選ばれし者と暁の英雄   作:黒猫ノ月

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どうもです。

今回は日常回です。


3話

「ネビル、準備は出来たか?」

 

「ちょ、ちょっと待って! トレバーが見つからないんだ!」

 

「それなら俺のベッドの中だぞ」

 

「え!? ご、ごめん! すぐに引っ張り出すから!」

 

「気にするな。居心地が良いんならいさせてやれ」

 

「……いいの?」

 

「ああ」

 

「あ、ありがとう、レイ」

 

「どういたしまして。それじゃ、朝飯に行こうぜ」

 

「うんっ」

 

レイは昨日から寝室が同室となった気弱な少年、ネビル・ロングボトムを連れて、朝餉のために大広間へと向かった。

 

昨日の組み分けは、あれから“生き残った男の子”が呼ばれるまではつつがなく進行した。ステラも無事にグリフィンドールに入ることができ、グリフィンドールの長机に来た時はレイに喜びを表すかのように手を振った。その時にまたしても嫉妬の視線を向けられたが、レイは全く気にすることはなかった。

 

そしてステラのすぐ後に、“生き残った男の子”……ハリー・ポッターが呼ばれた。レイも興味があったので組み分けされているところを見ていたが、他の生徒と比べてかなり長かった。

 

在校生からお前もあれぐらいだったと言われたので、レイはまあ、あいつは英雄みたいだしなと組み分け帽子が判断に迷っていることに一人納得していた。この時、レイは自身の組み分けはグリフィンドールへと心の底から行きたいと思わせるための仕込みだったと思っていたため、自分が英雄だとは微塵も思っていなかった。

 

そして組み分け帽子の長い沈黙を破ったグリフィンドールの一声に、グリフィンドールは先ほどのスリザリンと同じくらい大喜びした。それはそうだろう。“生き残った男の子”である英雄を勝ち取ったのだから。

 

どこかほっとした様子のハリーはステラの横に座り、ステラと話しているようだった。ステラがハリーと話すのに緊張気味なのが伺えて、レイは苦笑した。

 

それからは全ての組み分けが終わるまで何事もなく終わることができた。組み分けが終わった後は、アルバス・ダンブルドアのかなり短い一言によりすぐに晩餐会へと移り変わった。それに喜ぶ在校生とさらに大喜びする一年生によって、晩餐会は賑やかなものになった。

 

晩餐会の間、レイは特に誰かと話すこともなく食事に集中していた。ステラは緊張がだいぶ抜け、ハリーと楽しげに食事をしているようだった。そのハリーも、数多のグリフィンドール生に声をかけられながら、慌ただしくも楽しいひと時を過ごしているようだった。

 

レイはスリザリンの席を何気なく見る。そちらもシルヴィアの周りに多くのスリザリン生が彼女と縁を持とうと集まっていたが、シルヴィアは遠目でも分かるほど表面上の態度を一貫していた。金髪をオールバックにしている少年が特にしつこいようで、その少年に対してはほぼ無視を貫いていた。

 

視線を晩餐へと戻し食事に集中していると、ほとんど首なしニックなどの各寮付きゴーストが一騒ぎ起こしたのだが、レイはほとんど首なしニックの首の中身を見ても特に感じるものはなかった。

 

そんな晩餐も落ち着いてきた頃、ダンブルドアからいくつかの注意を受けた。ホグワーツ周辺の森に入らないこと。四階の廊下へは立ち入らないことが主なもので、後は基本的なものばかりだった。そしてダンブルドアは最後に明日は遅刻しないようにと締めて、この晩餐会はお開きとなった。

 

レイを含めた一年生達は、監督生に率いられながグリフィンドール寮に向かう。レイはその途中でステラと合流し、彼女と一緒に移動していたハリーを紹介してもらった。

 

紹介してもらったハリー・ポッターは正直、“例のあの人”と呼ばれた闇の帝王を倒したとはとても思えないどこにでもいる少年という印象だった。

 

