選ばれし者と暁の英雄   作:黒猫ノ月

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どうもです。

天才と秀才節が炸裂します。


11話

レイ、シルヴィア、ギルバート、アリス。この四人組は今ではホグワーツにおいて知らない者がいない有名人となっていた。

 

まずはグリフィンドールのレイ・オルブライト。努力家であるが自己評価が低い。しかし自身の大切なもののためならば正面切って戦える勇敢さを持つ。かのスリザリンの女王様の心を溶かしたことでも有名で、女王様が暴君と化した時、止められるのは彼だけだと言われている。

 

次にスリザリンのシルヴィア・コルドウェル。なにをさせても完璧にこなす天才。純血筆頭一族だが本人はそれを嫌悪しており、努力や才能を愛する。他人には基本冷たいが、弱いものいじめを許さない正義感も持つ。

 

そしてレイブンクローのギルバート・エリス。学ぶことを尊ぶ孤高の秀才。それ故に学ぼうとしないものをすべからく嫌悪する。傲岸不遜で毒舌家だが、自身が認めたものに対しては少しマイルドになる。

 

最後にハッフルパフのアリス・バウンディ。心優しく純粋、友達のために恐怖に立ち向かう勇気を併せ持つ。気弱な性格から扱き使われていたが、シルヴィアの寵愛を受けたために、誰にも手を出されなくなった。現在友達募集中である。

 

それぞれが違う寮でありながらいつも一緒に仲良くしている様は、ホグワーツ創設者達を思わせる光景だった。

 

そんな四人がともに行動するようになって一月ほど経った。それほど経つと周囲も慣れていき、それほど注目することもなくなった。また四人での行動も、この頃になるとある程度のパターンができていた。これはそんな四人の現在の朝の行動である。

 

朝食の時間、まず最初に大広間にやってくるのはギルバートだ。彼は本を片手に躊躇なくグリフィンドールのテーブルの先端に座り、誰かが来るのを待つ。

 

次に来るのはアリスだった。彼女は意外にも早起きが得意で、いつも一番目か二番目には大広間へと顔を出す。

 

そんなアリスはギルバートがいるのを見てホッと胸をなでおろす。気弱な彼女は一人で他寮のテーブルに座ることに未だに抵抗があったからだ。

 

彼女はギルバートへとぎこちなく朝の挨拶をする。

 

「お、おはようございますっ。ギルさんっ」

 

「ああ」

 

ギルバートが愛想なく返事をして、その正面にアリスが座る。

 

「…………」

 

「…………」

 

それから二人の間に会話はなく、ただページをめくる音だけが流れる。アリスは居心地悪そうに体を揺らす。

 

一月ほど経ったが、アリスは未だギルバートへの接し方に迷っていた。最初の頃は彼の毒舌に落ち込み、嫌われてるのではないかと思っていたのだが、それはレイとシルヴィアによって否定された。

 

ギルバートが本当に嫌いならば、アリスが側にいることを許しはしない。さらに毒舌ももっと苛烈なものになるはずだ、と言われたのだ。

 

そう言われたアリスはギルバートのことをあまり知らないことを自覚した。なのでアリスは彼を観察することにしたのだ。

 

するとまあ出るわ出るわ毒舌の嵐。自分にもレイにもシルヴィアにも他生徒にも果てには教師にさえ毒舌をぶつける。しかしアリスは気付く。自分やレイ、シルヴィアに対する言葉や態度が他と比べても明らかに優しいことに。

 

また、ギルバートはよくシルヴィアと一緒にレイとアリスに勉強や魔法を教えていたのだが、彼は中々理解できないアリスに対して、いつもの毒舌を吐きながらも途中でやめることなく最後まで教えてくれていた。

 

アリスも聞いていたギルバートの信念。そんな彼が尊重する者の中に挫けず学ぶアリスはしっかりと入っていた。

 

そうしてギルバートを観察したアリスは、自分がギルバートに嫌われているという思いを払拭することに成功した。……のだが。

 

「……なんだ?」

 

「い、いえっ、何でもないです……」

 

じっと見ていたことに気付いたギルバートが何事かと尋ねるが、何を話せばいいのか分からないアリスは何でもないと誤魔化すしかなかった。

 

自分が嫌われていないと分かったアリス。しかしそれはギルバートとの仲が進展したわけではない。友達作り初心者のアリスには個性的すぎるギルバートは荷が重かった。

 

そしてギルバートもアリスとの距離感に珍しく悩んでいた。自分の在り方を変えるつもりはさらさらないが、いちいち落ち込まれるのはいい気はしない。

 

