ボウガンのリロードを行い、徹甲榴弾Lv2から通常弾に切り替える。とりあえずはこの定点攻撃力のあるこの弾で様子見といこう。
目の前のザボアもどき野郎も氷の鎧を纏い準備万端といった様子だ。
通常ザボアザギルは怒りなどの興奮状態になると体表から特殊な粘液を分泌し、凍結させることにより氷を身に纏う。防御面だけでなく、頭部には角を生成するなど攻撃面でも強化される。
生半可な攻撃ではその氷の鎧を突破することは難しい。弱点の腹には氷こそ纏わないものの、骨格の都合上、常に接地しているような位置にあり、氷の鎧を纏って激しくなったザボアザギルの攻撃をかいくぐって腹に攻撃するのは困難を極める。
だがその氷の鎧と言えど砕けないわけではない。攻撃を積み重ねていけばいつかは砕け散る。そのために狙った部位を通り抜けてしまう貫通弾よりも丁寧に氷の鎧を剥がすために通常弾を選択した。
まぁ他にも理由はあるのだが・・・・・・
私は狙いを右前脚の氷の鎧を定め、続けざまに3発撃ち込む。
全く同じ位置、とまではいかないまでも全弾命中。だがザボアもどきは怯む素振りも見せず近づいてくる。
分かってはいたがやはり硬いな・・・・・・
心の中で舌打ちし、左前方に転がって入れ違うようにしてザボアザギルの右に移動する。起き上がりざまにも右前脚に通常弾Lv2を2発撃ち込み、もう一度転がってザボアもどきの後ろに回り込む。
ボウガンという遠距離武器の都合上、距離を詰められるのが最も辛い。
ボウガンの収納には時間がかかるため基本は抜刀したまま立ち回ることになる。当然回避を多用することになるが、リロードの隙も考慮すると、ただ回避するだけではあまりに非効率。
だからこそガンナーはモンスターから距離をとるためだけではなく、接近してくるモンスターにはあえて接近し、すれ違うように回避を行ってモンスターの後方に回り込み、死角から攻撃するような戦法をとることが多い。
もちろん攻撃の種類、モンスターの種類に左右こそされるが、大型モンスターは振り返る動作にも数瞬ほどの間がある。その僅かな隙がリロードのチャンスになりうるのだ。
そんなわけで振り向きに合わせて腕に弾を撃ち込もうと銃口を向けるが何かがおかしい。
振り向くために足を動かすわけでもなく、ブレスや突進の溜めを作っているわけでもない。
ザボアもどきはチラリと後方のこちらに視線だけを向け、突如その場で跳躍。
その動作が潜航する動作にそっくりだったので不覚にも私の反応が一瞬遅れた。
跳躍した空中で反転し、落下の勢いのまま、まるでジンオウガの如く右手を私目掛けて叩きつけてきた。
反応が遅れたとはいえ黙って被弾するわけにもいかない。ボウガンを思いっきり真横に放り投げる。だが手は離さずに身体を最大限に伸ばして、ボウガンに引っ張られるようにして横に跳ぶ。そしてボウガンを軸に今度は伸ばし切った身体を縮めて前転する。
とっさの回避の後、後ろで振動が響き衝撃が襲う。最悪ボウガンは犠牲にしてでもと思ったが身体も武器も問題ない。
振り向きざまに銃口を向けるが、ザボアザギルの攻撃した場所は思ったよりも離れていた。なんというか拍子抜けだ。これなら思いっきり回避せずとも問題なかったのに・・・・・・まさか。
遊んでいる、のか?
思えば最初に飛び出してきたのもまるで見つけてくれって言っているようなものだったし、開戦した時もまるでこっちの出方をうかがうような仕草だけであいつから仕掛けてくるようなことは無かった。
そして今の攻撃。完全にこちらの隙をついておきながらあえて外したような攻撃。しかもあいつは攻撃の直前にこちらの位置を確認していた。それなのに外したということは、つまり・・・・・・。
遊んでいる、いや遊ばれている?この私が?あろうことか貴様に今回の目的である氷を粉砕されている私を相手に〝遊び〟だと?ふざけやがって!お前のその氷の鎧を引きはがして私の氷の代わりにしてやるからな!覚悟しろこの鮫野郎!!
