様々な出会いや出来事があった今学期も、とうとう今夜で終わりを迎えることになった。
生徒がいつものように大広間に集められ、皆が皆晩餐会を楽しんでいる。その中でも特に楽しんでいるのは四寮のうちの一つだろう。
そんな大広間の様相もいつもとはガラリと変わっている。
大広間の天井はいつもとは異なり野外の天気は反映されておらず、石造りの素晴らしいディテールがありのままそこにあった。しかしそんな美しい天井よりも早く目に映るのは、緑に銀の刺繍が施された寮旗だ。
それは紛れもなくスリザリンの旗だった。その旗が、大広間の両側を何枚にもかけて連なって飾られていた。……それが、今年の点数が一番だった寮を表していた。
いつもなら毎年この日に変化しているのはそのぐらいなのだが、今年は一味違う。なぜなら今学期誰よりも注目を集めた四人グループも、いつもと異なりそれぞれの寮に戻って食事していたのだ。
もともとダンブルドアより公的な行事の際は自身の寮へと戻ることと言われていだ。今夜は終業式なのだから戻るのは当然なのだが、もはや見慣れてしまっていた生徒、教師陣は違和感を拭いきれなかった。
そんな話題の四人は各寮に戻ってもそれなりに楽しんでいた。
今年最下位だったグリフィンドールのレイは、エステルとネビル、ハリー達に囲まれて楽しく過ごしていた。しかし英雄的扱いを受けている者達が集まる場所が賑やかにならないはずがなく、赤毛の双子をはじめ多くの生徒が話を聞くために集っていた。
逆に今年一位だったスリザリンのシルヴィアは、一人ではなく人に囲まれていた。しかしそれは純血に囲まれていた一年前とは違い、ほとんどがマグル生まれやハーフだったのだ。
この一年でシルヴィアが純血を尊ばず、努力や才能を好むことはすでに知れ渡っている。また、弱いもの虐げることに怒りを覚えることもアリスの件で知られていた。
そして今夜はいつもと違いシルヴィアが自寮のテーブルにいる。中々声を掛けるタイミングがなかった者達が、これを機に勇気を出してシルヴィアに声を掛けるのは当然の流れだった。
シルヴィアも自分に対して下世話な思惑が無いのならば無下にはしない。普通に返事をしてくれたことに感激して、次々とスリザリン生がシルヴィアに話を持って来たのだった。
それを純血達が憎々しげに見ているのは最早仕方のないことだろうが。
惜しくも今学期は二位だったレイブンクローのギルバートは、本を片手に一人食事に勤しんでいた。彼は今年の一年生で首席だったこともあり、声をかけようとする者もいたが悉く失敗に終わっていた。
嫌味を言おうなら無視され、讃えようとすれば毒舌で返される。そんなギルバートに声を掛ける者はもういなかった。
今年はグリフィンドールのとある四人のお陰で最下位を免れたハッフルパフのアリスは、一番最初の友人達と念願の夕食を楽しんでいた。
今や女王の寵愛を受ける姫君として知られるアリスに下心を持って接触しようとする者達がいたのだが、それは友人達をはじめ女子で固めれた集団に阻まれていた。
アリスを中心に囲むように存在する集団。名を『子熊を絶対守り隊』と言う。
アリスの純粋さを守るために、最初の友人たる三人組の少女達が主導で結成した集団である。過保護ここに極まれり。なお、こんな集団が結成されていることをアリスは微塵も気付いてはいない。
各々がそれぞれの晩餐会を楽しみ、食事もひと段落ついたところでダンブルドアが立ち上がる。ホグワーツ魔法学校校長の声に生徒達はすぐに静まり返った。ここですぐ静かになるあたり、彼の人徳が伺えた。
校長は大広間を見渡し一つ頷いた後に、白髭を蓄えた口を開いた。
「皆の衆。今学期も様々なことがあったが、誰一人欠けることなく終わりを迎えることが出来た。これも偏に教師の皆が安全に気を配り、生徒諸君らも真面目に学業に取り組んだからであると儂は嬉しく思う」
