化け鮫転生放浪記   作:萌えないゴミ

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アギトは大切に

 

目が覚めたら全てが元どおり、なんて事はねぇよなぁ・・・・・・

 

スクアギル生活2日目。俺が目覚めたのは安っぽいアパートのこれまた安っぽい一室の薄っぺらい布団ではなく、床が土で氷が壁の天然の洞窟。元から大した優良物件でもないことを考慮すれば大した変化でもない。貧乏から宿無し一文無しになっただけだ。

 

そもそも金とかあっても今の俺じゃ使えないしなぁ

 

俺はスクアギルの体で目一杯伸びをして手足の感覚を確かめた。どうやら目論見通りこの洞窟は隙間風などが一切なくて暖かい。まぁモンスターの感覚としてはだけど。

 

ぐぅううう〜

 

うんお腹の虫は絶好調だね!笑い事じゃねぇよ。このままだと背中とお腹がくっつくので何か食べ物を探すとします。

 

俺は横穴を抜けてエリアの様子を確認する。どうやらこのエリア5に大型モンスターは居ないようだ。天井の確認も怠らない。フルフルはいないね俺アイツ嫌いだから。

 

お腹が減ったからといって狩りをしようにも俺は生まれたてのスクアギルだ。温室育ちの超エリートだ!別にエリートじゃねぇな。王子でもないしグミ撃ちもできない。

 

そんな俺に狩れるモンスターなんていない。ハンターに噛み付いて引っぺがされた後に真っ二つにされてフカヒレスープが関の山だろう。

 

俺はエリアをてくてく歩きながら氷海全体に大型モンスターがいないか気配を探る。俺が見聞色の覇気でも使えたら話は別なのだろうが、あいにく海賊王を目指しているわけでもないしその仲間でもないのでここは足音や匂いで判別するしかない。

 

今のところ大型モンスターのものと思われる足音や振動、咆哮などは聞こえない。まぁそんな頻繁にに大型モンスターが出没するわけもないか。ゲームじゃないんだし。

 

俺は慎重にエリアを渡り、昨日(ハンター達が)ティガレックスを仕留めたエリアまでやって来た。昨日俺が食べた残りを頂戴しようとやって来たのだが・・・・・・。

 

そりゃぁ先客がいるよな

 

俺は物陰からティガレックスの死骸に群がっている奴らを見た。身長(?)は右から、17、14、18・・・78、83cm!

 

さすがにこれくらい見ればわかる。なにも温度差で室内の様子を読み取る必要もないし、うめき声を立てさせずに殺す必要もない。ついでに言うとドイツの科学は(ry

 

ティガレックスの死骸に群がっているのは5匹のスクアギル。

 

この氷海では寒さに耐えるためにたくさん食べなくてはならない。そのため一度手に入れた食料は絶対に離さないし、獲物がいれば確実に捕食できるように生物は進化するらしい。

 

俺、つまりスクアギルの成体であるザボアザギルがいい例である。ゲームでも捕食攻撃を多用して来たはずだ。

 

話を目の前のスクアギル達に戻そう。ティガレックスの死骸に群がっている内2匹がかなり大きめだ。他の3匹は俺より一回り大きいくらいで皆めいめいに肉を食っている。

 

俺も混ざるか?いや危険だろう。アイツらからしたら向こうからデザートが皿に乗ってやってくるようなものだ。

 

ここは大人しくしといてアイツらが残したものをいただくしかないか・・・・・・

 

しかしあれは俺が倒した(大嘘)も同然。横取りされるのも癪に触る。だからといってアイツらのデザートになってやるつもりもない。ぐぬぬ、どうしたものか。

 

中々諦めきれずに俺がスクアギル達の様子をジッと伺っているとあることに気がついた。

 

小さいスクアギルのうち1匹が急激に巨大化したのである。しまっていた足を展開して、たちまち大きいスクアギルと変わらない大きさになると何事もなかったのように食事を続けている。

 

俺が口をあんぐり開けて驚いていると、なんと残りの小さなスクアギルまでもが同じように巨大化した。

 

・・・・・・思い出した

 

確かスクアギルはハンターとかに噛み付いて栄養を補給すれば急激にデカくなるんだった。思えばスクアギルの登場ムービーがまさにそれだったな。

 

ってことは俺もそのうち大きくなれるってことか

 

俺はささやかな未来への希望を抱いてその場を後にした。アイツらがさらに巨大化した以上俺の勝ちの目は無い。俺が素知らぬ顔で肉にかじりついたところで許されるわけもなし。ここは撤退だな。

 

だがさて困ったことになったな・・・・・・

 

俺はエリア6まで引き返した後、悩みに悩んでいた。というのも食糧のあてが外れたからだ。スクアギルは氷海の掃除屋、あのティガレックスの死骸が残る可能性は万に一つもないだろう。とすると残った肉をもらうというのも可能性が低い。

 

となると狩りだが・・・・・・

 

ここで俺はまた思い悩む。というのも俺の体の小ささ故にこの氷海で俺が捕食できるモンスターがいないということだ。せいぜいオルタロスやブナハブラといい勝負だろう。ポポは無理だ、親がいると勝ち目がない。

 

魚という手もあるのだろうが氷海の極寒の海に飛び込む気にはなれない。それにようやく捕まえた魚が爆発して木っ端微塵とかなると俺のメンタルと命に関わるからね。そもそもモンハンの魚って爆発する奴多くない?やれカクサンだのハレツだの物騒すぎるでしょ。というか魚だと俺がドス大食いに食われる。

 

まぁ俺が小さいからいけないんだろうけどさぁ

 

いやだってその辺の鉱石よりも小さいんだぜ?ありえんでしょ。

 

ん?鉱石?

