化け鮫転生放浪記   作:萌えないゴミ

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 フルフルの武器のセンスは好きだけどモンスターそのものは嫌いだったりします


死の秒読み

 

 

 あのポポの無惨な死体を見つけてから数日の間、俺は大型モンスターの存在を確かめることができていなかった。単純に巣穴から外に出ていないってのもあるが咆哮だのハンターとの戦闘らしき騒音も聞こえてこない。極めて不気味な数日だった。ほぼ確実にいるのに存在を確認できないってのは幽霊と何ら変わりない。だからこそ不気味なのだろうが。

 

 にしても困った・・・・・・

 

 というのもあの非常食として巣穴まで運んだ肉がもう無いからだ。いつどこで大型モンスターと遭遇するかも分からないのにフラフラ出歩くほど俺は馬鹿ではない。がそうなれば当然下手に外出はできない。せめてどんな大型モンスターがいるのかを確認しないことには始まらないと考えているうちにあれよあれよと日は過ぎ、気がつけば非常食はすでに小指の先くらいしかなくなっていた。俺の良心かよ。

 

 もうどっか他の地域に行っちまったんじゃねぇかな、ティガとかあいつ大して寒さに耐性無いくせにポポ食いたいってだけで氷海とか雪山に来てるらしいじゃん。どんだけポポ好きなんだよ。思えばハンターもポポは食べるし、タンは特産品にもなるくらいだから同じ物食べるティガは意外とグルメなのかもな。というかジンオウガとかラージャンとか氷属性に弱いくせに寒冷地方に進出してるやつ多すぎだろ自重しろやカプ(ry

 

 そんなわけで俺は無謀にも巣穴から出て食料を探している訳なのだが。当然食料のアテもない。俺にできることと言えばまたポポの死体が運良く落ちていることを願うくらいなもんだ。まぁ死体の掃除屋が数多くいる氷海においてそんなことはありえないんだよねぇ。残念なことに。

 

 さすがに遠出をし過ぎるのも怖いので俺は隣のエリア6に向かった。あそこは血石があるかもしれないし、最悪クンチュウでも食えないことはない・・・・・・、やっぱ虫はNGだろ。クンチュウがいたら無視しよ、虫だけにね!え?寒い?氷海だもの寒いのは当たり前だろ?べつにおれのせいじゃないですし、お寿司。そういや寿司食いたい。

 

 毛ほども関係ないことを考えながら俺は適当に地面を掘り始めた。ゲーム内では鉱石とかの採取ポイントはわかりやすく表示されてたけどそんなものはゲームの中だけなので己の第六感に賭けるしかない。なんか俺ギャンブルみたいなことばっかしてんな、そのうち鉄骨渡れとか言われそう。

 

 と、突如視線のようなものを感じた。振り返ってみるもそこには何もいない。

 

 ん?今誰かに見られてた気が・・・・・・

 

 俺ははてと首をかしげて改めて辺りを見回すが、そこには大型モンスターはおろかクンチュウやスクアギルの姿も認めることは出来なかった。気のせいだったのだろうか。何にせよ不気味だ。姿を消せるのはオオナズチかネロンガくらいなものだ、もちろんオオナズチは氷海に来ないしネロンガは言わずもがな。

 

 気味が悪ぃな、巣穴に戻るか・・・・・・

 

 俺はチキンにも血石を掘るのを諦めて、警戒しながら巣穴へ戻ろうとした。とそのとき、俺の背中に何か水っぽいものがかかった。

 

 その瞬間俺は持ちうる限りの全身の筋肉を使って横っ飛びに跳び退いた。

 

 俺の体は痛みとともに宙へ持ち上げられた。どうやら尻尾に噛みつかれたらしい。反射的に横に跳んだため、某ムービーのケルビのようにすでに手遅れといったところまで食い付かれることはなかったが、それでも丸呑みされるのは時間の問題だ。

 

 俺は鋭利な歯が尻尾に食い込む痛みに悲鳴を上げ、むちゃくちゃに後ろ足で尻尾に食い付いている何かに蹴りを入れると、ふいに後ろ足の爪がその何かに食い込み、“ブチリ”という音とともに最初に食い付かれたときの何倍もの痛みが襲った。俺は拘束から解放され、数メートル先の硬い氷の大地に打ち付けられた。

 

 壮絶な痛みにうめきながら俺は目の前、正確には氷の天井に器用に張り付いているモンスターを睨み付ける。ブヨブヨ、としか形容できない全身を包む真っ白な皮。その表面にはぬらぬらとした粘液が覆い、極めつけは本来なら顔と呼ばれるそこにあるべきはずの二つの目玉が無い。ここまで言えば誰だって俺を襲った犯人が分かるってもんだ。

 

 飛竜種フルフル。数多いるモンスターのなかでも最も不気味なモンスターの一つ。それは前述の俺の説明からも分かるとおり、あまりにも他のモンスターと容貌がかけ離れているせいだろう。俺はこいつは嫌いだが、愛好家もいるくらい人気があるらしく、ここまで好みが両極端に分かれるってのも珍しい。

 

