山吹さんは構いたがり。   作:呉 光佑

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ヒロイン出ない、文字数と描写少なくて雑、面白くないの三拍子。
先生書きたかっただけです。

また例のごとく推敲はしてませんので、誤字脱字報告よろしくお願いします。


その6

「比企谷、作文のテーマはなんだったかな?」

 

「はぁ、『高校二年生になって』と言うものでしたが」

 

「それをどう解釈したらこんな舐めた文章を書いてこれるんだ」

 

先生は俺の手にあったプリントをヒラリと取ると、額に指をつきながらため息を吐いた。

その肘は彼女の机の上に乗せられている。

五月某日昼休み、俺は平塚先生に呼び出されていた。

彼女はこの総武高校の生活指導担当だからその肩書きのイメージに漏れず、俺はなんらかのお叱りを受けるのだろう。

しかし総武高校の指導方針は問題さえ起こさなければ割と放任的なはずだった。

 例えば制服着崩してても何も言われないし、授業中寝てようが放置だ。

 俺も遅刻しようがサボタージュしようが、一年生も後半になると呼び出されることもなくなってきた。

それ故に俺はなぜわざわざ呼び出されたのか分からず、ここに来るまでチンプンカンプンだったのだが、先日書いた作文を職員室のど真ん中で朗読させたところを見るに、どうやら先生は俺の作文の内容にご立腹らしかった。 

 

「事実を述べたまでです。即ち悪いのはそれが事実である社会であって俺じゃない。こんなもの書かせる社会が悪いんです。だから俺は悪くない」

 

「よくもまぁそんな正当化が出来るものだな」

 

彼女はまたしてもため息をついた。

 

「俺の作文にご立腹なのはわかりましたけど、そもそも何故平塚先生が? 生活指導の領分ですかこれ? 」

 

これホームルームに出された課題だから、その担当は必然的にウチのクラスの担任であるはずなんだが。

実際プリントの提出は担任にしたし。

 

「君の担任に泣きつかれたんだよ」

 

そう軽く疲れたように先生はそう言った。

なに俺、担任には匙投げられちゃってるんのん?

 

「君はあれだな。腐った魚のよう目をしているな」

 

「DHA豊富で賢そうっすね」

 

「傷んでたら食えやしないよ。」

 

彼女はまた、ため息を一つ。

あんまりため息つくと、幸せが逃げますよ。或いはもう手遅れか。行き遅れだ。

 

「君にも最近は友人もできて、まともになってくれると思ってたんだがなぁ」

 

 

 

「‥‥‥なんのことですか?」

 

「山吹と最近よく話してるだろう。違ったかね?」

 

なんでんなこと知ってんですかねぇ。あいつに話しかけられてるの主に休み時間なんですけど。

 

「なに、通りすがりに君の教室覗いたら仲よさそうにしてたからね。1度目は偶然かと思ったが、二度三度と見かけたからな」

 

‥‥何も言ってないんですけど。

 

「‥‥‥そもそもあいつは、そういうんじゃないです」

 

「中学生か君は」

 

もう高二になったろう?

と、彼女はヒラヒラと手に取ったプリントを揺らしながら言った。

なんでもないったら、なんでもないのだ。

そもそもライン交換したら友人とか意味わかんなさずぎるから。

 

「そういう貴方は二十‥「ジャン、拳、グー!」」

 

徐に右手を引いたと思ったら、目の前に迫るものに驚いて閉じていた。

拳だった。

 

「何か言ったか?」

 

「No ma’am!何も!」

 

 は、速すぎる。ていうかいつの間に立ち上がったんだ。

座った状態から立ち上がって、構えて、正拳突き。この間およそ1秒切ってるんじゃないだろうか。これが天賦の才かぁ。

ていうかプリント、握られてくっしゃくしゃになってんですけど良いんすか?

 

「マムって言うな! 私は独身だし、そもそも未婚だ! ‥‥‥うぅ、子供欲しい。結婚したい」

 

「いや、そっちのマムじゃないです」

 

 なんか、地雷踏んだ。

この人メンタル弱すぎだろ。全身地雷原だ。アメリカ人でもあるまいに、マムで反応しちゃうのは流石にまずい。日本人なら精々ママだろ。或いはビッグマム。

あ、人が丹精こめて書き込んだプリントで鼻かみやがったこの人。

そしてそれを手近なゴミ箱にシューッ!超、エキサイティン!

