※追記:ザザミがザザミ亜種となっていた本文の一部を訂正しました。混乱の原因 を作ってしまい、申し訳ありませんでした。
それは俺目掛けて一直線に飛んできた。躱そうとするが自身の身体が拘束されていることをすっかり忘れていた俺は、その灼光をもろに食らった。
俺を拘束していた縄は焼き切れ、強烈な痛みが俺の背中を貫き、肉の焦げる嫌な臭いが周囲を覆う。
悲鳴を上げて転げまわりたくなるが、その痛みを気合でぐっとこらえる。空を見上げ、攻撃の主を睨みつける。
その襲撃者は今まさに俺の目の前に着地した。
翡翠色とも形容できる新緑の色の甲殻に身を包み、尾は苛立たし気に地面に叩きつけられ、口からは怒りの炎が漏れている。そして翼はその巨体を飛行させるに納得の強靭さが見てとれる。
典型的なワイバーン骨格の飛竜種であり、空の王者リオレウスと対を成す雌個体だ。そしてかの王になぞらえて多くのものはこう呼ぶ
『陸の女王、リオレイア』
その生息範囲は広く、遺跡平原や地底洞窟、天空山や砂漠でも目撃されている。そしてここ原生林にも生息する。
性格はお世辞にも温厚とは言い難い。高い縄張り意識を持ち、口から吐き出す超高温の炎ブレスに強靭な身体から繰り出される重い一撃。極めつけは毒の棘を持つ尻尾での強力無比な一撃、通称サマーソルトを繰り出す。
戦闘能力は高く、主にリオレウスと比べて、飛行する頻度が低く、地上戦を得意としている。しかし、それは飛行能力が低いというわけではなく、その気になれば華麗な空中戦も難なくこなすことができる。
ゲーム内では典型的な飛竜種のモーションをとるため、慣れてパターンをつかめば戦いやすく、空の王者(笑)とかヘタレウスと揶揄される夫ほどこちらが手出しできない空中戦を仕掛けてこないおかげで、大型飛竜種の登竜門的存在とも言える。まぁもっとも斜めサマソや走りサマソを習得した亜種や、超高速回り込みからの事前モーションなしのサマソを連続で撃ってくる希少種になれば話は別だが。
そんなリオレイアが俺の前にいる。正直に言って勝てる気がしない。一撃もらって分かったがあのブレスは何度ももらっていい技じゃない。俺の鉄の鱗も炎の前には無力だ。むしろ弱みにしかならない。
どうやら俺の後ろに回ってニャゴニャゴ騒ぐアイルーたちは標的ではないらしい。思えば最初のブレスも俺だけを狙っていたしな。
アイルーたちはあの白いアイルーが何やら号令のようなものを発し、それに応じて隊列のようなものを組んで原生林のマップのほうへと退却していく。
『どうかお逃げ下さい、話の続きはまた後ほどお話しします!』
俺のすぐ横であの族長がそう言ったのち、すさまじい速度で原生林のほうに消えていく。
あの族長ナニモノ?どうみてもさっきのよぼよぼのお爺さんって動きじゃねぇぞ。というか最後まであの族長残ってたの?殿の誉れとか恰好いいなおい。
さてさて逃げろと言われてもねぇ
目の前のリオレイアは俺から視線を外そうとしない。縄張りを犯す俺を許すつもりはないのだろう。こちらを逃す気がない相手と逃げようとする俺。ましてやここは相手のホームグラウンドの陸上。またしても分の悪い勝負だ。
何とかして俺が泳いできたあの池まで逃げたいところだが、目の前のこいつがそんな行動を許してくれるかどうか。
俺はジリジリと池のほうへ近づいていく。そしてあと一跳びで池にダイブできるところまできた瞬間に、リオレイアは飛び上がって俺に向かって滑空してきた。
もう行くしかねぇ!
俺は覚悟を決めて池に飛び込んだが、一瞬リオレイアのほうが素早く、わき腹に直撃をもらい無様に湿地を転がされる。
起き上がってリオレイアを探すと、低空で飛行しながら、またこちらに突っ込んでくるところだった。
さすがの大型飛竜種の突進、単純な突進だけでも相当な威力だな。これに加えて炎ブレスまであるってんだから。
俺はリオレイアの突進にタイミングを合わせてその場で跳躍し、空中で身体を回転させて尻尾を叩きつける。ジンオウガ戦で編み出し、ザザミにも使ったお得意のあれだ。
流石に空中で躱せねぇだろ!
