雲一つなく晴れ渡る秋空は爽快だった。
冬の訪れを感じさせないこの空は、しかし残りわずかであった秋という季節を燃やし尽くしているようでもあった。……それは果たして、これより始まる
ホグワーツ城郊外。相も変わらず威容を誇るその城の脇では、似つかわしくない喧騒が秋晴れを突き抜けるように舞い上がっていた。
三大魔法学校対抗試合、第一の課題。
いよいよ、歴史に刻まれる初戦が始まろうとしていた。
「…………」
しかしその喧騒の中心にいなくてはいけない一人であるレイは、会場の少し手前で一人空を見上げていた。
まだ集合時間ではないが、レイ以外の選手はハリーを含めて会場入りしている。……レイだけが、未だ立ち尽くしていた。
今更怖気付いたのか。
……いいや、
「ふぅ……」
軽く息を整えるような呼吸音。だが、裏腹に。
レイの纏う気配は深く、重く、厚くなっていく。
その背を、少しだけ離れたところから見守っている者たちがいた。シルヴィアやギルバート、アリスのいつもの面々に加えてエステルがそこにいた。
「……やはりおかしいな」
今まで黙って見守っていたシルヴィアが、最愛の背を見つめながら口火を切った。
「相手はドラゴン、それに単騎で挑む。覚悟もそれ相応だろうが、あれほど特訓や対策をこなしてきたのだ。なのに……」
「はい。なんというか……レイさんらしくないです」
シルヴィアの言葉に同調するようにアリスも口を開いた。
「……いいや、それは違う」
しかしそれをギルバートが否定する。
「ギルさん?」
「ああ、ギルの言う通りだ。これは逆に……」
今度はシルヴィアがギルバートに同意し、その言葉をギルバートがつないだ。
「奴らしい。……いや
「…………」
シルヴィアたちがそう疑問を口にする中、エステルは一人無言でレイの背を見つめ続けた。
彼女も二人に同感だった。ここ数日、第一の課題が迫るにつれて、レイの纏う雰囲気に違和感を感じていた。それが今日、あからさまに様変わりしたことで心配になりこうしてシルヴィアたちについてきていた。
シルヴィアたちが各々思案にふける中、エステルは一人、思い人の変化にとてつもない不安に苛まれる。
代表選手に選ばれた日にレイが口にした言葉。腕試しのためならば……いや、自分の目的のためならば、自分の怪我などどうでもいいという己を顧みない彼のスタンス。
おそらく、そのスタンスが今のレイの変貌に噛んでいるとエステルは予想していた。
ずくり。
エステルの胸に突き刺さる杭が疼きだす。
どうして?
どうして、そこまでして自分を蔑ろにするの?
エステル自身が知りたくて、教えてもらいたくてたまらないレイの……大好きな彼のもっとも深いところ。
エステルは思わず胸元を握りしめる。
彼女に胸に打ち込まれた杭が、心臓とともにずくり、ずくりと疼いていく。
ーーいたい、痛いよ。レイ……。
エステルは一人、うずくまりそうになる。
しかしそれを……。
「……悪い、待たせた」
彼の言葉が、彼女を支えた。
エステルはうつむいていた顔を上げる。……すると、そこにはレイがいた。
自分が知らない、好きな人がいた。
「っ!?」
そのことに、その事実に。あっけにとられて茫然としてしまうエステル。
その様子を不審に思ったレイが彼女に声をかける。
「ステラどうした? なんか顔色が……」
自分を心配して覗き込むように顔色を伺ってくれるレイ。その顔はエステルの良く知る、いつもの好きな人の顔だった。
「あ……う、ううんっ。何でもないよ! レイはどう?」
「おう、バッチリだ!」
「そっか」
エステルは精いっぱい笑顔でレイに笑いかける。それにレイも特に不審に思うことはなかった。
何とかごまかせたことにエステルは胸の内で安堵する。
彼の声が、自信あふれる顔がエステルの胸で疼く痛みを和らげてくれるのはなんという皮肉であろうか。
そんなエステルの胸中など露知らず、レイは次にシルヴィアたち重い空気を指摘した。
