を口にした。
「なっ!? 何をいってるんだ!? 俺達は血の繋がった兄妹だぞ!」
紫苑は翡翠の事は大切に思っている。
だが、それは『妹』としてだ。
確かに翡翠は女性としては優れた容姿とスタイルを持ち、性格も文句なしだ。
しかし、『兄妹』としての一線を超える気など毛頭無い。
それでもキスをするつもりなのか、顔を寄せてくる翡翠に対し、
「……………くっ!」
体格的に不利の為、紫苑は瞬時に変身して翡翠の肩を掴んで止めると、体を入れ替えるように反転し、翡翠をベッドに押し付けた。
「落ち着け! 何でこんなことをするんだ!?」
バーニングナイトとなった紫苑は翡翠を押し付けながら強い口調で問いかける。
「ッ……………だって…………!」
翡翠は涙を浮かべながら何かを訴えかけようとしていた。
バーニングナイトはそれを見ると、力を緩めて翡翠の上から退く。
そして身体を起こした翡翠にシーツを被せてやる。
そして幾分か冷静になったヒスイに、
「何でこんなことをしたんだ?」
優しい声色でそう問いかけた。
「…………………刀奈ちゃん達が………皆戦姫に成っちゃって……………私だけがただの人間で…………」
翡翠は途切れ途切れながらも理由を口にする。
「………………翡翠は『力』が欲しいのか?」
バーニングナイトは思った事を口にすると、
「そうじゃない! そうじゃないけど……………」
翡翠は強い口調で否定した。
そして、
「今はまだいいけど……………将来私だけ先に歳をとって………お婆ちゃんになって………死んじゃう……………」
「ッ……………!」
そこでバーニングナイトは翡翠が言わんとしていることに気が付いた。
「そう考えたら…………まるで私だけ独りぼっちになった気がして……………」
「翡翠……………」
バーニングナイトは軽く翡翠の頭を抱きしめる。
「すまない。俺はお前を『戦姫』にすることは出来ない…………」
「ううん…………私こそゴメンね…………変な我儘でお兄ちゃんを困らせちゃった………」
「だが、これだけは約束する。お前を決して独りぼっちにはしない…………」
「お兄ちゃん……………」
バーニングナイトはこの夜、翡翠が眠るまでずっと寄り添い続けた。
それから数日後。
「えっ? ゲイムギョウ界に?」
いつものメンバーが集まり話をしていた時、紫苑達が言った言葉に戦姫達が驚きの声を上げた。
「ああ、ここ数ヶ月国を空けっぱなしだからな。ここで一旦戻って溜まった仕事を片付けないといけない頃だからな。いくら国民に説明があって、ノワールやベール…………他の国の女神に助けてもらってると言っても、ずっとほったらかしだとシェアにも影響が出るし…………」
「で、それを防ぐために夏休みの間俺達は自分の国に戻るつもりなんだ。その序に、皆も一緒に来てもらって、国民に新しい戦姫として紹介しようと思って」
紫苑の言葉に引き続いて一夏が説明する。
「だけど大丈夫なの? 紫苑さん達、こっちの世界で何かあった時の為にIS学園にいるわけだし」
刀奈がそう聞くと、
「それについてはマドカが連絡役になってくれることになっている。転送装置があるから連絡を受ければ一時間以内に誰かが駆け付けられるはずだ」
「ああ、任せてくれ」
一夏が答え、マドカが頷く。
「そういう事なら遠慮なくお邪魔させてもらうわ。自分の所属する国になるわけだし」
鈴音がそう言うと、
「鈴がそう言うのであれば、私に反対する理由はございません」
その横にいた執事姿の黒髪でメガネを掛けた爽やかイケメンな男性がそう言った。
彼の名はソウジ。
鈴音が戦姫に成った時に現れた甲龍のコア人格である。
「そうですわね。わたくしも興味ありますわ」
セシリアもそう言う。
すると、
「わたくしも賛成ですわ」
セシリアの横にいる水色の髪のゴスロリドレスのような服装の少女も同意する。
彼女はティアラ。
ブルー・ティアーズのコア人格だ。
「う、うむ…………受け入れてもらえるのかが少々気がかりだが……………」
箒は若干自信無さげにそう言うと、
「大丈夫よ~、箒ちゃん。箒ちゃんいい子だから~、皆にすぐに受け入れてもらえるわ」
「マリサ……………」
箒の横にいる腰まで届く長い茶髪をポニーテールにしているおっとりした雰囲気を持つ女性はマリサ。
紅椿のコア人格で、似た性格の(変身前の)プルルートとは仲が良い。
「僕も紫苑やネプテューヌの故郷には興味があったんだ。今から楽しみだよ」
シャルロットがそう言い、
「私としては、話に聞くゲイムギョウ界のモンスターとか言う生き物に興味があるね。色々と調べてみたいよ」
その横で黒髪を後ろの一部分だけ伸ばし、残りを肩で切り揃えているスタイルは良いがラフな格好の女性。