一月続いたこの微妙な空気に嫌気がさしたギルバートはため息を一つ、読んでいた本を閉じてアリスに自分から話しかけた。

 

「アリス」

 

「えっ……あ、な、なんですかっ?」

 

ギルバートから話しかけてくれたことに一瞬驚いたアリスはその後すぐに顔を輝かせた。今まで勉強の時以外は滅多に話しかけてくれなかったギルバートが自ら話しかけてくれたのだ。嬉しくないはずがなかった。

 

「貴様の父親は闇祓いだったな?」

 

その言葉に頷くアリス。アリスの家は二代続く闇祓いの家であり、元闇祓いの祖母はかのマッド・アイと共に闇の帝王が活動していた当時名を馳せた担い手であった。

 

「は、はい。えと……気になるんですか?」

 

「少しな。将来の候補として考えているだけだ。貴様の分かる範囲でいい、どのような仕事をしてるか聞かせてくれ」

 

「はいっ」

 

それからアリスは嬉しそうに父親の仕事について話した。どんなことをしてるのか、どれくらい忙しいのか、仕事上の怪我はどうなのかなどをギルバートに語っていく。

 

ギルバートはこれがきっかけで他人に対する気遣いを少しづつ覚えていくこととなる。

 

しばらく話していると、二人の元にレイがネビルを連れてやってきた。ネビルは寝坊しかけることが多く、こうしてレイに起こしてもらって一緒に大広間へと行くのが常だった。

 

レイはネビルと別れてアリスとギルバートの元へとやってきたのだが、目の前の光景に目を見開いた。

 

「これは驚いた。いつのまに二人はそんなに話すようになったんだ?」

 

「ふんっ、余計なお世話だ」

 

「あ、おはようございますっ。レイさん」

 

「おう、おはよう。それで、どうなんだ?」

 

レイはギルバートの横に腰掛けて尋ねる。それにギルバートは答えずアリスが元気よく答えた。

 

「ギルさんが闇祓いの仕事に興味があるみたいで、そのことをお話ししてたんです。私の父親は闇祓いなので……」

 

「へー、そりゃいいな。……っておいギル、お前闇祓いになりたいのか?」

 

「候補の一つとして考えているだけだ。お前もそうだろうが」

 

「……なんで分かったんだよ」

 

「貴様の呪文学や闇の魔術に対する防衛術の熱心さを見れば明らかだ。あれで分からないはずがないだろうが、愚か者め」

 

「あいも変わらずよく見てるなぁ。ってなわけで、アリス。俺にも聞かせてくれないか?」

 

「はいっ、私が分かる範囲でですけど……」

 

こうして今度は三人に増えたことでより話が盛り上がっていく。そして、話のネタが尽きてきた頃に、いいタイミングで最後の一人が大広間へとやってきた。

 

「おや、私を仲間外れにして盛り上がってるとは何事かな?」

 

シルヴィアもレイと同様にアリスとギルバートの仲が進展しているのを見て驚くが、そのことを素直に嬉しく思い自分もその輪に入ろうとアリスの横に座った。

 

「よっ、おはよう」

 

「相変わらず遅いことだ」

 

「おはようございますっ、シルヴィさん」

 

「ああ、おはよう。……ふふっ、今日もアリスは可愛いな」

 

「え、えへへ」

 

シルヴィアは慣れたようにアリスの頭を撫でて、アリスも嬉しそうにはにかんだ。一月もすればアリスもシルヴィの甘やかしには慣れてきて、今では素直に受け取れるようになっていた。

 

一通り満足したシルヴィアは先の話題について話を振る。

 

「それで、何を盛り上がっていたのかな?」

 

「ああ、実はな……」

 

こうしてシルヴィアも話に加わり、しばらくして朝食が始まる。これが今の四人の朝の始まりだった。

 

………………

…………

……

……

…………

………………

 

ギルバートとアリスの仲が進展した朝食から数日たったある日のこと。

 

「ニコラス・フラメル?」

 

レイはグリフィンドールの夜の談話室でハリー、ロン、ハーマイオニー、エステルの四人に囲まれながらその人物について尋ねられていた。

 

「うん。その人が四階廊下の件に関わってるんだって」

 

エステルの言葉にレイはため息をつく。

 

「お前ら、まだそのことに関わってたのか。しかもそれを否定していたハーマイオニーまで加担して」

 

ハーマイオニーはバツが悪そうな顔をするが、それでもなおレイへと話しかけた。

 

「そうも言ってられなくなったの。ねぇレイ、トロールの事件の後、スネイプ教授が足を怪我してたの覚えてる?」

 

「……ああっ、そういえば医務室で合流した時に足を引きずってたな」

 