 俺は自分の尻尾を確認するもそこには血にまみれた汚い切り口が噴水のように血が噴き出しているだけで、俺にあった尻尾はすでに無い。フルフルを見ると俺の尻尾を咀嚼し、ゴクリとその長い首を動かして飲み込んだ。その口が俺の方を向いて次はお前だと言わんばかりにニヤリとヨダレを垂らしながら笑みを浮かべているのを見て俺は再び背筋を凍らせた。白い体皮が俺の血にまみれて真っ赤な口元をさらに際立たせ、白い悪魔と言われるのも納得の姿だ。子供に見せたら泣き出すこと間違いなし、大人だってこんなん夜中に見たら失禁間違いなし。

 

 俺には正直勝ち目が無い、こうなるとジョースター家の血筋の者ばりに逃げ出すしかないわけだ。というわけで俺はフルフルに背を向け、脱兎の如く逃げ出した。

 

 だが五歩も行かないうちに俺は背後から電気ブレスを浴びせられその場にひっくり返った。やっぱりそううまくはいかないらしい。相手としても食料の乏しい氷海で見つけた貴重なタンパク源を逃したくないのだろう。ひょっとするとここ数日何も食べていないのかもしれない。だが!だからといって俺がそうやすやすと食われてやるわけにはいかないんでなぁ!

 

 俺は電流這い回る体を引きずって壁際に移動した。フルフルには目が無い、故に閃光玉も意味を成さない。だが事ここに至っては俺に有利に働く!目玉が無いならあとは聴覚か嗅覚、こうしてじっとしていれば俺を見失うかもしれない。臭い出すもの持ってないしな。そうした後にじわじわと逃げてやるぜ!

 

 だがフルフルは器用にも尻尾だけで天井に張り付き、臭いを嗅ぐような仕草をしたかと思うと俺の予想に反して正確にこちらを向いた。驚いたのは俺の方である。ピクリとも身動きしてないし、音なんか出してないはずだ。こうなってくると俺の心音や呼吸音を探知しているのだろうか?いやいくら何でもそこまでやられるとこちらとしてはタロットの星のカードの暗示のスタンドを発現させ、心臓を止めるしかやりようがない。ましてや臭いなんてそんな犬じゃあるまいし俺特有の臭いなんて無いはずだ。

 

 あ、臭い?

 

 俺の体をよく見ると尻尾から血が噴き出している。加えて体中からさっき食らった電気ブレスで体が焦げる煙が立ち上っている。今はアドレナリンのせいか痛みは感じないが、尻尾の出血は一刻を争う。このままでは出血多量でマジで死んじまう。

 

 どう考えても臭いだ。血の臭をプンプン臭わせてる俺はフルフルからしたら血の滴るレア肉ってところだろうか。もしかしたらこれから念入りに火を通してウェルダンにするのかもしれない。

 

 ってそんなこと考えてる場合じゃねぇ!

 

 俺は急遽予定を変更し、このまま強行脱出に切り替えた。壁際なんてボクシングのコーナーと変わらないじゃぁねぇか!わざわざ追い詰めやすいところに逃げ込んでしまったなんて畜生!

 

 だがフルフルもこのまま俺の強行脱出をただ見ているはずもなく、予想以上に素早い動きで天井から俺に向かって飛びかかってきた。

 

 フハハ!そう動くことは読み通りだぜ!

 

 俺は格好良く心の中でそう呟くと今一度跳躍して躱そうとするも足に力が入らない。恐らく出血のためだが、そう考える暇も無く、俺の何十倍もの重さの巨体が俺を弾き飛ばす。俺は砲弾の如く壁にぶち当てられ、無惨にも氷の大地に釣り上げられたマグロの如く転がった。生きが良くないのが唯一の違い。だがすでに他の誰かに生殺与奪の権利を握られていることはマグロと何ら変わりない。言うなればまな板の上のマグロ。

 

 俺は朦朧とした頭でなおも逃げようと考え必死に手足を動かす。すでにアドレナリンは切れ、痛みが俺の意識を彼方へ飛ばそうとする。尻尾の出血も未だ止まらずナメクジの這った後のように地を赤く染める。なんて様の死に損ないだ。

 

 フルフルはまだ微々たる速度だが俺が動いていることに気がついたのか、その場で立ち止まり、麻痺ブレスを放つ姿勢に入る。頭では躱そうと考えても体が動かない。当然の結果として麻痺ブレスは俺に直撃した。

 

 勝ち誇ったかのようにフルフルは甲高い咆哮を上げるが、耳を塞ぎたくても手すら動かせない。

 

 ピクピク震える俺にゆっくりと白い悪魔は近づいてきた。もうほとんどまともな思考はおろか呼吸さえも出来ているか怪しい俺の目にあの真っ白な体皮と対照的な深紅の口が開かれ、鋭利な牙が覗く。すでにまな板の上の俺は死んだも同然だ。

 

 すでに死は秒読みに入った。

 

 思考回路が電気で焼かれ、出血過多で朦朧としているため、死というものを明確に意識しながらも迫り来るそれに抗う術は無い。遺言や辞世の句を呟く余裕も無い。死ぬときくらい格好良く死にたかったものだが。

 

 死に際でもこんな下らないことを考えている俺に苦笑し、もうこんな思考することも無いのだと思って少し悲しくなった。そして恐怖は無く、眠るように俺の意識はここで落ちた。

 

 だからこそ俺はこの後に響いたであろう咆哮を聞くことが無かったのだが。

 

 




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