「さって、いよいよか」
「誰が選ばれるんだろうね?」
「クラムは絶対選ばれるさ! なんてったってブルガリア代表のシーカーだぜ?」
「ねえレイ。一応確認だけれど、あなたは入れてないのよね?」
「ハーマイオニー、レイがこういうのに興味がないのは知ってるだろう?」
「もちろんよ。……けれどそのぉ……ほら、コルドウェルさんとかがひっそり……」
「ハーマイオニー! さすがにそれは失礼だよ!」
「まぁまぁステラ。……ハーマイオニー、さすがにそれはねえよ。いくら面白いことが好きなあいつでも俺が嫌がることはしないさ」
「そう、よね。ごめんなさいレイ。ステラも」
「いいさ。やってもおかしくないってのはまあわかるしな」
この間冗談交じりに言ってたらギルにも諫められてたし、という言葉にハリーたちもその様子がありありと思い浮かんだのだろ。小さく笑みがこぼれた。
……さて、ホグワーツにいる誰もが待ちに待ったハロウィンの夜。
今日までに多くはないがそこそこな数の生徒たちが『炎のゴブレット』へ自身の名前を書いた紙を放り込んできた。
有名どころで言えば、ダームストラングのビクトール・クラムだろう。なぜならば彼は18歳の若さでありながらクィディッチのブルガリア代表シーカーなのだ。期待も大きいだろう。
そのゴブレットは現在、大広間の檀上前に鎮座している。普段食事時にはなくなっているそれが今日はあることに、生徒たちはそわそわと体を揺らしている。
……ところで。
年齢制限にも挫けず、どうにかして名前を入れようとしていた赤毛の双子を覚えているだろうか?
ギルバートにも協力を断られ、なにくそと己が才覚と知識でもってダンブルドアという壁に挑もうとしたレイの戦友、フレッドとジョージ。
…………まず最初に結末を言おう。
果敢に挑んだ双子であったが……つい先日まで、ダンブルドアの洗礼を受けて医務室に隔離されていた。
その顔に、
意地と才能で年齢詐称薬を完成させたフレッドとジョージは得意顔でダンブルドアの陣に挑んだ。……しかし、今世紀最強を超えることができなかったのだ。
自作の年齢詐称薬を一気飲みしてダンブルドアの陣をまたいだ双子は見事に惨敗。17歳どころか、ダンブルドア同様の老人にまで老けてしまい、医務室にご厄介と相成った。
こうして一騒動もあり、より盛り上がりを見せていた三大魔法学校対抗試合の代表選抜。
それが今夜っ! 決まるっ!!
………………
…………
……
……
…………
………………
焦れたような空気の中、食事を終えた皆々が今か今かと待ち焦がれる。
そこに生徒や教師といった垣根はなく、誰もがこの時を待ちわびたのだ。
大広間も今はホグワーツ城そのものの様相を保っている。
毎年、ハロウィンの時期には大広間の夜空にジャック・オー・ランタンが舞い、蝙蝠が飛び交っている。しかし今年はそうではない。大広間の空は珍しく元の石造りの天井が見えていた。
それは今日のメインがハロウィンではなく、三大魔法学校対抗試合であることの証明だった。
「諸君!! 二月の時を経て、三大魔法学校対抗試合の代表選手が! 今夜決まるっ!」
晩餐会を終え、壇上に立ったダンブルドアが年甲斐にもなく声を大にしている。彼自身も久しぶりに開催される三大魔法学校対抗試合に多少は興奮しているのだろうか。
そんなダンブルドアのそばにそっと立つ人物が現れる。
バーテミウス・クラウチ。
彼こそ、この三大魔法学校対抗試合の再開に尽力し、魔法省に勤める国際魔法協力部部長その人だ。
「では、『炎のゴブレット』よっ! 各校の代表を選別したまえ!!」
彼のその一声に、壇上にいるダンブルドアの目の前。台に静かに座してたゴブレットが杯から蒼き炎を噴き出し始めた。
……いよいよ、三大魔法学校対抗試合の代表が決まる。
徐々に勢いを増していく『炎のゴブレット』。それをこの場にいる全員が固唾をのんで見守る。
そして……。
ぼうっ……!