まあ、それもこれから共に過ごせば分かるだろうと特別大げさに接することはなく、普通に自己紹介をして終わりだった。その対応がハリーにとっては新鮮だったらしく、今までで見ていたぎこちない笑顔ではなく、違和感のない笑顔で返してくれた。

 

レイは、例え英雄だろうとなんだろうと特定の誰かに対して接し方を変えるつもりはなかった。これができる者がどれだけいるか? レイが自覚することはしばらくはないだろう。

 

レイ達は移動中、ホグワーツの様々な魔法の仕掛け全てに感嘆していた。そんないつまでも飽きさせない道中のおかげもあり、あっという間にグリフィンドール寮へと辿り着いた。グリフィンドール寮の入り口は絵画の裏にあり、合言葉を言って入れてもらう仕組みのようだった。

 

談話室に集められたレイ達は、監督生による注意事項を言われ、その後に解散となった。レイはステラとハリーに、また明日と別れの挨拶をして自分の寝室へと足を運ぶ。

 

レイが寝室にたどり着き、さて明日は、と明日の準備をしていると、寝室の入り口に見るからに気弱そうな少年……ネビル・ロングボトムが顔を出した、

 

ネビルは見知らぬ他人の存在に怯えた様子を見せていた。その様子を見る人が見れば、不快に思い、いじめなどに発展するのだろう。しかしレイは気弱なんだなと思うだけで、特に不快に思うことはなかった。

 

レイは未だに入り口で怯えているネビルに普通に声をかけた。最初はレイの言う事成す事にいちいちビクビクしていたネビルだったが、そんな自分に嫌な顔をせず接してくれるレイに、次第に怯えることもなくなっていった。最後には笑顔で自分のペットである蛙を紹介できるようになっているほどだった。

 

それからしばらく二人で談笑していた。ネビルはこの時、今までのこともあって、人と話すのってこんなにも楽しいんだ、と感動すらしていた。

 

楽しいひと時は、いつの間にかやって来ていた就寝時間によって終わりを迎えた。ネビルは残念そうにするが、レイのこれからいくらでも時間がある、という言葉に笑顔で頷いて、大人しく自分達のベッドに潜った。そんな二人は、今日一日多忙な1日だったこともあって泥のように眠るのだった。

 

レイが昨日のことを振り返っていたら、いつの間にか大広間へと辿り着いていた。在校生について行ったから、途中で魔法の仕掛けにハマることもなく無事に行けたようだ。

 

「す、凄いなぁレイは。僕一人だったら魔法の仕掛けに引っかかって朝ごはんを食べれなかったよ」

 

「いや、こんなことでそんなに褒められても困るんだが」

 

「僕には思いつかないことだったから……」

 

ただ在校生についてったら迷うこともないんじゃないか、と言っただけなのだ。そんなにキラキラした目で見られたらレイとしては居心地が悪い。

 

席に座ってどうしようと悩んでいると、ステラが女学生を連れて大広間にやってきた。レイはこれ幸いとステラへと手をあげる。それに気付いたステラは、隣の女学生に何事かを言って二人でこちらに向かってきた。

 

「レイ、おはよう。ゆっくり眠れた?」

 

「おはよう。まあ、ぐっすりだったな」

 

「うそぉっ、私はワクワクしすぎてあまり眠れなかったの。あっ、紹介するね。私と同室のハーマイオニー・グレンジャー。昨日はずっと彼女とお話ししてたの」

 

「ハーマイオニー・グレンジャーよ。よろしく」

 

「レイ・オルブライトだ。こちらこそよろしくな」

 

ハーマイオニーはくせ毛を背中まで伸ばした利発そうな少女だった。ステラとハーマイオニーはレイとネビルの前に腰掛ける。すると、ハーマイオニーがレイの隣に座るネビルに気付いた。

 

「あらネビル。お元気?」

 

「う、うんっ。き、昨日はありがとう、ハーマイオニー」

 

「気にしないで」

 

