選ばれし者と暁の英雄   作:黒猫ノ月

11 / 79
どうもです。

今回の話には原作を重視してる方には違和感を感じる場面があります。それを踏まえてお読み下さい。



9話

今日の晩餐会は普段と比べても賑やかだ。何故なら今日は10月31日。そう、ハロウィンである。夜空を模した天井には大小様々なジャック・オー・ランタンが浮かび上がり、生徒達を楽しませる。

 

しかし、生徒達はジャック・オー・ランタンになど目もくれない。東洋で言えば花より団子。つまりは今夜限定のパンプキンディナーに夢中だからだ。

 

特に今年入学した一年生達は、かぼちゃパイを初めとした絶品料理の数々の虜となっていた。

 

「にしてもこれは美味いな」

 

「そうだな、私の家でも通る美味しさだ」

 

「天下のコルドウェル家に言われるのならば、貴族の使用人もどきどもも泣いて喜ぶだろう」

 

そんなハロウィンの日でも変わらずグリフィンドールのテーブルで共にいるレイとシルヴィア、ギルバートも晩餐会を満喫していた。しかし、レイだけは素直に楽しめないでいた。

 

「ハーマイオニーは大丈夫かねぇ」

 

「前にも言ったが、レイが気にすることではない。身から出た錆、というやつだ」

 

「いやまあ、そうなんだろうけど。一応、友達だしな」

 

かぼちゃジュースを傾けながら、レイは女子トイレに篭ったハーマイオニーに想いを馳せる。

 

今までは人前では気丈に振る舞い、ステラと二人になると弱ってしまうハーマイオニーだったが、今日の呪文学の時にとうとう限界がきた。

 

レイはハーマイオニーが泣いて教室から出て行くところしか見えなかったが、見ていた奴が言うにはロンとハーマイオニーが口論しており、次第にハーマイオニーが爆発したのだ。

 

そのスイッチとなったロンへと今までの思いの丈を嵐のように叩きつけ、ロンが何かを言う前に出ていったと言うことだった。その時にエステルもハーマイオニーを追いかけて教室を出て行っている。

 

「グリフィンドールの秀才もその程度か。脆いものだな」

 

「おっと、レイブンクローの秀才は思うところがあるようだ」

 

シルヴィアのそのおちゃらけた言い方にギルバートは鼻を鳴らす。

 

「何故馬鹿どもの言うことをいちいち気にかけねばならん。そんな犬の餌にもならんものは叩き潰して堂々としておればいいものを」

 

「同感だ。それこそギルのように、な」

 

「ふん」

 

シルヴィアとギルバートはこの話題は終わったと目の前の料理に集中する。しかし、それを横で聞いていたレイは未だ上の空だった。

 

レイ自身もギルバートの言うことは最もだという考えだ。たとえ周りからどう言われ、どう見られようと、ハーマイオニーの側にはエステルがいる。

 

エステルは信頼できる人物だ。彼女が側にいてくれるなら他はどうでもいいのだろうに、とレイは思う。

 

しかし、それをエステルによって否定された。

 

「レイ。普通の人はね、自分がどう見られてるのかがとても気になるものなんだよ」

 

先日、二人になる時間があった時のことだ。レイは前から思っていたことをエステルに話したのだが、返ってきた答えがそれだった。

 

「ハーマイオニーは確かに勉強しない人や規則を破る人を見下してる。馬鹿でどうしょうもないって相手にしないようにしてる。でもね、だからって気にならないわけじゃないんだよ? ……人から嫌われるのって、無視されるのって、すごく怖いことなんだよ?」

 

エステルにそう言われたレイは何も言えなくなった。納得したのではない。エステルに遠回しに自分は普通ではない、と言われたことに衝撃を受けたのだ。

 

レイは確かに自分が他人とは違うということは自覚していた。しかし、それをいざ口にして言われると嫌でも意識してしまう。

 

父親を殺した自分は、普通の輪にはもう入れないのだと。

 

その時のエステルの悲しそうな顔を思い出しながら、レイはため息をつく。

 

「……普通って、なんだろうなぁ」

 

「……レイ?」

 

「唐突に何を言いだすのだ貴様は?」

 

レイの様子がおかしいことに気付いたシルヴィアとギルバート。二人は訝しげにレイを見る。

 

「ん? ……ああいや、別になんでも……」

 

