もしも僕があの時の君を護れていたなら   作:のらネコ

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初投稿する前から作ってあったものを掘り出しただけなのである程度は短期間で3話分くらい投稿しますがまたすぐに音信不通になります。


夢の中の彼女

「おはよう、キリトくん。」

 

 

「おう、おはよう。サチ。」

 

隣で横になったまま微笑みかけてくるサチに微笑み返しながらベッドから出る。

 

 

 

ふぁぁぁぁ…

カーテンを豪快に開け、明るい陽の光を浴びながら大きく伸びをする。

 

 

 

「他のメンバーは、もう行ったのか?」

 

「うん。ギルドの資金を貯めてギルドハウスを買うんだ!って意気込んでたよ。」

 

「そっか。それじゃあ、俺たちも準備ができ次第、そっちに向かわなきゃな。」

 

サチは「そうだね!」と嬉しそうに返事をして、自分の部屋へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?

なんでサチは俺のベッドで寝てたんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや問題はそこじゃない。

 

 

 

何かおかしい。

 

 

 

 

昨日俺は何してたんだっけ…?

 

確か、クラインと話して、全部ぶちまけて泣いて帰ってきたはず…

それから…

 

 

 

 

自分が何をしたか覚えていない。

 

でも、サチがいる…

 

 

 

 

 

 

 

 

サチは、死んだはずじゃ…?

 

 

どうなっているんだ?これは夢か?そうか、夢か、それなら納得がいくな。

 

 

「どうしたの?キリトくん。ハトがミサイル喰らったような顔してるよ?」

 

そういいながらサチが俺の両頬を両手で左右に伸ばしたりしてくる。

 

 

 

かわいい。

いや、そうじゃなくて。

 

ゲームの性質上、例え夢じゃなかったとしても痛くないのでどちらなのかわからない。

 

 

 

 

でも待てよ?夢っていうのは基本的には人間が脳内で想像した世界の中でのことだろ?

でもナーヴギアは直接脳と信号をやりとりしてこのゲームを描写している。

ということは、夢を見ながらこのゲームをすることは不可能なはずだ。

それに、このゲームをやめるということは、俺たちにとっては生きることをやめるというのと同義だ。

つまり、これは夢じゃない。

 

 

俺には、何が起きたんだ…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?そんなに難しそうな顔をしてどうしたの?私に話せるなら話してほしいな。」

 

「おお、サチ…いつの間に…?」

 

「ん?もう10分くらい経ったよ?何回も声かけてもキリトくんが反応してくれないから…」

 

 

そんなにか?

 

 

「何か心配なこととかあったらできるだけ話してね?ああ、誰にも話したくない内容だったら別にいいよ。でも、キリトくんが一人で抱えきれない悩みは、話してくれると嬉しいな。多分何も力にも解決にもならないとは思うけど、その、た、大切な人が、一人で苦しんでるのを見るのはイヤ…だから。」

 

 

そっか。サチ。ありがとう。

 

止めどなく溢れる涙を抑えられず、感極まってサチに抱きついた。

 

泣きながら胸に顔をうずめる。そんな子供じみたことをした俺を引きはがそうとするわけでもなく、ただただ、

「辛かったね。よく頑張ったね。これからは、私にもっと弱いところを見せてもいいんだよ。私は、どんなキリトくんでも受け止めるよ。」

そう言いながら、頭を撫でていた。

 

 

 

いい加減恥ずかしくなってきたので、顔を上げ、離れる。

胸とはいえ、銀の胸当てに頭を押し付けているかたちになるため、額が赤くなった。何も柔らかくなんてなかったぞ。

 

「かっこ悪いとこ見せちまったな…でも、ありがとう。おかげで助かったよ。愛してる、サチ。」

 

 

なんか勢いでものすごいことを口走った気がする。

その証拠に、目の前でサチが顔を真っ赤にしてフリーズしている。

 

 

 

まあいいや、準備とか何もしてなかったから今のうちにいろいろ装備とか整えておくか。

サチを待たせてしまってるみたいだしな。

 

 

「おーい、サチさーん。準備できたぞ。」

 

 

長い間フリーズしていたサチを揺さぶり起こし、現実へと引き戻す。

その顔は、少し怒っているようであり、嬉しそうであった。

 

「もう!誰かさんが急に惚気るからでしょっ!もう!」

 

はいはい、ごめんなって…

 

 

 

「それじゃ、行くか!」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私も、愛してるよ。キリトくん。」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「ううん、なんでもないよ。」

 

 

――――

 

 

「そういえばひとつ聞き忘れてたことがあるんだけど、今日って何月何日だっけ?」

 

 

「ん?今日は6月の半ばくらいだったはずだよ?」

 

 

そんな。まさか、俺は過去に戻ったとでもいうのか?

確か昨日は12月の24日。

 

 

ああ、そうだ。あそこの広場でリア充がいちゃいちゃしてたな。なんて忌々しいんだ。

 

 

 

いや待てよ?他の人から見れば俺らもカップルなんかに見えるんだろうか…?

