選ばれし者と暁の英雄   作:黒猫ノ月

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14話

レイがハリー達と言い争ってから数日経った。

 

その間にハリーとロンの二人と仲直りすることもなく、レイと二人の間にはぎこちない雰囲気が漂っていた。その原因はもちろんハリー達にあるのだが。

 

レイはそもそもあの時のことはあまり気にしておらず、ハリーとロンが話しかけてきてくれたならいつも通りに返すつもりだった。しかし二人は自分が悪いと思っていたが、レイに対する劣等感から素直に謝罪できないでいた。

 

そのためレイは二人がまだ怒っていると思い、自分から話しかければまた火に油を注いでしまうと二人に話しかけることはなかったのだ。これが今現在の三人の状況だった。

 

これにはハーマイオニーとエステルも友人二人には呆れざるを得なかったが、この年の男の子とはそういうものだろう。

 

周囲も赤毛の双子が弟の嫉妬事情などを言いふらしたこともあって、二人がレイに理不尽に怒ったことをなんとなくであるが悟っていた。

 

「なるほど、それで奴らはあんなに肩身を狭くさせているわけか」

 

「この愚か者が。そんなに口を滑らしたいならお望み通りに滑るようにしてやろうか?」

 

「……いや、本当にすまん」

 

「え、えとえと、レイさんも悪気があったわけではっ……」

 

レイから事情を聞いたシルヴィアとギルバート、アリスの三人はレイと共に呪文学の教室にいた。今日は休日であり、いつものように自主練に励んでいたのだ。

 

レイはここ数日落ち着いて三人と話すことがなかったため、今こうして休憩時間を利用して訳を話していた。

 

「悪気の有る無しの問題ではない。情報とは貴重なものなのだ。それが重要であればあるほど慎重にならなければならない。この愚か者にはその自覚がなかった。だから口を滑らしたりなどするのだ、このお喋りめが」

 

「うぅっ!」

 

それを聞いたアリスは思わず唸ってしまう。自分もレイ同様にあまり自覚してなかったからだ。

 

「待て、なんだその反応は。……貴様まさか」

 

それを見たギルバートが躊躇いなく杖を持ち上げる。それを見たアリスは慌てて手と首を横に振った。

 

「しゃ、喋ってません喋ってませんっ! わ、私もあまり自覚してなかっただけです!」

 

「それはそれでダメであろうが、この泣き虫が」

 

「あぅっ!?」

 

アリスは素直に吐いたが、ギルバートは問答無用で杖を振った。瞬間額に衝撃が走り、彼女は痛みでうずくまってしまった。ついでにもう一振りしてレイにも一撃を喰らわせておく。

 

「いだっ!?」

 

「猛省しろ、この愚か者ども」

 

「「うぅ……。は、反省します」」

 

「ふふっ、そのくらいにしておいてやれ。この二人が隠し事に不向きなのは分かっているだろう」

 

それを見かねたシルヴィアがようやくギルバートを止めたのだが、口角が上がっているのを隠しきれていなかった。いや、そもそも隠す気などないのだろうが。

 

「ふんっ」

 

ギルバートが鼻を鳴らして杖を収めたのを確認したシルヴィアは話を進めることにした。

 

「さて、ではレイの見解についてだが……私もクィレルが怪しいと思う」

 

レイは自分とハリー達との件を話した際、そもそも彼らに呼ばれた理由も話しており、その時にレイの考えも三人に話していた。

 

ギルバートが眼鏡の位置を正してシルヴィアに賛同する。

 

「同感だ。去年と今年であれほど変化したのは教師の中でも奴だけだ。そして今年から四階廊下の奥に『賢者の石』が守られることになった。何かあると考えない方がおかしい」

 

「ギル、お前関わらないとか言いながら調べてたんだな」

 

「備えないとは言ってないだろう。向こうから関わってくる可能性がある以上、降り注ぐ火の粉は払わねばならん。そもそもこの自主練自体がもしもの備えだろうが」

 

「おお、そういえばそうか」

 

ギルバートの言葉に納得したレイは、まさか自分の考えが的中してたことに内心驚いていた。俺の推理もあながち捨てたもんじゃないなと自画自賛していると、ギルバートが話を続けた。

 