俺は直撃を確信したが、その手ごたえはなく、俺の尻尾は湿地にめり込んだ。
は?おいおい嘘だろ。いくらなんでも生物が空中でそこまでの急制動ができるわけねぇだろ。ハチドリじゃあねぇんだぞ、戦闘機やヘリコプターでも無理だ。
リオレイアは俺の攻撃が当たる瞬間に急に体を折りたたみ、回転するように俺の攻撃を躱していった。
あの動きヤバすぎるだろ。あれで陸の女王なら空の王者はどうなっちまうんだよ。
振り返ってみると、リオレイアはかなり遠くに着地していた。どうやら俺の攻撃を躱すことには成功したが、姿勢を崩して着地が上手くいかなかったようだな。
攻撃は命中しなかったが、隙を作ることには成功した。今のうちに逃げるしかねぇ。
しかしリオレイアの怒りの炎は消えておらず、体勢を立て直してすぐさま俺のほうへ突進してくる。
俺はすぐに走って池に近づき、飛び込んだ。すぐさま深くまで潜る。そしてそのすぐ上を黒い影が通り過ぎていった。
さすがにここまで逃げれば追ってこないだろ。鳥のスタンド使いじゃあるまいしな。
と、水面に光が投射された。次の瞬間水面で何かが爆ぜた。
ブレス撃ってきやがったのか、しかし火竜のブレスとはいえこの池を干上がらせることも、水底の俺にブレスを直撃させることもできない。
このままやり過ごすか、それともあの抜け穴を通ってマングローブ林まで戻って・・・・・・。
それからどうする?
また海へと戻ってどこかへ、行くのか。アイルーと関わりを持てたことは嬉しかったが、俺が彼らと関わることによってよくないことが起こる可能性もある。ゲーム内ではアイルーは基本的にはハンターの見方だったし、モンスターとアイルーが一緒にいるのは・・・・・・。
いや、あのアイルーは俺にとっても有益な情報を持っているかもしれない。何か言いたげだったしそれを聞いてから判断しよう。
とにかく天上の蠅がどこぞにいくまでは待たねばなるまいて。
ちょっと格好いい言い回しだが、奴が蠅ならおれは蛆だな。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
あのあとしばらく待ったあと、水面から顔を出してリオレイアが去ったのを確認した俺は、相変わらずビクビクしながら、あのアイルーたちを探しに行った。つまり原生林のエリア3に来た。
ブレスを食らった背中の火傷もヒリヒリと痛むが命に係わる傷じゃない。それよりも急を要するのはアイルーの探索だ。
さてさて、探しに行くって言ってもなぁ。あの狭い通路に顔でも突っ込むか?
このままここで待つっても、隣のエリアがリオレイアの巣なんだよね。あの怒り狂った女王をもう一度前にして、深い水場の無いこのエリア3から逃げられる可能性は皆無。
あまり長居はできない。
すでに日は落ちかかっている。
日暮れまで待って、それまでに現れなければ・・・・・・
この原生林がやつの縄張りだというなら、俺には割り込む場所はない。
氷海では常にマップに居座る大型モンスターはいなかった。それは氷海という環境の厳しさ故であり、俺が今まで生き残れたのはそのおかげでもある。
しかしここ原生林にはあのリオレイアがいる。一時的な生息地にしているのかもしれないが、リオレイアが去ったあとには次の生態系の高次捕食者、頂点が現れる。氷海とは違って食料には事欠かないが、
大型モンスターの数が多いため、その分生存競争は氷海とは違った意味で激化する。
その生存競争のレースに俺が本格的に乱入してしまえば、そのバランスが崩れ、バランスをとるために新たな争いが生まれる。当然、当事者である俺の周りで。
なんというかやっぱり面倒だな・・・・・・、別の場所にまた移動するか
俺がそんなことを考えながらエリア3をウロウロしていると太陽が完全に地平線に沈んだ。
俺はため息をついてエリア3から出ていこうとする。
ガサッ
すでに日は落ち、あたりは闇に包まれているが、音がした方向を聞き逃すほど俺の本能は鈍っちゃいない。
背後の茂みから物音がした。あのアイルーたちか、それとも。
幸運にも大型モンスターではなく、姿を現したのはアイルーたちだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
こんな場所があったのか・・・・・・
俺はあのあとアイルーたちに先導され、エリア3のそばだと思われる林の中に来ていた。
そこは周囲に木が円状に生えていて、枝葉が頂点で重なり合い、天然のドームになっている。形状的に明らかに自然ではなく、このアイルーたちが人工的?猫工的?なものだろう。
外側から見てもうまく偽装されていて、傍目から見てここにこんな場があるとは思わないだろう。
流石に明かりがあると目立つのか、松明はない。アイルーならこの程度の暗さは問題にならないのだろう。
大きさも俺が入っても問題ないほど広く、何が目的でこんな場を作ったのだろうかと疑問に思わざるを得ない。コンサートホールか?
