前回の次回予告を修正しました。
正確には夕御飯×双子×三頭犬です。大変失礼しました。
前回の投稿で初評価をいただきました。ありがとうございます!
レイとシルヴィアがギルバートと友好を結んだ数日後、三人の姿は大広間にあるグリフィンドールのテーブルにあった。あいも変わらず大扉側の端っこに陣取るレイとシルヴィアは、そこにギルバートを加えて夕食をとっていた。因みにフリットウィックより許可はもらい済みである。
ギルバートが加わった最初の日は、またしても大騒ぎになった。
傲岸不遜、毒舌、一匹狼の三拍子で有名だったギルバートが、今話題の二人の中に加わる。天才と秀才と凡才。何がどうすれば、これらが混ざり合って仲良くできるというのか、と。
しかし実際目の前で、ギルバートの毒舌を受けても全く気にしてないレイとシルヴィアや、その二人の話をいくらか毒を薄めて受け答えする様を見せられたら、三人の関係がうまくいってることを直視せざるをえなかった。
そんな周囲の奇異の視線を華麗に受け流して、シルヴィアが今日の午後に怪我をしてしまったレイの友人について心配した。
「レイ、あれからロングボトムの様子はどうだった?」
「ああ、明日の朝には退院できるとさ。今日は念のため医務室で夜を過ごすそうだ。それにしてもマダム・ポンフリーはすごいな。腕の骨をあっという間に完治って……。癒者ってのはみんなそうなのか?」
「愚か者め、そんなわけがないだろうが。癒者の中でもあの人は優秀だ。ここは魔法使いの愚か者どもが数多く存在する魔法学校だぞ? 何が起こるかわからないのだから、腕の良い人物が常在しているのは当然だろう」
「なるほどな」
レイはギルバートの説明に納得して目の前のハムを手に取った。
何故ネビルがそんな怪我をしたのかといえば、それは今日の午後にあった箒の飛行訓練が原因だった。
グリフィンドールとスリザリンの合同で行われたのだが、初めての飛行訓練を楽しみにしてるものも多く、いつものいざこざが起きることはなかった。
そして、マダム・フーチの指導のもと、飛行訓練が開始された。地面に一列に並んだ箒の横に立たされ、箒の上に手をかざして上がれ! と言えと言われて、生徒達が一斉にそれに倣う。
しかし初めてということもあって、最初に箒を手に取れたのはごく僅かだった。それはグリフィンドールからはハリーとレイ、スリザリンからはマルフォイとシルヴィアであった。
レイの普段は見せない無垢な驚き様に、シルヴィアは母性というものを初めて認識していた。
それからしばらくして、なんとか全員が箒を手に取ることができた。そして、いざ箒で飛び立とうとマダム・フーチがカウントを取ろうとした瞬間、ネビルが勝手に飛んでしまったのだ。
めちゃくちゃに飛び回るネビルを誰も止めることができず、最後には塀にぶつかり、ネビルは数メートルの高さから落下した。
それを見たレイは駆け出して、ネビルをなんとか抱きとめることに成功した。おかげで大怪我は免れたのだが、塀にぶつかった衝撃で腕が折れてしまったのだ。
レイは痛みに呻くネビルを背負い、マダム・フーチとともに医務室に直行したのだった。
「おっと、そういえば。……レイ、ほら」
レイはシルヴィアから手渡されたものを見る。それは小さな球体だった。
「これは……ネビルの思い出し玉、だったか?」
「そうだ。マルフォイ坊ちゃんがそれを拾ってロングボトムを馬鹿にしていたんだ。私が脅してもよかったのだが、その前にポッターがキレてな」
肩をすくめるシルヴィアに、レイはその場の様子がありありと思い浮かぶ。グリフィンドールとスリザリンの仲の悪さは折り紙つきだが、今年の一年生の中でも特に争っているのがマルフォイ一派とハリー一派だった。
シルヴィアの話によれば、挑発に成功したマルフォイがその玉を手に箒で飛んで、それをハリーが追いかける。そしてマルフォイはハリーに怪我をさせるためか、思い出し玉を遠くに投げたのだ。それをハリーが隼のごとく追いかけて見事に宙返りキャッチを成功させた、ということだった。
「いやはや、初めての飛行とは思えないものだったな」
さすが“生き残った男の子”、ということかな? と思ってもいないことを言うシルヴィア。レイはそれに苦笑して思い出し玉をポケットにしまう。
