選ばれし者と暁の英雄   作:黒猫ノ月

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どうもです。

やっと出せた、彼女を!


4話

シルヴィア・コルドウェルが最初に彼に対して興味を抱いたのは、大広間で彼が組み分けのために名前を呼ばれた時だった。

 

彼の隣には誰の目に見ても可愛いと言える赤毛の女の子がいた。そんな仲よさげな二人の様子に、周囲の男子が嫉妬で彼を睨みつけていたのだが、しかし当の本人はその視線を堂々と受け止め、全く気にしていない様子だった。

 

少なくともシルヴィアが知る男子というものは、ああいった視線を受けたら戸惑う、怯える、睨み返す、優越感に浸るといった反応を返すはずなのだ。しかし彼はそのどれでもなく、そもそも嫉妬を向けてくる連中を相手にさえしていなかった。

 

シルヴィアは思わず声に出して笑ってしまった。側から見るとそれは滑稽なものだったからだ。勿論、滑稽なのは嫉妬を向けている奴らだ。そこには、普段純血だ何だと威張りちらす者と非魔法族であるマグルとの差異などなかった。

 

そんなくだらない連中とは明らかに一段違う格を持つ彼に興味を持ったのは、つまらない人間ばかりを相手にしてきたシルヴィアにとって当然の出来事だった。

 

シルヴィアが興味を引く彼の組み分けは、グリフィンドールに決まった。そのことに少し残念に思うシルヴィア。何故なら、自分は確実にスリザリンだと自覚していたからだ。それは自身の憎き血と才能故だった。

 

彼の組み分けは他と比べても長いものだった。これはおそらく、どこの寮の適性もあったということだろう。多才で勇敢な少年、その結果にますます興味を惹かれるシルヴィアだった。

 

そんなシルヴィアだったが、ふと思いついたことがあった。それは、彼が自分を見たらどんな反応をするのだろうか、というものだった。彼女の心を悪戯心がくすぐったのだ。

 

シルヴィアは自身が美しい容姿をしていることと、やろうと思えば大広間にいる生徒達を自身に釘付けにするカリスマ性があることを自覚していた。

 

では、何故今はシルヴィアに注目する目がないのかといえば、彼女は少し前までつまらない学校生活になりそうだと考えていたので、あまり目立とうとは考えてなかったのだ。気配を消すなど、シルヴィアにとって造作もないことだった。

 

しかし、今は違う。彼の反応が見てみたい。驚かせてみたい。今はそのことだけが頭にあった。それは、シルヴィアが久しく感じていなかった心の拍動だった。

 

そしてその時がやってくる。シルヴィアは自分の名前を呼ばれた瞬間に歓声が聞こえてきたので、それに合わせて隠していた存在感を全開にした。それに気付いた周りの一年生達が気圧されて、シルヴィアのために道を開ける。それは最前列まで伝播して、組み分け帽子まで続く一本道を作り出していた。

 

長机に座る在校生も、大広間の前で座る教師達の心をも掴んだシルヴィアはしかし、そんな当然のことには目もくれずに目的の人物が自分に向ける視線を探す。そして見つけたそれは、シルヴィアをかつてないほどに満足させるものだった。

 

彼はなんと、シルヴィアを美しい絵画のようにしか見ていなかったのだ。シルヴィアは他者の視線に異常なほどに敏感だ。それは視線を向けられだけで相手が何を思っているのかが分かるほどのものである。

 

彼がシルヴィアに向ける視線に、他の者達が向ける下卑たものや畏怖、尊敬や崇拝などというものが一切なかったのだ。

 

彼の視線はこう言っていた。ただ……綺麗だ、と。

 

彼にとって自分は迫力ある美しい絵画に過ぎず、それ以外に思うところはない。それはまるで、絵画に興味のない人が、ふと目についた絵画をただなんとなく綺麗だと感じているだけだと言えば分かるだろうか。

 

彼にとって私は、その程度の存在に過ぎない。

 

この事実はシルヴィアを歓喜させた。初めて自分を見てくれる存在が現れたかもしれない。自分が興味を惹かれた人物は、自分を上辺だけでは見ない稀有な者かもしれないのだと。少なくとも、自分を上辺だけでは判断しない人であるのは確かだった。

 

人は誰しも容姿や才能などの上辺を重視する。それが突出していたら尚更だ。シルヴィアは物心ついた時からそれだけを見られてきた。他者は当然、実の母親にさえも。

 

シルヴィアの喜びの深さを知ることができるのは、彼女自身だけだった。

 