「……どったのお前ら?」
「なに、君が珍しく意気込んでいると思ってね」
「あー…………ん、ちょっとな。ま、すぐにわかるよ」
レイはシルヴィアの言葉にあいまいに濁す。
シルヴィアは最愛のその様子に苦笑をこぼした。
「君がそういうなら楽しみにしていよう」
それ以上問うような野暮はせず、素直にシルヴィアは引き下がる。
「レイ、気合は十分なようだがな。あれほど対策を講じたのだ、第一の課題で無様を晒したならば俺が直々に死をくれてやるからな」
「おうさ」
「……ふん、行くぞお前たち」
それだけ言って、ギルバートは一人先に会場へ歩き出した。
彼も何かを察してはいたが、問い詰めることはしないようだ。
「レイさん、私はよくわかりませんが……とにかく、頑張ってください!!」
「おう、任せとけ!!」
アリスはぎゅうっとレイの両手を握って精いっぱいのエールを送る。それに彼が元気に応じたことで、アリスは笑顔で答えてギルバートの後を追った。
親友二人の背を見送り、レイもそれじゃ行きますかと残る二人に振り返ろうとしたところで……。
そこで、天才が動いた。
「レイ」
「お……うっ!?」
……ちゅっ。
レイは右頬に、柔らかくも温かいものを感じた。
驚きで目を見張るレイの視界には、シルヴィアの美しくも見慣れた顔がすぐそばにあった。
……なんとシルヴィアが、レイの頬にキスをしたのだ。
「なあっ!!?」
エステルは先のシリアスもどこへやら。
決して見過ごすことなどできない恋敵の所業に髪を逆立てる。
しかしそんな赤毛の猫の威嚇に白金の竜が気圧されるはずもなく、竜はぼうっとしている騎手に微笑みかける。
「……詳しいことは私たちは聞かない。だけどそんないけずな君に、これくらいの仕返しはさせてもらわないとな」
「……」
思わず右頬に手を添えるレイの耳元で、艶やかな親友の声が浸透する。
そっと身を離したシルヴィアはレイのその様子に満足げに微笑みを浮かべた。
「ふふふっ。それはおまじないも込めている。レイ、悔いのないように。
その言葉にレイも意識を取り戻す。
シルヴィアは、自分を最愛と呼んでくれる彼女にはある程度オミトオシのようだ。
その事実に気付いたレイは苦笑して親友へ感謝を述べた。
「……ああ。ありがとな」
「ふふ、健闘を祈る」
華麗にウインクを一つまみ。
シルヴィアもレイに背を向けて、ギルバートとアリスの後を追って会場に向かっていった。……気まずい空気が漂う二人を残して。
「~~~~っ!」
「……えっとあの、ステラさん?」
頬を膨らませてシルヴィアの背をにらみつけるエステルに、先まで戦意を高めていたレイもたじたじだ。
シルヴィアのこともそうだが、結局、こういうことで男子は女子にかなわないもので……。
「~~レイっ!」
「はい!」
肩を震わせていたエステルが突然大きな声でレイの名を呼んだ。これにはレイも思わず背筋を正して直立してしまう。
そして、棒立ちになり無防備となったレイのすぐ目の前には……またしても見慣れた美しい顔があり…………。
……ちゅうっ。
「っ!!?」
……気付けば、左頬に先ほど感じた柔らかい感触。
なんと、あのエステルもレイの頬にキスをしたのだ。
シルヴィアとは逆の頬、しかも気持ち長めに。対抗心バリバリだ。
短時間で長年一緒にいたとても親しい二人からの頬への接吻。これにはさしものレイも頭が真っ白になってしまう。
思考が停止するさなか、レイの視界には真っ赤なリンゴのようなエステルがいた。
彼女は自身のやったことへの気恥ずかしさでいっぱいいっぱいだった。
「私もおまじないっ! 無事に勝ってね!!」
エステルは早口でそうまくしたて、素早く踵を返して走り出した。
レイが止める間もなく、真っ赤なリンゴはぐんぐん速度を上げていき、そのままシルヴィアを追い抜く。そのままギルバートたちへ追いすがろうかというところで、あわやアリスとぶつかりそうになり二人でわたわたしているのが遠目に見えた。
