選ばれし者と暁の英雄   作:黒猫ノ月

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244さん、烏瑠さん、誤字脱字報告ありがとうございます。


32話

レイ、シルヴィア、ギルバート、アリス。ホグワーツにおいて、今では知らぬ者などいないこの四人が行方をくらました事が発覚したその日の夜。教師陣は夕食を終えた大広間にて調査報告を行なっていた。

 

「セブルス、何か分かりましたか?」

 

報告会の司会を務めるのは、副校長の肩書きを持つミネルバ・マクゴナガルだ。ダンブルドアがいない今、彼に代わってホグワーツの方針を決める立場にある。

 

ミネルバに呼ばれたセブルス・スネイプはいつものしかめっ面のまま一文字に閉じた口を重たげに開いた。

 

「どうやら、彼らは自らの意思で行方をくらましたようですな。様々な場所でその“準備”をしていたという調べがついています」

 

「準備、ですか?」

 

ミネルバのおうむ返しに頷き、報告を続ける。

 

「まずは厨房を担当している屋敷しもべ妖精達に聞き取りをしたところ、一週間分の水と食料を用意してもらうようにオルブライトが頼みに来たと話しておりました。それも保存が利くものを」

 

レイの名前が出たことでミネルバの眉がピクリと動くが、誰も気付かずにスネイプの報告に耳を傾ける。

 

「次に洗濯を担当している屋敷しもべ妖精達ですが、シーツと毛布を八組ほど用意して欲しいと……コルドウェルが頼みに来たと話していました」

 

シルヴィアの名前を言う前にもともと顰めていた顔をさらに歪めるスネイプ。自身が担当する寮生の不祥事に不快感を覚えているようだ。

 

しかし軽い咳払いとともに普段通りの表情を取り戻して報告を続ける。

 

「最後に一人部屋のコルドウェル以外、自室の同居人が魔法で眠らされていたことが分かりました。以上をもって、彼らは一週間ほどどこかに遠足に出たのだろう、ということになりますな」

 

「……そうですか」

 

報告を受けたミネルバは頭が痛そうにこめかみを押さえて首を振る。レイ達が『秘密の部屋』の怪物の餌食になったのではと心配していたのだが、この一大事にまさか自らの意思で姿をくらますような愚かなことを仕出かすなど思いもしなかったのだ。

 

それは他の教師陣も同じで、個人差はあれど皆が頭を抱えていた。自分達が身を呈して守っているのに、その守られている対象が勝手にどこかへ行ってしまったのだ。頭を抱えるのも無理はなかった。

 

教師陣の間に陰鬱な気配が漂う中、能天気で無駄に張られた声が大広間に木霊する。

 

「皆さん! 何をそんなに思い悩んでいるんです? 彼らは冒険に憧れて遠出をしただけなのでしょう。そうっ! 私というお手本が目の前にあったことで我慢できなくなったのでしょうねっ」

 

いやはや私も罪深い、つい先日も……と、ロックハートはスネイプの口上を真に受けて自らの自慢話をグダグダと自分勝手に述べていく。

 

聞きたくもない狼青年の言葉に、さらに頭を痛めたミネルバは堪えきれずに一喝する。

 

「お黙りなさい、ギルデロイっ!」

 

「ひぃっ!?」

 

「貴方は彼らが本当に下らない冒険心などで行方をくらましたとお思いですか! グリフィンドール寮長として断言します。レイ・オルブライトはそのような愚かなことをする少年ではありません!」

 

ミネルバのあまりの迫力にギルデロイは腰が引けてしまい、ただ首をカクカクとぎこちなく振ることしかできない。

 

しかしそんな情けないロックハートのことなど、すでにミネルバの意識の外であった。そんなことよりも、彼女は今の自身の発言で気付いたことがあったのだ。

 

先程は自身で愚かと断じたが、そう……決してレイは愚かな少年ではない。そしてそんな彼の友人である三人も同様である。ならばなぜ、彼らは行方をくらましてしまったのか。

 

答えは、不思議とすぐに出た。

 

「……ギルデロイ、貴方は自室に帰ってよろしい」

 

「そ、そうですかっ。では! お言葉に甘えて……」

 