レイがシルヴィア達を誤魔化そうと口を開くと、大扉が大きな音を立てて開かれた。出てきたのは闇の魔術に対する防衛術の担当教師でターバンが特徴的なクィレルだ。

 

「トロールが! 複数ホグワーツにっ! あぁ……」

 

それだけ言って大広間のど真ん中で倒れる。死んだと静まり返った大広間はしかし次の瞬間には大混乱に陥った。

 

しかし、どの寮も関係なく慌てふためく様子をレイを含めた三人は変わらぬ様子で眺めていた。

 

「トロールって、またなんでだ?」

 

「さてな。……もしかすれば、四階廊下の件が関係してるのかもしれないぞ?」

 

「もしくは“生き残った男の子”であるポッターを狙った闇の勢力の残党か」

 

「ああ、その線もあるか」

 

「……お前ら余裕だな」

 

「なに、鈍間なデカブツなど恐るるに足らんよ」

 

「学の足らん醜悪な塵に何故怯えねばならん。そういう貴様もそうだろうが」

 

「いやまあ。例え出くわしてもなんとかなるかなぁ、と」

 

魔法生物に対する知識は未だ不十分なレイもトロールは知っていた。体は巨体で頭は空っぽ、中には人語を話すものもいるそうだが程度が知れる。

 

いくらでも戦いようはあるだろうと思うのがレイの本音だった。そんなレイにシルヴィアは笑みを洩らす。

 

「ふふっ。それでこそレイだ」

 

「その余裕が命取りにならねばいいがな」

 

レイはギルバートの毒という名の心配に苦笑する。そして口を開こうとした時にダンブルドアの声が大広間に響き渡った。

 

「落ち着くのじゃ諸君! 各寮の監督生は生徒達を連れて寮へ戻りなさい。先生方はトロールの対処を頼みますぞ」

 

静まり返った生徒達はダンブルドアの声が染み渡り、落ち着きを取り戻す。そして各寮の監督生達が言われた通りに生徒達を先導していく。

 

「どうやら今日はこれでお別れか。お互い、帰りには気を付けるのだぞ?」

 

「ふんっ、もし出くわしたならば塵掃除に励むだけだ」

 

「お前らならトロールも裸足で逃げ出すよ。ま、俺は出くわしたら安全に逃げ……あ」

 

「? どうした、レイ?」

 

突然何かを思い出したような顔を次第に強張らせていくレイ。その様子を見たシルヴィアが気になって尋ねた。

 

「……このこと、ステラとハーマイオニーは知らない」

 

レイが答えた言葉とその表情で、シルヴィアとギルバートはこの後レイがどうするのかを悟った。

 

「ふむ。グレンジャーはともかく、マクレイアは私もパンをもらった恩がある。ここで借りを返すとしよう」

 

「ここで貴様を放っておくのも寝覚めが悪い。さっさと用件を片付けるぞ」

 

「お前ら……」

 

レイはシルヴィアとギルバートが自分がこれからやることに気付き、手伝うと申し出てくれたことに目を見開いた。他人に対して全く興味を示さない二人が、自分のために危険を冒してくれるというのだ。

 

レイは苦笑する。しかし、心の内では感謝に溢れていた。

 

「……ありがとな」

 

「ふふっ、気にするな。私はレイの力になりたいと思っただけさ。それより私はトロールよりも、どう教師陣に見つからないようにするかが問題だと思うが……」

 

「教師陣はトロール討伐に向かうはずだ。ならばトロールが通れるところを重点的に回るはず。ならば……」

 

「俺達しか通れない場所を行けば見つからないってわけか」

 

「そうだ。まずは一旦別れて各寮の監督生についていくぞ。そのあとは大広間がある廊下の先で……」

 

「レイ!」

 

合流する、とギルバートが言いかけたところで、レイへと声がかかった。三人が目を向けると、そこには慌てているハリーとロンがいた。

 

「ハリー、どうしたんだ?」

 

「ステラとハーマイオニーはトロールのことを知らないんだ。助けに行かなくちゃ!」

 

レイはハリーのその言葉に頷く。

 

「俺達も今その話をしてたんだ。今から知らせに行こうと思ってるんだが……」

 

そこでレイはシルヴィアとギルバートを見る。シルヴィアは苦笑し、ギルバートは眼鏡のブリッジに指をかけた。ここでハリー達を除け者にすれば、二人が騒ぎ出してこちらの計画が教師陣にバレるかもしれない。ならば連れて行ったほうがマシだ、と考えたのだ。