ダンブルドアは大広間にいる全員に賛辞を述べ、次に点数の確認発表に入った。
最下位から発表されるため、最初にグリフィンドールの名が呼ばれた。その際は先の晩餐会の盛り上がりなどかけらもなく、誰もが顔に影を落としていた。
それとは正反対に最後に名を呼ばれ、一位の座を獲得したスリザリンは晩餐会以上の盛り上がりを見せた。しかしこの時、拍手も適当な女王様はしたり顔を見せていた。……まるで、この後の展開を予期しているかのように。
そして、それは的中することになる。
ダンブルドアはスリザリンの喜びの声を抑え、称賛を送った。しかし、それだけでは終わらなかったのだ。
「スリザリンの諸君、いやはやよくやった。しかし喜ぶのはまだ早い。なにせ駆け込みで点数を与えなければならない者達がおるからのぉ?」
その言葉にスリザリンはもちろん、どの寮の生徒達も疑念を抱かざるを得なかった。しかしそんなざわつきをダンブルドアは気にすることなく、最初の点数獲得者の名を声を張り上げて呼んだ。
「ロナルド・ウィーズリー! 類稀なる最高のチェスを披露してくれた。40点」
それを聞いた瞬間、グリフィンドールから歓声が上がった。レイはああなるほどと納得し、ハリーやエステル、ハーマイオニーはもしかしてと期待の表情を浮かべる。
ロンはダンブルドアの言ったことが信じられず呆然としていたが、双子の兄達にめちゃくちゃにされながらも褒められたお陰でやっと実感が湧いてきたのだろう。隣のハリーの肩を思いっきり叩いていた。
ダンブルドアは静まるように言うと、次の名を挙げる。
「ハーマイオニー・グレンジャー! 冷静な判断力と蓄えられた知識によって仲間を救った。40点」
さらに盛り上がるグリフィンドール生達。ハーマイオニーはエステルと抱き合って喜びを露わにする。
そんな二人はダンブルドアが呼ぶ次の名にさらに喜びの声を上げる。
「エステル・マクレイア! 恐怖に怯える仲間を励まし、共に立ち向かうことの大切さを証明してくれた。40点」
エステルはハーマイオニーと強く抱きしめあって喜びを分かち合う。その後にレイへと顔を向けて、彼が褒めてくれた最高の笑顔を見せてくれた。それを見て、レイは良かったなと釣られて笑みを浮かべる。
この辺りから不穏な気配を感じてきたスリザリン生。誰もが表情を不安に染める中、ただ一人、今か今かとダンブルドアの言葉を楽しみにしている者がいた。
それを知ってか知らずか、ダンブルドアは焦らすように名を呼んでいく。
「ハリー・ポッター! 並外れた精神力と勇気溢れる行動力で恐怖を打ち破った。40点」
最早グリフィンドールの歓声はとどまるところを知らない。この時点で二位であるレイブンクローを抜いており、さらにあと40点でスリザリンと同点なのだ。こんな仕組んでるとしか思えない状況で期待感に胸を膨らませるのは仕方がなかった。
ここまでくると、どの寮もこの後の展開が予想できてくる。一位はやめてくれと切に願い、三位と四位は一位だけに勝たせるくらいならとグリフィンドールの追い上げを願う。
そんな中、レイはもうちょっとでスリザリン抜けたなぁと呑気に周囲の様子を眺めていた。そんないつも通りな様子を見たエステルは苦笑した。それなら愛する人が驚く様をじっくり堪能しようとエステルはレイをじっと見つめた。そしてその時はやってくる。
「レイ・オルブライト!」
「……はい?」
レイは自分の名が呼ばれたことに対して疑問符が頭からいくつも飛び出していた。そんな予想通りの反応を見たエステルは可笑げに笑い、愛しく感じていた。
自身の成し遂げた偉大な功績を歯牙にも掛けない、真に偉大な男の子の姿に。
そんな未だに首を捻るレイを、ハリー達も呆れと共に笑い合って眺める。そしてダンブルドアは、勿体ぶったように溜めた後にレイが成し遂げたことを大声で告げた。
