最近感想がなくて寂しいです。
そして今回は短いです(・_・;
『賢者の石』について、レイ達はとりあえず保留ということにした。
犯人を探そうにも、『死喰い人』の証である左腕の刺青をいちいち袖を捲って確認していたら警戒される。また、犯人が闇の帝王その人だった場合、今のレイ達では殺される確率がかなり高いと判断したためだった。
さらに言えば、ここは闇の帝王が唯一恐れた魔法使いであるアルバス・ダンブルドアのお膝元だ。滅多なことがない限り大丈夫だろうという算段もあった。
というわけでレイ達は今は魔法の実力を上げ、もしものための自衛に備えるという結論に達したのだった。
そしてレイはシルヴィアとギルバートからハリー達には自分は教えられなかったと言え、と言われそれを承諾した。レイ自身、犯人が犯人なだけにこれ以上彼らをこの件に首を突っ込ませたくなかったのだ。
レイは予定通り、夕食後にハリー達に結果報告を行った。教えられなかったと聞かされた彼らは目に見えて落ち込んでいたが、なら頑張って調べようとやる気を出していた。
レイはそれを見ていい加減やめておけ、シルヴィアとギルバートが教えなかったんだからそれなりの理由がある、と忠告した。しかしハリーとロンは聞く耳を持たず、ハーマイオニーとエステルも迷ってはいたが犯人探しを止める気は無かった。
挙句ロンには意気地が無い、天才や秀才といえどこの程度かと言われ、さすがに腹が立ったレイだったが、隠し事をしていることを自覚しているために気を鎮めるのだった。
仕方なしにレイは彼らが犯人だと決めつけているスネイプは多分犯人じゃないと理由をつけて話したのだが、スネイプに対して敵愾心が強いハリーとロンはさらに意固地になってしまった。
せめてもの救いなのは、レイの話を聞いてハーマイオニーとエステルは少し考え直す様子を見せてくれたことだろう。
ため息とともに去っていくレイを見送ったハリー達はこれからどうするかを話し合った。そして、結局この件に躊躇いを見せていたハーマイオニーとエステルも含めて犯人探しを続けることになるのだった。
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それから数週間、レイ達は授業や宿題の合間にギルバートの監修のもと、自衛のための呪文練習に励んだ。
呪文学の教師であるフリットウィックに頼み込み、自主練と称して空いてる時間に教室を貸してもらうことにした。これにはやる気を見せていると判断したフリットウィックも快く貸し出してくれた。
そして肝心の自主練だが、今年一番のレイブンクローの秀才の名は伊達ではなかった。図書室より何十冊と本を読み込み、それをまとめて効率よくレイ達に教える様は並の教師を凌駕していた。少なくとも闇の魔術に対する防衛術の教師よりは遥かにマシであった。
この自主練は早くにも功を成し、レイは既に一年で習う呪文を覚えていた。また鈍臭く物覚えが悪いことに定評があったアリスも、必死に食らいついてなんとか今まで習ってきた呪文を扱えるまでに至っていた。
ちなみにシルヴィアは、レイとアリスがギルバートに教えを請うているのを眺めながら片手間に三、四年で習う呪文を覚えていた。この辺りはさすが天才といったところだろう。
こうして忙しくも充実した時間はあっという間に過ぎていき、いつのまにか秋は枯れ果て冬が舞い降りていた。
そんな冬のどんよりとした空模様を天井に移す大広間で、レイ達はいつものようにグリフィンドールのテーブルで朝食をとっていた。
「もうすぐクリスマス休暇ですね。皆さんはどうするんですか?」
アリスがジャガイモのスープを飲みながらレイ達に尋ねる。
「俺は帰るぞ。久しぶりに爺ちゃん達にも会いたいしな」
「俺もだ。なんとも面倒なことだが、実家で行われるパーティには顔を出さねばならん」
それにレイは嬉しそうに、ギルバートはめんどくさそうに返した。
何故ギルバートがそのように反応したのかといえば、それはギルバートの実家が関係している。