 

レイは確認を取った後にハリーへと振り返る。

 

「一緒に来るか?」

 

「! ……うんっ」

 

ハリーとロンは、レイはともかくシルヴィアとギルバートが手伝ってくれることに驚きを隠せなかった。その様子を見た二人は各々言葉を返す。

 

「私はマクレイアに借りがある。それを返すためだよ」

 

「さっさと行くぞ。一旦別れて廊下の先の角で合流する。話は走りながらでもできる」

 

驚愕から戻ってきたハリーとロンは慌てて頷く。ともかく、この二人が手伝ってくれるのなら心強いことに変わりはない。

 

レイ達はギルバートの言う通りに一旦別れて、大広間を出るのだった。

 

………………

…………

……

……

…………

………………

 

アリス・バウンディはハッフルパフの監督生に連れられて行く行列の最後尾にいた。周りではトロールが襲ってくるかもといった不安で陰鬱な空気が漂っていた。

 

友人同士で不安を口にする中、誰一人としてアリスへと声をかけることはない。アリスのことを、皆腫れ物を扱うようにするのだ。

 

アリスはこの学校の有名人達と出くわしてから、今までの生活が一変した。雑用係と言われていたほど扱き使われていたのだが、それをシルヴィアが庇い、その時の主犯達を脅したことが生徒達に伝わったのだ。

 

何故純血主義筆頭がわざわざ庇ったのかなどは、レイ達と行動してる時点で今更である。問題はスリザリンの女王様であり暴君とも最近言われる人物にアリスが目をかけられたことだ。

 

今まで通りアリスを扱き使い、それがシルヴィアの耳に入れば何をされるかわからない。そんな恐怖がハッフルパフ内に流れたのだ。実際、今までアリスを扱き使っていた者達はいつ報復されるかと恐怖に怯えていた。

 

アリスは別に、雑用係として扱き使われていたことに不満はなかった。自分の鈍臭さが原因なのは理解していたし、受け入れてもいた。

 

不満なのは今の現状であった。友達を作りたくても、頑張って声をかけただけで怯え、逃げ出されてしまう。

 

庇い、心配してくれたのは素直に嬉しく思っている。しかしかの女王様へとほんの少しだけでも文句を言いたいアリスだった。……怯えながらだが。

 

アリスは今考えても仕方ないと思考を切り替え、早く寮へと戻ろうと足を早めようとしたところで、轟音と悲鳴が聞こえた。

 

「きゃーーーーっ!!」

 

「ふぇっ!?」

 

その悲鳴に驚きの声を上げ、アリスはとっさに周りを見渡す。すると、アリスのほんの少し前の方で大きな棍棒を持った醜い巨体が曲がり角から顔を出していた。トロールだ。

 

先ほどの轟音は棍棒を振り下ろした音のようだった。

 

「ひっ……」

 

その姿を見て恐怖に支配されそうになる。しかし、幸いにもアリスの場所からなら反対側は逃げれば事なきを得る。実際、生徒達は我先にとアリスを置いて逃げ出してしまっている。それがアリスに少しの余裕を持たせた。

 

そして、その余裕が……アリスが自身の友達の現状を把握するのに手を貸してしまった。

 

「あっ……」

 

それは、つい先日シルヴィアに脅された三人組の少女達だった。ちょうどトロールと出くわしてしまったらしく、凹んだ石畳のそばで座り込んでいる。どうやら直撃は免れたが、棍棒が当たっていたかもしれないという恐怖で腰が抜けてしまっているようだった。

 

このままでは、少女達が殺されてしまう。

 

そう考えたアリスの行動は早かった。自身の近くまで飛び散ってきた石畳の破片を手に取り、それをトロールへと向かって投げたのだ。

 

「……えいっ!」

 

か弱い少女の投擲などたかが知れている。しかし、それは放物線を描いてトロールへと当たった。

 

「ぼぁ……?」

 

「こ、こっちですっ!」

 

「あ、アリス……?」

 

少女達の一人がアリスに気付いたが、今は構っている場合ではない。アリスはもう一度石ころを投げて、トロールの意識をこっち向けようとする。

 

それがまたトロールへと当たり、鬱陶しいと感じたのか、トロールはアリスの狙い通り標的をアリスへと変えた。

 

しかし、アリスにできたのはここまでだった。

 

