選ばれし者と暁の英雄   作:黒猫ノ月

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どうもです。

後書きでちょっとしたお知らせです。

あと、皆様の高評価ありがとうございます!


13話

ホグワーツ生の殆どが有意義に過ごしたクリスマス休暇も明け、学期が再開された。クリスマス休暇を惜しむ生徒達が初めの一週間ほどは勉強に身が入らなくなるのは毎年の恒例だろう。

 

そんなどこかだらけきった空気が漂う校内のとある空き教室で、ハリー、ロン、ハーマイオニー、エステルの四人は分厚い本を囲んで話し合っていた。

 

お題はもちろん、四階廊下の奥に隠された物についてだった。

 

「じゃあスネイプはそのニコラスなんたらが作った『賢者の石』を狙ってるんだな? 自分が不老不死になるために!」

 

「フラメルよロン。あと、スネイプ先生が犯人と決まったわけではないわ」

 

「なんだよハーマイオニー! まだレイの言うことを信じてるのか!?」

 

レイのことがあまり気に入らないロンは、ハーマイオニーの言葉に噛み付く。それを宥めたのはエステルだ。

 

「落ち着いて、ロン。信じてるどうこうじゃないの、レイの推測は一理あるってことだよ。現にレイはハーマイオニーみたいに三頭犬の足元を見たわけじゃないのに、あそこに何か守られてるって事を当ててみせたわ。レイの推測は参考になるの」

 

「でもステラ、それなら誰が犯人なのかな? 僕はスネイプ以外思い当たらないよ」

 

「それは……」

 

ハリーの問いに答えを窮するエステル。そう、そこが問題なのだ。スネイプが第一容疑者なのは間違いなく、他を探そうにも手掛かりすらないのだ。結局はスネイプ犯人説で行動するしかなかった。

 

「ふんっ、あんな意気地無しの言うことなんて真に受けたらダメさ! どうせ天才様の腰巾着なんだから」

 

鼻を鳴らすロンのレイへの言いようにさすがに見過ごせなかったエステルがロンを注意しようとした時、ロンが一瞬で青に染まった。

 

「うわぁっ!?」

 

「だーれが意気地無しだって?」

 

「だーれが天才様の腰巾着だって?」

 

「「俺達のライバルがそんなチャチな男な訳ないだろ弟よ!」」

 

「フレッド、ジョージ!」

 

ロンを青く染めた犯人は、いつのまにか空き教室に侵入していたイタズラ大好き赤毛の双子だった。

 

実はこの双子、すでにシルヴィア達とレイを通じて交流を持っていた。

 

ここ数ヶ月、双子は食事時などを利用してレイ達のそばで話を盗み聞きしていた。その結果シルヴィアとギルバートが噂や風評とは違い冗談の通じる相手だと分かった双子は、元々の恐れ知らずな性格も合わさりいつものおちゃらけた様子でついに話しかけたのだ。

 

シルヴィアは悪戯を通じて才能を見せ、さらに自分を前にしても変わらず自分を崩さない双子を快く迎えた。またギルバートも悪戯の方向ではあるが、様々な事を学ぼうと弛まぬ努力を積む双子を拒否することなどなかった。

 

こうして遥か高みの二つの城塞を突破した双子は、レイとアリスが拒むはずなどなく彼らと友好を交わすことに成功するのだった。

 

「二人とも、いつからそこにいたの?」

 

エステルは先ほどの話が二人に聞かれていないか危惧したのだが、その心配はなかった。

 

「つい先ほどさお姫様」

 

「どこかにイタズラし甲斐のあるやついないかなぁ、とぶらついていたらなんと!」

 

「我らのライバルを馬鹿にする不届き者の声が聞こえるではありませんか!」

 

「「これは懲らしめなければと思った次第でござーい!」」

 

「……全くもう」

 

エステルは呆れたようにそう言ったが、内心よくやったと思ったことは胸に秘めた。

 

そんなエステルだったが、ハーマイオニーはそれどころではなかった。

 

「ちょっと二人とも! この本図書室のものよ、こんなにしてどうするのよ!」

 

ロンがイタズラを受けた時、ちょうど彼の手にはニコラス・フラメルについて書かれた本があったのだ。イタズラはロンに直撃したので、その本も真っ青だった。

 

しかしそんなハーマイオニーを意に返さず、双子は得意げに杖を振った。

 