そうして、シルヴィアは彼……レイ・オルブライトとどうにかして二人で会えないかと接触方法を模索するのだった。

 

………………

…………

……

……

…………

………………

 

それからひと月経ち、シルヴィアはますますレイへの関心を募らせていた。例えば最初の魔法薬学での出来事は記憶に新しい。シルヴィアはレイの言葉に感心したものだ。

 

しかし、シルヴィアは未だにレイと接触できないでいた。

 

理由はいくつかある。一つはグリフィンドールとスリザリンの確執だ。このくだらない悪習のせいで、互いが互いに近づくときは複数で牽制し合うのが常だった。

 

レイは比較的ハリーの近くにいることが多く、そのハリーは典型的な純血主義であるドラコ・マルフォイと険悪な関係だった。これでは自分がレイに近づいただけで周りが大きく騒ぎ出す。それはシルヴィアの望むところではなかった。

 

それもあって、見え透いた好意と純血主義同士の縁を持とうと近づいて来るマルフォイに対して、シルヴィアは絶対零度の対応をするのだった。

 

もう一つはシルヴィアの取り巻きを気取る者達の存在である。シルヴィア自身は純血主義など愚かしいと考えているのだが、彼女は純血主義筆頭などと言われている家の生まれだった。

 

また、それに加えて美しい容姿や放たれるカリスマ性、天才故にスリザリン一の成績優秀者であることも人を惹きつけるの一役買っていた。

 

それもあり、スリザリン内の純血がシルヴィアの周りに集まること集まること。そのせいでスリザリン内のマグル生まれやハーフの生徒がより一層肩身が狭くなり、シルヴィアに憎しみにも似た感情をぶつけてくるのだ。

 

本人の知らないところで恨みつらみが増していくことに流石のシルヴィアもため息をつかざるを得なかった。これは半ば面倒臭いと人が集まるのを放置していた自分にも問題があったので、尚更ため息しかでなかった。

 

いくら天才と呼ばれるこの身でも、間違うことはある。過去の面倒臭がった自分をシルヴィアは引っ叩いてやりたくなるが、後の祭りであった。

 

取り巻き達はシルヴィアが自分達を無視するのも関係なく、ただ自分の格を上げるためだけに側にいるだけだ。それを虎の威を借る狐という。

 

この取り巻き達が先ほどのグリフィンドール生との確執も合わさって、シルヴィアが少し近づくだけで、グリフィンドール生は警戒するのだ。これにはもうシルヴィアは一人頭を抱えるしかなかった。正直、お手上げだった。

 

シルヴィアは別に、このスリザリンで嫌われようと一人になろうと構わないのだ。だから取り巻き気取りどもを脅し、散らしても良かったのだがそうなると実家がうるさい。

 

実家に対しても特に思うところなどない。純血主義筆頭など糞食らえだ。しかし、今まで育ててもらった恩はある。それがシルヴィアに最後の一線を超えさせなかった。

 

シルヴィアはここで頭を抱えていても仕方ないと読んでいた本を閉じる。今日は休日で、本でも読んでいようと思っていたのだがページが一向に進まない。

 

今シルヴィアがいるのはスリザリンの談話室でもかなりいい席だ。その周囲には当たり前のように取り巻きがおり、彼女が本を閉じたことで立ち上がり、ご機嫌伺いをする。

 

「コルドウェル、どうしたんだ?」

 

「何か持ってきましょうか? お菓子とかどう?」

 

「いや、いい。少し外に出る」

 

「わかりました、おい! 行くぞ!」

 

当たり前のようについてくるつもりである取り巻き達に辟易するも、気分転換も兼ねて地下にあるスリザリン寮から湖畔へと歩を進めた。

 

………………

…………

……

……

…………

………………

 

シルヴィアは取り巻き達を連れて、湖畔への道を行く。この頃は少し肌寒くなってきているが、今日は天気も良く程よい風が彼女のプラチナブロンドを靡かせる。軽く頭を押さえて風を受け、気持ちの良さにそっと微笑むその姿に取り巻き達は思わず見惚れてしまう。

 

シルヴィアはそれに気付くが、特に何も思うことはなく止めていた足を動かす。道中の風や景色を楽しんでいると、シルヴィアの目線の先に広大な湖が広かった。

 

「ああ、いいな……」

 

シルヴィアは誰にいうでもなくそう呟く。しかしそれに取り巻き達は過剰に反応する。

 

「本当にいい景色ですよねっ」

 

「まあ、コルドウェルには劣るけどな」

 

「ちょっと! それはコルドウェルに失礼でしょ!」

 

