化け鮫転生放浪記   作:萌えないゴミ

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 サンブレイクのアプデでザボア希少種追加待ってます。


リオレイア事変

 

 

 

 動物の記憶能力とは、いったいどれほどのものなのか。遺伝情報では猿やチンパンジーなどは人間とほとんど変わらず、自然界で器用にも道具を使ったりする一方で、嘘か誠かニワトリは三歩も歩いたら何考えていたかなんて忘れてしまうとも言われる。

 

 鮫、つまるところ魚類である俺の脳のつくりなんて知らないが、俺は少なくともこいつを覚えていた。

 

 人相、いや猫相?はともかく、この茶トラと嫌でも目立つ耳の赤いピアスをはっきり覚えている。何より初めて面を合わせた時も、そして今もだが恐怖に震えて腰を抜かし、後ずさる姿は俺の記憶に残っている。

 

 このアイルーは恐らく、氷海で溺れていたところを、成り行き上とはいえ俺が助けたあのアイルーで間違いないだろう。

 

 

 つーか氷海のときもそうだけどそんなに怯えなくてよくない?なんか猫の後ろにキュウリ置いて、めちゃくちゃびっくりして飛び跳ねる動画思い出すなぁ

 

 

 俺が、キュウリじゃなくてもナスとかでも反応すんのかね、なんて考えている間にあの族長が怯えている茶トラを厳しい声で怒鳴りつける。

 

 先ほどまで俺に話しかけていた言葉ではないようで俺には何を言っているか分からなかったが、叱られているであろうことは察せた。

 

 分かる分かる。懐かしいぜ、俺も登校中にヘビ捕まえてそのまま学校に持ち込んだりして怒られてたからな。

 

 

 しっかし今回はイタズラのレベルじゃ済まねぇぞこれ、どうすんだよこの卵

 

 

 詳しくは族長がまた俺に話してくれるのを待つしかないが、恐らくこの茶トラがイタズラか何かの目的でリオレイアの巣から卵を盗んだ。で、リオレイアはそれに気が付いて怒り心頭ってわけだろう。

 

 しかしこいつもすげーな。卵にGPS仕込んでるとまで言われるリオレイアの追跡からよく帰還できたもんだ。イタズラとはいえその手腕は尊敬するよ。

 

 さてさてこの茶トラはこれからどうなるんかね、と眺めていたら、族長が後ろの群衆に何やら声を発した。

 

 すると後ろの群衆からアイルーの何匹かが出てきて、ツタか何かでできた縄で茶トラを後ろ手に縛りあげてこの隠れ家から連れられて行ってしまった。

 

 俺に怯えて腰を抜かした上に怒鳴られて挙句の果てに縛られて連れていかれるとかあいつも災難だな。まぁ自業自得だと思うけど。というかあいつどうなるんだろ。1050年地下行き?

 

 茶トラが連れられて行った後に、族長はまたアイルーたちに呼びかけた。それはどうやら解散の指示だったようで、アイルーたちはぞろぞろと出ていった。族長と卵を除いて。あと俺。

 

 皆が出ていった後に、族長は大きく息を吐いてこちらに向き直る。

 

 

 『やれやれ、お見苦しいところを失礼しました』

 

 

 いやいやいいって、誰だって子供のうちは無茶するもんだ。まぁ流石に今回は無茶が過ぎるがな。

 

 

 『あの者が持ってきたこれはリオレイアの卵でしょうな。まったくこれのおかげで一族郎党危険な目に会おうとは』

 

 

 まぁこれを返せばとりあえずあの女王様も大人しくなるってもんだろ。どっかのエリアの中央にでも置いておけば勝手に見つけて持って帰るだろうし。流石に巣まで返しに行くのは警戒されてるだろうし危険が危ない。

 

 

 『明日にでもこれをどうにかしてリオレイアが気が付く場所に置いて、彼女に返しましょう。しばらくすればかの女王も抱卵に専念するようになるでしょう』

 

 

 それがいいな。これであいつが大人しくなるってんなら俺としても万々歳よ。こっちから下手に刺激しなけりゃ向こうも手出ししてくることもあるまい。

 

 

 『あなた様はもうしばらくこの原生林におられますかな。今日はもう遅いですし、よろしければ今晩はここでお休みくだされ。野ざらしよりは安心してお休みいただけるかと』

 

 

 ええ?いいの?俺を匿うような真似をしてもあんたらに何かメリットがあるわけでもないだろうに。

 

 俺が遠慮して迷っているように見えたのか族長は続ける。

 

 