すると、真っ青だった本が綺麗さっぱり元通りになったのだ。これにはロンを含めた四人とも驚きを隠せなかった。

 

「これは我々の自信作!」

 

「たとえスコジろうとも絶対落ちない」

 

「お顔も真っ青な代物だが……」

 

「俺達が杖を一振りすればあら不思議!」

 

「「綺麗さっぱりパッパッパってな!」」

 

自信満々に胸を張る双子にイタズラを受けたロンがならと怒り出す。

 

「さっさと僕のも消してよ! マーリンの髭!」

 

しかし双子はチッチッチッとロンに指を振った。

 

「俺達のライバルであるレイはいつも華麗に避けてみせるぜ」

 

「しかもエクスってくるから油断できない」

 

「だが、うちの鼻垂れ坊主はレイを下に見てるご様子」

 

「「だったら自分でどうにかするんだな弟よ!」」

 

「……くっそぉ」

 

お前ならできるんだろ? という双子の言葉に何も言えなくなるロン。レイが双子のイタズラを防いで反撃するところを何度か見たことがあるため、自分との差を改めて理解したからだった。

 

そんな不貞腐れるロンを放って双子は肩を諌める。

 

「そもそもトロールをあっという間に片付ける奴が意気地無しな訳ないだろ?」

 

「そもそも女王様が自ら歩み寄っているのに腰巾着なわけないだろ?」

 

「「お前はいったい何を見聞きしてるんだ?」」

 

「うるさいな! トロールを倒したのはほとんどエリスとコルドウェルだろ!」

 

双子に噛み付くロン。しかし、それにハーマイオニーが間違いを指摘した。

 

「違うわよロン。レイは武装解除呪文でトロールの棍棒を飛ばしてるわ」

 

「それに最後にはエリス君とコルドウェルさんの三人がかりとはいえ、同じ呪文でトロールを倒してる」

 

エステルが重なるように言うがそれは少し違っている。武装解除呪文で転ばせはしたが、トドメは頭を廊下にぶつけた自爆だった。しかし、それをここで訂正する人はいなかった。

 

「勉強ができて、魔法もできて、喧嘩も強い」

 

「そんなレイが気に入らないのは分からんでもない」

 

「けど、それは相応に努力した結果だ」

 

「悔しかったらお前も努力するんだな」

 

「「だから嫉妬なんてするなよ弟よ、我が弟ながら見苦しいぜ!」」

 

その言葉に図星を突かれ顔を赤く染めるロン。しかし幸いなことにその顔は真っ青に染め上げられていたため気づかれることはなかった。

 

「ばっ、誰が嫉妬なんかっ。って待てよフレッド、ジョージ!」

 

「「誰だいそれは? 俺達はフレッジョさ!」」

 

「待てって! これなんとかしろよ! マーリンの髭!」

 

ロンは叫んで空き教室を出ていった双子を追いかけた。双子を呼び止めるのに必死で、自分の今の姿が他人に見られることなど頭になかった。このせいでしばらくロンは『青毛のロン』と指を刺されることになった。

 

それを見送ったハーマイオニーとエステル顔を見合わせて苦笑した。

 

そんな中、赤毛の兄弟を見送ったハリーはため息をついていた。それはレイと自分を比較し、自分が確実に劣っている事を理解したためだった。

 

自分は闇の帝王を倒した英雄だなんだと言われているが、これといって特別なところなどほとんどない。あるとすれば箒の扱いと額の傷だろうか。

 

代わってレイは英雄でもなんでもない。しかし勉強はハーマイオニーの次に出来るし、魔法はすでに武装解除呪文や呼び寄せ呪文など数学年上のものを扱える。

 

さらに天才や秀才などと呼ばれる人物達に認められていることもハリーを落ち込ませた。

 

彼らは英雄である自分には目もくれない。なぜだかはなんとなくわかっている。自分は英雄と呼ばれているが、それが自分の力ではないからだ。何もできない赤ン坊だった自分が、どうして闇の帝王を倒せようか。

 

そしてハリーは、間接的に自分の大切な友人を他と比べてしまった自分に対して嫌気がさしてしまうのだった。

 

………………

…………

……

……

…………

………………

 

ハリー達の密談からしばらく経った頃。未だにロンが『青毛のロン』と順調に馬鹿にされている中、レイはアリスとともに夕食のために大広間へと向かっていた。

 