こうして新たに怒りの燃料を投下された私は(無表情で)激昂し、通常弾Lv2をリロード。目の前のザボアもどきに絶対に一泡吹かせてやると決意を固めた。
さぁこい!そのご立派な氷の角をへし折ってお前の前でかき氷にしてハチミツと熱帯イチゴのシロップをかけて食ってやるよ!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
氷の鎧が完璧に完成したことを確認した俺はハンターに向かっていった。
間合いを詰められることを嫌ったのかすぐに銃弾を撃ち込んでくるハンター。反射的に目こそ閉じるものの、前進は止めない。
銃弾が俺の腕に打ち込まれる。だが氷の鎧と鉄の鱗に阻まれ、俺の体表に届くことはない。発射音からすると3発。撃ち込まれた感覚的に恐らく通常弾だろう。
正直なところ不安しかない。というもの相手がガンナーであり、やりにくいというのが一番である。
仮にだ。俺が人間であったとしても、銃を手にした暴漢と、ナイフを手にした暴漢のどちらを相手にするほうが生存率が高いかと問われれば、モチのロンで後者。誰に聞いてもナイフのほうと答えるだろう。そりゃぁなんつったって『銃は剣よりも強し』だからね。
そして何より・・・・・・。
弾速が速ぇんだよ!
普通に考えて分かるだろ!自分が撃った弾が見えるのはゲームの中だけだ!実際に見えるわけないだろ!?しかも対人を想定したような武器じゃねぇんだぞ?人間の何倍も大きくて硬いやつらを相手にすることを想定して設計されてんだぞ?こんなの生身の人間が対戦車ライフルを相手に戦うようなもんだ。避けるとか防ぐとかいうレベルじゃない。
だがいくら大型モンスターを想定した武器でも、大型モンスターを一撃で屠るような威力ではない。攻撃を積み重ねることで初めて討伐することができる。
つまり体力はこちらに分がある。銃弾に当たるのは当然、という覚悟でいなければガンナー相手に戦うことなんてできない。というわけで先ほどは避けもせず突っ込んだのだが、氷の鎧が頑丈で助かった。
俺が間合いを詰めるとハンターは俺の脇をすり抜けて右手に移動する。そこでも何発か弾を打ち込んでくる。が撃ち込まれたのは先ほどと同じ、右の前脚。
むぅ、狙いは一点集中。腕の氷の破壊からか・・・・・・
ゲームでは腕の氷の鎧を破壊されるとザボアザギルは派手にすっ転んで無様にもがく。ゲームではともかく現実ではどうなのだろうか。頑張って耐えれば何とかなるのだろうか。というかなんで腕の氷を破壊された程度であんな派手にコケるの?どういう原理?自慢の氷の鎧を破壊されたことが精神衛生上よろしくないのかな?なんか手だけに興奮する殺人鬼っぽいな。やめとけ!やめとけ!