「無力さに泣く友のために。恐怖に震える友を守るために。大怪我を物ともせずに立ち向かったその崇高な勇姿に。40点」
生徒全員の予想通りの展開を迎えたことで、大広間は収拾がつかない騒ぎを見せた。そんな中でも最も大きな騒ぎを見せるグリフィンドールのテーブルでは、レイ達を囲んで大盛り上がりだ。
「「さっすが俺達のライバル! やってくれるぜこん畜生!!」」
「す、すごいよレイ! 僕の、僕なんかのためにっ、うぅっ……」
「おい双子やめろって! ネビルもなんかなんて言うなよ」
普段見ないレイの慌てた様子が可笑しくてみんながみんな笑い合う。そんなレイを遠巻きに見るのは、レイの親友たるシルヴィアとギルバート、アリスの面々。
シルヴィアは最愛の友の晴れ姿に満足げに手を叩き、ギルバートは鼻を鳴らすがそこには普段見せない笑みがあった。アリスは嬉し泣きしながらも満面の笑みでレイに拍手を送るのだった。
これでグリフィンドールは最下位から同率一位に躍り出た。三寮の喜びの声と一寮の嘆きの声が交差する大広間にダンブルドアの声が響き渡る。
「静まれぃ! ……うむ、5人とも素晴らしい働きじゃった。しかし、勇気にも色々ある」
そう言って生徒達を見渡すダンブルドアは最後に一人の少年に視線を向けてその名を告げた。
「敵に立ち向かった五人は本当に素晴らしい。じゃが、友に立ち向かうのは時としてそれ以上に勇気のいることじゃ。よってこれを評して……ネビル・ロングボトムに10点を与えたいと思う!」
一瞬の息も止まる静寂。そして、大広間に歓声が爆発した。グリフィンドールは最下位からのまさかの大逆転を見せたのだ。
ある者は杯を乾杯しあい、またある者は三角帽子を空へと投げる。そしてある者は絶望し、またある者はグリフィンドールとダンブルドアへと憎しみにも似た感情を向けていた。
様々な思いが交錯する中、レイは呆然とするネビルの背中を大きく叩く。
「……れ、レイ?」
「だから言ったろ? お前の行動は無駄なんかじゃないってな」
そう言って笑みを浮かべるレイを見て、少しづつ実感が湧いたネビルは堪え切れなくなって大きな泣き声をあげる。彼はそのままレイに抱きつき、言葉にならない思いをぶちまけた。
レイはそんなネビルをハリーやエステル、グリフィンドールの皆と共に励まし、宥め、称賛し、感謝を送って落ち着かせようとする。しかしネビルは泣き止むことはなく、より一層レイの胸の中で泣き続けるのだった。
こうして歴代でも稀に見る逆転劇を見せた終業式は終わりを告げた。そして、生徒達の一時の別れの時がやってくる。
………………
…………
……
……
…………
………………
列車特有の重厚音を身体で感じながら、レイは流れゆく景色を眺める。一年前はこうして眺めることもなかったレイは、少し新鮮な気持ちで緑生い茂る景色を見ていた。
そんなレイがいるコンパートメントにはいつもの面々がこの夏の予定を確認し合っている。
ハリーやエステル達とは列車に乗る前に別れた。エステルをレイの家に招待するという話は、エステルの家の用事の関係で保留ということになっている。
ハリー達とは比較的簡単に別れを告げることが出来たのだが、エステルは最後までレイとの別れを惜しんでいた。自分の好きな人と出来るだけ側にいたいと思うのは当然だろう。
しかしレイが渋るエステルの頭に手を乗せ、手紙を書くことを告げるとようやっと頷いてくれた。
「レイ、いっぱいいっぱいありがとう! またね!」
エステルは最後にそう言って、花が開いたような笑顔を見せてくれるのだった。
それにレイも笑顔で返し、ハリー達とは列車に乗り込む前に別れた。そして場所を取ってくれていたシルヴィア達と合流し今に至っている。
「では、ギルもレイと同じで一週間後にはアリスの家に来られるのだな」