「俺達をアリスの家に招待する?」

 

「はいっ。シルヴィさん以外のお二人にもお世話になってるからって手紙が届いたんです」

 

「それで長期休暇の時に俺達を招きたいと……」

 

それに頷くアリスをみて、レイは行ってみたいと素直に思った。

 

アリスの家族達はクリスマスの時にシルヴィアと始めて面会したのだが、最初は想像の遥か上をいく娘の友人の登場に驚きを隠せなかった。

 

しかし、パーティの間にシルヴィアと語り合う内に自分達の娘のことを本当に大事にしてくれていることがわかり、途中でそれも気にならなくなっていた。

 

中でも特にシルヴィアのことを気に入っていたのはアリスの祖母だった。アリスの祖母は元闇祓いであり、闇の帝王が活動していた頃は現役で数々の『死喰い人』を千切っては投げていたほどの担い手だった。

 

そんなストイックな祖母がシルヴィアを気に入らないはずがなく、シルヴィアも歳を感じさせない快活な彼女とすぐに仲良くなった。

 

そんなこともあって、娘(孫)とその友人が話す残り二人が気にならないはずがなく、是非とも招待したいという話となったのだった。

 

レイは頷いてアリスに了承の意を示す。

 

「わかった、是非行かせてもらうよ。っと、その前にじいちゃん達に行っていいか聞かないと……」

 

「あ、そうですよね……」

 

少し不安そうにするアリスに、レイは微笑んで頭を撫でてあげる。

 

「そんなに心配するなって。じいちゃん達なら笑顔で行って来いって言ってくれるさ。で、今度は家に呼べってな具合にな」

 

「……はいっ」

 

レイは元気を取り戻したアリスを見て頷いてから彼女の頭から手を退けた。そして、早く行こうと足を踏み出した時にレイへと声がかかった。

 

「レイ! 少しいいかな?」

 

それはハリーだった。後ろにはロンとハーマイオニー、そしてエステルを連れており、その顔は皆どこか焦っているような様子だった。そんな中、ロンがなぜか得意げなのが印象的だった。

 

レイはその様子に訝しみながらアリスを見て、彼女が頷いたのを確認してから軽く頷いた。

 

「別にいいが……もうすぐ夕食だぞ?」

 

「大丈夫、今はレイの今夜の予定を聞きたいんだ」

 

「今夜の予定ねぇ。別になんもないが、せめて言うなら宿題と予習復習ぐらいだが……」

 

レイの予定を聞いたロンがあからさまに顔をしかめる。ついこの間自身の兄である双子に悔しいなら努力しろと言われたばかりで、レイの言葉が鼻についたのだ。ここで頑張って勉強するという素直さがロンにはなかった。

 

そんなロンを差し置いてレイとハリーは話を続ける。

 

「えっと、出来れば今日の夜に僕達の部屋に来てくれないかな? 話したいことがあるんだ」

 

「まあ、別に構わないが……」

 

「よかった。じゃあ今夜、僕の部屋に来てね。みんなで待ってるから」

 

「あいよ」

 

レイの了解を得たハリー達は早足でレイとアリスを追い抜いて大広間へと向かって行った。それを見送った二人は首を傾げる。

 

「お話ってなんでしょうか?」

 

「さてな。というよりなんでこのタイミングで俺に予定を聞いて来たのかが謎だ」

 

レイとハリー達は同じ寮なのだ。約束を取り付ける時間は十分にあった。

 

しかしこの疑問にアリスが恐る恐る答えてくれた。

 

「えっと……。多分、合同授業でシルヴィさんとギルさんがそばにいたからじゃないかと……」

 

「ああー……」

 

アリスの予想にレイは思わず納得してしまった。あの二人を苦手としてるものは数多く、ハリー達もエステルを除いてそれに当てはまった。

 

また、あの様子からすれば例の四階廊下の奥の件なのは明白だ。そしてシルヴィアとギルバートは他者と比べても圧倒的に鋭い。

 

ハリー達は犯人探しをやめるよう言っている二人にあの場では悟られたくなかったのだろう。悟られてしまえば口でも腕っ節でも黙らされてしまうから。

 

これに思い至ったレイは思わずアリスの頭を撫でてしまった。

 

つまり、ハリー達はがこのタイミングで声をかけたのはアリスを脅威でないと考えているから、ということだった。

 

