化け鮫転生放浪記   作:萌えないゴミ

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 アグナのヘビィボウガン好きなんすよねぇ


最良の氷を求めて

 

 

 氷海に降り立った人影が、一つ。

 

 それは船から降りると、ため息をついた。

 

 いつ来てもここは寒いものだ・・・・・・

 

 吐き出した真っ白なため息が、煙のように広がっていく。まるでタバコをふかしているような気分になり、ちょっと楽しくなったのか人影は煙草をくわえる真似をしてもう一度白い息を吐きだした。

 

 その人影をよく見ると、慎ましいながらも、胸や腰のくびれから女性であることに気が付く。

 

 それにしても、なぜ女性がこんな寒くて危険な氷海にやってきたのか。

 

 答えは単純明快。その女がハンターだからだ。

 

 

 よしっ、行くか

 

 心の中でそう呟き、私はベースキャンプを後にする。

 

 船にはここまで送ってきてくれたギルドの職員さんやアイルーが乗っている。今頃は一仕事終えてゆっくりしているのだろうか。

 

 毎度毎度私を送ってくれているあの職員さんには本当に頭が下がる。実をいうと私は船酔いがひどく、普通の航路では狩場につく前にノックアウトされてしまう。

 

 そのため私の船酔いが激しいことに気が付いたギルドの職員のお姉さんは、私を送ってくれるときはわざわざ波の穏やかな航路を選んでくれている。私自身も荒天の日には狩りには行かないと決めているのだが。

 

 陸路だとまだ平気なんだけどなぁ・・・・・・

 

 背後の船の中で何かしらの作業をしているであろうお姉さんに感謝しつつ、私は氷海へと足を踏み入れる。

 

 エリア1にはポポの姿はなかった。これは大型モンスターがいるからなのか、まだこの時点では判別しかねるのだが警戒するに越したことはないだろう。

 

 だが今回の目的は狩猟ではない。そして採取でもない。

 

 今回の目的を説明するには少々時間がいる。

 

 そう、あれは10日ほど前のバルバレの集会所のギルドの受付嬢から聞いた話だった・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 『最近暑いですよねぇ~。あ、暑いといえば!知ってますか?ハンターさん。なんでもドンドルマではキンキン冷えた氷を削って食べる〝かき氷〟ってものが流行ってるらしいんですよ?私も食べましたけど美味しかったですね~』

 

 なにそれ?ただの氷を削って食べるの?そんなただの氷がおいしいの?喉が渇いたなら水を飲めばいいのに・・・・・・

 

 その時、私はそんなことを思ったものだ。だが受付嬢が続けた話を聞いて興味がわいてきた。

 

 『まぁもちろんそれだけではただの氷を削った粉。雪みたいなものですからね、それだけじゃあ美味しくありませんよ。でもでも!なんとそこに!熱帯イチゴのシロップをかけるとですねぇ!もう最っ高に美味しくなるんですよ!!あぁ、本来熱帯にしか生育しない熱帯イチゴ、本来氷になんて出会うはずもない・・・・・・。ですがひとたび出会えばそこで究極の甘美な美味しさがッ!』

 

 ハチミツなんかをかけても美味しいみたいですね~。なんて遠い目をしながらよだれを垂らして、あふあふぅ、と言って半ばおかしくなってしまっている受付嬢を見て私はこう思ったのだった。

 

 

 私 も 食 べ た い

 

 

 私といえど年頃の女だ。流行に興味がないわけではないし、美味しいものがあるなら食べてみたい。それに私は甘党だ!いったいぜんたい、そのかき氷なるものの何が今目の前にいる受付嬢の顔を蕩けさせ、だらしなくよだれまで垂らさせるのか。実に興味がある。

 

 聞くところによると、受付嬢はちょっと前にドンドルマに用事があって行った際にそのかき氷なるものを食したらしい。では私もドンドルマに出向いてやろうかと思ったのだが、バルバレとドンドルマは遠く離れている。移動距離や運賃などを考えると、いささか躊躇ってしまう。

 

 そして私の行きついた結論とは。

 

 

 自 分 で 作 れ ば い い ん だ

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 そして今に至る。ここ氷海には新鮮な氷を求めにやってきたのだ。

 

 ばかげているといえばそれまでだが私は何としてもかき氷なるものを食してみたかったのだ。

 