ロックハートはあからさまに胸をなでおろしてそさくさと大広間を出て行った。そんな彼を侮蔑の目線で見送った面々は、次にミネルバへと向き直る。

 

視線が集まったことを確認したミネルバは口を開いた。

 

「おそらく、彼らは見つけたのでしょう……『秘密の部屋』を」

 

その言葉に場が騒然とする。しかしそれと同時にどこか納得した様子も見せていた。彼らの頭の中に、大人顔負けの才能と知識を見せる二人を思い浮かべたのだ。あの二人ならば、誰にも見つけられなかった『秘密の部屋』の在り処を突き止めても不思議ではない、と。

 

では次にやってくる疑問は決まっている。なぜ、自分達に知らせなかったのか、だ。

 

しかしこの疑問に対する答えもミネルバは導き出していた。

 

「私達は、彼らの期待には応えられなかったということでしょう。『秘密の部屋』を見つけ出すことはおろか、怪物が生徒を襲う様をただ指を咥えて眺めていただけなのですから」

 

彼らとて何もしなかったわけではない。常時警戒を怠らなかったし、見回りの際には『秘密の部屋』の探索も行なっていた。

 

しかし、結果を出すことは出来なかった。挙げ句の果てには自分達の不甲斐なさが原因で、誰もが最も信頼する魔法使いを停職処分へと追い込んでしまったのだ。

 

生徒に信頼されなくなるのも、無理はなかった。

 

しかし、だからといって。守るべき者達を放っておくわけにもいかない。だが、レイ達を探そうにも手がかりがない。まずは、その手がかりを掴むことからだ。

 

教師陣はまず、ここ最近の彼らの行動を追った。するとマダム・ピンスとフリットウィックより有用な情報が出てきた。

 

マダム・ピンスからは、彼らがダンブルドアがホグワーツを去った後から禁書庫に時間があれば篭っていたことが。フリットウィックからは彼らがいなくなる数日前から呪文学の教室にていつもとは違う自主練模様だったということが明らかになった。

 

「なぜ彼らは禁書庫に?」

 

「許可証にはロックハート氏のサインがありました。なんでも、彼の著作に感銘を受けたからもっと深く知るために禁書庫で調べたいのだと……」

 

「……全く、彼はどこまで……」

 

ミネルバはもう、すでにここにはいない人に対し呆れ果てて何も言えない様子だった。しかしずっとこうしてはいられないと次にフリットウィックの話を聞く。

 

「彼らは休日、いつも呪文学の教室で呪文の練習や撃ち合いをしているのですが、今回はなんといいますか……連携を意識した戦闘の練習をしていたように見受けられましたな」

 

「具体的にわかりますか、フィリウス?」

 

彼の独特の甲高い声に耳を傾けながら、ミネルバは再度尋ねる。しかしその問いにフリットウィックは困ったような顔をした。

 

「いやはや申し訳ない。私もずっと見ていたわけではないので詳しいことは分からないのです。しかし、どうやら守りと攻めを明確に分担していたようです」

 

ただでさえ小さい身体をさらに縮こめるフリットウィックに、ミネルバは気にするなと声をかける。

 

自分達に気付かれることなく、調査、準備、訓練と用意周到に進められた計画。やはり彼らは遊びや冒険心などで消えたのではない。万全の体制を整えて、相応の覚悟で『秘密の部屋』へと向かったのだ。

 

そして、戦闘で連携を意識しているということはどういうことか。それはつまり、敵が自分達より数か実力が同等以上の相手であることを理解しているということを指す。

 

「彼らは『秘密の部屋』の怪物にも当たりをつけているのかもしれませんね」

 

ミネルバと同じ考えに至っていたフリットウィックは同意するように頷く。そんな彼であったが、その様子は先程から他の教師と比べてもどこか余裕が垣間見える。

 

それが気になったミネルバはフリットウィックに尋ねる。すると彼は笑顔とともに自身溢れる面持ちを見せた。

 

「ミネルバ。私は彼らなら、きっとやってくれると信じているのですよ」

 

「……その根拠は何ですか?」

 

「おや、貴女ならわかるはずですよ。彼をよく知る貴女ならね」

 

「…………」

 

フリットウィックの言葉に、ミネルバは何も言えなかった。

 

厳格な彼女は公私混同をしない。だからレイのことも普通の生徒のように扱い、マニュアル通りに対応しようとしていた。

 