「……なんか、ごめんな?」

 

「いえ、いいんです。慣れてますから……うぅ」

 

しばらくレイはアリスを慰めた後、二人で大広間へと向かうのだった。

 

………………

…………

……

……

…………

………………

 

そして夕食を終えたレイは現在ハリー達の部屋にいた。夕食の席でシルヴィアとギルバートにこの件を話したら、十中八九四階廊下の件だと言っていたのだが……それが的中した。

 

「スネイプ先生がクィレル先生を脅していた?」

 

「そうなんだ。僕、ちょっと用があって夜中に寮を抜け出したんだけど……」

 

ハリーの話をまとめるとこうだ。夜中に寮を抜け出したハリーは、とある部屋を通り過ぎる時に偶然スネイプがクィレルを問い詰めているところを目撃した。

 

その会話の内容は「君はどちらの味方か?」「あの猛獣を出し抜く術は見つけたのか?」「私を敵に回さないほうがいい、さもなくば……」などなど、怪しさ満点の脅し文句を言いながらスネイプは問い詰めていたということだった。

 

クィレルはなんとかスネイプの脅しに耐えることが出来たが、それもあの様子だと時間の問題だろうと話を締めた。

 

「どうだい! 僕達の言った通りだっただろ? 君の推測は大外れさ!」

 

レイはロンの自慢げな言葉をスルーして考え込む。果たして、本当にスネイプが犯人なのかと。

 

まず前提としてハリーはスネイプを嫌っており、スネイプを見る目には個人的な偏見があることはギルバートの言からも明らかだ。スネイプが言ったことがそのまま今レイに伝えられたかは疑問が残る。

 

次にクィレルについて。レイが持つ彼の情報としてはまず、去年度まではマグル学を教えており、今年度唐突に闇の魔術に対する防衛術の教鞭をとることにしたこと。

 

次にその教える教科を変更するきっかけとなった、休暇中に吸血鬼に出会い、危うく血を吸われかけたことから吸血鬼を恐れて常にニンニクを常備していること。

 

最後にいつも話すときはアリスを超える吃り方で常に怯えており、いつも古臭いターバンを巻いていること。これが全てだ。

 

レイはこうしてクィレルについて挙げてみたが、正直情報不足もいいところだった。これは保留せざるを得ず、とりあえず脇に置いておいた。

 

そして次に、スネイプが犯人だと仮定した上で考察する。

 

ギルバートとシルヴィアの話が正しいなら、スネイプは『死喰い人』ということになる。しかしスネイプは長年このホグワーツに勤務しており、ダンブルドアの元で働いているのだ。あのダンブルドアが『死喰い人』をそう簡単に信用し、ホグワーツで教鞭を取らせるとはレイにはとても思えなかった。

 

これはクィレルにも言えることだが、ここでレイはふと気付いた。今現在ある情報の中で、二人には違いがあった。それは……。

 

「今年突然色々変化したのはクィレル先生……」

 

「レイ、どうしたの? 何か気付いたことがあるの?」

 

レイはエステルの声にハッとして誤魔化すように頭を振る。レイが思い至ったことは確証がない。また、所詮自分程度が考えたことと自己評価が低いレイはそれを口にすることはなかった。

 

「い、いや、なんでもねぇよ。……そうか、スネイプ先生がなぁ。にしてもなんで『賢者の石』なんかに手を出そうとしたのかねぇ」

 

このレイの言葉にはハリー達が黙っていられなかった。なぜなら、教えられていないはずのレイが自分たちがあれほど調べたニコラス・フラメルの作ったものについて知っていたのだから。

 

「レイ! 君、『賢者の石』について知ってたの!?」

 

「あっ」

 

「君、あの時は僕達を騙してたんだな!」

 

レイはしまった! と言い訳をしようとしたが、もう遅い。ハリーとロンに問い詰められ、すでに誤魔化すことは不可能だった。

 

慌てて口を滑らしてしまった自分を強く責め、ここまでくれば仕方ないとため息をついて開き直ることにした。

 

「悪いな、ギルに教えてもらった。けど、言い訳させてもらえるなら、お前らにあまり危ないことをして欲しくなかったんだよ。ニコラス・フラメルのことや『賢者の石』のことにたどり着けないならそれでいい。そこで折れて探偵ごっこもやめるだろうって……」

