またしても俺は生き残ったらしい。氷海の曇った空を見上げてポツリと心の中で呟く。
何だろう、毎回毎回死にかけてんな俺。アホじゃねぇのか。アホでした。
あの戦いの結果としてはギリギリの勝利。あの最後の一撃をもらってたら確実に逝ってた。
雷撃による全身の焦げと火傷、片腕はへし折れ、頭が痛い。とにかくフルフルの時ほど瀕死ではないが満身創痍であることには変わりない。
今はとりあえずエリア7の寝床にまで帰ってきて全身のダメージを確認している最中だ。さらなる敵が現れないことを祈ろう。
でもなぜあの状況から俺が生還できたのか、その理由を説明するには時間がかかる。何といっても確信はないし、憶測の部分が八割以上。こんなの誰かに説明したら重度の妄想患者だと思われて精神科を呼ばれること間違いなし、というか警察まで呼ばれるレベル。
俺が生き残れた理由としては三つ。
一つ目は鉄分沈着。二つ目はジンオウガの雷属性、そして最後は・・・・・・。ここの説明からするか。
フルフルに襲われたときに食いまくった鉄鉱石によって俺の身体には鉄分が沈着し、鉄を多く含んだ鱗が生えた。そしてこの鉄分の大量摂取によって俺の身体に起きた変化は鉄の鱗だけではなかったのだ。
鉄鉱石を食いまくった後しばらく俺が悩まされたあの胸の痛み。あれこそが最大の変化であり俺が今も生き延びられている最大の理由。
そしてここからは俺の妄想と体感による憶測だが聞いてほしい。恐らく俺の身体はおおよそ過剰ともいえる量の鉄鉱石、もとい鉄分を摂取したことにより、自分の身体を守るために鉄の鱗を生やした。だがそれでも俺の身体には鉄分が余りに余っていたのだろう。もう使い道のない、かといってそのまま体内に貯めておくには膨大すぎる鉄分を持て余した俺の身体はそれを排出するのではなく、体内で凝縮させ、ある種の鉄塊を生成したのだろう。俺が感じていたあの痛みはその鉄塊を生成、俺の体内にうまく配置しようとしていたときに発生していた痛みだったのだろう。
とはいえ俺の体内で徐々に馴染んだその鉄塊はあくまで鉄塊。排出しきれない量の鉄分を集めただけの何の役にも立たない持て余した廃棄物だったはずなのだ。そう、はずだった。
だが、天文学的ともいえる確率、まさに奇跡によってその鉄塊が役に立つ瞬間が訪れたのだ。ここまで言えば勘のいいやつならピンときたんじゃないか?
それが理由の一つ目と二つ目。そう、鉄の鱗とジンオウガの雷属性。
ジンオウガから攻撃をもらったことにより俺が受けた雷属性。それをさらに通りやすくした俺の鉄の鱗。鉄の鱗によって俺の身体に雷属性が流れやすくなったということは当然ながら俺のその鉄塊にも電流は流れる。俺の身体が生命の危機を感じてそうしたのか、はたまた偶然そうなったのかは分からないが俺の身体の中の鉄塊は受けた電撃を蓄電し続けていた。もちろん俺がやろうと思ってやっていたことじゃないし本当にそうなっていたのかどうかは分からないが、とにかくそうなったと考えるしかない。真相は俺の身体を解剖でもしない限り解明されないのだから。
そして俺が死を覚悟して全身の力を抜いたあの最後の一撃をもらう瞬間に、溜めに溜め続けた俺の鉄塊の雷属性はついに限界を迎えそれを放出した。
結論から言えば俺はその膨大な雷属性を口から放出したのだ。
驚いたのは俺だ。全身の力を抜いて死を待っていただけなのに体の奥からエネルギーを感じて為すがままになったら、口から極太の雷属性のブレス、いやあれはもはやあれはビームと呼んでいい。それだけ強烈なものを放出したのだから。
俺は反動で吹っ飛ばされ、起き上がって状況を確認すると、残っていたのは俺のいた位置から真っすぐに伸びる地面を大きくえぐった痕跡と、いまだ周囲に残り続けている電撃だった。俺の周辺の雪はあらから溶け、地面がむき出しになっていた。ジンオウガの姿はすでになく、あれで消し飛んでしまったのか、はたまた間一髪で躱してどこかへ退散したのか、崖下に落下したのかは分からないがとにかく俺はこうして助かったのだ。
むろん俺もただでは済まなかった。喉は焼け、歯は全て吹き飛び、口内もまたズタボロになってしまった。まぁ俺が本来持ちえないあんな強力な雷属性をぶっ放したのだから当たり前といえば当たり前なのだが。そういやなんでもリオレウスなんかは自分の火炎ブレスで喉が焼けているそうだが驚異的な回復力で瞬時にそのダメージを回復させているなんて聞くが、実際のところはどうなのだろうか?