「ああ、商会関係で色々としなくてはならないことがあってな。……全く、俺は商会を継ぐ気などないのだがな」
「ギルさんはとても優秀な人ですから、お父さんも期待しているんじゃないですか?」
「それもある。が、問題なのは俺の下が未だ愚か者であることだ」
「ふぇっ? 弟さんがいるんですか!?」
「愚妹だ。腹違いのな」
「あっ……あぅっ!?」
「勝手に落ちこもうとするな愚か者。そのことについて俺はどうも思っていない。いいな?」
「は、はいぃ」
「ふふっ、よしよし」
レイは車窓から目線を戻して親友達の様子を眺めていたが、いつもと変わらない様子に苦笑した。
レイ達は休みの間にアリスの家に招待されることになっている。シルヴィアは休みに入ってすぐ、レイとギルバートは一週間ほど置いてからだ。
レイは一週間は家族と過ごすために後から合流するのだが、シルヴィアは実家からすぐにでも離れたいがためにアリスのお宅に早々にお邪魔することになった。
当初は長い間アリスの家に置かせてもらうことに抵抗を示した面々だったが、アリスの家族が是非にということだったのでお言葉に甘えることになったのだ。因みにだが、来年の休みはレイの家に招待することになっている。
「けど、いいんですかシルヴィさん。私は全然構わないんですけど、ご実家の方は……」
不安そうに上目遣いでシルヴィアを見るその様子に、見られた本人は思わずその小動物を抱きしめる。
「構わないよ。何か色々言っていたが全部くだらないものだ。そんな用事よりも君達といた方が比べるのが烏滸がましいほどマシだ」
「そ、そうですか?」
それでも不安が拭いきれないアリスに、今まで黙っていたレイが口を開く。
「シルヴィが気にするなって言ってるんだ。大丈夫だろうさ。それに、もし何かあったら俺達が力になればいい。だろ?」
「……はいっ」
ようやっと笑顔を見せてくれたことを安堵して、レイも三人の会話の輪に加わった。
そうしてしばらく歓談していたのだが、長く話せば話題尽きてくるものだ。そんな時にレイは聞いて欲しいことがあると断りを入れて、ここ最近ずっと疑問に思っていたことをシルヴィア達に話し出した。
「俺はハリー達を助けるために四階廊下の奥を目指していたんだけどな。今思えば不思議なんだよ」
「何が不思議と言うんだ?」
「いやな、最初と二番目の仕掛けは三頭犬と悪魔の罠だったから何度侵入者があっても仕掛け直す必要はないよな?」
レイは三人が頷くのを確認して続ける。
「けどな、それ以降の仕掛けはどれも仕掛け直さないとダメなものだったんだよ。だから俺はそのまま走り抜けることができた。……これっておかしくないか?」
レイの疑問になるほどと考え込むシルヴィアとギルバートだが、あいも変わらずアリスはまだ理解できていなかった。
「えっと、何がおかしいんでしょうか?」
申し訳なさそうに尋ねるアリスに、これまたいつも通りギルバートが毒とともに補足を加えていく。
「貴様の成長が見られなくてがっかりだ愚か者」
「うぅっ」
「いいか。『賢者の石』が守られている場所に侵入したのは三組だ。まずは主犯のクィレル、次にポッター組、最後にレイだ。そして最初に侵入したクィレルによって仕掛けは全て突破された。ここまではいいな?」
こくこくと必死に頷くアリスにギルバートは続ける。
「しかしポッターが遅れて侵入した時は仕掛けが全て仕掛け直されていた。ここまで見れば、仕掛けは何度も自動で仕掛け直されることになる」
「……あっ」
ギルバートの補足でようやく思い至ったアリスは口元を手で隠した。それを見てギルバートは鼻を鳴らす。
「ようやく気付いたようだな。そう、ならば最後に侵入したレイの時にも仕掛け直されなければならないのだ。しかしそうはならなかった」
