化け鮫転生放浪記   作:萌えないゴミ

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またしても投稿が遅れてしまい申し訳ございませんでした。


それでもブナハブラは飛んでいる

 

 

 

 ふと何かの気配がして目を覚ます。身震いをし、体を起こしてあたりを見回す。一匹のブナハブラがどこへ行くともなしに羽音を立てて飛んでいる。さっき感じた気配はこいつか。でもまぁこちらに害はなさそうだし放っておくとしよう。

 

 俺は大きく欠伸をして再び夢の世界に戻ろうと体を丸める。夜空には月が浮かび、寒さ故か星を鮮明に見ることができる。既に俺の住処はあのティガのアギトを運び込んだ穴ではない。そういえば俺がこっちの世界に来てからどれくらいの時が経ったのだろうか。巣穴の壁に記していた日数はとっくに忘れてしまった。最後に記したのはあのフルフルに襲われた日の朝だっただろうか。

 

 今でもフルフルのあの恐ろしさを思い出す。振り返れば奴がいるのでは、と後ろを振り返ることも多かった。それでも何とか俺は生き延びることができているわけだが、奇跡としか言いようのない幸運が重なってくれたおかげだろう。

 

 あの後たまたまエリアに入ってきたテツカブラに戦い、もとい自爆特攻を挑んだ俺は激闘の末に相手の口の中に飛び込むという無茶を敢行し、内側からテツカブラの心臓を食い破るという捨て身玉砕戦法により無事勝利を収めることができた。テツカブラには申し訳ないがこうでもしなければ俺に勝ち目はないので仕方ない。本当にあと一瞬俺が飛び込むのが遅れていたらあのでっかい牙と歯で俺の体がぺしゃんこになっていたのは間違いない。一気に食道まで飛び込み、胃の中から心臓に噛み付くことができたのはまさに幸運だっただろう。サメ映画見てないとできない芸当だな。まぁサメは俺なんですけどもね。

 

 ともかく正攻法ではないにしても無事格上の相手に勝利した俺は瀕死の状態ということもあり、一心不乱にテツカブラを食いまくった。思えばあの時は本能しか働いていなかったんだろうなぁ。あぁ、そういやそんなこともあったなくらいのぼんやりとした記憶しか残っていないのもそのためだろうか。

 

 そのあとは単純だった。無事動物タンパクを摂取できたが貧血のようにふらふらするので鉄鉱石バカ食いしたり、食えそうなものすべてに食いついたりしているうちにようやく正常な意識が戻ってきた。そして今に至る。

 

 体の大きさは以前とは比べ物にならない。以前はティガのアギトに隠れられるほどの大きさしかなかったが、今は大きなポポくらいはある。というかザボアの最小金冠くらいはあるのかな?曖昧この上ないがザボアの最小金冠のサイズなんてよく分からないですしお寿司。

 

 思えばあのテツカブラを倒してからはほとんど何かしらを食っていた記憶しかない。急速に成長しすぎでは?なんて自分自身でも思うが本来はこのくらいの速度で成長できないと氷海で生き延びるのは難しいのだから、思えば俺が晩成型だけだったようだ。

 

 そしてこの大きさに成長するまでに分かったことがいくつかある。まず一つ。俺がここまで成長するのに時間がかかった理由だ。そのためには俺の成体であるザボアザギルの生態に触れておく必要がある。

 

 ザボアザギルは化け鮫とも言われるほど目まぐるしく形態変化を行いながらハンターや外敵を撃退する。まずは通常状態、サメに短い手足を生やしたような姿をしている。ゲーム内では初期発見時はこの状態で特に目立った特徴はない。次に恐らく一番有名であろう氷纏状態。怒り状態になると体から特殊な液体を分泌して体の表面を凍り付かせ、文字通り氷の鎧を生成する。腕の肉質が硬化する上に攻撃もより厄介なものへと変わる。ナルガクルガのような溜めモーションからのブレスなど苦い思い出がたくさんある。

 

 そして最後に、ハンターにはボーナスとも言える形態。膨張状態だ。ハンターの何十倍はあろうかという大きさにまで膨張し、その巨体をもってハンターを潰しにかかってくる。体の大きさ故当たり判定が大きく、威力も高い行動が多い。だが最大の弱点である腹を晒し、行動も高威力とはいえ鈍重なものが多いためハンターとしては対処がしやすくこの形態のうちに一気にダメージを稼いでしまおうとするハンターは多いのではないか。一応ダメージを受けすぎると攻撃判定のあるガス放出を行いながら膨張状態を解除するようだが。

 

 そう、ここで最も重要なのはなぜそこまで急激に膨張できるのかいうことだ。答えは体内で特殊なガスを発生させているからだ。そしてこの特殊なガス。もちろん俺は研究者じゃないし成分なんて知らないが問題なのはそこではない。実はこのガス、スクアギルのころにも生成はされているのだ。

 