ただはっきりしていることは俺にはリオレウスのように一瞬で喉と口内のダメージを回復させるような回復力はないということだけだ。本来なら真っ先に何かを食って少しでもダメージの回復につなげたいのだが喉が痛くてそれすらできそうにない。ただ歯だけはやたら生え変わるのは早く、既にもう生えてきた。鮫だからだろうか。というか噛み合わせた感覚と音的にこれ歯も鉄っぽいわ、どうなってくんだよ俺の身体。本当に笑えねぇぞおい。
こうして今に至る。なにも食えずとにかく休息をとっているのだが・・・・・・。そういえばあれからジンオウガの姿を見てはいないが、もしかしたらまだ復讐に燃えて俺を探し回っているかもしれない。偶然でこうして生き延びてはいるが次に会ったらまず確実に殺されてしまうので出会わないことを祈るしかないのだが。まぁ咆哮や足音による振動もないので恐らくすでに氷海にはいないか、あれで消し飛んでしまったかのどちらかなのだろうが・・・・・・。いや雷耐性の高いジンオウガがあれでやられたとは考えにくい、恐らく生きてはいるのだろうが。まぁなんにせよまた出会わないことを祈るしかない。
うーむ、怪我の功名とはいえ今回のような条件が簡単に揃うもんでもないよなぁ・・・・・・
何もすることが無くて暇なのであの電撃ブレスの活用法を考えてみているのだが、一向に思い浮かばない。相手が雷属性を使うモンスターでなければ使えないしなにより攻撃を食らうのが前提となる戦い方でしかあれは放てないし、なにより雷属性を使うからといってラージャンのようにブレスくらいにしか雷属性が付随しないモンスターもいる。今回はジンオウガだったからいいものの、今回のような好条件の揃う機会はない。それに今回は相手が最初から本気で殺りにきてたら鉄塊に雷属性チャージする前に俺死んじゃってたと思うし。というかそもそも雷属性使ってくる敵って当然ながら雷属性に耐性あるし、効果があるかって言われたら微妙なところだよなぁ・・・・・・。
まるで一枚のカードをデッキに入れるか迷う決闘者のように悶々と考え続けるものの、やはり俺が求めるような答えは出ない。
自分が発電しようにも、ザボアザギルに発電器官なんてものは当然ながら存在しない。ラギアクルスのような発電細胞やジンオウガのように雷光虫を味方にする術も知らない。もうこれはラージャンのようにキリンの角へし折って食えばワンチャンあるか?いやあれは本当かどうか分からないし流石にキリン相手にしたくないですええ。
というかあいつらは特殊な脂肪とかで自分の身体に流れる電流を防いでるらしいけど、俺にはそれが無い。むしろ電流をよく通す鉄の鱗しかない。これでは仮に発電できても自分の身体に流れる電流をもろに食らう。自分の発電でダメージ食らうとか無様すぎる。思えば実在する電気ウナギなんかも同じように体のほとんどが特殊な脂肪でできてて、自分に流れる電気を防いでるらしいじゃん?
これはもう雷雨の日に高いところ行って落雷でも待つしかねぇんじゃねぇのかな?自然界で最も尖ってる存在だったらいけたんだけどなぁ。
結論としては俺が本来持ちえない属性なんか迂闊に手を出すものではない。というところに落ち着いた。まぁ使えたらラッキー程度ということで。Q.E.D証明終了。
俺はそこでひとまず思考を強制終了し現実に向き直る。ひとまず俺の身体のことはおいといて、これからどうするかなんだよなぁ・・・・・・
正直この氷海には食料は乏しい。こうして戦闘でのダメージを回復させようとしてもその食料さえ探すのに一苦労する始末。一歩間違えたら俺が餓死、食料になるのは俺のほうかもしれないのにここに留まるのは得策だろうか?どこかもっと安全なところへ移動するべきなのでは?幸いにも泳ぎは得意だし海を泳いで移動すれば他のモンスターやハンターにも合う確率は下がるだろう。まぁ海中には海中でラギアとかガノスがいるから油断できないとはいえ、まぁ陸上をヨチヨチ歩いて移動するよりかは安全だろう。
とはいえ移動することで発生する危険が発生することも確かだろう。多少不便とはいえ今現在致命的な大きな問題がないこの氷海から移動するのはそれはそれでリスクのある行動でもある。
どうしたもんか・・・・・・
まぁ、とりあえずはこのダメージを回復させないとな。先のことはそれから考えるとしよう。明日は明日の風が吹くってな。嫌なことは明日の自分に丸投げ!それを繰り返せば嫌なことは死ぬまで回ってこない!この理論ノーベル賞ものだと思うんだけどどう思う?
え?ダメ?じゃあ明日から頑張るって毎日言えば一生頑張らずに済むって考えはどう?素晴らしくない?・・・・・・ダメみたいですね、ええ。
誤字脱字、アドバイス等がありましたらよろしくお願いします。