 

ここで俺はノーベルやエジソン、はたまたニュートンをも超える天才的発想によってあることを閃いた。

 

俺は鉱石に近づき、その周りの氷を掘り進む。生まれたてとはいえ爪はしっかりしているようで、少しづつではあるが徐々に深く掘り進めていく。なによりノコギリ状の頭が役に立った。

 

俺が目的のものを発見した時は既に結構深く掘り進んだ後だった。

 

これだろ!

 

そう言って俺が氷の中から掘り出したのは真っ赤な鉱石。おそらくこれは血石。大昔の生物の死骸や血やらが固まって鉱石になったものだ。ゲーム内では武器や防具の強化には一切使わずに生産アイテムの扱いだったが今はそんなルールは無い。

 

そして俺の第六感がこう告げている!こいつは食える!いやだって動物由来だし、多分いけるでしょ

 

俺は血石の塊を一つ口に放り込んで咀嚼してみた。

 

ガリッ!

 

・・・・・・硬い。が食えないというほどでもない。味は・・・・・・よく分からない。いや味はするんだけどなんの味かは分からないっていうかなんていうか。

 

もしかしたらモンスターになったせいで味覚が鈍くなったのかもしれない。だがともかく少しは腹にたまるようだ。不思議なことにね。

 

俺は次々血石を口にいれては派手な音を立てて咀嚼していく。一つ一つ味が違うようでまるで百味ビーンズを食べているような気分になった。いや百味ビーンズなんて実際食ったことねぇけどさ、ミミズ味だとか石鹸味とかあるんでしょ?だったら血味の石の方がマシじゃない?

 

・・・・・・なんだかサイコパスみてぇだな俺は。そのうち『ねぇねぇ百味ビーンズなんかより血石食べよーぜ!』とか言い出しそうだな。何それ怖っ。

 

俺は満腹になるまで食事を続けた。

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

あ〜食った食った

 

俺はゲップをしながら目の前の血石の鉱脈(?)を眺めた。

 

流石に俺の体ではそこら一帯の血石を食べ尽くすことなんてできるはずもなく、見つけた血石の鉱脈(?)を半分程度食べただけだがそれでも満腹にはなった。

 

そういややたらゲップが出るな。それも食事の後に。・・・・・・まぁいいか。

 

さて、巣穴に帰る前にティガレックスの死骸が残っていたらそれももらっておきたいからね。慎重に移動しよう。

 

エリア移動することしばし。意外なことに空にはもう月が登っていた。血石を食べるのに夢中になっていたせいか時間の流れがいやに早く感じられた。

 

エリア7に戻ってきた俺だが、その甲斐虚しくティガレックスの死体は骨を残して綺麗さっぱり食べ尽くされていた。その残されている骨すらもあたりに散らばり散々な状況だった。

 

あーあー、目玉はおろか脳みそまで・・・・・・

 

俺は少しでも食える部位や骨に張り付いた肉がないか探したが、まぁそんなものがあるわけもなく、スクアギルの掃除のうまさにただただ感服するよりなかった。おそらく俺が血石を食べている間に他のモンスターや別のスクアギルもやってきたのだろう。

 

しゃーない、頭蓋骨だけでも持って帰るか。なんかカッコいいし、巣穴に飾ろう。

 

俺はティガレックスの頭蓋骨の中に入り、まるで戦車のように歩き始めた。側から見ればティガレックスの頭蓋骨が突然動き出したようにしか見えないだろう。もうホラーである。

 

別に俺が無駄なことをしているといえばそれまでだが、よく考えてみてくれ。俺が今運んでいるのはティガレックスの頭蓋骨、つまり!“轟竜のアギト”なのだよ!そうすれば納得がいくだろう!俺はただであのレアアイテムを手に入れる権利があったのだ!であれば持って帰るよりほかあるまい!

 

俺は苦労してようやくエリア6を半分渡りきったところで一息ついて休憩していた。

 

しかしここで最悪の事態が発生した。

 

突如揺れる足元。そして地面から飛び出してきたのはテツカブラ。俺と同じカエルである。まぁあっちはまんま鬼“蛙”だけども。

 

やべぇな・・・・・・

 

俺はティガレックスの頭蓋骨の中で息をひそめる。もし見つかってしまえば命の保証はない。そして何よりこの頭蓋骨が目立つ!だれだよこんなの持って帰るって言った奴!邪魔なだけじゃん!持って帰るって言ったの俺だけども!

 

テツカブラは辺りを見回していたが、何か不審なものを見つけたせいでこちらに近寄ってくる。どう考えても頭蓋骨のせいである。

 

もう駄目だぁ、おしまいだぁ!

 

俺が頭蓋骨の中で絶望に打ちひしがれていると、意外にもテツカブラは軽く匂いを嗅いだだけで他のエリアに行ってしまった。どうやらただの死骸と認識したようだ。

 

寿命が縮むぜまったく・・・・・・

 

俺はそれから全速力で巣に戻り、頭蓋骨を飾って眠りについた。

 

しかしあの頭蓋骨代わり身作戦はかなり使えるな・・・・・・。みんなも轟竜のアギトは大切にした方がいい。主にスクアギルになったときに役に立つ。当てはまるやつ少なすぎるだろ。

 

そして次に目覚めた俺がティガレックスの頭蓋骨を見て驚き、天井に顔面を強打したのは別のお話。

 




誤字脱字、アドバイス等あればお願いします。

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