「に、逃げて、下さいっ……!」

 

「あ、あんた……」

 

「なにしてるのよっ」

 

「わ、わ私が、ひ、引きつけますからっ。早く……逃げて!!」

 

アリスにはもう、それだけを言うのが精一杯だった。鈍間で鈍臭い自分は魔法もロクに使えない。逃げようにも、迫るトロールという恐怖によって足は震えるだけで動くこともない。

 

……あとは、叩き潰されるのを待つだけだった。

 

着実に近づいてくるトロールに再び恐怖がアリスを埋め尽くそうとする。しかし、彼女に後悔はなかった。

 

友達が助かる時間を作ることができた。この時間で教師の誰かがやってきてくれるかもしれない。私にしては上出来だ、とアリスは涙を浮かべ、恐怖に顔をひきつらせながらも……笑う。

 

アリスは、こんな自分でも、友達の役に立てたことが心から嬉しかった。……それが、彼女を恐怖になど犯させなかった。

 

とうとうトロールがアリスの目の前にやってくる。トロール鬱陶しい蟻を潰すために、棍棒を振り上げる。

 

アリスは最後に家族へと謝り、そして……自分を家族以外で初めて励ましてくれた人へと謝った。

 

ごめんなさい、最後までお友達にはなれませんでした……と。

 

アリスはトロールがいざ振り下ろさんとする棍棒を見て目を硬く瞑る。そして……。

 

 

「エクスペリアームスっ!!」

 

 

励ましてくれた人の声が聞こえた。

 

………………

…………

……

……

…………

………………

 

時は少し遡る。

 

レイとシルヴィア、ギルバートはハリーとロンと予定通り合流し、ステラとハーマイオニーがいるであろう女子トイレへと向かっていた。

 

「……よし、ここからならば最短で目的地へと行ける。走るぞ」

 

ギルバートのその言葉に皆が走り出す。しばらく走ると、T字路に差し掛かる。

 

「ここを左に行けば、目的地だ……」

 

「きゃーーーーっ!!」

 

「な、なんだっ!?」

 

「右から聞こえたぞ!」

 

ギルバートの言葉を裂くように叫び声が聞こえ、それにハリーとロンは動揺した。

 

しばらくすると右から生徒達が走ってくるの見えてきた。どうやら何かから逃げているようだ。それは間違いなくトロールだろうが。

 

「トロールが出たな」

「ふん、逃げ惑っているのはハッフルパフの一年どもだ。見た顔がある」

 

「まもなく教師が駆けつけるだろう。私達は早く左へ……」

 

シルヴィアは唐突に話を打ち切る。この広大な石畳の廊下に響き渡る声に聞き覚えがあったからだ。それは、T字路の右奥から聞こえてきた。

 

「この声は……あの時の子か」

 

「シルヴィ?」

 

レイはシルヴィアが何を気にしてるのか分からなかった。シルヴィアは頭脳だけでなく、身体能力も人並み以上に優れている。それは五感もそうであり、今回は聴覚が仕事をした。

 

「レイ、ギルバート。どうやらこの奥でアリス・バウンディがトロールに襲われている」

 

「なに!?」

 

「…………」

 

シルヴィアの言葉に驚愕するレイと眼鏡に手を添えるギルバート。レイは一瞬逡巡し、すぐに行動に移した。

 

「ハリー、ロン。二人はこのまま左に行ってステラ達を頼む。俺達は右に行く」

 

「え!?」

 

「頼んだぞ! ハリー!」

 

「ま、待ってよレイ!?」

 

ハリーの制止の声を振り切り、レイはシルヴィアとギルバートを連れて一気に駆け出した。レイはステラ達とアリスの両者の現在の状況を鑑みて、この判断に至った。

 

ステラ達は襲われるかもしれないが、アリスは現在すでに襲われているのだ。さらに、怪我人などの現場の情報がないため、シルヴィアとギルバートどちらかをステラ達に割くのも悪手だと考えたのだ。

 

また、ロンはともかくハリーならばステラ達を無事に寮へと送ってくれるだろうという考えもあった。ここ二ヶ月ほど共に過ごした友人が、勇気と優しさがあり、ステラ達を任せるにたる人物であるのはレイがよく知っていた。

 

シルヴィアとギルバートは何も言わなかったが、レイのこの考えに賛同し、黙ってレイに付いてきていた。

 