「生徒の中に奴らの手先がいる可能性がないわけではないが、低いことは間違いない。なら、教師の中からまず探すのは当然だ」

 

「そして見つけた怪しい人物。そこにさらにレイの情報が加わったことで、より怪しさが増した」

 

「えっと……ということは、スネイプ先生はクィレル先生が怪しいから脅してた、ということですか?」

 

「その通りだ。よく分かったじゃないかアリス、偉いぞ」

 

「えへへ」

 

シルヴィアに褒められ、頭を撫でられて嬉しくなるアリス。それをレイは微笑ましく、ギルバートは呆れを伴って見ていたが話を進めることにする。

 

「第一容疑者はクィレル教諭で決まりだ。俺達は奴を警戒しながらいつも通り備えるぞ」

 

「えっ、ダンブルドア先生とかに言わなくていいんですか?」

 

アリスの疑問にギルバートはため息をついた。

 

「褒められた瞬間にこれか、この愚か者。スネイプ教授が怪しんでる時点でダンブルドア校長が気づかない訳ないだろう。大方、犯人の背後関係でも探ってるのだろうな」

 

「うぅっ、す、すみません」

 

「よしよし、これから頑張ろうな?」

 

「はいっ」

 

むんっと気合いを入れるアリスを撫で回すシルヴィアに、ギルバートに次いでレイも呆れた。結局、シルヴィアはアリスを甘やかしたいだけなのだ。

 

「さて、ではギルの言う通りなんかあった時のために備えますかね」

 

「なら貴様はさっさと妨害呪文を覚えろ。敵の魔法をいちいち避けるつもりか」

 

「ういーす」

 

「アリスは武装解除呪文の続きだ。さあ、私と一緒にやろうか」

 

「あう、すみませんシルヴィさん。お手間を取らせてしまって……」

 

「なに、構わんさ。私は天才だからな。君に教える傍らに防護呪文を覚えるさ」

 

「……やっぱ天才って理不尽だよな」

 

「文句を言わずさっさとやれ」

 

「……へーい」

 

そうして四人は休憩をやめて、魔法の特訓に励むのだった。

 

………………

…………

……

……

…………

………………

 

レイ達が『賢者の石』を狙う犯人をほぼ特定してからしばらくは何事もなかったのだが、とある事件が起きたのは数週間後のことだった。

 

それは朝起きたら二つの寮の点数がガクッと下がっていたのだ。その二つの寮はスリザリンとグリフィンドールで、スリザリンは50点、グリフィンドールはなんと200点も引かれていたのだ。

 

これには各寮生も大慌てだ。どうしてこんなことになったのかを誰もが突き止めようとしたその時、スリザリンから鼻高々に声が上がったのだ。

 

あれは僕の“おかげ”なんだ、と。

 

「……つまりあれか。あのマルフォイ家の御曹司君が身を削ってハリー達を陥れたと」

 

「ああ。“そういうことになってる”な」

 

シルヴィアから聞かされたこの事件の真相はこうだ。簡潔に言えば夜間外出をしたハリー、ロン、ハーマイオニー、エステルの四人がマルフォイに見つかり、それを知らせられたミネルバによって大きく点数を下げられる結果となったということだった。……知らせに来たマルフォイも合わせて。

 

レイがなるほどと頷いていると、ふとシルヴィアの意味深な言い方が気になった。それはアリスも同様で、可愛らしく首を傾げていた。

 

「えっと、どういうことでしょうか?」

 

「つまりは自分の都合のいいように話をでっち上げたのだろうさ、あの馬鹿者は」

 

アリスの疑問に答えたのはギルバートだ。ギルバートがマルフォイのことを馬鹿者と蔑んだということは、ギルバートにとって彼はゴミ以下の存在ということだった。

 

「マルフォイの考えでは、本当ならポッター達だけが点数を下げられる筈だった。そしてあわよくば点数を上げてもらう算段だったのだろうな。……しかしそうはならなかった」

 

ギルバードは不愉快そうに顔を歪ませながら話を続ける。

 

「マクゴナガル女史は厳格な方だ。それを知らせにきたチクり魔をも点数を下げる対象としたのだ。当然だろう、それを知らせに来たということは、その時同じように夜間に外出していたことと同義なのだから」

 