「なら考えらることは二つ。一つは仕掛け直される回数が一回だけであったこと。もう一つは仕掛けは元々仕掛け直されるようにはできておらず、誰かが仕掛け直したということだ」
ギルバートの後をシルヴィアが継いで自身の考えを述べた。それにギルバートも頷く。
「ではどちらであるか。まずは一回だけ仕掛け直すように設定されていたという場合だが、実際これにはほとんど意味がない」
「意味がない、ですか?」
アリスの疑問にギルバートに代わってシルヴィアが優しく諭す。
「アリス、よく考えてごらん? 一度侵入され、全て突破されてしまえば仕掛けを掛け直す意味はなくなる。一度突破したんだ。足止めにはなるだろうがそれでは侵入者を止められない」
うんうんと頷くアリスに笑みを浮かべてシルヴィアは続ける。
「また侵入者が一度侵入して途中で断念したとする。その日は諦めるだろうが、途中までの仕掛けや罠は把握しているんだ。次の侵入は楽になると思わないかい?」
「はい、思います」
「それではダメなんだ。先のもそうだが、仕掛けや罠というのは一度突破されてしまえば意味がない。また違う仕掛けや罠を仕掛けなければならないんだ。だから同じ仕掛けをかけ直すようにするのは意味がないんだよ」
ほへー、とアリスはシルヴィアとギルバートの考察に感嘆する。シルヴィアはその可愛さに顔を蕩けさせ、ギルバートはため息をついた。
「ってことはだ。必然的に誰かが仕掛け直したことになるんだが、いったい誰が、何で仕掛け直したんだ?」
レイはそう悩むのだが、それもすぐにギルバートとシルヴィアによって答えを提示された。
「決まっている。各教科の教師陣がそれぞれ仕掛けたものを一人で仕掛け直す者など、ホグワーツには一人しかいない」
「それはホグワーツ魔法学校校長、アルバス・ダンブルドアさ」
その答えにレイとアリスは唖然とするしかなかった。二人は慌てて答えの続きを聞き出そうとする。
「な、何でダンブルドア先生がポッターさん達の邪魔なんてしようとするんですか!?」
「というかダンブルドア校長ってあの日いなかったはずだろ?」
これにも淡々とシルヴィアとギルバートはそれぞれ返す。
「まずレイの疑問だが、これはおそらくダンブルドアがクィレルを誘き出すための芝居だったのだろう。一度本当に外出したと見せかけて、すぐに戻ってきていた。そして、ポッター達の様子を眺めていたんだろうさ」
「貴様が倒れた時にすぐさま現れたことからもシルヴィアの考えが正しいだろう」
「……あれ? それなら俺ってマジで骨折り損ってやつじゃ……」
自分が行かなくてもエステルもハリーも助かっていたことに思い至ったレイは疲れたように項垂れた。それにシルヴィアとアリスの両名が慰める中、ギルバートが次にアリスの疑問に答える。
「泣き虫の疑問には、正直この俺でもこれと決まった答えを見出せない。考えうるものでは、クィレルと対決する資格を問うため、とかだな」
「もしくは、自身の親を殺した者と対面するための覚悟を問うため、などもあるな」
「お、お二人でも分からないことがあるんですかっ?」
そのことに決して少なくない衝撃を受けるアリス。そんな彼女にギルバートが何をいっているんだと眼鏡のブリッジに指を添える。
「この愚か者、貴様は俺達が完璧な存在とでも思っているのか?」
「私達も一人の人間だからな。いくら天才と秀才といえどわからないこともある。その一つの例が現代最強の魔法使いの真意さ」
眉根を寄せ、肩をすくめる二人の姿を見たアリスは、二人にも自分と同じで分からないことがあると知り、親近感が湧く。これによってアリスと二人の心の距離がまた一歩近づくのだった。
そんな中、三人を差し置いて落ち込んでいたレイがなんだかんだと復活した。過ぎたことはしょうがないとサクッと気持ちを切り替えられるのはレイの美点だろう。
