活躍して乗っていたところでのエラー...。
気分が下がっていた大吾君でしたが、最後のシーン、そこにはいないはずの光君が!
果たして、大会初戦、どういう結末を迎えるのでしょうか、楽しみですね。
そしてこの小説は、全国大会出場をかけての大会の決勝戦真っ只中です。
ということで、よろしくどうぞ。
責任感
カキィィン、とグラウンドに快音が響く。
それは、誰が見てもわかる、完璧な当たりだった。
悠々とダイヤモンドを一周する、縄森の四番高山。
対照的に、マウンドで悔しさをにじませるのは、鹿瀬の投手大屋。
* * * * *
失投だった。
細心の注意を払っていたはずなのに、やられてしまった。
三番打者に、セーフティバントで意表を突かれ、初めて走者を出した。
それだけで、簡単に動揺して、失投してしまった。
接戦になってくると、先制点を取った方へと流れが傾く。
それを、相手に与えてしまった。しかも、ツーランホームランという形で。
エースとして、情けない。
チームに、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「…おい、勝一、顔上げろ」
見ると、サードの牧篠が来ていた。
「まだ試合は半分しか進んでないんだ。逆転する機会は、あるさ」
「……」
僕は、何も言えなかった。
『頼んだ』?...なんだか無責任すぎる気がする。
打たれてしまった以上、言い訳はできないし、するつもりもない。
ただ今は、とにかく失投を放ってしまったことを悔いていた。
「勝一、これだけは言っておくぞ。
…俺たちが勝ち上がってこられたのは、お前のおかげだって」
「…いや、それは、皆が援護してくれたからで...」
「…はぁ」
僕の言ったことに対してため息をつく牧篠。
「まぁ、いいや。お前がそういう性格だっていうのは、分かってたことだしな。
…じゃあ、これまで勝ってきたのは俺たち皆が頑張ってきたから、ってことだな」
牧篠が、何のために自分のところに来たかがイマイチ分からない。
「それで?結局何が言いたかったの?」
「いいか?勝つのが皆のおかげなら、負けるのも皆の責任ってことだ。
だからよ、勝一。お前ひとりだけで責任を背負い込むことだけは絶対にするな」
「……」
「それに、負けた時のことは負けてから考えればいい。
今はとにかく、この試合に勝てるように頑張るしかないんだよ
…なあ、皆?」
そう言われて振り返ると、内野の皆が集まってきていた。
「そうだぞ、皆で勝つから楽しいんだろ?野球は」
「守りは任せてね、勝一くんを盛り立ててみせるから」
「絶対逆転してやる、俺たちに任せとけ」
内樺、菊地原、間宮がこう言ってくれた。
「今日の勝一、調子良いんだ。次からも、自信もって投げてくれ」
相棒の森戸が、こう言ってくれる。
…僕は、一人じゃない。
「…よし、じゃあ、この回残りを抑えて、次の回逆転するぞ!」
「「オー!!」」
牧篠の掛け声で、それぞれ散っていく内野陣。
なんだかさっきので、自分の肩も少し軽くなった気がする。
…僕、背負い込みすぎてたのかな。
まあ、なんにせよ。
これからは、誰にも打たせないくらいの気持ちで投げるしかない!
* * * * *
四回のウラ、ツーアウトから痛い先制点、それも二点を失った鹿瀬少年野球クラブ。
後続は断ち、試合は後半戦へと進んでいく。
しかし五回の表、鹿瀬はランナーを出すことはできずに三者凡退。
未だに、縄森のエース池から、ヒット一本すら打てておらず、死球による一つの出塁のみと、完璧に抑えられている。
だが。
何故か、鹿瀬の面々に焦ったような様子は見られない。
マウンドに上がった大屋も、先程の回の失点を忘れたかのような投球に。
センターフライ、セカンドゴロ、見逃し三振。見事な三者凡退。
かわって六回表、先頭打者はキャッチャーの森戸。
8番に入っているが、パワーは非常にある選手。
1-1からの三球目、良い当たりを放つも、ライトフライでワンナウト。
9番はセカンドの菊地原。
初球、インコース低めのボールを捉えるが、ショート正面のライナーとなり凡退。
そして打席には、1番サード、キャプテンの牧篠が入る。
* * * * * *
「(…ここまで、池からヒット一本すら打ててない。
このままじゃダメだ。とにかく何とかして、勝たなきゃならないんだ!)」
初球。
バットを横にして、ボールにコツンと軽く当てる。
セーフティバント。
相手の意表をついての出塁を狙ったが。
「…ファール!」
三塁線を切れてしまった。
「(…くそ、惜しい。しかもこれで、意表を突くのはできなくなっちまった)」
二球目は、高めに外れる、ボール。
「(やっぱり、打つしかないよな...。
でも、どうやって?これまでずっと、抑えられてきた相手をどう打つ?)」
三球目、インコースへの際どいボール。
手が出ない、そして、ストライクに。
これで、追い込まれてしまった。
「(ああ、こんな時、綜先輩ならどうする?俺の憧れ、茅ヶ谷綜先輩なら...。
…って、ダメだダメだ。こんなこと考えてる暇はねえよ!)」
四球目、五球目はうまくカットし、六球目は外に外れるボール球。
カウント2-2だ。
「(…ダメだ、ヒットを打てるイメージが、わかねえ...。
やっぱ俺は、キャプテン失格だな...。先輩みたく、うまくないし...)」
『そうだよ、俺は自分の事、ヘタクソだと思ってるよ』
「……!!」
ふと、とある時に先輩が言った一言を思い出す。
「(…そうだ。俺は、まだまだ下手なんだ。だから...)」
ピッチャーの池が振りかぶる。
投じられた七球目。
俺は、この打席の初めにやったのと同じ体勢になる。
セーフティバント。
通常ありえないカウントからの俺の行動に、反応が遅れる相手内野手。
軽く転がして、一塁へと全力で走る。
そのままの勢いで、俺は一塁ベースを駆け抜けた。
試合の最終回の模様は、次話に持ち越しとなりました。
どうぞ、お楽しみに。
では。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
※11月10日18:25、一部分に修正を加えました...が、本筋の部分とは特に関わりもないのでお気になさらず。修正ラッシュについてもお気になさらず。笑