ふむふむと頷くレイとアリスを見て、さらに続ける。

 

「思い通りにならず、さらには自分のせいで自寮の点数を大きく下げてしまった。このままでは大恥だ。そして純血の名家に傷が付くと考えた馬鹿者はあることに目をつけた。それは、自分よりも四倍も下げられた他寮の点数だ」

 

ギルバードがそこまで言ったとき、レイはギルバートの言いたいことに気がつく。しかしアリスはまだ分かっておらず、ウンウンと考え込んでいた。

 

「そうか。引かれたことを隠せないなら、より引かれた方と比べるようにすれば傷が浅くなる。さらに身を削ったなんて言い方すれば、いかにも自寮のために頑張ったんだというアピールにもなるな」

 

レイの言葉にシルヴィアとギルバートは頷き、アリスはなるほどと答えがわかったレイに称賛の視線を向ける。それを見たギルバートはいつものように杖を振った。

 

「へぅっ!?」

 

「貴様もそろそろ与えられた情報から答えを導き出せるようになれ。他人を褒めてる場合か、この愚か者が」

 

「ぅぅっ、すみません」

 

額を抑えて謝るアリスの頭を撫でながら、シルヴィアが口を開いた。

 

「と、言うわけであのお坊っちゃんは自分の作戦通りスリザリン内では一躍時の人となり、ポッター達は自寮の生徒達の目を避けるようになりましたとさ。なんともくだらない話だ、ヘドが出る」

 

癒しであるはずのアリスでも抑えきれないほどの嫌悪を剥き出しにしたその様子に、アリスはなんとかしてあげたいと少しだけシルヴィアに身を寄せた。するとそれを察したシルヴィアは嫌悪から一転、顔をとろけさせてアリスへと抱きついた。

 

「し、シルヴィさんっ?」

 

「ああ、君はやはり私の癒しだ。可愛いなぁ可愛いなぁ」

 

「ほ〜え〜」

 

目を回すアリスにシルヴィアが顔を蕩けさせて頬擦りするのを見たレイとギルバートは、いつものことだと呆れたようにため息をついた。そして遅刻しないように朝食に手を伸ばすのだった。

 

余談だが、最近レイ達と特に仲の良い赤毛の双子はこれを側で盗み聞きしていた。そして双子が盛大に面白おかしくマルフォイを貶めながら真実を吹聴したため、マルフォイの鼻高々な偽りの活躍はまさに三日天下で終わりを告げたのはここだけの話。

 

………………

…………

……

……

…………

………………

 

それからさらに数日後のこと。

 

レイは談話室で一人今日の授業の復習をしていた。そんなレイだったが、ここ最近はギルバートの存在もあり、勉強への不安は無くなっていた。

 

しかし、レイは勉強を怠ることをしなかった。自己評価が低いレイはサボればすぐダメになると思い込んでいる節があった。そうして自身を戒めるように勉学に一人励んでいく。

 

そんなレイだったが、ふと気を抜いた時に暖炉の周りで談笑しているグリフィンドール生達の声が耳に入ってきた。

 

「それにしてもさぁ、ポッター達もやってくれたよなぁ。お陰で俺達は最下位一直線だ」

 

「どうせお得意のクィディッチで巻き返せるとでも高を括ってるんだろ?」

 

「それでももうスリザリンには勝てねぇよな。はーあ、今年はまだスリザリンに勝ち越してたのになぁ」

 

「何が英雄だよ。英雄なら何をしてもいいのかよ」

 

それを聞いたレイはアホらしいとため息をついた。面と向かって言うこともせずに陰口を言って喜ぶその根性は気に入らないが、ハリー達が悪いのも事実だった。だからレイはただ聞くだけに徹し、羊皮紙に目を落とす。

 

エステルへの忠告も無駄だったかな、と思うレイの耳には相変わらず雑音が入ってきている。そのまましばらく放置していたのだが、ハリー達の悪口が一向に止まる気配がない。

 

さすがに友達をここまで好き放題に言われてしまえば、レイも黙ってはいられなかった。

 

「……はぁ、あのよぉ」

 

「ん? なんだよ?」

 

「いい加減鬱陶しいから黙ってくれねぇか」

 