そんな彼女であったが、心の何処かでたしかにフリットウィックと同じように感じていたことも事実だった。彼なら、彼の友人である彼らならやり遂げて無事に帰ってくるのではないかと。

 

十二歳の少年少女に何を馬鹿なと他の者達は言うかもしれない。身内贔屓だと、そのせいで目が曇っているだけなのだと。

 

しかしそれをフリットウィックをはじめとした教師陣が否定する。

 

「いやはや、彼らの自主練を見ていれば期待もしてしまうというものです。ミス・コルドウェルやミスター・エリスはもちろんのこと、ミスター・オルブライトまでもう無言呪文を扱えるのです。ポモーナ、知っていますか? なんとあのミス・バウンディが、あの歳ですでに防護呪文を扱えるのですよ! 」

 

「まあ、それは本当ですか!? そうですか、あの子が……」

 

その新事実にスプラウトは感慨深げにため息をつく。彼女はアリスが一年の当初、役立たずと罵られていたことに心を痛めていた。それをなんとかしようとしていた矢先にアリスの前に彼らが現れた。

 

それからというもの、アリスは急成長を見せてくれた。天才と秀才、努力家に引っ張られるようにぐんぐんと成績が伸びていき、いつも輝くような笑顔を見せてくれるようになった。スプラウトはアリスを救ってくれたレイ達に心から感謝していたのだ。

 

そんなアリスが今、頼れる仲間達と共に誰もが辿り着かなかった謎に挑もうとしている。スプラウトも教師としては失格であるかもしれないが、期待していることを隠しきれなかった。

 

それからも彼らを称賛する声が続々と挙がる。そんな中、ただ一人彼らを称賛することもなく、その様子を忌々しそうに眺めていた人物がいた。セブルスだ。

 

彼はその様子を見ながら何かを思い起こしている様子だった。果たしてそれはなんなのか、ここで答えを見出す者はいなかった。

 

そんなスネイプをよそに、ミネルバはレイ達を、いやレイを称賛する声に嬉しくなっていたが、これではいけないと自分を戒めて場を取りまとめる。

 

「んんっ、皆さん静粛に。たしかに彼らならやってくれるかもしれませんが、だからといって私達が何もしないわけにはいきません。セブルス、貴方は引き続き彼らの足取りを追ってください。私も手伝いましょう。他の方々は今後このようなことがないように警戒をさらに厳重にお願いします」

 

こうして教師陣による報告会は終わりを告げた。各々が大広間より去って行き、最後にスネイプが頭を下げて出て行くところまで見送ったミネルバは、杖を振って大広間のろうそくの火を全て消した。

 

一瞬で真っ暗になるが、それも少しすれば窓から差し込まれる淡い月灯りによって、再び大広間は仄かな明るさに包まれる。

 

ミネルバはその月灯りに誘われるように窓に近づいていく。そうして窓から見上げた月は、星空の中、綺麗な円を描いていた。

 

「……レイ、貴方はようやく見つけたのですね。自分が全てを委ねられる、そんな居場所を」

 

つぶやくような声は、月灯りに吸い込まれる。

 

レイという少年は、ここぞというときは決して誰も頼らず、自身の力のみで切り抜けようとする人物だ。

 

幼少の頃、助けを求めることもせず父親を殺した。去年は教師に、友に助けを求めることもなく一人で三頭犬に、闇の帝王に挑んだ。

 

けれど、今回は違う。彼は一人ではない。

 

おそらく、自分の知らないところでかの三人と友好を深めたのだろう。もしかすれば、すでに自身の過去を打ち明けているのかもしれない。

 

ともかく確かなことは、レイはもう、真の意味で一人ではないというだ。彼の側には、彼が頼ることが出来る友がいる。それも普通の友ではない。辛いことも、苦しいことも共に乗り越えてくれる。無茶をしようものなら全力で諌めてくれる。そんな心の友を。

 

ミネルバは知らず、一筋の涙を零した。万感の想いが込められた一滴の雫は月灯りに照らされて光り、暗闇の中に溶けて消えた。

 

………………

…………

……

……

…………

…………………

 

レイ達が消えて数日が経った。

 