それからハーマイオニーは順序立ててレイへと経緯を話していく。自分達はスネイプが四階廊下の奥に隠されたものを狙っていると疑っており、あの日はトロールは陽動でスネイプは三頭犬のところに行ったのではないか、その際に足を噛まれて怪我をしたのではないか、と。

 

さらにこの間のハリーが初出場で勝利を飾ったクィディッチでも、ハリーの箒がおかしかったのはスネイプが目線を逸らさず呪いをかけていたためで、邪魔をしたハリーを事故に見せかけて殺そうとしたのだと言った。

 

それが失敗したスネイプは次の試合で審判となり、同じくハリーを事故に見せかけて殺そうと画策したのではないかと締めくくった。

 

「ハグリッドは取り合ってくれないし、多分他の教師もそうだわ。だからもし何かあった時のためにあそこに何があるか知りたいのよ」

 

「そんな時にハグリッドが口を滑らしてそのニコラスナンチャラって名前を言ったんだ。そいつが関係してるのは間違いないぜ」

 

「……で、それが誰か調べても分からないから天才と秀才に聞いて欲しいと?」

 

「だめ、かな?」

 

最後にエステルが上目遣いでレイにだめ押しした。それを受けたレイはハーマイオニーとロンの話を聞き、腕を組んで考え込む。

 

まずは最初の疑惑。本当に犯人はスネイプだったのか? レイはこれに対して断定はできないと考える。例えばスネイプはハリー達のようにトロールが陽動だと気付き、四階廊下へと守りに行ったがヘマをして三頭犬に噛まれた可能性があるからだ。

 

次の疑惑であるハリーを事故に見せかけて殺そうとした件。これは話だけ聞けばスネイプは黒だ。ハーマイオニーがスネイプの邪魔をした瞬間に箒が元に戻ったのだ。疑われても仕方ない。

 

そして最後の疑惑。今度は近くで事故に見せかけて殺そうとしたのか? これは無理があるのではないかとレイは考える。なぜなら競技場はダンブルドアが目を光らせているからだ。

 

ダンブルドアの視界外から干渉するのならまだバレないかもしれないが、流石に見られていればバレる可能性は極めて高い。一度失敗したからといって、そんな危険を冒すだろうか? それがレイには疑問だった。

 

レイは考えた結果、スネイプは三割黒、と断定した。

 

これを言おうか迷ったが、所詮自分が考えたことと言わないことにした。自己評価の低さがこの時は祟ってしまった。

 

組んでいた腕をほどき、レイはハリー達へと顔を向ける。

 

「まあ、聞いてみるだけ聞いてみるか。けど、あまり期待するなよ? あいつらも基本関わらない方針だし、ニコラス・フラメルが誰かわかっていても俺に教えてくれない可能性はあるからな」

 

その言葉を聞いたハリー達は元気よく頷いた。それはそうだろう。自分達がかなり調べてもニコラスのニの字すら出てこなかったのだ。可能性が少しでもあればいいというスタンスだった。

 

この夜はこれで解散となり、レイは翌日に時間ができたときにでも聞こうと読んでいた教科書を閉じるのだった。

 

………………

…………

……

……

…………

………………

 

「ニコラス・フラメルは『賢者の石』を作った著名な錬金術師だ。その石はどんな金属も黄金に変え、『命の水』という飲めば不老不死となるものを作り出すという。『賢者の石』は錬金術の極みとも呼べるものだ」

 

「……マジかよ」

 

今日は休日であり、レイ達は空き部屋で暖炉を囲んで課題に取り組んでいた。外に行こうにも流石にこの時期は寒いため、こうして温かい場所を選んでいた。

 

そして課題もひと段落ついたところでギルバートに尋ねてみたら普通に答えたのだ。ギルバートが秀才とはいえ、いくら調べても出てこないと言っていた名前をこうもあっさり答えたことにレイは驚きを隠せなかった。

 

「というより奴らの目は節穴か? ニコラス・フラメルほどの人物が載ってる本を見つけられないとは。呆れ果てて物も言えない」

 

「ギルさん、その人はそんなに有名な人なんですか?」

 

おそらく知らなかったのであろうアリスの問いに、ギルバートは眼鏡のブリッジに指をかけて答える。

 

「当たり前だ愚か者。先も言ったが『賢者の石』は錬金術の極みだ。それを作り出した人物が有名でないはずがないだろう」

 

「ほぇ〜。す、すごい人なんですね」

 

アリスは素直に驚いているが、レイとシルヴィアはそれどころではない。四階廊下に何かが守られているとは思っていたが、それがまさか『賢者の石』というとんでもないものだったのだから。