友人たちを見送り、美少女二人からの贈り物を受け取った本人は……。
「…………これ、第一の課題終わったらただじゃすまねぇなあ」
照れるでもなく、戸惑うでもなく。
困ったように笑うだけだった。
晴れ渡る秋空の下、レイは一人何を思うのか。
それが、もうすぐ明かされる。
……
…………
………………
……………………
…………………………
…………………………………
歓声鳴りやまぬ会場にレイは一人で立っていた。
彼が今いるのは三大魔法学校対抗試合の第一の課題会場だ。会場はコロシアムのように観客がぐるりと周囲を囲み、その中心に代表選手が戦うドラゴンが待ち構える。
その中心へ向かうための選手入場口。そこにレイは今立っている。
レイは一番目に選ばれた。
集合時間ギリギリにやってきたレイへ侮りと蔑みの視線を向けるフラー・デラクールであったが、それもレイを一目見た瞬間に即座に視線の色を変える。
レイは先のドタバタを何一つ引きずらず、闘志を最大まで高めた状態をキープしていた。
闘争心剥き出しに、しかし余裕を感じさせるその姿に気圧されてしまうデラクール。逆にクラムは望むところとこちらもやる気を見せ、ハリーもつられるように覚悟を決める。
そうして、満を持して明かされた第一の課題の内容は……『ドラゴンが守る黄金の卵を奪取しろ』というものだ。
ハリーから聞いた通りドラゴンの絡んだ課題内容。それにクラムもデラクールも驚いていないことにレイは苦笑した。
課題内容も明かされたところで、次に決めるのがそれぞれが戦うドラゴンの種選びだ。
手のひらサイズにまで小さくなったドラゴン四匹を袋に入れて、そこに手を突っ込んで選ぶというなんとも言えない選び方だった。
そうしてレイが選んだのはスウェーデン・ショート・スナウト種。
人里には降りてこないゆえに被害は少ないが、吐き出される青色の炎はドラゴン種の中でも高火力であり、骨も残さず燃やし尽くすことで知られている。
ちなみにだが。ギルバートが覚えておけ、といったなかで特に気性の荒いハンガリー・ホーンテール種を最後に引いたハリーには心の中で合掌しておいたレイである。
こうして対戦相手も決まり、早々に試合へ向かうようにレイの名が最初に呼ばれて今に至る。
……そう。この三大魔法学校対抗試合の記念すべき初戦を飾るのがこの男だった。
眩い光が、レイを待つ声援が立ち尽くすレイを待ち構える。
金の卵を奪う方法は問われていない。……それが、レイのボルテージに加速をかける。
「さって、行きますか!」
レイは気合十分に自分の晴れ舞台へと足を踏み出した。
光がレイの視界を数瞬奪う。
次にひときわ大きな歓声がレイの耳を突き抜ける。
そして視界が戻って来て……。
『……グルルルルッ』
喉を鳴らして侵入者を待ち構える蒼銀の巨体を映し出した。
レイの視界を埋め尽くすその巨体。その首にはじゃらり、と重厚な鎖が巻かれ地面と繋がれている。観客に被害がいかないようにするためだろうが、むろんドラゴンの牙は、爪は、炎は。レイの命に十分届きうる。
そこでようやく自分の立つ試練の場に意識が向いた。
フィールドはちょっとした岩山であった。
大小さまざまな岩々が中心に向かって積みあがっており、中心にドラゴンが鎮座している。そこまで即座に確認したところで、レイは最後に気付いた。
ドラゴンの足元、そこに金の卵があることに。
「……なるほどな」
『フシュー……っ!』
ボゥッ、と鼻腔から蒼炎がこぼれる。
ドラゴンのほうはすでに侵入者に対して臨戦態勢に入っている。このままでは口から炎が繰り出され、その場に立っているだけのレイは何も残すことなく焼き尽くされてしまうだろう。
そして……。
『グァッ……!』
「……はぁ」
ドラゴンが炎を吐き出すよりも先に。
身をかがめ、炎を吐き出す態勢を整えていたドラゴンの瞳に呪文が突き刺さった。