 

「私はマム・タロトが浮かんだなぁ」

 

「あのゲームやってんのかよ‥‥」

 

「お、分かるかね! 」

 

「まぁ、一応やってました」

 

「あの武器はコンプリートしたか?」

 

「いえ、あんまりにも面倒で」

 

「そうか。私も一周が長くてあんまり出来ないんだ。そのせいで全然集まんなくてなぁ。社会人の身分が恨めしいよ」

 

「周回前提なのに、なんであんな時間かかるんでしょうねアレ」

 

頑張って効率化しても時間かかるんだよなぁあれ。しかもダブりありのガチャ。社会人が出来るものでは到底ない。教師なんて特に持ち帰りの仕事が多いイメージがあるし。

なんなら学生でも投げた。

ていうかゲームの話する時、目輝きすぎでしょこの人。

結婚相手はいわゆるヲタ系の人探したほうがいいかもしれない。

なんて事を考えていると、先生は徐に机のファイルボックスからプリントを一枚取ると、俺の胸に押し付けた。

そのプリントを両手で取ると先生の手は離れたので確認してみると、俺が先ほど見たプリントの未記入のものだった。

 

「まぁ何にせよ課題は再提出だ。奉仕活動は無しにしてやるから、その分しっかりやれよ」

 

「なんですか、来年の受験に向けて鋭意努力します、なんてお為ごかしでも書けと? 」

 

そんなのはあまりに当たり前のことで、言葉にする必要なんてまるでない。

決意表明するってほど、俺は勉強に気負っちゃいない。そして逃げ道をわざわざ潰すタイプでもない。

ならばそれをわざわざ口にするのは、勉強してて偉いねと、誰かに認めてもらいたいからになるんじゃないのか。ただの勉強するやつアピールになるんじゃないのか。教師に媚びてるだけになるんじゃないのか。

 

「なんだ、分かってるんじゃないか」

 

なんて飄々と抜かす先生。

反吐がでるな。

すると先生は微笑んだ。

・・・なぜ不機嫌そうにしてる人間見て笑うのか。感情ってのは、伝播するもんじゃないのかよ。

 

「ま、建前も必要だよ比企谷。薄っぺらい内容でも通してやるから、取り敢えず書いて来い。」

 

なんなら友達が出来たとかでもいいぞ、と彼女は笑いながらながら言った。

揶揄うような、或いはどこか楽しそうなその言葉に、何故か悪意は一片もなくて。

俺は頭を軽く掻く。

平塚先生には一年の頃から大変お世話になっている。担任に対する、平塚先生の面子もあるだろう。

お為ごかしなんてのは書きたくはない、しかし友達が出来たなんて以ての外だ。

なんにせよ、これで用件は済んだろう。とっとと飯を食わねば昼休みが終わってしまう。

そもそも昼休みは休むためにあるのに、呼び出されて、急いで飯食って終わりとか冗談じゃない。

俺は踵を返して、職員室の引戸を開けた。

 

「まぁ好きに悩め、青少年。そのためのモラトリアムだ」

 

俺は端的に失礼しますとだけ言って、後ろ手でドアを閉めた。

悩むもなにも、ない。

未だに解なんて出てはいない。式も定まってなどいない。

しかし既に俺の方針は決まっている。

だから算出する必要なんてそもそも無いし、する気もない。

しかしそれはそれとして平塚先生のニヤケ面があんまりムカつくので、課題についてはマジで適当に書いてやることにした。




「ちなみに奉仕活動って何させる気だったんですか? 」

「なに、私の心を傷つけた罰として、採点の手伝いでもさせようかとね」

「それ職権乱用じゃないですかねぇ‥‥? ていうか生徒に答案用紙見せようとしないで下さい 」

「バレなきゃ犯罪じゃあないんだぜ」

「生活指導担当のセリフじゃねぇ‥‥」

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