 

なんか、急に恥ずかしくなってきたな…

 

 

 

 

 

 

 

いやだから問題はそこじゃないんだって。

今問題なのは、俺が過去に巻き戻されてることと、今日があの「パーティが全滅した」日になる、ということだ。

 

 

 

 

ということは、早くパーティメンバーのところに向かわなければいけない。もしもあのダンジョンに入ってしまっているならば、それはすでに地獄に片足踏み入れているようなものだ。

 

 

急がねば。

 

「そうだ、サチ。他のメンバーからどこに行くとか聞いてるか?」

 

「あ、そういえば聞いてないや。たしか、資金集めしてくる!くらいしか言ってなかったなぁ。」

 

資金集め…

あまりお金の手に入らないこの世界では、NPCやクエストボードから受けられる納品のクエストが主な金策になる。

次点ではダンジョンの宝箱堀りとか。

 

 

もしダンジョン攻略に行っていたならば、それはかなりまずい。近くの比較的弱いダンジョンはもうすでに制覇されているし、行くとしたら、あの場所くらいになってしまう。

 

 

NPCと平和にぶつぶつ交換していてくれればいいのだが…

そんな叶いそうにない希望を胸に。

 

「サチ、他のメンバーがどこに行ったか探そう。最悪の事態にならないように…」

 

「う、うん。わかった。じゃあ、私は近くの人に聞き込みしてくるね。」

 

何が起こる、までは口にできなかったが、俺の焦り様からサチもなんとなく察してくれたようだ。

 

「おう、助かる。何かわかったらすぐに報告してくれ。」

 

「うん。じゃあね。」

 

 

 

 

 

 

町の広場でサチと別れ、まっすぐにあのダンジョンへと走る。

 

 

 

 

 

その最中、なぜ俺はタイムスリップしたのか、ということだけを考えていた。

そして、ダンジョンにつくときには、答えは出ていた。

 

 

 

恐らく、回線が切断されたか何かの影響でこのゲームから隔離された俺は、一時的に夢を見たのだろう。もしそうなら、全てに納得がいく。そう信じて、俺は進む足を速めた。

 

 

 

なぜ夢だと答えたのにダンジョンにいるのか。それは、まだ自分自身の答えに確信が持てないからだ。

最悪、俺にはサチが生きていてくれればそれでいい。でも、それは最終手段だ。

他のギルドメンバーが死ねば、サチは悲しむ。そんなサチの顔を見たくない、それだけを原動力に俺はダンジョン内を探し回った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌な静寂だ。

Mobが一体もいないということは、攻略中なのだろう。一定時間が経ち、一定の条件を満たせばMobは自動ポップする。それがしていない、ということは、ここらのMobたちはついさっき倒されたばかりなのだろう。

 

 

 

ならまだそんなに遠くまでは行っていないか…

けど、ここにいる可能性が高いな…

 

確か、ここを右に曲がれば裏道が…っと。

 

 

 

 

うお、Mobがうじゃうじゃいる。

ん?あれはソードスキルのエフェクト…

 

 

もしかしたらあの集団かもしれないな。

 

 

 

 

 

 

目の前のMobの頭上をジャンプで越えたが、タゲを持ってしまったので、全力で離れる。

 

だいたいの雑魚Mobは可動域に制限があり、その範囲から出ればもう追ってこない仕様になっている。

 

 

 

 

間もなくして、エフェクトの表示のあった場所の近くまできた。

 

名前は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰だこいつ。こんなやつら初めて見たぞ。それになんて読むんだこれ…

 

 

まあいい、こいつらから情報を聞き出そう。

 

 

「なあ、お取込み中のところすまないんだが、少し聞きたいことがある。いいか?」

 

 

「ああ?ああ。」

 

 

俺はギルドメンバーの特徴と名前を伝え、このダンジョン内で見かけたかどうかを聞いた。

だが、彼らは自分たち以外にプレイヤーは見ていないと言った。

 

「すまない、ありがとう。」

 

そう言って踵を返し、サチへの報告を済ませていると、後ろから気配を感じたため、背中の剣を抜いてすぐさま構える。

 

襲い掛かってきたのはさっきのプレイヤーたちだった。

 

「お前、さっき月夜の黒猫団とか言ったよな?俺、あいつらが大ッ嫌いなんだよァ!」

 

よくわからないが、敵対してきていることはわかった。

ここはひとつ嘘を吐いて相手から情報を奪うか、そのまま相手と戦うかの二択だ。生憎逃げるだなんて選択肢はない。こいつらが俺のギルドメンバーを殺そうとするならば、ギルドの中で一番レベルの高いであろう俺がここで戦ったほうが、勝率は高いだろう。まあ、1対4じゃ勝率も何もないけどな。

 

1枚でも多く、削ってやる。

 

 

 

 

相手が攻撃態勢に入ったため、こちらも剣を構え直す。

相手の顔を改めて見てみると、どこかで見たことがあるような気がした。

 

 

確か…

クリスマスのイベントクエストの時のやつらか…?

 

 

相手の武器はなんだ。

ダガーに大剣、片手直剣とレイピアか。

まさにデジャブ。

 

 

 

さぁ、俺の夢の中とどれだけ違うか、答え合わせだな。

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