『ぐ、ギャアアアーーーーッ!!!?』
ドラゴンが突然、裂くような叫び声をあげる。たちまち首を大きく振り回し、岩にぶち当たるのもお構いなしに暴れだす。
その様を冷静に見つめるレイ。その右手にはいつの間にか杖が握られている。
なんとレイは結膜炎の呪いを正確にドラゴンの目に放っていたのだ。
炎を吐くために身構える、ということはわずかであっても動作を止めるということ。その隙はレイ相手には致命的だ。だからこそ、目という的の小さい部位を狙うことができたのだ。
「まあ痛いよな。俺も食らったからわかるよ……でもな」
そう言いつつその目は鋭くドラゴンを追っている。
そしてレイは杖を勢いよく振りぬいた。
「どんだけ痛くても、敵が目の前にいて意識そらしちゃだめだ」
杖から放たれた呪文は真っすぐに、しかし暴れるドラゴンの口内を正確にとらえていた。
暴れているとはいえ、痛みに悶え、紛らわせるように口を大きく開けて叫んでいるのだ。瞳を正確に射抜いたレイが呪文を外すはずもなく……。
『ぎゅあッ!?』
ドラゴンは未だかつて感じたことのない衝撃と違和感に思わずのけぞる。
しかしそれ以外のダメージはない。また変わらず目はひどく痛むが少し慣れてきた。ここまで自分を痛めつけたのだ。ドラゴンは怒り、目的の人間を探す。
しかしその人間は……。
「わざわざ口内狙ったんだぞ。なのに全力込めた失神呪文が動きを少し止める程度か。やっぱ俺、才能ねぇな」
蒼銀の竜が居ぬ間に、すでにの金の卵の前に立っていたのだ。
一方的であった。
観客が一喜一憂する暇もなく。勝敗が決してしまったのだ。もう後は卵を手に取るだけでこの課題をクリアすることができる。
あのドラゴンに対してなんとも鮮やかな手腕。未だ冷静さを一つも崩さないその様子に審査員も兼ねている二校の校長もあっけにとられて呆然としている。
ホグワーツ校長は静かにレイを見つめる。親同然でもある魔女はその成長に嬉しさが止まらない。
赤毛の少年は開いた口がふさがらず、くせ毛の女の子はさすがと称賛する。
親友の雄姿に絶世の美少女は白金の髪を耳にかけて微笑み、眼鏡の掛けた鋭い目の少年は当然というように目を閉じる。天真爛漫な少女は喜びを体全部で表していた。
そして肩まで伸ばした赤毛を不安で揺らしていた少女はほっと息をつく。
あまりの展開の速さに追いつけていなかったほかの観客たちも、ようやく状況を理解して大きな歓声を上げた。
会場が今日一番の盛り上がりを見せる。
……しかし当の本人
「…………」
『……グルルゥッ』
レイは一向に卵に触れる様子もなく、目下のドラゴンを見つめ続ける。
それはドラゴンも同様だった。
ドラゴンは魔法生物の中でも特に賢い。ここまで自分を追い詰め、有利に立っていたのに突然その手を止めて静観の構えを見せたのだ。警戒しないはずがなかった。
フィールドの真ん中で見つめ合う両者。
これには盛り上がっていた観客もその異常に徐々に気付いていく。
それは彼をよく知る者たちも同様で……だからこそ一番初めに彼の意図を察することができた。
「レイ、君はまさか……」
決して合わせたわけではなかった。だが天才がそう口にした後に、レイが静観の構えを解いたのだ。
しかしそれは金の卵を手に入れるためのものではなかった。
……レイは静かに杖を構える。
「まだ痛いだろ? とりあえず治すわ」
そのままレイは杖を一振りする。
その瞬間、ドラゴンは警戒を最大限に引き上げる。
しかしそれはドラゴンの思惑とは異なる結果をもたらした。
『ぎゅ、あ……?』
なんと、先ほどまで自分を苛んでいた目の痛みがすぅ、と溶けるように消えていったのだ。
理由は分からない。けれど、ドラゴンは目の前の人間が何かしたのは理解できた。
だがだからと言って目の前の脅威に、侵入者に警戒を解くはずもなく……。
『グゥルルァ!』
再び、万全の状態で。目の前の人間に雄たけびを上げた。