 『構いませぬ、その背中の傷も元はと言えば我々が原因ですから。まだ痛みますかな?』

 

 

 痛くないと言えば嘘になるが、まぁ平気だ。致命傷じゃあないし。死な安死な安。俺は首を横に振る。

 

 

 『そうですか、それは何より。明日、傷に効く薬草を届けさせましょう』

 

 

 そいつは助かる。恩に着るぜ。正直言うと朝から夜まで予想外の出来事が起こりすぎて疲れている。ここで休ませてもらえるというなら一晩くらいは世話になっても罰は当たるまい。

 

 

 『それではお休みなさいませ、ご迷惑を掛けましたな。また明日』

 

 

 族長は礼をして出口へと向かっていく。その背中を見ながら俺は丸くなる。

 

 ん?そういやなんで族長は俺の言葉分かるか聞きそびれたな。ていうか俺の話す言葉はあっちに通じてないんだよな?ジェスチャーだけだったし。ていうことは何?ほとんど一方通行のコミュニケーションってことになるのか?

 

 気になることはまだまだあるが、睡魔に勝てるわけもなく、俺は眠りの海に誘われた。スイマーだけに。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 あの族長は言った通りに薬草を届けてくれた。もっとも実際に持ってきたのは他の2匹のアイルーだったのだが、彼が約束を守ってくれたことには変わりない。

 

 族長から俺に敵意はなく攻撃はしないことは聞き及んでいるのだろうが、たった2匹で自分たちを丸ごと飲み込めてしまうような大型モンスターの前にやってくるというのはかなり勇気のいることだろう。

 

 2匹は気が気でないような様子で、薬草が入っているであろう籠を持って俺のそばまで寄ってきた。しかし俺に言葉が通じないのを知らないのか、はたまた気が動転してそのことを忘れているのか、何やらニャゴニャゴ言っていた。

 

 なんとなくだが『食べないでくれ』という感じのニュアンスだろう。

 

 俺は苦笑して、彼らに体の側面を向け、背中に登りやすいように尻尾と後ろ足でスロープのようにしてやった。

 

 彼らも自分たちのやろうとしていることが、俺に伝わっていると理解したようで、安堵のため息をついて作業に取り掛かった。

 

 そして今現在、その2匹のアイルーが俺の身体によじ登って背中の傷に薬草を塗ってくれている。傷口に触られている痛みはないが、柔らかくて温かい毛玉ちゃん達が背中に乗ってもぞもぞ動いているので、なんだがむず痒い。

 

 むず痒さに耐えかねて身じろぎするたびに背中でビクッと跳ねるので余計にむず痒い。

 

 しばらくそうしているうちに、処置は終わったようでアイルーたちは俺の背中から滑り降りてきた。

 

 成り行き上とはいえ、親切にも見知らぬ鮫の世話をしてくれたんだ。お礼くらい言いたいもんだ。だが悲しいことにこの姿で俺がにこやかに笑おうもんなら彼らは恐怖で脱兎の如く逃げ出すだろう。

 

 仕方がないので俺は、降りてきた2匹に向かって可能な限り指を曲げてサムズアップした。気分はイージャン。俺も公式にスタンプにしてもらいたい。

 

 文化の違いこそあれど祈るという動作は万国共通。しからばサムズアップも通じるはず(暴論)である。

 

 アイルーたちにグッドサインという文化があるのか分からないが、どうやら俺の意図は伝わったらしい。2匹は顔を見合わせると、少し嬉しそうにお辞儀をして帰っていた。

 

 

 少しはこれで仲良くなれたかねぇ

 

 

 彼らと接触すること自体、モンスターとしてはあまり褒められたことではないのだろうが、純粋に少しでも意思疎通の出来る相手ができたことは喜ばしい。

 

 

 思えば今までモンスターと会話したことなかったもんなぁ

 

 

 ・・・・・・そういやこの世界の言語って何なんだ?モンスターハンターのゲームの世界は当然ながらプレイヤーが言語設定する。日本人なら日本語、英語圏なら英語、というように。

 

 俺の前世、人間だったときの使っていた言語をこの世界の人間が使っている、のか?いやまさかそんなご都合主義なんかがあるわけないよな。異世界転生ハーレムチート物ならそういうのはご都合主義で勝手に通じるし、能力はクソ強で名前の通りチートだし、そもそも転生させてくれた神様みたいなのいるってパターンが多いと聞く。

 

 俺はそのどれにも当てはまらない。転生させてくれた神様もチートスキルも何もない。生まれたのは卵から、周りは全部敵で何度も死にかけた。

 