レイの言葉を聞いた生徒達は、一瞬何を言われているのか分からなかった。話したこともないやつがいきなり話しかけてきたと思ったら、喧嘩腰に黙れと言ってきたのだ。それも無理もなかった。

 

唖然とする生徒達にレイはなおも告げる。

 

「本人達がいないところで悪口言ってて恥ずかしくないのかよ、お前ら」

 

さすがにここまで言われてしまえば生徒達も立ち直りは早かった。肩を怒らせ立ち上がり、レイを囲む。

 

「なんだと!」

 

「お前、後ろにコルドウェルがいるからって調子にのるなよ」

 

レイは生徒達を知らないが、彼らはレイを知っていた。というより、知らない方がおかしいのだ。それほどレイ達は目立っている。

 

「お前ら程度にあいつが動くかよ。だから安心しろ」

 

レイのその言いように自分達が侮られていることを悟った生徒達は怒りのボルテージを上げていく。しかしレイは全く意に介さない。

 

「それに俺一人に対して複数人か。これじゃあ天下のグリフィンドール生もスリザリンと変わらねぇな」

 

これがとどめとなった。怒りの沸点が振り切れた生徒達は各々掴みかかろうとしたり、杖を抜いたりとレイに襲いかかる。

 

……いや、襲いかかることさえできなかった。

 

「エクスペリアームスッ!」

 

すでに杖を抜いていたレイの武装解除呪文によって、杖を抜きかけていた生徒が吹っ飛んだのだ。さらにレイは一番近くの生徒の腹に一発決めて蹲らせる。これを見た残りの生徒達は一瞬で熱が冷め、未だ杖を構えるレイを再び唖然と見ることしかできなかった。

 

「はあ、やっぱりこの人数いてもギルやシルヴィよりも弱いか」

 

レイは警戒しながらもそうため息をつかざるを得なかった。レイは自主練で二人と試合ったりしているのだが、未だ勝ち星を得ることが出来ないでいた。天才と秀才の名は伊達ではなかったのだ。

 

「どうした? もう来ないのかよ?」

 

その言葉を受けても生徒達は誰一人動くことをしなかった。首だけを動かし、目線を合わせてどうしようと戸惑うばかりだ。

 

その様子を見たレイは確認のために今一番近くにいる生徒に杖を向ける。

 

「……っ」

 

その生徒は寸でのところで声を漏らすことはなかったが、怯えているのは火を見るより明らかだった。これを見たレイはまたため息をついて杖を下ろした。

 

「この程度でビビるなよ、まだ人数では勝ってるんだからさ。……まあ、陰口で満足してるやつならこんなもんか」

 

そう言って肩をすくめるレイに何も言えずに歯をくいしばる生徒達。そんなレイ達の騒ぎを聞きつけて次々と他のグリフィンドール生が階下へ降りてくる。

 

レイはそれを全く気にすることなく目の前の生徒達に問いかける。

 

「なあ、点数がそんなに大事なのかよ?」

 

「……何?」

 

「お前らさっきから点数点数言ってるけどよ、それは友達を心配することよりも大事なことなのか?」

 

レイの言ってることが分からず、問われた生徒達はただ睨みつけることしかできない。

 

レイはシルヴィアから話を聞いた後、ハーマイオニーとエステルより詳しい事情を聞いていた。ドラゴンの卵などという違法なものに手を出そうとするハグリッドを止めるために夜間外出したと聞いたレイは呆れたものだ。もちろん、ハグリッドにだが。

 

「大したことも知らないまま、与えられた情報だけで馬鹿だクソだ最低だと口にする。……お前ら、ギルがこれを知れば頭が吹っ飛ぶぞ?」

 

「「「…………」」」

 

レイの言ってることがさらに分からなくなった生徒達は戸惑いの色が強くなっていく。ただ、自分達が思い切り見下されていることは伝わっていた。

 

「ハリー達は危ないことをしようとするハグリッドを止めるために規則を破ってまで夜に外へ出たんだ。お前らに同じことが出来るか? ……これを知ってもなお、あいつらを馬鹿にできるか?」

 

レイは言いながら、ならお前らも危ないことするなよ、とは思うがここでは脇に置いておく。

 

生徒達はそう尋ねるレイに答えることが出来ず、俯くことしかできない。それは、様子を見守っていた他の者達も同様だった。

 