そして三人はT字路右奥の曲がり角を曲がった。そこで見たのは、トロールが棍棒をアリスへと振り上げているところだった。それを見た三人は即座に杖を抜き、一番手をレイがもらった。

 

「エクスペリアームスっ!!」

 

レイがホグワーツに来て最初に覚えた魔法をトロールの右手へとぶつける。それは見事命中し、トロールの右手から棍棒を弾き飛ばす。それを見たトロールは突然なくなった棍棒を見て首を傾げる。

 

「ほう、見事な武装解除呪文だ。なら私は……オブスキューロ、目隠し!」

 

「ごぁっ!?」

 

シルヴィアの魔法によって棒立ちしていたトロールの視界が奪われる。突然真っ暗になったトロールは視界を奪うものへと手を伸ばす。

 

「ギル」

 

「ふんっ。グリセオ、廊下よ滑れ!」

 

しかしギルバートによって石畳の廊下が滑るようになり、それどころではなくなるトロール。どうにか転ぶことはなかったが、バランスを取るのに精一杯のようだった。

 

それを見たレイ達は頷き合い、声を揃えてトロールへと止め刺した。

 

「「「エクスペリアームスっ!」」」

 

三人の魔法がトロールの上半身へと集中し、見事に命中する。武装解除呪文は基本は相手の武器を飛ばすだけなのだが、練度や魔法力によっては敵を吹き飛ばすこともできる。

 

それが三つ。いくら巨体を持つトロールといえど、これは分が悪かった。

 

「ぐごぉっ!?」

 

三つの武装解除呪文によって上半身を打たれたトロールは、足元が滑り堪えることもできず後ろに思い切り倒れていく。最後は後頭部に廊下が直撃して、トロールは気を失うのだった。

 

その間、僅か一分と満たない。レイとシルヴィア、ギルバートの三人は、初の戦闘で息のあった見事な勝利を納めたのだった。

 

ギルバートは廊下を元に戻し、念のためにトロールの側まで行ってその手と足を魔法で縛る。レイとシルヴィアは未だ呆然としているアリスへと駆け寄った。

 

「おいバウンディ、大丈夫か!」

 

「…………」

 

「ふむ、見た所大きな怪我はないようだが……バウンディ?」

 

「…………」

 

レイとシルヴィアの呼ぶ声にも反応せずに立ち尽くすアリス。その様子にレイとシルヴィアか顔を見合わせ、アリスの肩を揺すったり目の前で手を振ったりする。

 

すると突然、アリスがその場に座り込んだのだ。そして……。

 

「……っ、ひっく」

 

「ば、バウンディ?」

 

「うわぁぁぁーーっ、ひっ……うあぁぁーーっ……」

 

「お、おやおや」

 

レイとシルヴィアが慌てるほどに大声で泣き出したのだ。今まで堪えていたものが安心と共に決壊したのだろう。アリスはただただ泣き声を上げる。

 

それを見たレイはまるで昔のアリアのようだ、と自身の妹のことを思い出しながら頭に手を乗せて撫でる。シルヴィアは未だオロオロしていたが、レイに目線で促されて、戸惑い気味にアリスを正面から抱きしめた。

 

「よしよし、よく頑張ったな。もう大丈夫だからな?」

 

「そ、そうだぞ、私達が倒したからな。だ、だから泣き止んでおくれ……」

 

「ぐすっ、ひっく、うわぁぁーーっ……」

 

しかし、人の温もりがさらにアリスに安心感を持たせ、より一層泣き声を上げさせることになった。

 

それをレイは慣れたように、シルヴィアはぎこちなくアリスを宥める。二人にとって、トロールよりも今のアリスは難敵だった。

 

ギルバートは奥にいた三人の少女達の無事も確認し終え、周りを警戒しながらその様子を眺める。

 

「トロールは複数と言っていたであろうが。この愚か者どもめ」

 

ギルバートは全く警戒していないレイとシルヴィアに向けてそう言うが、そこに棘はない。

 

ギルバートは眼鏡のブリッジに指を添え、泣き続ける少女と戸惑う友人達を教師陣が来るまで眺め続けるのだった。




如何でしたか?

多分皆様違和感を感じたのではないでしょうか。どことは言いませんが(・_・;
もしもっと相応しい呪文などあれば教えていただけたらと思います。

次回、そして四人は出会った。

感想や意見、評価やアドバイスなどを心よりお待ちしております。
これからも応援よろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。