「そんなことがあったのか。……あれ? 確かマダム・フーチから飛んだら退学って言われてなかったか?」
「その通りだ。ポッターはマクゴナガル女史に連れていかれたよ。まあ、退学はないだろうがお叱りは受けるだろうな」
「いや、ないな」
今まで聞きに徹していたギルバートがシルヴィアの言葉を否定した。
「ギル、その心は?」
ギルバートのことを略称で呼ぶことになったシルヴィアが尋ねる。
「マクゴナガル女史は確かに厳しい人だが、何事も例外はある。女史は根っからのクィディッチ好きと聞く。そんな女史の目の前でそれほどの飛行を見せたのだ。ポッターをグリフィンドールのクィディッチメンバーに入れたいと思うだろう」
「ああ〜、あり得るなぁ……」
レイはミネルバがマクスウェル夫妻の家に来て、その一年のホグワーツでのクィディッチの様子を夫妻やレイ、アリアに熱弁しているのを毎年聞いていた。
「ふむ、マクゴナガル女史をよく知っているレイが言うなら確かかもしれないな」
「そうなれば、一年生でメンバー入りだ。この特別扱いに馬鹿どもが嫉妬するだろうな。全くもってくだらん」
「だろうな。まあ、私にはどうでもいいことだが」
冷たい反応をする二人にレイは苦笑する。
「お前ら他人ごとになると本当に冷たくなるよな」
「それはレイもだろう?」
「……いや、まあ否定しないが」
シルヴィアの返しにレイは黙るしかなかった。レイはため息を一つして、話題を変えることにする。
「まあとにかく、ありがとなシルヴィ。明日の朝にでもネビルに渡しとくよ」
「なに、呼び出されたポッターから呼び寄せ呪文で奪っただけさ。マクゴナガル女史との話が長引くかもしれんと思ったからな」
「……シルヴィ、もう呼び寄せ呪文使えるのか?」
「ああ、レイが練習中と聞いてな。片手間に覚えた」
「…………ギル、教えてください」
「この愚か者、そう簡単に人に頼るな」
「……あい」
「ふふふっ」
そうしてさらに賑やかになった夕食も過ぎて行った。
………………
…………
……
……
…………
………………
その翌日のこと。レイは一人で次の授業へと向かっていた。次の授業はハッフルパフとの合同であるため、シルヴィアとギルバートはいない。
レイの他の友人達はエステルは言わずもがな。ネビルは先の魔法薬学での失敗の罰として後片付けを言い渡されたのだ。ハリーとはそれなりに親しいが、ロンとはあまりソリが合わないため、ハリーとも行動していなかった。
友人が少ないことに対して思うところはないレイは一人黙々と魔法階段を登る。五階への階段に足をかけた時、それは起こった。
「!」
レイはとっさに踊り場へとバックステップして杖を引き抜く。レイが先ほどいた場所には、そこを中心に青い染料と思われるものが広がっていた。
レイは周囲を警戒する。最近は無かったのだが、この間までスリザリン生からこのようなイタズラをされていたレイ。今回もそれだな、と下手人を警戒する。
すると、レイの横の扉からギシィという音が聞こえた。
「エクスっ……!」
「「わぁーー!! 待った待った待ったぁ!」」
レイが速攻で武装解除呪文を放とうとしたのを察した下手人は慌てて扉から転がるように出てきた。
その姿を見たレイはため息とともに杖をしまった。
「……フレッド、ジョージ」
「おいおい、王子様は余裕がないなぁ!」
「そんなんじゃ女王陛下に呆れられるぜ?」
「呆れてるのはお前らにだよ……」
「「それは恐悦至極っ!」」
「はぁ、全く」
レイの反撃に慌てていた様子はすでになく、下手人……フレッド・ウィーズリーとジョージ・ウィーズリーの双子は楽しそうにお辞儀した。
イタズラ好きと罰則の常習犯で有名な双子は、弟であるロンを通じてレイを紹介された時から興味を持っていた。
スリザリンの女王様と言われるシルヴィア・コルドウェルに唯一心を許されたグリフィンドールの一年生。そこに最近はレイブンクローの一匹狼まで気を許してるのだから、興味は増すばかりだった。
そこで双子は自分達のイタズラを通じてお近づきになろうと計画。スリザリン生の拙いイタズラを防いでいたことは知っている。しかし現代のイタズラ仕掛け人を自負する自分達のイタズラは防げないだろうとたかをくくっていたらこの様であった。