ネビルとハーマイオニーは知り合いだったようで、ネビルはどもりながらもハーマイオニーに礼を言っていた。

 

「ハーマイオニー、彼とお知り合い?」

 

「ええ、昨日列車の中でちょっとね」

 

「ステラ、俺と同室のネビルだ。ネビル、自己紹介」

 

「うぇっ!? え、ええっと……」

 

ネビルはそれっきり顔をうつむかせて黙ってしまった。無理もない。気弱な性格のネビルが、誰もが認めるであろう美少女であるステラと初対面で面と向かって話すのはハードルが高かった。

 

レイはなんでネビルが黙ってしまったのか分からなかったが、フォローに回ることにした。

 

「悪いな、ネビルはシャイなんだ。気を悪くしないでくれ」

 

「ううん、気にしてないよ。えっと……ネビル、でいいかな? 私はエステル・マクレイア。気軽にステラって呼んでね?」

 

「う、うん……」

 

それぞれ自己紹介を終えた4人は、今日の授業のことなどを話しながら朝食を食べた。ネビルは結局ステラと話すことができず、気軽に彼女と話せるレイにさらに尊敬を募らせるのだった。

 

………………

…………

……

……

…………

………………

 

それからしばらく、レイは初めてのことに戸惑いながらも忙しくも楽しい日々を過ごしていた。とりあえず一通りの授業を受けたのだが、どの授業も個性的で、中にはこれで授業が出来るのかと思えるものもあった。

 

そんな授業の中でも特に印象に残ったのは二つの学問だ。まずは変身術で、この最初の授業は教室の三分の一が空席という状態で始まった。レイが遅刻しなかったのは、事前に在校生から教室の行き方を教えてもらっていたからだ。そのおかげで、レイとネビル、ステラとハーマイオニーは遅刻することはなかった。

 

黒板には全員が揃うまで自習と書いてあり、教卓の前では気品のある猫が丸くなっている。レイ達は書かれた通りに自習することにした。

 

その間に、次々と遅刻した生徒がやってくる。そして最後にハリーと赤毛の少年……ロナルド・ウィーズリーがやってきた。全員が揃ったのを確認した猫は起き上がり、先生がいないことに安堵している遅刻組へと顔を向けた。

 

すると、猫は突然ミネルバへと変わり、レイ以外の生徒が驚きの声をあげる。そんな生徒達を気にすることもなく、ミネルバは淡々と遅刻組に注意を行う。

 

「ホグワーツが始まってからひと月ほどは様々な魔法の仕組みに戸惑うこともあるでしょう。しかし、遅れることなく来ている生徒がいることを忘れてはいけませんよ」

 

ミネルバは暗に、今回は大目にみるが、ひと月と言わず次の授業からは遅れるなと告げていた。その言葉にハリー含む遅刻組は顔を青くさせながら何度も頷いていた。それを見たミネルバ一つ頷き、授業を開始した。

 

「皆さん、知ってるとは思いますが改めて自己紹介を。変身術の教鞭を摂るミネルバ・マクゴナガルです。先ほど見たように魔法省公認の動物もどきでもあります」

 

ミネルバは顔を引き締めて自身の話を聞く生徒を一瞥し、話を続ける。

 

「変身術は数ある学問の中でも特に難しく複雑な学問です。いい加減な態度で授業を受けるものは出て行ってもらいます。そして二度と教室を跨がせません。……分からないことも多いでしょうが、挫けずに学ぶことを期待します」

 

ミネルバの警告に生徒一同が顔をひきつらせる。だが、レイはミネルバの言うことに頷く。本当にその通りだったからだ。変身術を適当にすると元に戻らなかったり、複雑怪奇なものになってしまうような危険なものなのだ。また、全ての教科書を読破したレイだったが、変身術は分からないことが多い学問だった。

 