いい気分になっていたのに、取り巻き達のせいで台無しになった。そろそろ我慢の限界に近づいてきたシルヴィアは、周りで騒ぐ取り巻き達をそろそろ脅そうかと考え始める。

 

しかし、そんなシルヴィアの視界にふと、湖畔に座る人影が入った。どうやら本を読んでいるようだ。その人影はこちらの騒ぎに気付くこともなく本に目を落としている。

 

少し遠くにいるその人影に目を凝らすと、シルヴィアは大きく目を見開いた。そして、その人影が誰かを知ったシルヴィアの行動は早かった。

 

「おいお前達」

 

「!? ど、どうしたのコルドウェル?」

 

「わ、悪い。騒ぎすぎたか?」

 

久しぶりにシルヴィアから声をかけてもらった取り巻き達は少し嬉しそうにしながらも、こちらを見ようともしないシルヴィアに不安そうにする。

 

シルヴィアは取り巻き全員がこちらを意識したことを確認し、一瞥することもな口を開いた。

 

「少し用事ができた。お前達は先に寮へ帰れ」

 

その言葉に、取り巻き達は最初何を言われてるのかわからなかった。しかししばらくして理解した瞬間、シルヴィアの言葉に反対する。

 

「い、いえ! 何かあるなら私達が……」

 

「……聞こえなかったのか?」

 

しかし、シルヴィアは口答えを許さない。

 

「私は帰れ、と言ったのだ」

 

シルヴィアは言葉に威圧を乗せる。それを聞いた瞬間、取り巻き達はすぐさま口を閉じた。今のシルヴィアに逆らっては殺される。大袈裟だが、そう感じるほどに取り巻き達はシルヴィアに恐怖を覚えた。

 

「分かったな? なら行け」

 

シルヴィアの確認の言葉に取り巻き達は素直に頷く。そして言われた通りに走ってホグワーツへと帰るのだった。

 

それを見送ったシルヴィアはさて、と気を取り直して、湖畔に座る人影へと歩み寄って行った。

 

………………

…………

……

……

…………

………………

 

「…………っだぁー! ダメだっ!」

 

レイは湖畔で一人、教科書と板書をとった羊皮紙を見比べていた。それも叫ぶ前までだったが。そのあとは羊皮紙を飛ばされないようにそこらの石で止めて、教科書で太陽の光を遮って寝転んだ。

 

レイは変身術について頭を抱えていた。マッチ棒を完璧に針へと変化させたいのだが、あとちょっとというところで出来ないでいたのだ。

 

レイと同じくミネルバに褒められたハーマイオニーは既に完全に変化できている。なので本当ならレイもハーマイオニーと勉強したかったのだが、彼女はこのところピリピリしており、ステラ以外をあまり寄せ付けようとしないのだ。

 

ステラが言うには、どうやらハーマイオニーは成績優秀でありながらもマグル生まれということで、他の生徒達に悪く言われているらしい。さらに、同じく成績優秀で通っている自分と比べられて蟠りを感じているということだった。

 

数日前、ステラにレイは悪くないけどしばらくそっとしておいて欲しい、と言われ、それなら仕方ないと頷いて言われた通りにすることにしたのだ。

 

レイはハーマイオニーのことに関しては、何もしないことを決めていた。ステラに言われたこともあるのだが、レイとしてはハーマイオニーがなんでそんなに気にしているのか分からなかったのだ。

 

自分にとってどうでもいい人に何か言われても、さほど気にすることでもないと思うのがレイの本心だった。友達や家族、大事な人にさえ自分を分かってもらえていたならそれでいいではないか。

 

さらに、レイは他者と比べられて蟠りを感じるというところにも共感できないでいた。自分は自分、他人は他人だろう。一人一人が違って当たり前で、それこそ、そんな当たり前のことを他人に言われてもどうでもいいだろうに。

 

レイはため息をついて、これ以上考えていても仕方ないとハーマイオニーのことに関しては脇に置くことにした。今は変身術について考える。

 

ミネルバには既に二回ほど尋ねに行っている。それでも分からなかったのだ。もう一度聞こうかとも思ったが、これ以上ミネルバの時間を使うのもどうかと思ったし、彼女に不甲斐ないところは見せたくなかった。

 

「あー、どうしたもんかなぁ?」

 

レイは暗い視界の中で次の手を考える。このまま分からないままにするのは気持ち悪かったのだ。というより、ミネルバの期待に応えたいというのが本音だった。

 

図書室に行くか? とそう考えたところで、こちらに近づいてくる気配にレイは気付く。誰だろうか? 足音からして落ち着いた人物であるのは分かった。

 