「しっかしあれに気付くかぁ、なあ相棒?」
「渾身の出来だったんだがなぁ、なぁ相棒?」
「「しかも一年生で武装解除呪文を覚えてるときた!」」
「気付いたのはほぼマグレだ。武装解除は入学初期に必死で覚えたんだよ」
そう言って肩を竦めるレイ。実際先のイタズラに気付いたのは本当にマグレだった。幼少期に父親から虐待を受けたレイはその手の危機察知に長けていた。しかしそれもすでに三年前のことで、最近は反応が鈍くなっていることに頭を抱えていた。
武装解除呪文はレイに真っ先に覚えなければならないと決意させた呪文だった。大切な人を守るためにホグワーツで魔法を学んでいるレイにとって、武装解除呪文は理想的な呪文だった。
「ほうほう、真っ先にとな? して、その心は?」
「お兄さん達に話してごらん?」
身振り手振り全く同じような尋ね方をしてくる双子に、レイは苦笑でごまかす。
「さてな、ご想像にお任せするよ。……にしても」
ブーブー文句を言う双子を無視して、レイは階段を染める青を指差す。
「お前ら、アレどうするんだよ?」
それを聞いた双子は先程までブゥ垂れていたのは何処へやら。二人揃って得意げに胸を張った。
「よくぞ聞いてくれました!」
「このインクは俺達の傑作の一つ!」
「これが染み付いたらどんな魔法でも決して落ちない!」
「しかし、俺達が杖を振るとあら不思議!」
「「ポポイのポイっとなっ!」」
双子が全く同じ仕草で杖を振ると、あれほど目に痛かった青色が綺麗さっぱり無くなった。これにはレイも目を見開いた。
「……すごいな」
「そうだろうそうだろう」
「我々の研鑽の賜物さ」
「研鑽の方向性を見事に間違えてるな」
「「褒めてくれるな、讃えたまえ!」」
「……ははっ、全くお前らは」
レイももう乾いた笑いしか出てこなかった。しかし、レイはイタズラを仕掛けられた身でありながら、双子が嫌いになれなかった。
「……ほどほどにしとけよ?」
「ご忠告どうも」
「しっかりと俺達の成果を知らしめてやるさ」
レイに撃退されたことを忘れたようにはしゃぐ双子に、レイが爆弾を落とす。
「……シルヴィにはするなよ?」
「「当たり前だ馬鹿野郎っ! 俺達を殺す気か!?」」
レイに迫り、二人揃って怒鳴ってきた姿に満足したレイは双子に背を向ける。
「分かってるならいいんだよ。じゃあな」
「「あばよ戦友! 今度は引っ掛けてやるぜ!」」
「そうはいくかよ、ばぁか」
レイと双子はそう言って別れる。三人の表情はどれもこれからを楽しみにしているものだった。
………………
…………
……
……
…………
………………
双子に襲撃されてから数日後のとある夜。レイは就寝時間になったのでベッドに潜って眠ろうとしたのだが、ウトウトしだした時にふと談話室に呪文学の教科書を置いてきてしまったことに気付いた。
一度気付いたらなかなか寝付けないもので、レイは動きたくはなかったが取りに行くことにした。隣のネビルを起こさないようにそっと出て、談話室へと向かう。
談話室に着くと、レイは自分が座っていた場所を探す。ギルバートに言われてからさらに自分で練習し、なんとか何回かに一回は呼び寄せることが出来るようになっていた。
あとは反復練習だな、と考えていると、呪文学の教科書を見つける。さて、寝よう、と寝室に帰ろうとした瞬間に、寮の入り口から怒鳴り声が聞こえてきた。
「本っ当に貴方達といるとロクなことがないわ! 規則を平気で破って得意げにして! ほらっ、そのおかげで死にかけたわ! なんとか言ってみたらどうなのよ!」
「ちょっ、ちょっとハーマイオニー、落ち着いて!」
「なんだよ! 君達が勝手についてきたんだろう! マーリンの髭!」
「ロンも落ち着こうよ。僕達が門限を破ったのは確かなんだし」
「ハリー、こんな奴の味方するのか!? こいつは君が人気者だからって妬んでるだけだぜ!」
「なんですって!?」
「ロン、ハーマイオニー!」
談話室に入ってきた途端に口論しだした知人達を見て、レイはどうしようかと迷う。口論に夢中でこちらには気付いていないみたいだったが、このままでは生徒達が起きてきてしまう、とレイはとりあえず持っていた教科書を大きくノックした。