 ハンター養成学校からの友人にもよく言われたものだ『あんたって見かけより馬鹿だよね』と。

 

 いや、こんな思い出に浸っている暇はない。一刻も早く新鮮な氷を入手しなければ。

 

 私はこうして最高なかき氷を作るための、最良の氷を探してまずは洞窟に向かってみることにした。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 「ニャあ、ギルドの職員のお姉さん」

 

 船の縄を倉庫にしまい終えた後、一匹のアイルーに声をかけられた。

 

 「はいはい、どうかしましたか?」

 

 しゃがみこんで目の高さを合わせると、アイルーのひげがヒクヒク動いて鼻先をかすめた。

 

 「あのハンターの旦ニャ、ボクが話しかけてもうんともすんとも言わニャかったニャ。ジッとこっちを見てくるだけで・・・・・・。ボクがニャにか怒らせてしまったかニャ?」

 

 申し訳なさそうに耳と肩をがっくり落としてこう言うアイルー。そして思い出した。このアイルーは新人で、彼女を送るのは今回が初めてなことを。

 

 フッと小さく微笑むと、そのアイルーの頭を優しく撫でてやる。

 

 「心配しなくても大丈夫ですよ。実をいうと彼女、しゃべれないんです」

 

 「ニャッ!?本当かニャ!?」

 

 文字通り飛び上がって驚くアイルーの頭から手を放し、歩きながら話そう、と目で促す。

 

 倉庫の扉を閉めて、そう長くない船の廊下をアイルーの速度に合わせて歩く。

 

 「彼女はですね、生まれつきしゃべれなくて、そのせいで色々苦労してきたらしいんです」

 

 自分も最初は嫌われているか、もしくは人に興味がないのかもしれないと思っていた。

 

 彼女がしゃべれないことに最初に気が付いたのは普通の航路で彼女を狩場に送っていった際に、彼女がいつもしばらく船室から出てこないことが気になって声をかけた時だった。

 

 

 彼女の船室をノックして船室に入り『大丈夫ですか』と声をかけた時の彼女はいかにも具合が悪そうにしていたのを覚えている。それでも装備を身に着け、武器をしっかり握っている姿に、やはり彼女もハンターなのだと思わされた。

 

 具合が悪いなら狩りはお止めになったほうが、と声はかけたものの、結局そのときも彼女はいつも通り狩りに行った。

 

 いつもと違ったのはバルバレに彼女を送り返したときだった。

 

 彼女から手紙を渡されたのだ。後で開いて読んでみればそこにはお世辞にもきれいと言えない字で、自分が生まれつきしゃべれないことと、そのせいでいつも返事をせず、不愛想になってしまって申し訳ないとのことが書かれていた。そして実は船酔いが激しいことも。

 

 その手紙を読み終わるとすぐに自分はギルドマスターに無理を言って、彼女を運ぶ際のみ、指定以外の航路を通ることを何とか許してもらった。

 

 そして彼女が次に船に乗る際に自分も手紙を書いた。できるだけ穏やかな航路を通るようにすること、それと今まであなたがしゃべれないことに気が付かずに申し訳ないということを書き、他にも何かあれば伝えてほしいとも書いた。

 

 それを渡すとき、彼女は少々驚いていたようだったが受け取ってくれた。

 

 その後、船の操縦をしている際にふいに彼女が現れた。そしてたった一言書いた紙を渡して、彼女はすぐに船室にひっこんでしまった。

 

 

 ありがとう

 

 

 急いで何かしらのノートを乱雑に破り取ったらしいその紙には一言、そう書かれていた。

 

 

 「ですからあまり気にしなくても大丈夫ですよ、彼女、アイルーが大好きですから」

 

 「し、知らなかったニャ。・・・・・・あの旦ニャに申し訳ないニャ」

 

 「しゃべれないことで迷惑をかけてしまうと思ってるせいか、彼女もあまり積極的にコミュニケーションをとろうとしないタイプですからね。今度は『はい』か『いいえ』で答えられるような質問からするといいですよ?そうすれば彼女も頷いたりしてくれますからね。彼女も慣れればとても面白い方ですよ?」

 

 そうやって徐々にお互いを知っていけばいいんです。と言うとアイルーは感心してこちらを見上げて、大人だニャ、と呟いた。

 