彼女はハーラー。
言わずもがなラファール・リヴァイヴ・カスタム2のコア人格で研究者のような性格をしている。
「私も行きたい…………地球のはるか先の技術力を持つって言うプラネテューヌを見てみたい………」
簪も静かにそう言う。
すると、そんな簪に後ろから抱き着き、長く白いストレートの髪に、頭にケモ耳がついている割烹着のような服装をしている女性は
打鉄弐式のコア人格である。
余談だが、何故か彼女は簪に黒と紺のフード付きの服装をさせて「殺殺」言わせようとしていたらしい。
理由は不明である。
「これで決まりだね!」
何故か最後はネプテューヌが締めたのだった。
そして転送装置の所へ来たのだが、
「ちょ、もう少し詰めなさいよ!」
「無茶言わないでくださいまし! これで限界ですわ!」
「き、キツイ………」
ギュウギュウ詰めになる彼女達。
「喧嘩売ってんのかテメェ…………!」
箒の豊満な胸が押し付けられ、不機嫌になっているブラン。
「こ、これはちょっとキツイかな………」
ネプギアが苦しそうに呟き、
「確実に定員オーバーだろこれ」
紫苑は冷静にそう言う。
なぜこんなことになっているのかと言えば、本来この転送装置は紫苑、一夏を始めとして、ネプテューヌ、ネプギア、ブラン、ロム、ラム、フィナンシェ、ミナの9人を想定して作られたものだ。
しかし、そこに新たにプルルートとピーシェ、戦姫として刀奈、簪、シャルロット、ラウラ、箒、セシリア、鈴音と紫苑の妹の翡翠が加わることで、想定の倍以上の人数で転移することになっているからだ。
2回に分ければいいかと思うかも知れないが、転移にはかなりのシェアを消費する為、可能なら1度で済ませたいというのが理由だ。
因みにコア人格達は、気を利かせて待機状態になっている。
何とか転送装置に全員を押し込み、
「て、転送開始!」
ネプギアが転送装置を起動させた。
――ゲイムギョウ界 ラステイションの教会
ラステイションの女神であるノワールは、今日も真面目に仕事を熟し、本日のノルマを終わらせた所だった。
「お姉ちゃん、お疲れ様」
ノワールの妹で女神候補生のユニが、ノワールを労いながらお茶を差し出す。
「ありがとう、ユニ」
ノワールはそれを受け取り、カップに口を付ける。
そのままテラスに出ると、
「そろそろネプテューヌがシオン達の世界に行って三ヶ月か…………このまま暫くネプテューヌが帰ってこなかったらプラネテューヌのシェアを全部頂いちゃおうかしら?」
「そんなお姉ちゃん、心にも無い事を………」
ノワールの言葉にユニは苦笑する。
「分かってるわよ。言ってみただけ……………けどこのままじゃ、いずれそうなるかもしれないけどね」
ノワールは真面目な顔でそう言う。
「でも、向こうじゃ夏休みに入るから、一旦戻ってくるって話だよ」
ユニが苦笑しながらそう言った瞬間、教会の上空にバチバチと雷のようなものが奔る。
「へっ?」
ノワールが声を漏らすと空間が歪んでワームホールができると、
「ねぷぅううううううううううううううっ!?」
ネプテューヌを筆頭に複数の人物が落下してきた。
「のわぁあああああああああああああああっ!?」
避ける間もなく下敷きにされるノワール。
ユニは思わず目を瞑った。
少しして目を恐る恐る開けると、
「いたたた…………」
ノワールが一番下になりネプテューヌ、ブラン、紫苑、一夏、フィナンシェ、ミナ、プルルート、ネプギア、ロム、ラム、ピーシェが折り重なっていた。
「ッ~~~~~~~~~~~~~!? 何であんた達は毎度毎度私の上に落ちてくるのよ~~~~~~~!?」
ノワールが下敷きになりながら叫ぶ。
「ん? ノワール?」
その声に気付いた紫苑が声を漏らす。
「あれ? ノワールじゃん。ひっさしぶりー!」
ネプテューヌが陽気に挨拶すると、
「あわわ!? ごめんなさいノワールさん!」
ネプギアが謝りながら慌てて退く。
「ここってラステイション?」
一夏が呟きながら辺りを見渡す。
「…………………転送地点がズレたのかしら?」
「あれだけ定員オーバーで無理矢理転移したのでその可能性が高いかと…………」
ブランの言葉にミナがそう推測する。
「………あら? 箒さん達の姿が………」
フィナンシェが呟きながら彼女達の姿を探す。
「ッ!? 刀奈達や翡翠も見当たらない!?」
紫苑もそれに気付く。
転移してきたその場に、翡翠、刀奈、簪、シャルロット、ラウラ、箒、セシリア、鈴音の姿は無かった。
あけましておめでとうございます。
第31話の完成。
さて、翡翠が思い掛けない行動に走りました。
何とか禁断の関係だけは避けた紫苑。
翡翠は一体どうなるのか?
そして刀奈達の行方は如何に?
では、今年も頑張ります。