その足音の主はレイのすぐそばまでやってきて、教科書を被せたままのレイへと声をかけてきた。

 

「隣、いいか?」

 

その声色は透き通った女の子のものだった。レイはその声に何処か聞き覚えがあったが、それが誰かは分からなかった。まあいいか、と誰かを確認することもなく適当に返した。

 

「ああ、いいぞ」

 

「……ふふっ、では失礼して」

 

何が面白かったのか、その声の主は笑った後にレイのそばに座った。少しの間、風の音や波の音、鳥の声などを楽しむ二人。レイは隣の人物がどういう理由でここに来たのか興味はあったが、特に何をするでもなく自然の声に耳を傾けていた。

 

ある程度煮立った頭も冷えてきた頃、隣から声がかかった。

 

「変身術の勉強か、熱心だな」

 

レイを覆う教科書を見たのだろう。感心したようにそう言う。

 

「そうでもないさ。ただ、出来ないことが気持ち悪いだけだ」

 

「そう思っても、それを行動に移す者は少ない。私は素晴らしいと思うぞ。最初の魔法薬学の時の言葉と同様に、な」

 

隣の人物の最後の言葉にレイは疑問を覚える。あの時の話はほとんどグリフィンドール生しかいなかったはずだ。しかし、レイの覚えている限りでグリフィンドール生の中にこの声の持ち主はいなかった。

 

さすがに気になったレイは、右手で変身術の教科書を僅かに傾ける。そして、その隣を確認したレイは驚愕に顔を染めた。

 

「……これは驚いた。スリザリンの女王様が、こんなグリフィンドールの端くれに声をかけるとはな」

 

レイの視線の先では、風に靡くプラチナブロンドの髪を押さえて微笑むシルヴィア・コルドウェルが優雅に佇んでいた。

 

「スリザリンの女王様、か。君もそう思っているのか?」

 

シルヴィアをスリザリンの女王様と言っているのは主にグリフィンドール生だった。しかし、レイはそれを否定する。

 

「いいや? 静かになる時間がなさそうでしんどいだろうな、とは思ってたけど」

 

レイから見たここひと月のシルヴィアは、周りの取り巻き達に対していつも迷惑そうで、つまらなそうで、しんどそうだった。それを伝えたらまたシルヴィアは笑った。

 

「ふふっ、君は私のことをよく見てるな。その通りだよ。いい加減、うんざりしてきたところだ」

 

「大変だな、人気者も」

 

「全くだ」

 

二人は顔を見合わせて笑う。レイはこの短い時間で、世間の言うシルヴィアの評判はやはり当てにならないなと感じていた。話した時間は短いが、なんとなく……雰囲気で悪いやつではないと感じたのだ。いわゆる直感だった。

 

だから、自己紹介をするのに躊躇いはなかった。

 

「自己紹介が遅れたな。レイ・オルブライトだ、レイでいい」

 

「そうだな。知ってるとは思うが、シルヴィア・コルドウェルだ。ぜひシルヴィと呼んでほしい」

 

いきなり愛称で呼んで欲しいというシルヴィアを訝しむレイだったが、変わらず優しく微笑む彼女を見て、それもやめる。

 

「……いいのか?」

 

「ああ」

 

「……分かった。それじゃあよろしくな、シルヴィ」

 

「こちらこそ、レイ」

 

レイは起き上がって右手を差し出す。シルヴィアはその手を何の迷いもなく握り返した。シルヴィアの手は、レイが今まで触れたことのないようなきめ細やかな肌触りだった。

 

自己紹介を終えたレイは一番の疑問を投げかける。

 

「しっかし、なんでシルヴィは俺なんかに声をかけたんだ?」

 

レイはそれだけが気がかりだった。先ほども言ったが、レイにとって自分はグリフィンドールの端くれに過ぎない。そんな奴をスリザリンの、しかも今やスリザリンの代表と言っても過言ではないシルヴィアがレイと親しくしようとしていることが理解できなかった。

 

そう訝しむレイに、シルヴィアは肩をすくめて答えた。

 

「きっかけは組み分けの時さ」

 

レイはシルヴィアの話に耳を傾ける。

 

「私はこの通り、見た目も悪くないし才もある。血筋も世間的には最高のものだ。そんな私の元には多くの人々が集まってくる」

 

あの取り巻きのようにな、と笑うシルヴィア。その言いようは受け取り方によっては傲慢極まりないものだったが、レイは特に思うことはなかった。シルヴィアの言うことはその通りであったし、そもそもシルヴィア自身がそのことに対して何も感じていないのが伺えたからだ。