ギルバートはエリス商会という企業の御曹司だ。その商会は主に魔法界にマグルの物資を輸入する事を生業にしており、所謂金持ちの部類に入る。
そんなエリス商会が主催するクリスマスパーティには大勢の人が集まる。ギルバートは父の顔を立てる為に、また御曹司としての義務としてこのような大きな催し物には顔を出すようにしていた。
しかし、ギルバートにとってこういう催し物に参加するのは苦痛以外の何者でもなかった。人付き合いを好まないのもあるが、何より親の威光を堂々と笠に着る同年代の存在がなによりも鬱陶しかった。
しかし、そのような親の七光りにいつものように毒を吐くことなど出来ず、ストレスが溜まる一方なのだ。ギルバートが顔をしかめるのも仕方なかった。
二人の予定を聞いたアリスは少し困ったように眉根を寄せる。
「そ、そうですかっ。えと、シルヴィさんはどうですか?」
そんなアリスに尋ねられたシルヴィアは肩を諌めて苦笑した。
「早急に帰って来いとのお達しだ。どうやら私がここで何をしてるのかをどこからか聞いてきたらしい。……ま、帰る気などさらさらないがね」
それを聞いたレイは思わずシルヴィアを見る。彼女はそんなレイを優しく微笑んだ。
「そんな顔をするなレイ。言っただろう、私はもう実家などどうでもいいのだ。そんなことよりもお前達といることの方が比べられないほど大事なのだからな」
それを聞いたレイはしばらくシルヴィアを見つめていたが、軽いため息とともに苦笑した。
「い、いいんですかシルヴィさん。もし帰らなかったら……」
アリスは不安そうにシルヴィアを見る。自分といるせいでシルヴィアが実家と不仲になるのは心苦しかったのだ。しかしシルヴィアはアリスの頭を優しく撫でる。
「構わないよ。いざとなったらレイの家に転がり込むつもりだ。既にレイのお爺様達の了承は得ている」
マクスウェル夫妻はレイとシルヴィアの手紙を読み、事情を把握して快く承諾した。これにはレイとシルヴィアが意図せずどれだけ互いが信頼し合う友人かを手紙に書いたことも功を成した。
余談だが、レイとシルヴィアの手紙を読んだレイの妹であるアリアは胸がもやもやとしたのだが、それがなんなのかは分からなかった。
アリスはシルヴィアの微笑む様子を見て、やっと思い悩むことをやめてぎこちなく微笑み返した。そして、シルヴィアがホグワーツに残ると分かったアリスは、この話題を振った本来の目的を果たすために口を開いた。
「あ、あのっ、シルヴィさん。もしよかったら……」
しかし、それを言い終える前に大広間に動物の鳴き声が響き渡る。朝のフクロウ便が数多くやってきたのだ。
そして一羽のフクロウがレイの元へと手紙が落としていった。これを見たアリスは落ち着いてからでいいかと言いたかったことを飲み込んだのだった。
シルヴィアももちろんそれに気付いていたが、アリスと同じように後回しにすることにした。そんな彼女の前でレイが手紙を開いて読んでいく。
「ふむふむ……ふむ?」
「どうしたレイ?」
「いや、なんともタイミングがいいなぁと思ってな」
「と、いうことはクリスマスのことかな?」
正解と頷くレイは、シルヴィアに手紙を見せる。
「爺ちゃんも婆ちゃんもシルヴィが帰らないことを予想してたみたいだな。クリスマスは家に来ないかと書いてある」
「なんだと?」
「ふぇっ?」
それに驚いたのはシルヴィアだけではなかった。実はアリスは家族にレイ達のことを話しており、アリスによくしてくれるレイ達を是非家に招待したいと話していたのだ。
レイとギルバートは予定があって残念だったが、シルヴィアは帰らないと聞いて家に呼べると一人喜んでいた矢先の事だった。
やっぱり話しておけばよかったとしゅんと落ち込むアリス。レイとシルヴィアは手紙を読んでいたためにそれに気づけなかったが、アリスの様子に気付いていたものが一人いた。
シルヴィアは手紙を読み終えると、これはいい機会だとレイに了承の意を示そうとする。