と、ひときわ激しく立ち昇った焔から一枚の紙が現れる。
それを空中で受け取ったダンブルドアが、最初に選ばれしものの名を呼んだ。
「ビクトール・クラムっ!!」
すると同時に、ダームストラング生たちの雄たけびが上がる。それだけではなく、彼のファンである少なくない他生徒たちも同様だ。
「クラムっ! クラムっ! クラムっ!」
レイのそばにいたロンなど、ダームストラング生に合わせるようにクラムの名を叫んでいる。
顔を赤くしてまで熱く喜んでいる彼の様子に、レイたちは仕方のないように苦笑した。
いつまでもやむことのない野太いコールは、選ばれたクラムが檀上前に立ったことで頃合いとダンブルドアが落ち着かせる。
「おーぅ皆の衆、落ち着くのじゃ。……うむ、クラム。よくぞ選ばれた、頑張るのじゃぞ」
「……」
ダンブルドアの激励に、クラムは言葉を紡ぐことなくクールにうなずいた。
そして、『炎のゴブレット』はまた炎を吹き上げた。
舞う紙をダンブルドアは受けとり、続けて声をあげて名を呼んだ。
「フラー・デラクールっ!!」
次に上がったのは黄色い歓声だった。ボーバトンがいる卓から立ち上がったのは、これまた稀に見る美少女であった。
それもそうだろう。彼女は魔法生物であるヴィーラの血が混じっており、ゆえに容姿端麗、高い魔法力を有している。
彼女は歓声の中をさも当然のように歩いていき、近くの男子生徒たちを魅了しながら檀上前に向かう。
「ああ、あいつがデラクールか」
「レイ知ってるの?」
「ああ。ボーバトンっていまレイブンクロー寮にいるだろ? そんでまあ、ギルの奴がデラクールの周りが騒がしくてすさまじくうっとうしいってぼやいてた」
「そ、そっか。……ま、まぁシルヴィア見てて今更興味があるとかないか」
「???」
「んーん、何でもない」
小声が聞こえず首をかしげる思い人に、いらぬ心配だったとエステルは短く息をつく。
その合間にデラクールはクラムの横に立ち、勝気ながら優雅に笑みを浮かべていた。
……そしていよいよ、ホグワーツの代表が選ばれる時だ。
『炎のゴブレット』は、三度蒼き炎柱を立ち上げる。
宙に放たれた紙を掲げた腕でつかみ取ったダンブルドア。
そして、最後の選ばれしものの…………名を、呼んだ。
「……………………レイ・オルブライト」
…………最初、ホグワーツに在籍している誰しもが。誰が呼ばれているのかわからなかった。
ダームストラング、ボーバトン。彼を知らない者たちは最初こそ拍手で迎えたが、しかしすぐに異常に気付いた。
ホグワーツ生の誰も、選ばれたものを歓迎していないことに。
「…………な……に?」
それは呼ばれた当人、レイも同様であった。
大きく目を見開き、半分に開いた口がふさがっていない。その姿はまさに、あっけにとられるという言葉そのままであった。
普段のレイからあまりにもかけ離れた姿は、彼がいかに青天の霹靂であったかを示していた。
しかし周囲は彼を待ってはくれない。
「……レイ・オルブライト!」
ダンブルドアがもう一度、今度は強く名を呼ぶ。
「な、なんで。どうして……レイが?」
「わ、分からないけど、でも! レイ、レイっ。行かないとっ……」
「っ!」
エステルに呼ばれたレイはようやく正気を取り戻して立ち上がる。……だが、彼はダンブルドアの呼び声を無視する。
そして、視線は自然と自分の親友たちへ目を向けた。
ハッフルパフ寮へ。いつもレイをその笑顔で癒してくれるアリス。彼女は驚愕で口を両手で覆い隠して。
レイブンクロー寮へ。その頭脳と知識でいつもレイを厳しくも導いてくれるギルバート。彼は冷静に眼鏡のブリッジに指をあてがい。
スリザリン寮へ。誰よりも傍で自分と歩み支えてくれるシルヴィア。彼女の顔にはかつてないほどの憤怒の表情を浮かべて。
だが、三人ともがレイと視線があった瞬間……。
今は前へ、とレイの背中を押してくれた。