 

レイの訳を聞いたハーマイオニーとエステルは納得した。レイが心配するのは当然のことで、前々からやめるように彼は言っていた。だからハーマイオニー達は許そうとしたのだが、これをハリーとロンが許さなかった。

 

「僕達はお遊びでやってるんじゃないんだ!」

 

「探偵ごっこってなんだよ! こっちは石を守るために真剣なんだぞ!」

 

レイの最後の言葉、それと彼の自分はなんでも知っているんだという態度が二人を怒らせた。そして、そこにはレイに対する劣等感があったのは間違いなかった。

 

レイはヒートアップする二人を落ち着かせるようにゆっくりと語りかける。

 

「今のは俺が悪かったから、お前ら落ち着けって。前から言ってるが、そもそもここはあのダンブルドアのお膝元だぞ? 俺達生徒が束になっても逆立ちしたあの人には勝てない。そんな人がまもってるこの場所で、お前らが探り回る理由があるのか?」

 

その言葉は正論以外の何者でもなく、しかしだからこそハリー達をイラつかせた。

 

「ダンブルドアだって完璧じゃない! 現に犯人を、スネイプを野放しにしてるじゃないか!」

 

「それこそ犯人を泳がせてるかもしれないじゃないか。『賢者の石』を盗んだ瞬間を狙っていたり、犯人の後ろ盾を探ろうとしていたり。あと、スネイプは犯人じゃ……」

 

正論を被せられ、いよいよ熱も収まってきた矢先だった。レイはまたしても失言してしまったのだ。みんな忘れがちだが、レイは人付き合い初心者だ。この時レイは表面上はいつも通りだったが、内心ではかなり慌てていた。

 

「レイ、さっきはスネイプが犯人で納得したじゃないか!」

 

「さては何かまた隠したな! それとも元々隠しているのか!?」

 

ここぞとばかりに食らいつく二人を見て、レイはこれはダメだなと説得を諦めることにした。今何を言っても火に油だと悟ったのだ。

 

レイは小さくため息をつく。問い詰められてなお余裕を崩さないその様子に怒りが増した二人だったが、それをハーマイオニー達が止めた。

 

「ちょっと二人とも、落ち着いて!」

 

「そうだよ! レイはわたしたちのことを思ってっ……!」

 

「けどっ!」

 

「君達もこいつの味方をするのかっ!?」

 

なんとか宥めようとするハーマイオニー達の言葉を聞き入れず、ハリーとロンはなおも食い下がるが、そこをレイが遮った。

 

「分かった。隠し事をしてるのは認める。それはお前達のことを思ってだったが、余計なお世話だったな。悪かった」

 

レイはそう言って一度深く頭を下げた。これにはハリーとロンも黙らざるを得ず、その様子を見たハーマイオニーとエステルは胸をなでおろした。

 

「今日はここで帰るよ。じゃあな」

 

「あ、レイっ!」

 

しかし、レイは先程とは打って変わってあっさりとハリー達に別れを告げて部屋を出て行った。その後をエステルが追って出て行く。レイの態度にまたハリーとロンは怒りを再燃焼させる。

 

「なんなんだよあの態度は! 何も悪いと思ってないじゃないか!」

 

しかしロンの言いようにさすがにここでハーマイオニーが切れた。

 

「いい加減にしてっ! レイは貴方達がまともに話が聞ける状態じゃないのを分かってああして帰ったの! 貴方達は本当にレイの思い遣りやさっきの謝罪が嘘だと思うのっ!?」

 

ハーマイオニーのこの言葉にハリーとロンは押し黙ってしまった。ハーマイオニーに叱られたことで落ち着き、自分達がレイに対して理不尽にキレていたことを自覚したのだ。

 

バツの悪そうな顔をする二人を見て、ハーマイオニーはため息とともに口を開く。

 

「貴方達のレイに対する不満は分かるつもりよ。私も少し前までそうだったもの。けど、全部終わった後でレイの行動を思えば、彼はあの時私を心配して配慮してくれていたわ。それに、理不尽に嫉妬してた私を怒りも嫌いもせず、今も友達でいてくれている」

 

ハーマイオニーの言葉を黙って聞いていた二人は、その言葉が重く胸にのしかかっていた。一度体験したハーマイオニーの言葉には重さがあった。

 