何も答えず俯くだけの彼らを見て、レイはまたため息をつく。

 

「別にハリー達が悪くないとは言ってねぇよ。規則を破ったのは事実だし、ハグリッドを止めるにしてももっとやりようはあったはずだ。……けど、無闇矢鱈に扱き下ろすのは違うんじゃないか?」

 

静まり返る談話室に響くレイの言葉は談話室を抜けて、階上にいる者達まで届いていく。

 

「それでもまあ、言いたいことはあるだろうさ。自分達が頑張って貰った点数が半分くらい持ってかれたんだからな。だから、そう言う時はせめて面と向かって言え。今俺にしたようにな」

 

あ、けどせめて多対一は勘弁してやれ、と言うレイに、もう誰も文句など言えなかった。

 

変わらず静まり返る談話室に、これどうしようかと言いたいことを言ったレイが悩んでいると、寮の入り口から見回りから戻ってきた監督生が慌てた様子で顔を出した。

 

「君達! この騒ぎは一体なんだ!?」

 

レイはこれはちょうどいいと軽く手を上げて監督生の注意を自分に向ける。

 

「あ、すんません。俺達が喧嘩しました。あと、そこで一人転がってます」

 

「な、なんだと!?」

 

監督生はレイ達に近寄り、気絶している生徒を見つけて無事を確認する。ほっと胸をなでおろす監督生へとレイがなんでもないように声をかける。

 

「一応ミネ……マクゴナガル先生に報告して貰っていいですか? 必要なら俺達も付いていきます」

 

な? と問われた生徒達は渋々だが頷くしかなかった。これを見た監督生は今までで一番落ち着いた喧嘩だな、とため息をついた。

 

「いいだろう、マグゴナガル先生のところまで付いてきてもらう。……それと、君達。彼を医務室へ運んでおいてくれ」

 

「あ、分かりました」

 

監督生は気絶している生徒のそばに偶然いた数人に指示を出してレイ達を促した。

 

「では行こう」

 

「分かりました。……ああそうだ」

 

レイは監督生に付いていく前に、周囲で見守っていた者達へと声をかける。

 

「これで俺も点数が減らされるかも知れないけど、文句はいつでも受け付けるから」

 

じゃあな、と今からあのミネルバに怒られるかもしれないというのに、レイは何事もないように監督生に付いていく。その後に生徒達も続いた。

 

彼らが退出した後、談話室にいるほとんどのグリフィンドール生が思った。

 

……お前に面と向かって文句言える奴なんてそういない、と。

 

そんな風にグリフィンドール生の心が一つになっている頃、談話室からそれぞれの寝室へと続く階段、その出入り口付近で先ほどの現場に遅れて遠巻きに見ていた者達がいた。ハリー、ロン、ハーマイオニー、エステルの四人だ。

 

彼らはレイが生徒を吹き飛ばすところは見なかったが、その音を聞きつけて談話室へと降りて来たらレイが説教をしているところだったのだ。

 

「庇って貰っちゃったね」

 

「そうね。レイには本当に頭が上がらないわ」

 

仕方ない人ね、と思いながら苦笑するハーマイオニーとエステル。しかしそんな二人をよそに、ハリーとロンの心情は複雑だった。

 

ただでさえレイへの劣等感と負い目がせめぎ合っているのに、ああして庇われては自分達の立つ瀬がなくなり、より惨めさが増したからだった。

 

そんな顰めっ面した二人の背後から近づく二人の悪魔がいた。

 

「よお、お二人さん!」

 

「不景気な顔してるじゃないか!」

 

「「なら我々がより一層不景気にしてやろうではないか!」」

 

双子に両側から肩を組まれ逃げられなくなるハリーとロン。その言葉に嫌な予感がした二人だが、もうすでに遅かった。

 

「「レイから許可を頂いた! なら面と向かって我々が文句を言ってしんぜよう!」」

 

「ちょっ……!?」

 

それからハリーとロンはしばらく談話室の真ん中で双子にいじられ続けた。二人はそれはもう恥ずかしい思いをしたが、双子のそんなファインプレーによって、レイの言っていたこともありこれ以上周りから後ろ指をさされることはなくなるのだった。




次回、大きな背中。

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