彼らが行方不明になった当初、生徒達の間に激震が走った。無理もないだろう。彼らのうち三人は誰もが認める実力の持ち主だ。そんな彼らがまさか『秘密の部屋』の怪物に襲われたのではと思えば平静ではいられない。

 

誰もが早くここから出ていきたいと考えていたのだが、しかし翌日の朝礼で、その想いも打ち消されることになる。

 

ミネルバよりレイ達が自らの意思で消息を絶ったことが告げられたのだ。そしておそらく、『秘密の部屋』を探すためだとも。

 

これを聞いた生徒達の反応は様々であった。

 

赤毛の双子はなんで誘ってくれなかったんだと憤り、女王様をお姉様と崇める少女達は彼女の無事を心の底から祈った。

 

また子熊を密かに庇護する集団は、子熊を連れ出した三人へと密かに復讐することを誓い、その子熊を守りきれなかった自分達を激しく責めた。

 

このように様々な感情を抱いた生徒達であったが、また怪物の被害が出たわけではないと分かったことで、とりあえずすぐに帰りたいという思いはなりを潜めたのだった。……未だ、彼らの心の底に眠ってはいるのだが。

 

それから数日、ホグワーツでは表向き通常通り授業が行われていたが、その裏では、ミネルバとスネイプの捜索が続いていた。しかしそれも虚しく、彼らの足取りは一向に掴めないでいた。

 

彼らの捜索が続く中、ハリー達は歯痒い思いをしていた。一足遅くレイ達に同行出来なかったことで、完全に『秘密の部屋』へと続く手掛かりを失ってしまったのだ。

 

もう諦めるしかないのかというマイナス思考に考えがいく中、これではいけないとハリーとロンは気分転換というより、気持ちを奮い立たす為にハーマイオニーのお見舞いに行っていた。

 

ではエステルはといえば、彼女はレイの自室にてネビルと向かい合っていた。

 

彼女はここ数日、レイが居なくなってから意気消沈していたネビルを心配してここを訪れたのだが、何かの気持ちの変化があったのか、今の彼にはそんな様子は見受けられなかった。

 

彼女はここ数日でレイの温もりがすっかりなくなってしまったベッドへと腰掛ける。その向かいでネビルがカエルのトレバーを抱えたまま自身のベッドへと腰掛けた。

 

「ネビル、最近元気がなかったけどもう大丈夫なの?」

 

「うん、平気だよ。心配してくれてありがとう、ステラ」

 

ネビルはトレバーの頭を撫でながらエステルへと笑みを浮かべる。そこには一年時当初、彼女に対していちいち恥ずかしがっていた様子はもうなかった。

 

その笑みに無理をしている様子もないことが分かり、どこか拍子抜けといった様子を拭いきれないエステルはネビルに心境の変化を問いかける。

 

すると、ネビルは恥ずかしそうに頭を掻きながら答えた。

 

「僕もね、最初はショックだったし、レイのことが心配で心配で仕方なかったんだよ」

 

それはそうだろう。彼からすれば、去年ハリー達にされたことを、それを励まし叱責した当人であるレイに再び同じようなことをされたのだ。

 

だけど、あの時とは違うことがいくつかあった。

 

「けどね、気付いたんだ。レイは僕なんかが心配しなくても、絶対に帰ってきてくれるって。だってレイは僕なんかよりもすっごく強いし、頭も回って、勇敢で……。それに周りにはもっと凄いコルドウェルさんとかエリスとかがいるんだ」

 

心配するところなんて見当たらないよ、と笑う姿をエステルはじっと見つめる。ネビルはだけどね、と続けてエステルに語る。

 

「やっぱり心配しちゃうんだ。去年、レイは大怪我をして帰ってきたから。だからね……もし帰ってきたから、レイのことを思いっきり、た、叩いてやるんだ」

 

「えっ?」

 

ネビルらしからぬ攻撃的な発言にエステルは目を丸くする。ネビル自身、暴力を振るうというなれない発言に動揺を隠しきれていない。

 

しかし彼は構うことなく、トレバーと共に膝の上に乗せた両の手を握りしめる。

 

「去年、レイは言ってくれたんだ。友達の為に立ち向かった僕を尊敬するって。僕が誰よりも尊敬するレイが、そう言ってくれたんだ」

 

「…………」

 