 

シルヴィアは顎に細く綺麗な手を添えて考える。

 

「ふむ。それほどのものならばダンブルドアが守っていても不思議ではないな。問題は……」

 

「誰がそれを狙っているのかってことだ」

 

「ふぇっ!? スネイプ先生じゃないんですかっ?」

 

レイの話を素直にそのまま受け取ったアリスにレイとシルヴィアは微笑ましくなるが、今は脇に置いておく。

 

「アリス、スネイプ教授は二割、よくて三割黒というところだろう」

 

シルヴィアの言葉にレイとギルバートが頷く。

 

「実際黒っぽいのはクィディッチ初戦の時だけだ。それも今思えば箒から落ちても教師の誰かが助けただろうし、ハリーを殺すには確実性にかける」

 

「奴らの推測にはスネイプ教授に対する偏見が多分に含まれている。探偵ごっこにすらなっていないとは全くもって嘆かわしい」

 

話を聞いたアリスは目をキラキラさせて三人を見る。

 

「ふわぁ。みんなすごいですね! 私はすっかりスネイプ先生が犯人だと思ってました」

 

「貴様は疑うということを知れ、愚か者め」

 

「はぅっ」

 

ギルバートの言葉に肩をすくめて反省するアリス。これを見て二人は再び微笑ましくなり、我慢できずにレイは彼女の頭を撫で、シルヴィアもぎゅっと抱きしめたのだった。

 

「ふぅ、さて……では誰が犯人なのかというところだが」

 

シルヴィアは腕の中にアリスを抱えて座り話を始める。なんとも締まらない光景だが、レイとギルバートは気にせず進める。なお、アリスは恥ずかしげだったが、これも二人はスルーした。

 

「ていってもこれだけじゃ分からないだろ?」

 

「そうでもない。目的がわかってるのならば絞るのは難しくはない」

 

そう言ってギルバートは眼鏡のブリッジに指をかける。

 

「『賢者の石』の力は、金属を黄金に変えることと不老不死を得る『命の水』を作り出すこと。ならばこのどちらかが目的であることは間違いない」

 

ギルバートの話をレイ達は黙って聞く。

 

「そしてここはかのダンブルドアのお膝元だ。そんな場所に黄金を求めて盗みに来ようとは考え難い。ならば……」

 

「不老不死を得ること、それが犯人の目的」

 

レイの言葉に頷くギルバート。そして話を続ける。

 

「では犯人は誰か。ダンブルドアのお膝元から無理をしてでも盗み出し、不老不死を得たい誰か。それは……」

 

「死喰い人」

 

その単語にばっと振り返るアリス。闇祓いの父を持つアリスにとって、その単語は聞き捨てならないものだったからだ。なぜならその名を持つ者は今は亡き闇の帝王の忠実な僕であり、闇祓いの天敵でもあるからだ。

 

その単語を放ったシルヴィアは、怯えた様子を見せるアリスを少し強めに抱きしめ、頭を撫でて宥める。

 

「私にはそれともう一人しか犯人は思いつかん。死喰い人内で不老不死を経て世の中に復讐してもよし、ご主人様を蘇らせるために使ってもよし。命をかけて盗まない手はないな」

 

シルヴィアのある言葉に目を見開くレイとアリス。しかしギルバートだけが変わらず落ち着いた様子を見せていた。

 

「ちょっと待て。聞いた話だと『賢者の石』は不老不死を得こそすれ、死人を蘇らせることなんてできるのか?」

 

レイのこの問いに答えたのはギルバートだった。

 

「『賢者の石』は製作者でもあるニコラス・フラメルでさえ理解しきれないものであるという。どうにかすれば復活できる可能性が無いわけではない」

 

そして追い討ちをかけるようにシルヴィアがとんでもないことを口にする。

 

「そして……闇の帝王が滅んだとは限らない」

 

その言葉は再びレイとアリスを驚愕に陥れた。しかし、これにすぐに反応したのはアリスだった。

 

「そ、そんなはずないです! だって、“生き残った男の子”であるポッターさんが……」

 

「そう、“生き残った”だ。“倒した”ではないんだよ。なんともうまく言っていると感心したものだよ。この通り名を聞いたときにはな」

 

これにはアリスは衝撃を受けざるを得なかった。そこにギルバートがさらに追い討ちをかける。

 

「その通りだ。公式には魔法省より闇の帝王は倒されたとあるが、その光景を目にした者は誰もいない。最後にポッター親子が狙われ、その後闇の帝王は突然姿を消した。そのポッター夫妻は死んでおり、なんの力もない赤子だけが生き延びていた」