ど初っ端から生徒に鞭打つミネルバだったが、鞭ばかりを与えるばかりではなかった。生徒達に机を豚に変えるところを見せることで、やる気を出させたのだ。しかしその飴も、その後の板書が複雑すぎて、口の中からこぼれ落ちたのだが。

 

それほど難しい授業だったが、レイはなんとか食らいついていた。どうやらこれは、教科書を予習しておかないといけない授業構成のようだった。レイは教科書を読んでおいてよかったとこの時初めて思った。

 

レイの他にはハーマイオニーが頑張っていた。ステラの隣で教えている。レイの隣には頭を抱えるネビルがいたが、レイはまだ人に教えれるほどの自信はなかった。

 

そして授業の最後にマッチが配られ、ミネルバは精神的に参っている生徒へとマッチを持ってみせる。

 

「では、このマッチを針へと変えてみせなさい」

 

そう言って、ミネルバはあっという間にマッチを針へと変えてみせた。生徒達は言われた通りにマッチを針へと変えようとしてみせる。しかし、理解が追いついていない状態で変化させることなど土台無理な話で、ほぼ全ての生徒が変化させることなど出来なかった。

 

そんな中、少しだけでもマッチから針へ変えられた生徒がいた。レイとハーマイオニーである。レイはマッチの先を針の穴に、ハーマイオニーはマッチの先を針先へと変えたのである。

 

これにはミネルバも満面の笑みだった。最初の授業で変化させられたものは近年ではいなかったとレイとハーマイオニーを称賛した。ミネルバはグリフィンドールに点を入れ、二人が変化させたものを生徒に見せながら他の者も負けないように精進しなさいと告げて授業は終わった。

 

この時のレイとハーマイオニーの態度は正反対で、レイは気恥ずかしげで、ハーマイオニーは自慢げだった。後にこの差が人付き合いに問題を起こすのだが、それはまた別の話。

 

そんなことがあったその日の夜に、談話室でレイはミネルバとの関係をステラへと告げた。実はミネルバは自分の知り合いで、恩人なのだと。それを聞いたステラは納得したような顔をしていた。

 

「なるほどね。だからマグゴナガル先生はレイが頑張ってるところが見れて嬉しかったんだね」

 

ハーマイオニーと喜びように差があったからなんでかなって思ってたの、と言うステラにレイは目を見開く。まだ出会って幾日も経っていない、それこそミネルバとは他人と言っても過言ではないステラがそれに気付くとは。

 

ステラはどうやら他の人と比べても聡いようだった。この時、レイは自分の過去を悟られないようにしようと決めた。自分のためではなく、ステラのために。

 

次の印象的だった学問は魔法薬学だ。この授業はスリザリンと合同で、始まりは魔法薬学担当の教授であるセブルス・スネイプの演説からだった。

 

「この授業では、魔法薬剤の繊細な科学と厳密な芸術を学ぶ」

 

スネイプは朗々と魔法薬学がどんなものであるかという持論を並べていく。スネイプはミネルバと同じで、誰一人としておしゃべりをさせない雰囲気を持っていた。その質は全くと言っていいほど違うものだが。

 

その鬱々とした雰囲気もあり、演説の途中でレイはため息をついた。隣のネビルはついてこれなくて目を回している。しかしその演説も終わりを迎える。スネイプはいきなり演説を切り上げ、ハリーを姓で叫んだのだ。

 

呼ばれたハリーは何が何だかわからない様子だった。無理もない。なぜなら、他の誰もハリーが何故呼ばれたのか見当もつかなかったのだから。

 

スネイプはのろのろと立ち上がるハリーに次々と質問を投げかける。

 

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じた物を加えると何になる?」

 

「ベゾアール石を見つけて来いと言われたらどこを探す?」

 

「モンクスフードとウルフベーンとの違いは何だ?」

 

計三つの質問にハリーはどれも答えることが出来なかった。レイは当たり前だと心の内で思う。これはどれも一年生で習うものではない。教科書を読んだレイでさえ、一つしか分からなかったのだから。

 