それに応えるように、レイは息を吐きつつ緩やかに笑みを浮かべた。
息を吐き終えて、口を一文字に結んだレイは……覚悟を決めるとともに一歩足を踏み出す。
コツ、コツ、と。
レイの檀上へ向かう足音だけが大広間にこだまする。
誰も声を上げない。拍手も、喝采もなく、しかして罵声や怒号もない。
だが無数の騒々しい
『なぜ』『どうして』『どうやって』。
しかし。
猜疑心に蠢く視線を受けて…………なお。
コツ、コツ、と。
一度覚悟を決めて受け入れたレイのその姿、その歩みに。
一切の揺るぎなし。
先ほどの動揺が嘘のように、レイは堂々と背を伸ばして歩み続ける。
静寂にひるむことも、無言の圧にひるむことも、視線の鋭さにひるむこともなく。レイは泰然と歩き続けて……そして壇上にたどり着いた彼は何食わぬ顔でデラクールの横に並んだ。
相も変わらず数多の視線が、声の乗った視線がレイを貫く。
『なぜ、お前が……』と。
しかし、それでもなお。
彼の表情に、姿勢に。動揺も、絶望も見受けられない。
今レイは、ただ……前を見ていた。
……さしものダンブルドアも、さすがにこの状況では何も声をかけられなかったのだろう。
じっとその横顔を見つめていた視線を一度伏せ、そして顔をあげた。
「……皆、それぞれに思うところあるじゃろう。だが、『炎のゴブレット』は選んだ。では、この三名が今年の…………っ!?」
しかし。
異常は。
まだ。
終わらない。
……『炎のゴブレット』は、なぜかひとりでに燃え上がり、そして。
また一枚、誰かの名前が書かれた紙を空へと吐き出したのだった。
………………
…………
……
……
…………
………………
前代未聞のお披露目会はお開きとなり、三大魔法学校対抗試合の代表選手
「れ、レイ……」
「落ち着け
レイはそう独り言ち、隣に立つハリーを落ち着かせながら目の前に迫ってくるダンブルドアと大人たちを見据えて、これからの展開に疲れたように肩を落とした。
『炎のゴブレット』は、なぜか。4人目の代表選手を選んだ。
ハリー・ポッター。
未成年で選ばれてしまったレイも想定外だが、未成年かつ4人目として選ばれたハリーは異常事態であった。
「何が起こっているのかね、ダンブルドア?」
「落ち着くのじゃバーティ。それを今から確認しなければのぅ」
この試合の総責任者であるクラウチは焦りもそこそこにダンブルドアへと問いかけるが、ダンブルドアはクラウチ含む物申したい者たちへけん制する。そして……問題である二人へと問いかけた。
「レイ、それにハリーも。君たちはゴブレットに名前を入れたのかね?」
これにレイは毅然と答えた。
「いいえ、入れてません」
「ぼ、僕もです! なんで選ばれたのかわかりません……」
レイに続き、しかしハリーは動揺に身を震わせながら否と答えた。
それを少しばかりじっと見つめたダンブルドアは、ゆっくりと頷いた。
しかしそんな彼をよそに、もう我慢できないとダームストラング、そしてボーバトンの校長が問い詰める。
「これはどういうことだダンブルドアっ!! なぜあなたの学校の生徒が二人、それも未成年が選ばれたのだ! まさか年齢線に細工をして自分の学校に箔をつけようとしているのかね!?」
ダームストラング専門学校校長、イゴール・カルカロフはそう罵倒し。
「オー、ミスタ・ダンブリードール。わたーしとしましてはミスタ・オウルブライト一人だったなら、彼が実力であなーたを欺いたと理解できます。だけーど二人目で同じ未成年では疑いもしまーす!」
ボーバトン魔法アカデミー校長、オリンぺ・マクシームも訛りがありながらも同調してダンブルドアを責め立てる。
それに気おされてハリーは肩をすくめてしまうが、レイは変わらず憮然と表情を崩さず直立していた。
しかし、そこで彼らの寮監督が声を張り上げて割って入ってきた。
「お二方!! いい加減になさいっ!