今俺の目の前にはあの毛むくじゃらの族長アイルーがいて、対面にはほかの多くのアイルーもいる。どうやら俺と意思疎通ができるのはこの族長だけらしい。
『改めまして、ご無事で何よりです』
そういって恭しく礼をする族長。いや正直そこまで礼儀正しくなくていいっていうか、そこまでやられると逆に申し訳なくなるじゃん。
『既にお目にかかったと思いますが、実は今ここ原生林にはあのリオレイアが巣を作っておりましてな』
あぁ、実際目にしたしちょっと戦闘になったし、最初にブレス食らったし。
『最近は特に気が立っておりまして』
あぁ、子育て時期のメスは攻撃的になるって言うよね。現実でもそうだし、モンハンだとディア亜種とかがそうだよね。
『それが異常なほどで、手当たり次第に攻撃をしかけては暴れております。まるで子育てそっちのけで』
へー、そうなん。なんか確かに最初から怒ってたような気もするけど。いつもとは違った怒り方と。
『我々としても、このままでは自由に動けずに困っております。そのために今は何か原因があるのかと調査中なのです。そこに氷海にしか生息していないあなたがいたので、もしやあなたが何かしていたのではないかと思い、あのような拘束をしていました。お許しください』
なるほど、俺が原因でリオレイアがいつも以上に気が立っていると思ったってわけねぇ。でも俺が原生林に来たのは昨日だし、どうやら話を聞いていると昨日今日の話でもない。
俺は首を横に振り、違うと示す。
族長の後ろのアイルーからは悲しみとも嬉しさともつかぬ声が漏れる。
まぁそりゃそうよな、原因である可能性が一番高い俺が、その原因ではないということが分かってしまったのだから。
こればっかりはどうしようもない、俺が彼らに嘘をつくメリットも、理由もないことは彼らとて理解しているだろう。だからこそ真相解明はまた振出しに戻ったわけなのだが。
族長は顎に手をやり考え、他のアイルーたちは無言のままどうしようかと顔を見合わせる。そんなとき。
ニャーッ!ニャーッハハッハ!!
大きな鳴き声が響いた。
急に後ろのアイルーたちが二つに割れ、松明と思われる明かりが現れる。
何かを背負った一匹のアイルーが姿を現した。アイルーたちから驚いたような声を掛けられながらも止まることなく、族長の目の前までやってきた。
そのアイルーは族長に自慢げに何かを説明するかのように話しながら、背中に背負ったものを下ろす。
それは木の葉のようなもの包まれた丸いもので、蔦が巻き付いていて背負えるようになっていた。そのアイルーの身の丈ほどもあるもので、それを運ぶのは大変だっただろう。
それを持ってきたアイルーは得意げな様子だが、対して族長は焦った顔で、急いでその木の葉の包みを解いた。
皆が息をのんだ。誰の目から見てもそれが何かは明らかだった。
こいつが原因か・・・・・・
俺が苦々し気に発した唸り声がアイルーに聞こえたのだろう。振り向いたアイルーの顔が恐怖にゆがみ、松明を取り落とし、腰を抜かしてぶるぶる震えて後ずさる。どうやら今の今まで俺に気が付いていなかったらしい。まぁ松明の明かりに慣れた目なら暗闇のなかにまさかザボアザギルがいるなんて思わないよね。
そのアイルーが持ってきたもの、今包みを解かれ、皆の視線の先にあるもの。それは。
卵。Egg。大きさ的には恐らく飛竜種のもの。
飛竜の卵
そう、つまり、これはリオレイアの卵だ。
しかし俺の関心は卵からそのアイルーにすぐに逸れた。そのアイルーは茶色のトラ柄で、左耳に真っ赤なピアスをしている。そしてブルブル震えて怯えた視線を俺に向けている。
こいつどっかで・・・・・・
俺の記憶が巻き戻されていく。個々より以前の氷海にまで。
そして。
あーーーーーーーーーーーッ!
誤字脱字、アドバイス等ありましたらよろしくお願いします。