 スクアギルは生まれたてはとても小さく、生存に適していない氷海ではあっという間に他の捕食者の餌食になってしまうように思われる。そういったこともありスクアギルは急速な成長を求められた結果得たのが前述の特殊なガスだ。スクアギルは食事によってある程度栄養分を補給すると体内でガスを発生させ、体を膨張。急速な成長を遂げる。思い出せばスクアギルの討伐クエストで最初に入るムービーにはこんなシーンの描写があった気がする。

 

 そう、俺はこういったガスの発生を無視し続けた結果としてここまで成長が遅かったのだ。思えば食事のあとはいつもゲップばかりしていたが、あれがこのガスだったんだろう。つまり体内に溜め込み体を膨張、急速成長させるはずのガスを人間であったころの感覚としてゲップとして吐き出してしまっていたわけだ。知らなかったとはいえ超遠回りしてんじゃん俺ぇ・・・・・・。これ最初から知ってればもっと楽に生活できたじゃん。ほんと馬鹿なことしてたわけだ、スクアギルからしたら「あいつ何してんの?」「あえてガスに頼らないのが格好いいと思ってんじゃないの?ププッ、ウケるw」とか思われていたんだろうか。なにそれ恥ずかしすぎて死にたい。今頃とっくに成体になった元スクアギルに会ったら絶対笑われる。

 

 そしてまた一つ、ガスに関する問題だ。恐らく俺がそのガスを利用することなく放出しまくっていたせいで俺の身体はガスを不要なものと認識してしまったらしく、このガスのことに気が付く少し前から既に食後にゲップが出なくなっている。つまりここから挽回まき直しの急速成長は望めないということだ。本当にゲップなんてしていたせいで俺はいまだに同世代の元スクアギルよりもはるかに小さい。これはもう生存競争の敗北者といっても過言ではないのでは?

 

 ここまでを整理すると、ゲップのせいで急速成長ができない俺がフルフルに襲われて殺されかけ、どういうわけか生き延びられており、たまたまそこにいたテツカブラを倒して捕食。それからも食えるものがあれば何でも食う生活の末に何とか今の大きさにまで成長できた。というところだろうか。

 

 フルフルといえば、あの戦闘で俺が負った傷のことだが、一応治りはした。したが、その・・・なんというかね・・・・・・?単純な話、尻尾は完璧には生えなかった。少しばかり不格好な形で傷口が埋まっただけで、残念なことにすっかり元通り。というわけにはいかなかったのが辛いところだ。

 

 そして電撃によって全身にできた火傷については当然痕は残ってしまった。まぁ人間ならまだしもモンスターで火傷を気にする必要はないのであまり気にすることはないのがせめてもの救いだな。

 

 そして前述の尻尾の傷にはなぜか鉄の刃が生え、全身を覆う鱗には鉄分が付着している。

 

 ・・・・・・じゃねーだろ!なんで急にこんなものが生えるんだどう考えてもおかしいだろ!?何が悲しくて全身から鉄が出てこなくっちゃあいけないんだ?なんだ新手のスタンド使いか?どう考えてもヒットマンチームのリーダーの仕業である。落ち着け俺、落ち着くんだ。まずは素数をだな・・・・・・

 

 心当たりは一つしかない。俺がフルフルに襲われたときとそのあとの血が足りないとかでバカ食いした鉄鉱石のせいだろう。鉄分沈着とかいう病気もあるくらいだ。それのモンスター版ということだろうか。とにかく俺の素人考えおよび軽率な行動が招いてしまった結果だ。

 

 にしても恐ろしいのが何かしらの後遺症とかがないかということだ。ただ鉄の尾が生えて鱗に鉄が混じるだけなら攻守ともに完璧な交差雷魂攻撃と同じくらい素晴らしい構えなのだが、そんな都合のいいことがないのはダイアーさんから学んでいる。

 

 要するにこれは人間でいうところの病気なのだ。だれだって自分の体の一部から鉄の刃が生えてきて皮膚に鉄が混じり始めたら病院に青い顔して駆け込むのは想像するに容易い。そして案の定というか何というか。昨日から腹が痛い。激痛というわけではないのだが、鈍い痛みが胸の辺りから一定の強さで襲ってきている。

 

 俺がいるのはゲーム内でザボアザギルが寝る場所だ。今の氷海に大型モンスターはいないし問題ないだろう。大きさ的にもドスジャギィやウルクススよりも大きいのだからまぁ寝てる間にパックリ食べられるなんてことにはならなそうだ。

 

 がしかし、この腹の痛みで死んでしまうこともあり得ない話ではない。医者なんてものは当然いないし自分で胸掻っ捌いて原因を見るわけにもいかない。

 

 ともかく俺は通勤中のサラリーマンが腹痛抱えながら早く目的の駅に着いてくれと脳内で懇願するのと同じ気持ちで、ともかく寝てしまえばなんてこともあるまいと、またしても夢の世界へ行こうとするのだが、胸の痛みもありさっきのブナハブラの羽音のような小さな音にも神経質になってしまいレムレムできずにいる。そうこうしているうちにもまたブナハブラが羽音を立てる。俺は一つ寝返りうって羽音を聞くまいと丸くなった。

 

 いまだに胸の痛みは治まらないし酷くなってきている気さえするが、ブナハブラはそれでも飛んでいる。

 

 

 

 




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