 そんな難易度ルナティックな状況だ。言語だけ勝手に通じるなんておかしい。

 

 今まで俺が理解できた言語を話した者は大きく分けて二種類。最初に氷海で生まれた後にすぐ遭遇したハンターたち、そしてここ原生林の族長。

 

 しかし族長は俺を相手に何語か使って通じるか試していたようだし、この世界には何語か存在しており、その一つに俺が聞き分けて理解できる言語が存在するってことなんだろうな。

 

 それがたまたまハンターたちが使用していた言語と共通しているのか、それともハンターが使った言語と、今族長が俺に話しかけている言語で二種類あるということなのか・・・・・・。

 

 推測すること自体は簡単だが、正解が分からなければ意味がない。今までは自分で推測して勝手に解決するしかなかったが、今回は族長と話ができる。こちらの意思が伝わるか分からないが心強い情報源だ。彼から話が聞ければ、この謎にも答えが見つかるだろう。

 

 

 まぁあのアイルーたちがリオレイアの卵を無事返せればここも少し落ち着くだろ、そうすりゃあの族長から色々話も聞けるかもしれないし、モーマンタイってもんよ

 

 

 俺がこの「リオレイア事変」の事が済むまでもうひと眠りしようかね、背中の火傷も早く治るに越したことはない。

 

 あ、そういや昨日からまともな食い物を何も食ってなかったな。あとで飯を探しに行かねば、と再び身体を丸めてウトウトし始めた。

 

 しかし寝付こうとしてもなにやら外が騒がしい。ニャゴニャゴと鳴き声が聞こえてくる。

 

 

 まぁこれからどうやって卵を返すかってところだし、いろいろ準備してるんかね

 

 

 そうも思ったが、一向にアイルーたちの声は止まない。

 

 

 おいおいそんなに騒いじゃ逆に危険だろ、何やってんだ?

 

 

 俺は一抹の不安を抱えながら、睡眠を諦めてこの隠れ家から出てエリア3に顔を出して様子をうかがった。

 

 そこにはかなりの数のアイルーたちが集まっていて、その数は俺が捕らえられていた時よりも多くのアイルーたちがいた。

 

 武装しているアイルーたちもいるが、そうではないアイルーも多くいる。雰囲気としては野次馬という感じだ。

 

 しかし彼らが見ている方向は皆同じで、エリア3とエリア8をつなぐ崖を心配そうに見つめて、警告を促すような声をあげている。

 

 その視線の先には・・・・・・。

 

 

 え?何やってんのアイツ

 

 

 白い楕円形のものを背中に背負い、ツタを登っている一匹のアイルーの姿があった。

 

 俺が困惑していると、アイルーたちは俺にも気が付いたのか、先ほどまでとはまた違った悲鳴を上げて野次馬の輪を縮めて下がる。

 

 俺としては別に隠れているつもりはなかったので、エリア3に飛び降りる。するとすぐに族長がやってきた。

 

 

 おいおい族長さんこれはどういうことなんだ?あれがアンタらの考えた穏便に卵を返す方法だってのか?

 

 

 俺は崖の中腹まで登りつつあるアイルーを指さす。

 

 俺の言わんとしていることが伝わったのか、族長が状況を説明してくれたが、その口調からは焦りが見て取れた。

 

 

 『あの者が、自分の責任だから自分で返す、と勝手に卵を持ち出してしまったのです。気が付いた時にはすでに遅く、手出しができない状況にまでなってしまっております・・・・・・・』

 

 

 なるほどね~、もうあそこまで登られちまったら下手に手出しができないし、もし下手に取り押さえようとして、アイツが落下でもしてしまえば卵は確実にダメになる。

 

 ていうかあの崖を登ってるアイルーの茶トラじゃねぇか。あいつ面倒ごとばっか起こすな。いい加減にしやがれ。

 

 

 『このままではあの者だけでなく、我々皆が危険に晒されてしまいます。早く何とかしなければ・・・・・・』

 

 

 そうだよな、あの茶トラは状況は考え得る限り最悪の方法で卵を返そうとしている。族長は事態の収拾したいのだろうが、ここまで大事になってしまえば、あいつを引きずり降ろして野次馬を撤収させるのは時間がかかるだろう。そして何より恐れるべきは。

 

 

 ギャオアアアアアアアア!!