その様子に満足げにレイは笑みを浮かべる。
不敵に、好戦的に。ため込んだ闘志を漲らせるように。
「…………そりゃこんな
目下で臨戦態勢を整える蒼銀の竜を油断なく見据えながらレイは口を開いた。
ドラゴンが静かにレイを警戒していることで、その声は観客にも届く。
「敵を事前に知っている。対策をこれでもかと講じている。……これで勝てないはずがないだろ」
レイは変わらずそう独り言ちる。
そんな中でもドラゴンは依然動きを見せない。それは目の前の人間の雰囲気が様変わりしたからだ。
先よりも勇ましく、自身に対する敵愾心をむき出しにして。
先ほどまでドラゴンは捕食物として、単なる弱者としレイを見ていた。だからこそレイに先程のような隙を見せてしまったといえる。強者ゆえの余裕というものだ。
それが今、ドラゴンの中から完全に消え去っていた。
弱者から強者へ。
自分の縄張りを害する明確な
万全の状態で自分を見上げる蒼銀の竜にレイは笑みをさらに深める。
「勝てるとわかってる勝負に意味はねぇだろうがっ!」
その言葉はレイの放つ覇気を伴って観客を揺さぶる。
「敵を把握するのは大事だ。対策を練ればこうしてドラゴンだろうと無傷で突破できる。……けどよぉ、本当の闘いは……
レイがそう叫んだ……次の瞬間。
世にも美しき銀色の剣が、レイの前に現れたのだ。
突然景色を歪ませるように現れ出でたその剣に、会場はざわつきを取り戻す。
しかしその反応は、剣の正体を知る者と知らない者とで全く違う。
その剣を知らない大勢のものはどうやってその剣が現れたのかを。……逆にその剣を知る者はレイが何をしようとしているかに気付く。
その剣を知るダンブルドアは目を静かに細め、ミネルバはその剣と
ロンはマジかと呆気にとられ、ハーマイオニーはレイの性質を知るゆえに冷静に納得を示す。
シルヴィアは最愛のありのままの姿に愛おし気に笑みをたたえ、ギルバートは頭が痛いとこめかみを押さえる。アリスは約束を破ったことに頬をぷくりと膨らませた。
そしてエステルは。
自分をどこまでもないがしろにする大好きな人に……心の底から、怒りを覚えた。
観客のざわめく声が徐々に大きくなっていく中、剣が思惑通りに来てくれたことに内心ほっとする。
そうしてレイは目の前のグリフィンドールの剣を……左手で勢いよく引き抜いた。
キィン、という音を奏でながら、岩に刺さっていたはずなのにするりと剣は抜けた。剣は持ち主に何かを伝えようと装飾の紅い宝玉をきらめかせる。
「……行こうぜ相棒、俺たちの晴れ舞台だ」
持ち主のその言葉に剣はまた宝玉をきらめかせる。それは、待ってたぞ早く使えと急かしているようにレイには見えて苦笑する。
蒼銀の竜はその間も動くことはなかった。
だがドラゴンは気付いていた。目の前の敵がいよいよ動くということが。
ドラゴンは身をわずかに低くして身構える。そこに先ほどまであった隙は無い。
臨戦態勢を改めて整えたドラゴンにレイも釣られるように構えた。
右手には杖を。左手には剣を。
既存の魔法使いとしては異質であり、特に歴史を重んじる純血はマグルかぶれも甚だしいその姿に嘲笑は否めないだろう。
……だが、誰も嗤えない。否定することもできない。
魔法の腕は一目瞭然。どうあっても冷静さを崩さないその姿。そして……。
圧倒的な勝利よりも、命のやり取りを望むその異常性。
そのすべてが、観客にとってレイを……ドラゴン同様の
観客が静かに事の成り行きを見守る中、レイは肩に担いだ剣を振りぬき切っ先をドラゴンに向ける。
「さて、仕切り直しだ。今度こそ、正々堂々やり合おうじゃねぇか!!」
『ギアアアアッ!!!』
ドラゴンは応えるように獰猛な声をがなり立てる。
「こっからが、俺とお前の……本当の闘いだ!!!」
レイはグリフィンドールの剣を切り払い、待ち構えるドラゴンへと真っすぐに飛び込んでいった。
次回、『第一の課題・真』