「で、話を纏めるとだ。仕掛けや罠を掛け直したダンブルドア校長の真意は分からず、クィレルが最後の仕掛けが解けていたとしてもダンブルドア校長が見ていたから、俺達の当初の考え通り『賢者の石』は大丈夫だった、ってことか?」
レイの結論にシルヴィアとギルバートは頷く。
「補足するならば、貴様の乱入はダンブルドア校長も予想外だったのだろうな。ポッター達を注視していたために貴様の発見が遅れた」
「だから駆けつけるレイを止めることも出来なかった。君の登場には、あのダンブルドアもさぞ驚いたことだろうな」
「……マジかぁ」
くくっと笑うシルヴィアを見て、レイはもう一度項垂れる。それをアリスが必死に慰める様子を見てシルヴィアはまた笑い、ギルバートは鼻を鳴らすのだった。
………………
…………
……
……
…………
………………
それからもレイ達は四人で楽しく過ごしていたが、その時間も列車が終点へと辿り着いた事で終わりを告げる。
レイ達はキングズ・クロス駅で列車を降りて荷物を受け取り、それぞれの待っているであろう者達を探す。
そんな中、アリスは一人影を落として俯いていた。一時ではあるがこの一年の間ほとんど一緒にいた大好きな人達と別れることに寂しさを覚えていたのだ。その様子に気付いたレイとシルヴィアがいつものように頭を撫で、抱きしめて慰める。
「少しの間だ。またすぐに会えるだろ?」
「私など明後日には君の家にお邪魔するのだ。それとも私だけではご不満かな?」
アリスは二人が自分に注いでくれる優しさや温かさを受け取って、寂しさを消し去って精一杯の笑顔を浮かべた。
そんな三人を側から眺めていたギルバートは、またこいつらは泣き虫を甘やかすと呆れ返り深いため息をついた。
ギルバートはいい加減にしろと叱責しようとしたところで、ふと自分達に正面から近づいてくる老夫婦を見つけた。
それが誰の家族かを悟ったギルバートはその家族の一人を呼ぶ。
「おいレイ。貴様の家族がいたぞ」
「おっ、どこだ? ……あれ? 何でお前じいちゃんとばあちゃんの顔知ってんの?」
「顔は知らなくとも、貴様に気付いて近づいてくる老夫婦がいたら分かるだろうが」
「ああ、なるほどな」
「ほう、どれどれ。……ふむ、とても優しそうな方々だな。表情だけでなく、雰囲気からもそれが伝わってくる」
「そうですねっ。私のおばあちゃんとは正反対です」
「ミセス・バウンディと比べるのはちょっとな」
レイ達がそう話していると、ギルバートが見つけた老夫妻……マクスウェル夫妻がレイのところまでやって来た。二人は自分達の義理の息子が友達と仲良さげにしているところを見て、元々下がっていた目尻をさらに下げる。
「おやおや、この子達がレイの言っていたお友達かな? みんないい子そうじゃないか」
「ふふっ、本当にそうですねぇ。貴方、レイさんと積もる話もありますがまずは言うことがあるでしょう?」
「ああ、そうだね。レイ、おかえり」
「おかえりなさい、レイさん」
自分の帰りを嬉しそうに待ってくれていたマクスウェル夫妻。レイは彼らとの久しぶりの再会に胸が熱くなった。彼はそれを吐き出すように、笑顔で元気よく言葉を返す。
「ただいま。じいちゃん、ばあちゃん」
祝、第一章完結! 皆さま、本当にありがとうございました!
気付けばこの作品も、多数の高評価とお気に入り数を誇るものとなりました。これも全て、読者の皆さまのおかげです。心より感謝いたします。
さて、これからの投稿についてですが、水曜日には幕間を投稿し、金曜日には主要なオリキャラのプロフィールを投稿します。そして来週より第2章を投稿し始める予定です。曜日は月水金の予定ですが、変更する場合がありますので、その時はお知らせします。
では!
皆さま、本当にありがとうございました! これからも応援よろしくお願いいたします!!