 

 

 上空から咆哮が轟き、エリア3に影が差す。

 

 遅かった。というより騒ぎを大きくしすぎたのと、何より時間をかけすぎた。

 

 すぐさま族長が何やら声を発して、武装しているアイルーたちが野次馬をアイルーの住処の小さな穴まで追い立てていく。野次馬連中も本格的に危ないということを悟ったのか、我先にと逃げていく。

 

 あっという間にエリア3は武装したアイルー数名と族長、そして崖を上っているあの茶トラだけになった。あと俺。

 

 武装したアイルーの中には金属製の防具を身に着けた、あの白いアイルーもいる。状況によっては狩猟するという覚悟なのだろう。

 

 あの茶トラは既に自分の身に危機が迫っていることを理解しているのか、急いで崖を登り切ろうとその進みを早める。しかしアイルーの小さな体で、大きな卵を背負っているため登りきるまではまだまだかかる。

 

 木々が揺れ、風圧と怒りの炎を纏い、リオレイアが姿を現した。

 

 白いアイルーたちは族長を守るように円陣を組み、俺もいつ戦闘になってもいいように身構える。傷は癒えちゃいないがなんとか戦える。

 

 リオレイアは俺たちを一瞥するが、すぐに崖を登る茶トラに視線を向ける。あくまで狙いは卵だけらしい。

 

 

 ギャオアアアアアアアア!!

 

 

 再び咆哮をあげるリオレイアにビビったのか、もしくはモンスターが放つ咆哮の性質なのか、あの茶トラの身体が一瞬竦んでバランスを崩したように見えた。

 

 茶トラが慌ててツタをつかもうと、手を伸ばした瞬間、その手が滑ったのか、あっけなく落下してきた。

 

 あ、っと思った時にはすでに遅く、茶トラとその運搬物は水しぶきをあげてエリア3の地面に激突した。

 

 俺も、アイルーたちも何も言わず、ただ動きを止めてこれから起こることをただ待っている。

 

 それはリオレイアも同じで、今はじっと身じろぎせずに、地面を流れる水を見ている。

 

 まさに時が凍ったような、静寂の時。

 

 ぬらり、と、水と共にリオレイアの足元に粘性の高い、黄色い液体が流れてくる。

 

 リオレイアはゆっくりと顔をあげて、その〝源流〟を見つめる。

 

 その先には自身が産み落とし、そして盗まれて、血眼になって探し求めていた卵の無残な残骸があった。

 

 そして彼女の視線は、その傍らで気絶している犯人へと移る。

 

 その瞬間、時が解凍した。

 

 リオレイアは咆哮を上げて茶トラに迫る。その目にはもはや憎き小さな生き物しか映っていないのだろう。

 

 だが、だからこそ、後方への注意を払っていないからこそ。

 

 

 うおらぁあっ!!

 

 

 俺はリオレイアがあの茶トラに突進した瞬間に、動き出して斜め後ろから体当たりをかました。

 

 体格の差からかリオレイアを完全に吹き飛ばすことはできなかったが、幸いほんの少しだけ突進の軌道は変えられた。

 

 リオレイアは体勢こそ崩したが、すぐに攻撃の主である俺を目標にとらえた。

 

 

 すまねぇな、お前も大事な卵がオシャカになって怒り心頭だろうが、目の前で殺されるのを黙って見てるってわけにもいかないんでね

 

 

 あの茶トラは俺とリオレイアの衝突でどこかへ吹っ飛んでいったしまったのか、姿が見えない。どこへ吹っ飛ばされたにしろ、死ぬよりかはいいだろ。

 

 後ろでアイルーたちが何やら叫んでいるが、分からん。体が勝手に動いちまったんだからしょうがない。

 

 命は平等だ。それは理解している。なら卵もあの茶トラの命も平等だ。ならあの茶トラの命を奪う権利はあの母親にもあるんじゃないのか。と頭の中に考えがよぎる。

 

 自然界は弱肉強食、強ければ生き、弱ければ死ぬ。なら茶トラが死ぬのも、その弱さ故だ。

 

 どうやら俺はまだこの世界で人間臭さを捨てきれないらしい、まぁ今回ばかりは俺があのアイルーの代理をさせてもらおうか。

 

 

 お前もあんなチビをやったところで怒りは収まらねぇだろ?なら俺が相手になってやるよ

 

 

 俺を新しい敵と認識したリオレイアは威嚇すらせずに俺に向かって突進してきた。

 

 

 さぁて、この原生林のリオレイア事変!この俺が預かった!!

 

 

 ま、背中に食らったブレスの傷の借りもあるしな。

 

 

 




 毎度ながら更新が遅くなり、申し訳ございません。

 誤字脱字、アドバイス等ありましたらよろしくお願いします。
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