 

ギルバートは混乱しているアリスをしっかりと見据え、結論を述べる。

 

「魔法省は状況証拠と予想だけで闇の帝王は倒されたと発表したのだ。馬鹿という言葉すら生ぬるい、腐り果てたドブネズミの死骸のようだ」

 

そう言ったギルバートの顔は心の底から嫌悪しているといったふうだった。

 

アリスは混乱していたが、レイは逆に納得していた。今まで何故赤ん坊が闇の帝王を倒せたのか疑問だったのだが、答えは簡単だった。誰も分からなかったから、状況証拠と予想だけでぼかしていただけなのだ。

 

レイはふと、シルヴィアの言うもう一人の犯人に思い至った。

 

「ってことはだ。シルヴィの言うもう一人の犯人は……」

 

「闇の帝王ご本人、ということだな」

 

「やっぱりかぁ……」

 

レイはおでこに手を当てて天井を見上げる。まさか自分の話したことがここまで壮大になってくるとは思いもしなかったのだ。

 

しかしアリスはレイの比ではない衝撃を受けていた。今まで自分が信じていたものがあっさりと崩されたのだ。反論しようにも、シルヴィアとギルバートの言葉は説得力があり過ぎた。すでにアリス自身、これが真実だと嫌でも理解していたのだ。

 

そして、もっともショックだったのは……。

 

「……お父さん達は嘘をついていたんでしょうか?」

 

アリスは振り絞るように言う。二人のいうことが真実なら、魔法省に所属する闇祓いたる父親と元闇祓いであった祖母はずっと世を、家族を騙していたことになる。それは闇の帝王が生きてるかもしれない恐怖よりも、彼女を何よりも苦しめた。

 

そんなアリスを見ていられなくなり、シルヴィアが声をかけようとしたそのとき、ギルバートが無造作に杖を振った。すると……。

 

「はぅっ!?」

 

パァンという音ともにアリスの頭が後ろにのけぞった。アリスの後頭部が胸に当たったシルヴィアは驚きとともに心配した。

 

「あ、アリス、大丈夫か?」

 

「ゔぅぅっ、痛いです……」

 

おでこを手で抑えて呻くアリスに思ったよりも大丈夫そうだとシルヴィアは安堵する。そして、その元凶たるギルバートへと目を向けると、彼はすでにアリスの前に立っていた。

 

「この愚か者が。前々から情報を鵜呑みにするなと言っているだろうが」

 

ギルバートはアリスを見下していたが、その場に片膝を立てて座り涙目になっているアリスと目線を合わせる。

 

「闇祓いなど所詮職員の一員。本部長ならば話は違うが、末端にまで真実を知らせる必要がどこにあるというんだ?」

 

「あうぅぅぅぅぅっ」

 

自身の杖の先をアリスのおでこに突きつけ、ぐりぐりと押し付ける。アリスは目をぎゅっと瞑り、ギルバートにされるがままだった。

 

目の前の光景に呆然とするレイとシルヴィア、そして痛みに呻くアリスを無視してギルバートは続ける。

 

「今大事なのはそんなことではない。闇の帝王が生きているかもしれない、すぐそばにいるかもしれない今どう備えるかが重要なのだ。分かったな愚か者?」

 

「あうぅ、は、はいぃぃ」

 

その返事を聞き、鼻を鳴らして杖を退けるギルバート。アリスは追い討ちされたおでこの痛みに目尻に涙を浮かべ、シルヴィアが苦笑して頭を撫でて宥めている。

 

レイは隣にどかりと不機嫌そうに座ったギルバートへと笑みを浮かべて話しかけた。

 

「やっぱりお前、アリスには優しいよな?」

 

「どこをどう見ればそうなるのだ。貴様の目は水晶玉か? ありもせぬ未来が見えているのか?」

 

「いつものキレがないぞギル。……まあ、自分の尻拭いと考えれば今のも納得か」

 

「分かっているならば無駄なことを口走るな、愚か者め」

 

レイはそれに苦笑で答えた。そして心の中で思う。本当にこいつは素直じゃない、と。

 

ギルバートも純真無垢なアリスに、たとえ真実とはいえいきなりぶっちゃけ過ぎたと思ったのだろう。今のはギルバートなりの謝罪の意が込められていたのだ。……まあ、当の本人は全く気付いてないが。

 

こうして四人は誰よりも早く真実にたどり着き、今後の対策を練っていくのだった。




如何でしたか?

作者自身思う。お前ら本当に11歳?

次回、迫るクリスマス。

感想やご意見、評価やアドバイスを心よりお待ちしております。これからも応援よろしくお願いします!
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