「ねえ、もう一度聞くわ。本当に、レイの心遣いが分からない?」

 

ハーマイオニーが尋ねるその解を、二人はとうとう口にすることはなかった。

 

………………

…………

……

……

…………

………………

 

エステルはレイを追って階段を上がっていた。その甲斐もあり、レイにはすぐに追いついた。

 

「レイ! ちょっと待って!」

 

「ステラ? いいのか俺を追ってきて。 またハリー達がキレるぞ」

 

レイの変わらぬ様子にホッとして、エステルは首を横に振った。

 

「いいの、多分ハーマイオニーが怒ってくれてるから。……えっと、ごめんねレイ。心配してくれていたのにこんなことになっちゃって」

 

「謝ることねぇよ。どんな理由であれ、俺が隠し事してるのは間違いないんだからな」

 

レイは肩をすくめて答える。しかしエステルは本当に申し訳無く思ってるために食い下がる。

 

「でも……」

 

しかしレイもエステルが心優しい性格をしてるのを知っているため、無理矢理止めて話を切り替える。

 

「いいから。……それより、ステラには話しておく」

 

「えっ」

 

レイはエステルにだけ自分が隠してることの一部を明かすことにした。それは、あの四人の中でエステルがもっと信頼できるからこその行動だった。

 

「ステラ。『賢者の石』を狙ってるのは『死喰い人』の可能性が高い」

 

「えっ!?」

 

これにはエステルも絶句せざるを得なかった。『死喰い人』が闇の帝王の忠実な手下で、残忍な者が多いことは周知の事実だ。そして、まさか自分達が追っていた犯人がそれほどの人物だとは思いもしなかったのだ。

 

エステルの恐怖に怯える様子を見て、レイはもう一人の候補を言わなくてよかったと安堵した。『死喰い人』でここまで怯えるのだ。もしかしたら闇の帝王が関わってるかもなどと聞けば失神するかもしれない。

 

レイは未だ怯えるエステルの肩をそっと掴み、目を合わせて忠告する。

 

「いいか、ステラ達がしてることは本当に危ないことなんだ。犯人は平気で人を殺すことができるやつだ。分かったらこの件から手を引くんだ。いいな?」

 

「…………うん」

 

レイの視線と言葉が本当であると語っており、エステルはもう疑うことはなかった。大人しく頷いたのを見たレイは打って変わって微笑んでエステルの頭をわしゃわしゃと撫でてやった。

 

「ちょ、ちょっとレイ!?」

 

「そう怖がるな。ここにはダンブルドアもいる、ミネルバさんもいる。他にも優秀な先生方がいる。きっと大丈夫さ」

 

微笑むレイをエステルは見上げる。まだ恐怖を拭えないエステルに向けて、レイは微笑みから力強い笑みへと変えた。

 

「それに、もしステラが危ない目にあったら……俺が必ず助けるよ」

 

「え……」

 

それに驚くエステルへと、レイは再度誓うように口にする。

 

「絶対に、ステラを守るから」

 

これは嘘偽りのない、レイの決意を伴った言葉だった。その決意を直に感じたエステルは、呆然とレイを見上げることしかできなかった。そして、見上げたその先にあるレイの笑顔を見ていたエステルは顔が熱くなるのを感じた。

 

レイはエステルのその様子に気付くことなく、もう一度わしゃっと頭を撫でて手を離した。

 

「それじゃ、おやすみステラ。いい夢を」

 

レイはエステルの返事を聞くこともなく踵を返して階段を上がっていった。後には呆然と佇み、頬を赤く染めるエステルしかいなかった。

 

エステルは自身の熱くなった頬へ手の甲を当てて確認する。やはり頬は熱かった。

 

「どうしたんだろ、私?」

 

自分に何が起こっているのか分からず、考えようにもどこか靄がかかっているようで考えがまとまらなかった。

 

そしてエステルは手の甲を頬に当てたまま、ハーマイオニーが探しに来るまでその場に佇んでいたのだった。




如何でしたか?

感想で前書きと後書きはあまり書かないほうがいいと言われ、私も確かにと思いましたので、次回から必要最低限のことしか書かないようにしようと思います。

このことに関してや他にも何かありましたらご遠慮なく言ってくださればと思います。

次回、大減点。

感想やご意見、評価やアドバイスを心よりお待ちしております。これからも応援よろしくお願いします!
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