それはエステルにも覚えがある言葉だった。夏前のあの湖畔、自分が彼への好意を自覚した運命の日。その時に彼が落ち込む自分に、大好きな笑顔と共に言ってくれたもの。

 

「だから、僕はレイに胸を張れるようにレイを叩いてやるんだ。魔法で眠らせた挙句にこんなに心配させてって。レイのために、大事な友達の為に、僕はレイに立ち向かってやるんだっ」

 

エステルがそこで見たのは、いつものおどおどした気弱な姿ではなく、レイが尊敬したのであろう友のために自らを奮い立たせる勇敢な姿だった。

 

そう。去年と違うところとは、レイ達の実力からくる安心感とネビル自身の成長だった。

 

その姿にしばし見とれたエステルは、次には思わず笑みが溢れた。

 

「……ふふっ、そうだね。その時は私がネビルのそばにいてあげるねっ」

 

「っ! うんっ」

 

その言葉に嬉しそうに頷くネビルであったが、正直なところを言えば、エステルにレイをどうこう言う資格はない。去年、今年と散々レイに心配をかけたのだ。

 

しかし、勇気を振り絞り、最も尊敬する友達に立ち向かおうとする彼を支えるくらいはいいかな、と思ったのだ。そして、それをレイは笑顔で許してくれるだろうことも容易に想像できた。

 

エステルはネビルがもう大丈夫だと分かったので、雑談もそこそこに彼に別れを告げて部屋を出た。結果として、励ましに行ったつもりが逆に励まされた感じであったが、エステルの心は軽くなっていた。

 

彼女もまた、レイのことを心配していたのだ。これが去年レイが自分達に対して抱えていたものなのだと、同じ立場になってようやく理解した間抜けな自分に嫌になっていたところだった。

 

ネビルは教えてくれた。信頼することの大切さを、友達なら心配することは当然だということを。

 

自分はレイに対して友達よりも強い想いを抱いてるのに、これではダメだとエステルは自身の頬をパチパチと叩く。

 

「……しっかりしなくちゃ私っ。ただでさえコルドウェルさんに負けてるんだから!」

 

エステルはそう独り言つが、シルヴィアがレイのことを異性として好きだという確証はどこにもない。しかしエステルからすれば彼女はすでにライバルであった。

 

そうして気合を入れたのだが、どうしてもレイが大怪我をするんじゃないかという不安を拭えないエステル。それはレイの性格や前例があることを考えれば仕方のないことかもしれないが。

 

ダメだダメだと頭を振り、そんな不安を追い出そうと躍起になっていたエステル。そんな彼女の背後に、スッと音もなく近く影があった。

 

エステルはふと感じた気配に、振り返る。するとそこにはこの一年で仲良くなった親友の妹が佇んでいた。

 

「わっ!? びっくりしたぁ……。え、えと、どうしたのジニー?」

 

声もなくいきなり現れたジニー・ウィーズリーの姿に、先ほどの側から見れば挙動不審な様子を見られたのかと思い、恥ずかしさで吃りながら頬を赤く染めるエステル。

 

しかしジニーは特に反応することも、言葉を発する様子もなく顔を軽くうつむかせて佇むだけであった。その顔は俯いているために影ができてしまい窺い知れない。

 

「…………」

 

「……ジニー? どうしたの、何かあった?」

 

ようやく様子がおかしいことに気づいたエステルがジニーへと近づく。その際もジニーは反応一つ見せなかった。

 

流石にこれはおかしいと、エステルが慌てて彼女の顔を覗き込もうとしたその時、全身に衝撃が走った。

 

「うっ!?」

 

身体が言うことを利かず、エステルは石壁に寄りかかるように座り込んでしまう。

 

自身に何が起こったのかと思考しようにも、徐々に意識が遠のいていくために満足に考える余裕などかけらもなかった。

 

そんな自分を他人事のように感じていたエステルは、消えゆく意識の中、ジニーの声が聞こえた気がした。

 

 

 

「……彼女も復活のために使わせてもらおう。それに、彼を呼び寄せるにはちょうどいい」




迷いに迷ったクライマックス。いつもよりもはるかにご都合主義が含まれる予定です。ぜひ温かい目で見てくださればと心よりお願いいたします。

次回、いざ、『秘密の部屋』へ。
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