とにかく腕の破壊を狙っているのは判明した。先ほど撃ち込まれた通常弾も定点攻撃にはもってこいの弾種だし、これは俺の氷の鎧を丁寧に剥がしていく気だな。しかも撃たれた箇所は寸分違わず右前脚。エイムは完璧。これは長期戦になればなるほど氷が剥がされて不利になるな・・・・・・。
となればやるのは短期決戦。つまりいつも通り!なんだかんだと今までやってきた戦いって俺が瀕死だったり、俺の圧倒的不利から始まるものばっかりだったから、不意打ちなんかを利用した短期決戦しかしてこなかったよね。何とかうまくいったから今こうして生きてられるんだけど。・・・・・・いや、ジンオウガの時然り、結構短期決戦失敗してんな俺。
チラと視線だけを後ろに向けるとハンターは既にもう一度回避を挟み、完全に俺の後方に回っていた。銃口もこちらを向き、準備万端といった感じだ。
狙いが変わらず俺の右腕だとするなら、恐らく俺が振り向く動作に合わせて何発か打ち込み、完全に俺が向き直ったあとにも数発打ち込んで正面からズレるという算段なのだろう。
実に効率的。ガンナーの間合いを維持しつつ、死角に入ることにより振り向かせ、その間にリロードや納刀などを行う。モンスターとしても位置をずらされ続けられると隙の大きい大技を出しにくくなる。
ましてや近接攻撃しか持たないモンスターの場合には、近づく、逃げて攻撃される、近づく、また逃げつつ攻撃を受ける。のループになりやすい。
逆にこれが相手が剣士だった場合。対処は簡単だ。ディアブロス式シャトルランをするだけで恐らくハンターの心が折れる。間違いない。俺がそうだったからね。
だがなぁ!俺をそんじょそこらのザボアザギルと一緒にしてもらっちゃ困るぜぇ!ハンターさんよぉ!
ハンターの位置は確認済み。当たってくれれば相当なダメージになるだろうが、俺の目的はこのハンターを撤退させること。極論を言えばダメージなんかなくてもいい。要するに『あっ、こいつ面倒くさいわ』と思わせて諦めさせることなのだから。つまりは避けられてもいい。
俺はその場で跳躍。空中で身体を回転させ、その勢いのまま、振り向きながら前脚で叩きつける。
これぞジンオウガの前脚叩きつけ、通称〝お手〟から構想を得た攻撃。
ちなみにあのジンオウガ相手に使った尻尾叩きつけと違ってこの技を出した後は自然と相手のほうを向くので、追撃したり防御が楽という利点がある。分かりやすく言えば途中で逆回転しないバーニングキャッ(ry
だがここで俺の想定外の事態が起きた。
位置も確認した。空中で反転しているときも位置は補足していた。確実に当たったと。そう確信できた。
にも関わらず、避けられた。
あのハンターが何をしたのか分からなかった。ただの回避ではないことは確かだ。明らかに回避距離が長すぎる。なんだチートか?
とにかく避けられたのは確かだ。当たるならそれで撤退してくれるだろうと考えていた。完全に当たらないまでもダメージはあるだろうと。
だが、予備動作はあるとはいえ初見であるはずの攻撃をかすり傷一つなく完璧に回避され、あまつさえ回避した先で銃口をこちらに向けている。
そしてやはり。
事ここに至っても無表情かよ・・・・・・、本当に不気味なやつだ
呼吸こそ少し荒くなっているのが白い息から分かるものの、ハンターは無表情であった。何度も言うが不気味なことこの上ない。
舐めてかかるとマジで殺られるなこりゃあ・・・・・・
幼少期にフルフルに出会ったときのような、完全に〝死〟という名の沼にどっぷりつかった状態ではないが、一手間違えればその瞬間に自分の首が飛ぶような感覚、とでも形容しようか。
死が99.9%確定しているような状況でもないが故に、思い切ってがむしゃらに動くことができない。そんなことをしてしまえばそれこそ間違いなく死ぬ。
これは単純な殴り合いではなく、超高度なチェスや将棋のような心理戦。プレッシャーに負けて一手、たった一手ミスすればチェックメイト、詰み。つまりは〝死〟。
そして心なしかハンターの纏う雰囲気が数段、鋭さと激しさを増したような気がする。その無表情な視線を見るだけで身体がすくむような錯覚を覚える。いや、実際そうなのかもしれない。今からでも逃げたほうがいいか。いや、もうすでに遅い。
そんな俺の思考をボウガンのリロード音が遮った。
どうやら考える暇も与えてくれないらしい。
せっかちなのは男女問わず嫌われるぜまったく。
一月近く期間が空いてしまい申し訳ございませんでした。皆さんもインフルエンザ等に罹患しないようにお気を付けくださいませ。
誤字脱字、アドバイス等あればよろしくお願いします。