しかしハーマイオニーは違うようで、全ての質問に対して手を上げ続けた。答えに窮したハリーはハーマイオニーが分かるんじゃないかとスネイプに言うが、スネイプはそんなハーマイオニーに手を下げたまえ、と冷たく言って、ハリーを蔑むように答えを言っていく。

 

こんなことも分からないのですかな? 君は英雄であるのに、と。

 

レイはやることもなかったので、スネイプが次々に上げていく答えを羊皮紙に書いていた。すると、三つ目の答えを言った後にスネイプが唖然としている生徒達に何故吾輩の言葉を羊皮紙にまとめないのか、と睨みつけ、慌てる生徒に質問の答えを羊皮紙に書かせていた。

 

レイはそれを見て、やっててよかったと一息ついく。すると、ハリーの態度からグリフィンドールの点数を下げていたスネイプの目にその姿が入ったようで、レイはスネイプに目をつけられた。

 

「ほう、少しはマシな者がいるようですな。ではオルブライト、質問だ」

 

まさかの事態にレイはため息をついて立ち上がる。隣のネビルは先ほどのハリーとのやり取りを思い出しているのだろう。自分のことでもないのに泣きそうになっていた。

 

スネイプは立ち上がったレイへと問いかける。

 

「忘れ薬を作る際の材料は何かね?」

 

レイはこの質問で、スネイプがどれほどハリーを嫌っているかを察した。忘れ薬は初級の魔法薬で、教科書の比較的最初の方に載っていた筈だ。

 

何故スネイプがそこまでハリーを嫌っているのか分からないレイだったが、とりあえず生徒全員に対してあんな態度ではないことに安堵した。

 

「確か……忘却の川の水とヤドリギの実、後はカノコソウの小枝、だったと思います」

 

レイが慣れない敬語で答える。その回答にスネイプは不機嫌そうに片眉を上げた。

 

「……正解だ」

 

レイは正解だったことに胸をなでおろす。しかしそれはスネイプが次の問いを投げかけるまでだった。

 

「では、その材料の必要量は?」

 

さすがにこれは分からなかった。教科書を読んでいるとは言っても、まだそこまで読み込んでいるわけではない。レイは手を上げているハーマイオニーを色々な意味で称賛しつつ、スネイプに素直に答えた。

 

「すみません、分かりません」

 

この答えにスネイプは口角を上げる。

 

「いけませんなそれでは。覚えるのならばそれに関することを全て正確に覚えなければ意味がない」

 

スネイプは嫌みたらしくレイにそう言って、もったいぶった話し方で答えを言っていく。レイはスネイプの言葉に確かにその通りだと頷き、素直に謝って羊皮紙に書き写した。スネイプはそんなレイの素直な様子に眉根を寄せたが、特に何も言うことはなかった。

 

その後、スネイプに当てられるグリフィンドール生はハリーまでとはいかないが誰もが散々な目に合い、点数を下げることになった。逆に、スリザリン生は僅かなことで点数が挙げられるため、グリフィンドール生の不満は募る一方だった。

 

そんなグリフィンドール生にとっては苦痛の時間も終わりを告げ、魔法薬学の教室を出る頃にはグリフィンドール生の不満は爆発寸前だった。そのうちの一人であるステラに至っては既に爆発していた。

 

「なんなのあの人! ハリーには無理難題を押し付けて、ハーマイオニーは無視! レイなんか質問にちゃんと答えたのに、それが気に入らないからってさらに追い打ちをかけるなんて!」

 

他のみんなに対してもそうだよ! と怒るステラ。そのようなステラの姿を初めて見るグリフィンドール生は、嬉しさと怖さが半分半分だった。実際ネビルは半泣きだ。レイは仕方ない、と怒りが収まらないステラを宥めることにする。

 

「まあ落ち着けよステラ。ハリーやハーマイオニーの扱いは確かに酷いもんだったが、俺や他の奴らに対する質問は教科書を読んでいれば答えられるものばかりだ。これに対しては予習しなかった俺たちが悪い」