グリフィンドール寮監、ミネルバ・マクゴナガルの言葉に二人の校長はぐうの音も出なくなる。
ダンブルドアは生きる伝説だ。彼が望めばどのような地位も、称号も思いのままであり……なんなら魔法省大臣の座だって彼の気持ち次第だ。この説得力はすさまじい。……まあ、お茶目な様相を見せてしまうことがまれにあるからこそ、そう疑われてしまうのも仕方ないのだろう。
見事完封されてしまった二人の校長は口を閉ざしてもごもごしながらも、やはり言葉は出てこない。
そこで、スリザリン寮監が口をはさんだ。
「しかしながら、この二人がこの城に来てから行った違反は数知れず。知識豊かな友人の力を借りて校長を欺いた可能性は十分に……」
「お黙りなさいセブルスっ!!」
ここでもまたミネルバが口をはさんだ。
「この二人は確かに、ええっ。寮則も校則も破ったことは多々あります。けれど多くは何かの、そして誰かのためであり、私はもちろんダンブルドアも! この子たちが自らこのような真似をするはずがないと確信していますっ!! 寮監であるこの私の言葉で、納得するには十分であると思いますがまだ何か言いたいことはっ!?」
「……いいえ、失礼いたしました」
ミネルバのかつてない形相に、さすがのスネイプも引き下がった。
いつもは厳格なミネルバが自分を信じてかばってくれたことにハリーはもちろん、家族同然であるレイに至っては感謝してもしきれない。……だからこそ、この問題を早く片付けねばと思いそっと手を挙げた。
「あの、すんません……」
大人たちのやり取りが一段落したこともあって、その視線すべてがレイに集まった。
そこでレイは爆弾を投下する。
「俺、辞退してもいいですか?」
その爆弾は見事に炸裂して、レイを知らない者たちが唖然とした様相を向ける。どのような理由があれ、この試合に出れることはたぐいまれない誉なのだ。
……だが逆に、レイを知る人間にとっては当然ともいえた。
「さっきも言いましたが、俺はこの対抗試合に参加した覚えはありません。栄光とかもまったく興味ありませんし。……でも、なぁんでか参加させられちまってる。すいませんが、ひとまず罰則でもなんでも受けるんで、棄権させてくれませんか?」
この歴史ある三大魔法学校対抗試合を。『永遠の栄誉』をたやすく切り捨てた。
これには並々ならぬ覚悟で挑んでいるクラム、デラクールの両名はもちろん、各校長も聞き捨てならない。
どのような理由であれ自ら断るとは正気の沙汰ではないそれに、しかしハリーも同様に続こうとして……。
「それはできない」
バーテミウス・クラウチが待ったをかけた。
「
念を押すように口にされたそれを聞き、レイは嘆息する。
「ギルの言う通り、か。参ったな……」
「そんな……」
彼の張りつめた言葉にレイもハリーも困ったようにたたずまいを揺らす。そこに……。
「そう、逃げられないっ!!」
ひときわ大きな声が、部屋の入り口から吹き飛んできた。その声にダームストラング校長のカルカロフは肩をすくませ、スネイプは視線をそらした。
入り口に立っていたのは、マッドアイ・ムーディだった。
「アラスター、わしの年齢線やゴブレット周りは?」
「なんっの異常も見当たらん。お前の仕掛け、そして伝統あるゴブレットにもだ。……だからこそ、これがただ者の仕業ではないという証拠でもある。ああ! お前たちが疑っておる、たかが生徒では…………いや、オルブライトならやってみせるか?」
「ちょーい、かばってくれるなら最後までかばってくださいよー」
「ふんっ」
二人と問答をしながら足早に皆のもとへとムーディがやってきた。杖を突きつつ、とは思えない速度でレイたちの前に立った彼はここにいる者たちへ向き直る。