するとばっとこちらを見るハリーとロン、エステルとハーマイオニー。第三者の姿に驚いている四人にレイは話しかけた。
「随分騒がしいみたいだけど、もう寝る時間だし静かにな」
第三者がレイだとわかった瞬間に四人はあからさまに胸をなでおろした。第三者が監督生だと勘違いしたのだ。
「なんだよ、おどかすなよレイ!」
「ロン、だからに静かにしろって。監督生に捕まりたくないだろ?」
「うぐっ」
うめき声とともに黙り込んだロンを見て、レイは次にエステルに向き直る。
「エステル、ハリーも。なにがあったかは知らないが、夜の散歩もほどほどにな。俺は別に気にしないが、それでうちの点数が下がったらうるさい奴もいるからな」
レイは意識的にハーマイオニーには顔を向けず、話しかけないように心がける。それは今は自分とは話したくないだろう、というレイの心配りだったのだが、今のハーマイオニーには裏目に出てしまった。
レイに突っかかることこそなかったが、自分の存在はレイにとって視界にも入れない程度のものなのかと怒りを膨れあがらせる。
そんなレイの注意にエステルは素直に頷いたのだが、ハリーはレイの自分達が悪いことをしたと断定しているような言い方に腹が立ち、前のめりに言い返した。
「夜の散歩なんかしてない!これはマルフォイのせいなんだ!それに、ホグワーツに化け物がいたんだよ!」
「……化け物?」
「ちょっとハリー! 」
ハリーが口を滑らしたことを諌めるエステル。しかし、すでに遅かった。ここまで言ってしまえば最後まで話さないと誤解されてしまう、とエステルは諦めとともに何があったのかをレイに話し始めた。
ハリーがマルフォイから夜中に決闘を申し込まれたこと。しかしそれは罠で、規則破りをさせるためにおびき出されたこと。フィルチの猫であるミセス・ノリスから逃げるために立ち入り禁止だった四階の廊下に逃げ込んだこと。そして、そこで三頭犬に襲われたことをレイに話した。
「なるほど、ねぇ」
レイは話を聞き終えると少し考え込んだ。ここは魔法学校というだけあり多くの子供達が暮らしている。そんな場所で、注意したとはいえ三頭犬が放置されている。怪我ならまだいい、最悪は食い殺される。なら、なぜそんなものがいるのか。
レイがそんなことを考えていると、ハーマイオニーが痺れを切らして口火を切った。
「とにかくっ、もう私は金輪際貴方達とは関わらないから! 貴方達もせいぜい規則を破って死なないことね! ふんっ!」
ハーマイオニーは一方的にがなり散らして女子の寝室がある方へと去って行った。
これには黙り込んでいたロンも黙っていられなかった。
「なんだよあいつ、自分から関わってきたくせにあの言いようは!」
「ハーマイオニーも二人を心配してたんだよ? だけど、さすがにあんな目に合うとは思わなかったから驚いてるだけだから、ね?」
そんなに怒らないで? と美少女であり誰にでも優しいエステルにそう言われてしまえば、ロンも何も言えなかった。
ハリーもエステルが言うなら仕方ない、とハーマイオニーに対して燻っていたものを脇に追いやっていると、突然レイが口を開いた。
「……何かを守ってたのかもな」
それに気付いた三人はレイを不思議そうに見る。そんな三人を代表して、エステルがレイに問いかけた。
「レイ、なんのこと?」
「三頭犬があそこにいる理由だよ。ここには多くの子供がいる。そんな中で警告されたとはいえ三頭犬が放置されている。ステラ達みたいに誤って入ってしまうという事故が考えられないはずがないのに、そのリスクを負ってまで三頭犬が四階廊下に置かれている。ならそれはなぜか……」
「……何か大切なものを守ってるってこと?」
「多分な。俺の頭じゃそれぐらいしか思いつかん」
肩を竦めるレイを見た後、三人は顔を見合わせた。レイはそんな三人を放って一人自分の部屋に帰るために歩き出す。
「ま、あまり気にするな。俺達が関わっていいもんではないのは確かだろうしな。お前達も早く寝ろよ?」
それじゃあおやすみ、と言って帰っていたレイを見送るハリー達。そのあと、三人はレイの推測についてしばし考え込むのだった。
如何でしたか?
自分双子、好きです。
次回、穴熊の雑用係。
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