 

「しかしそいつらは全て私を見ていても、私を見てはいない。……私は、そんな奴らが大嫌いだった」

 

「…………」

 

そう話すシルヴィアの顔は、心の底から嫌悪していることを物語っていた。

 

「このホグワーツに来てもどうせ変わらないだろうなと思っていた時に……レイ、君に出会った」

 

レイを見るその目には、隠しきれない……いや、隠す気など更々ない喜びに溢れていた。

 

「君はあの時の私を見ても、あまり反応してなかっただろう?」

 

「……まあな。あの時、俺はお前を綺麗だと思った。でも、それだけだった。だってお前がどういう人間か知らないんだ。それ以外反応しようがないだろ?」

 

「私には、それがたまらなく嬉しかったんだよ、レイ」

 

「……そうか」

 

シルヴィアが浮かべる天上の微笑みに、レイは気恥ずかしくなってそう答えるのがやっとだった。自分にとっては当たり前のことでも、それが他人にとっては嬉しいことがあるんだな、とレイはまたしても他人との差異を感じていた。

 

「私はそんな君と早くお近づきになりたかったのだがな。何とも、グリフィンドールとスリザリンの確執は面倒極まりなく馬鹿らしい」

 

「ああなるほど、それで今頃になって話しかけてきたのか」

 

「レイもそう思わないか?」

 

「確かにな」

 

レイはシルヴィアの問いに頷く。グリフィンドール生はスリザリン生というだけで嫌悪するが、それは純血じゃないというだけで差別するスリザリンと同じだ。スリザリンの中にだっていい奴はいるかも知れない。そう、今レイの目の前にいるシルヴィアのように。

 

「さっきの言い草だとシルヴィは純血に誇りを持ってないのか?」

 

「むしろ嫌悪しているよ。何が誇り高き純血だ。近親婚のし過ぎで頭がおかしくなった奴が多いだけだろう。純血が優れてるなどまやかしに過ぎない。他の者より少しだけあるアドバンテージなど、努力と才能の前には跪くしかないだろう」

 

今の君の目の前にな、と言うシルヴィアにレイは何とも言えない顔をする。別にレイは自分に才能があるとは思っていない。逆に才能がないからこそ、人より努力しているだけだ。

 

レイがそう思っていると、シルヴィアはそれを見透かしたように微笑む。

 

「ふふっ、君は才能があるよレイ。それは私が保証する。ほら、これほど説得力のあるものはないだろう?」

 

両腕を広げて迎えるように言うシルヴィアにレイは苦笑する。天才に保証されたのだ。それは、自己評価が基本低いレイを何となくそうなのかもなと思わせるものだった。

 

「そうだな。それなら信じられるな」

 

「そうだろう?」

 

再び笑い合う二人の間を秋風が通り抜けていく。髪を押さえるシルヴィアは、微笑みをたたえてレイを見る。

 

「レイ、こうして君に会って、話してみて、私はもっと君と親しくなりたいと思った」

 

「そんなに話してないけどな。でも、そう言ってもらえただけでも光栄だ」

 

「ここひと月、ずっと君を見ていたからね。おっと、これだと気持ち悪いかな?」

 

「いいや? ますます光栄さ」

 

「それは良かった。そこでだ、レイ。……私の、初めての友になってくれないか?」

 

シルヴィアの美しい顔には、らしくないか弱さが垣間見えていた。普段の彼女にとって感情を隠すことなど造作もないことなのだが、それを表に出したのはそれだけ不安なのか、それともレイを信頼しているからか。

 

それを聞いたレイは迷うことなく頷いた。というより、レイ自身がシルヴィアとはここで終わりにしたくなかったのだ。シルヴィアの友となりたいと思ったのだ。

 

ここまでレイが他人と親しくなりたいと思ったのは初めてのことだった。

 

「……それこそ、本当に光栄だ。シルヴィ」

 

「そ、そうか! なってくれるのか」

 

シルヴィアは例の返事にもともと輝いている顔を一際輝かせて喜ぶ。その様子にレイはまた苦笑した。

 

「ははっ、大袈裟だな」

 

「それほど嬉しいということさ。……レイ、私の初めての友よ。これからよろしく頼む」

 

今度はシルヴィアから右手を差し出してきた。レイはそれをすぐに握り返す。

 

「こちらこそ、よろしく頼む」

 

二人は微笑んだまま見つめ合う。そんな二人の周りを秋風が舞っている。しかし、秋風は友情を分かち合う二人の邪魔をすることはなかったのだった。




如何でしたか。

次回、女王の恐怖。

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