「ふむ、そうだな。せっかくのお誘いだ、この機会にご挨拶に伺おうかな」
「それじゃ決まり……」
「待て貴様ら」
しかし、それをギルバートが止めた。彼は不思議がるレイとシルヴィアを置いておいて俯くアリスに目をやる。
「おい泣き虫」
「ま、まだ泣いてませんよ!? ……あ」
ギルバートの言葉に顔を上げるアリスの目尻には、ギルバートの言う通り涙が浮かんでいた。これにはレイとシルヴィアが慌てた。
「ど、どうしたアリス? 俺達なんかやっちまったか?」
「アリス、泣かないでおくれ。私達は君の涙に弱いのだ」
シルヴィアはポケットからハンカチを取り出し、涙を拭ってあげる。アリスはそれにお礼を言うと、なんでもないと手を振る。
「なんでもないわけがないだろうが愚か者が」
しかし、ギルバートはアリスを逃さなかった。いつのまにか杖を握っており、杖先をアリスに向けて脅すように問いかける。
「くだらない遠慮などするな気持ち悪い。さっさとシルヴィに用件を話さないならそのデコを引っ叩くぞ」
ギルバートの脅しにアリスは無理矢理思い起こされた。四回廊下の真実を聞いた時から始まり、自主練の時にも振舞われたギルバートの魔法によるデコパンチ。アリスは無意識におでこを抑えて震え上がった。
「で、ででででもっ、し、シルヴィさんはレイさんのご家族にお世話になるかもしれないかもですしっ、ここで行かないのは失礼かもですしっ……」
「いいから、話せ」
「ひゃ、ひゃいっ!」
怯えながらも弁明しようとしたのだが、取りつく島もなくさらなる脅しにアリスは屈してしまった。
アリスはレイとシルヴィアに先ほど言いかけたクリスマスパーティへのご招待の件について話した。
ビクビクしながらも話し終えたアリスを見て、レイとシルヴィアは顔を見合わせ苦笑する。この時、二人の考えは一致していたのだ。
シルヴィアは申し訳なさそうにするアリスを優しく抱きしめた。
「ふぇ?」
「是非アリスの家にお呼ばれしよう。承諾の旨をご家族に送ってくれないかな? その時に私の手紙も送ってもらえるとありがたい」
「いいん、ですか……?」
上目遣いでレイとシルヴィアを見るアリスに二人は頷く。続けてレイが遠慮がちなアリスの態度に物申した。
「アリス。ギルの言う通り、過度の遠慮をされても俺達は嬉しくねぇよ。親しき仲にも礼儀ありとは言うが、それも限度がある」
「そうだぞ。友というのは、ありのままの自分をさらけ出せる相手のことを言うのだ。私の数少ない友人が遠慮して、実は嫌な思いをしていたとなれば悲しいではないか」
「貴様の遠慮など大抵くだらないものだ。次そんなくだらない事をすれば問答無用で貴様の額を撃ち抜くからな」
「……っ、はいっ!」
シルヴィアとギルバートもレイに追従して苦言を呈した。アリスはレイとシルヴィア、そしてギルバートを見回して、元気よく頷いた。
「ま、ギルバートは言い過ぎだがあんまり遠慮なんてするなよ。俺も気にしてないから。シルヴィには今度来てもらうよ」
「そうさせてもらおう。では、私は遠慮なんかせずにアリスを堪能するとしよう」
「ふ、ふわっ!? し、シルヴィさんっ。く、くすぐったっ……」
「何がでは、だ愚か者。さっさと食わないと遅刻するぞ」
いつものようにじゃれ合いながら、シルヴィアに抱かれたアリスは心の中で思う。この人達に出会えて良かった、と。
今まで一人ぼっちだった自分に手を差し伸べてくれた人達。
鈍臭い自分が追いつくまで待ってくれる人達。
間違ってばかりの自分を優しく、厳しく叱ってくれる人達。
そんなこの人達がアリスは大好きだった。
だから笑う。目一杯感謝の想いを込めて。
こんな自分を受け入れてくれた事を。友達になってくれた事を。幸せをくれた事を。いっぱいいっぱい感謝して……。
アリスは、笑った。
如何でしたか?
書き溜めにまだ余裕があるので来週も月、水、金の18時に投稿します。お楽しみに!
次回、仲違い。
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