 アイルーと一緒に甲板に上がると、氷海に向かう彼女の後ろ姿が見えた。小さいながらもその姿は堂々として凛々しく見える。

 

 「ああ、そうそう、彼女は表情筋も死んでるので、顔に感情が出ませんから注意してくださいね?」

 

 「難易度が高いのニャ・・・・・・」

 

 思い出してそう付け加えると、アイルーはそう呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 うむ、あれがよさそうだ

 

 私はエリア6の洞窟からぶら下がっている綺麗そうな氷柱に目をつけると背中の武器を展開して弾を装填し、狙いを定める。

 

 装填した弾はレベル1通常弾。氷柱を折るくらいなら最低威力のこの弾でも問題ないはずだ。

 

 引き金を引くと、反動と共に弾が発射され、狙い通り氷柱の根本に命中する。

 

 だが氷柱は落ちてこない。思ったより頑丈らしい。

 

 今度はレベル2の通常弾を撃ってみるも結果は同じ。どうやら想像以上の強度だ。

 

 どうしたものか。今回は最高のかき氷を作るのが目的だったのであまり戦闘用の装備ではない。弾数もそう多くは持ち込んでいないし、通常弾もこれ以上のレベルは持ち込んでいない。装備も単純に暖かいという理由でウルクシリーズをチョイスした。見た目がかわいいのでお気に入りだ。

 

 と、あの弾を今回は持ち込んでいることに気が付き、弾を変更する。

 

 この弾ならいけるはず・・・・・・

 

 私はさっきの氷柱に狙いを定め、弾を発射する。

 

 弾丸が氷柱に突き刺さる。だが氷柱が落ちる気配はない。ここまでは先ほどと同じだ。

 

 しかし突如として弾が突き刺さったあたりが爆発し、氷柱の根本が吹き飛んだ。

 

 先ほど撃ったのは徹甲榴弾レベル2。今回はこの弾が打てるアグナコトルのヘビィボウガンを持ってきていた。わざわざ商人と素材を交換して遠方から取り寄せて作った武器で、通常弾と貫通弾の豊富な弾数が気に入っている。

 

 このボウガンの特徴は、先ほど撃った弾。徹甲榴弾の装填数が普通のヘビィボウガンと比べて多めというところだ。あとは火炎弾も撃てるから、火を起こすにはピッタリな一丁だ。え?火炎弾は焚き付けに使うものではないって?

 

 徹甲榴弾で爆発した氷柱はしばらく天井にくっついていたが、ついに地面に向けて落下した。だがその時には既に武器は納め終わっている。

 

 下で待ち構えていた私は落ちてくる氷柱が自分に直撃しないように注意しながら、それをキャッチする。

 

 高々とそれを掲げ、喜びを露わにする。だが私死んだ表情筋では、表情を変えることはできていないのだろう。我ながら難儀な体質になってしまったものだ。

 

 まぁそれはともかく、ようやく最高のかき氷が食べられるぞ!やったね!

 

 話は変わるが、本来なら狩場に指定のアイテム以外を持ち込むのは厳しく禁止されている。これは主に密猟などの行為を禁止するの目的がある。

 

 でもまぁギルドのほうでも多少のものなら大目に見ている。例えるなら塩やコショウなどの調味料をこんがり肉にかけるために持ち込むくらいなら問題ない。鍋やフライパンもキャンプに置いておくならば、さしたる問題にもならない。

 

 そう!したがって私が今回持ち込んだ熱帯イチゴのシロップとハチミツ(調合用)も問題はないことになる!

 

 ふふふ、これでまさに最高のかき氷を作るのに何の手抜かりもないはず。あぁ~楽しみだなぁ。

 

 鼻歌を(無表情で)歌いながら先ほどの氷柱を脇に抱えて氷海を歩く。このままキャンプに帰って早く食べよう。いつも送り迎えしてくれるあのギルドのお姉さんにも分けてあげよう。いつも感謝の気持ちを表せていない分、ここでちゃんと伝えよう。

 

 そうして私はエリア7を通ってキャンプに戻ろうと意気揚々と歩き始めた。

 

 だが私は知らなかった。この先のエリア2であんな奴に会うことは、このときはまだ知らなかったのだ。

 

 




誤字脱字、アドバイス等あればよろしくおねがいします。次回もちょっと遅れるかもしれません。
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