「逃げられない、命を懸けた、対抗試合っ! これほど誰かを、
ムーディの言葉にダンブルドアは同意するかのように瞳を閉じ、ほかの大人たちは理解の追い付かない表情で、しかし
「ポッター、そしてオルブライト。この二人が、このホグワーツに入学して3年、この子らが
ムーディの問いは問いではなかった。彼はもはや分かっていて、あえて尋ねている。
ホグワーツでレイたちの活躍を知っているものはもちろん、ムーディがなんの、そして誰の話をしているかわかっているわずか数名も。
「まさか、では……」
「憶測にすぎん!!」
場が動揺に吹かれるなか、この大会の主催者であるクラウチが薙ぎ払った。
「この対抗試合にどれほどの者たちが協力し、どれほどの者たちがこの日を夢を見て走り回ったと思ってる!! 多くの者たちの成果が、今、こうして! 何重もの安全対策という形で伝統ある三大魔法学校対抗試合は開催されたのだっ!!」
「妄言か、クラウチっ! この死に体の老いぼれの妄言だというかっ!! ええっ!? なぁスネイプ! なぁっ、そこのカルカロフっ!! なぁっ……!」
「アラスターっ……!」
クラウチとの言い合いにヒートアップしていくムーディを止めたのはダンブルドアだった。
さしものマッドアイ・ムーディとも言えど、彼の言葉は無視できなかったのだろう。つい先までの獅子のごとき勢いはすぐさまなりを潜ませ、自らを落ち着かせるように懐からスキットルを取り出して一息に傾けた。
「……ふはぁ。すまんなアルバス、つい熱くなってしまったわい」
「いや、今は君のそういうところが頼りじゃよアラスター。さて……」
そうして場を改めたダンブルドアは、この場を収めようと口を開いた。
…………その隙間で、彼の言の葉が舞った。
「すいません、最後にもう一度だけ確認させてください」
それはレイの狙ったものではなかった。
「本当に、この対抗試合からは逃れられないんですね?」
だが、自身へと他全員の意識を集中させる。
「……ああ。『炎のゴブレット』の火も、役目を全うし消えてしまった。再度選出することもできない……ここにいる四人が、今回の代表選手だ」
絶好の機会を、レイはダンブルドアから奪ってみせたのだ。
クラウチの確固たるその言葉に対して。レイは……。
「はぁー……」
肩を落としてため息を一つ。
そしてレイは首に手のひらを当て、ほぐすように首を回して……一言。
「んじゃ、狙ってみるか。『永遠の栄誉』ってやつを」
そう、何でもないように宣言して見せた。
淡々と言い放たれた言葉は反対に周囲のものには耳を疑うものだ。それによってもたらされた静寂は肌を刺すほど痛く、驚愕によって凝視される多くの視線がレイへと再び突き刺さる。しかしそれを相も変わらずものともしない彼はふっ、と笑みを浮かべる。
そこに浮かぶ笑みは……なんとも好戦的であろうか。
先ほどまでのけだるげな様子は鳴りを潜め、目じりも、口角も吊り上がり、不敵に笑みを浮かべているのは本当に同一人物だろうか。
様々な感情を含んだ強い視線を一身に受け止める彼はしかし、笑みをさらに深めて……。
「どうやったって降りられないんだったら……ああ、俺の力を試す絶好の機会だ」
おのが身に纏う覇気を、闘気を色濃くしていく。
「はたして、今の俺がどこまでやれるのか。……
高まる圧力に、同じく選ばれた代表選手たちが思わず気おされ後ずさる。
ただ一人、ハリーだけをまぶしいものを見るように目を細めて彼を見ていた。自分の憧れは、その背は遠く……しかし何と頼もしいことか。
「この対抗試合をすべて乗り超え、一位になるくらいじゃねぇと……俺の願いが果たせられるか」
「さあ、三大魔法学校対抗試合をはじめようかっ!!」
次回、『一方そのころ友人たちは』。