 

「でも!」

 

そんなことでは怒りが全く収まらないステラ。他人のためにここまで怒ることができる彼女の優しさに好感を覚えるが、これをスネイプの耳に入れるわけにはいかない。レイはステラの目を見て落ち着かせるようにゆっくりと話す。

 

「ステラ、スネイプ教授の言ってることは間違ってない。自分のために中途半端に覚えることは、逆に自分を不幸にする」

 

レイはそれを変身術で例えた。あれは完璧に出来て初めてうまくいく術だ。中途半端では要らぬ危険を招く。それを聞いていくうちに、ステラの怒りが少しづつ収まってく。

 

「それにな、スネイプ教授は多分、魔法薬学に誇りを持ってる。それに見合った膨大な知識もあるんだろう。そんな人が魔法薬学に対して何も知らない……いや、知ろうとしない人を見下すのはある意味当然だ」

 

レイの言葉を聞いていたのはステラだけではない。レイの周囲のグリフィンドール生はレイの言葉にバツが悪そうな顔をする。心当たりが十分にあるからだ。そして、それを言うレイを非難しようにも、レイが談話室で宿題と一緒に教科書を読んで予習してるところ見ているから出来ない。

 

レイの言葉には、確かな重みがあった。

 

「でもまあ、確かにあの言い方はひどいよなぁ。俺も悔しくないわけじゃないからもう少し予習しないとな」

 

肩を諌めるレイを見て、ステラは口をきゅっと結ぶ。レイのために怒っていたのに、その本人は気にした様子もない。友達を馬鹿にされて悔しい思いをしていた自分が馬鹿みたいだ、とステラはレイに対して不満を覚える。しかし、それも長くは続かなかった。

 

「ま、とにかく俺がそんなに気にしてないんだからステラが気にしても仕方ないだろ? ……でも、ステラの気持ちは素直に嬉しかったよ。ありがとうな」

 

他人のために怒ることのできるステラは本当に優しいやつだな、と言って微笑むレイを見て、ステラの不満は急速に萎んでいき、同時に怒りもすっかり収まってしまった。

 

「……もう、そんなこと言われたら何も言えないよ」

 

「悪いな」

 

「いいよもう。……よしっ、私も悔しいから勉強しよう! レイ、ハーマイオニー、勉強教えて!」

 

「あいよ」

 

「ええ、任せて」

 

「あ、あの! ぼ、僕もいいかなっ?」

 

レイの話を隣でずっと聞いていたネビルがどもりながらも尋ねる。今回の授業で酷い目にあった第3位は間違いなくネビルだ。レイはもちろん構わないと頷く。

 

「当たり前だろ? 今日の夜にでもやろうぜ」

 

「う、うん!」

 

そして四人は何事もなかったように、次の授業がある場所へと向かっていった。後に残されたのはグリフィンドール生と僅かなスリザリン生のみ。

 

「……俺も勉強しようかな」

 

「お前本気か? あんな奴の言うことを真に受けんなよ」

 

「あたしもやられっぱなしは嫌だから、勉強しよ」

 

「あ、私も一緒にやるぅ」

 

レイの言葉は、少なくないグリフィンドール生達にプラスに働いた。主に“悔しい”という部分に共感して。

 

それはハリーもだった。少しは勉強してスネイプを見返そう、あわよくばステラともっと仲良くなりたいと考えたのだ。しかしそんなハリーの友達であるロンは、レイの言い分が気に入らず馬鹿馬鹿しいと相手にしなかったのだった。

 

これによってスネイプの質問に答えられるグリフィンドール生が増えていく。そのため、スネイプの機嫌が授業のたびに悪くなっていくことになるのだが、果たしていいことなのかどうか。

 

……そして、そんな一部始終を興味深そうに眺めていた人物がいた。

 

「……ふふっ、やっぱり君は面白いな。レイ・オルブライト」




如何でしたか?

次回、そして二人は出会った。

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