ストーブリーグの話題など、色々ありますがそれより何より、12月に入って非常に寒さが増したような気がします。
今月は数少ない五話更新の月ですし、しっかりと寒さの和らぐアツい話を書いていきたいところではあるのですが。
どういう感じになるのかは正に、神のみぞ知る、というわけでございまして。
ではでは本編へ参りましょう。
よろしくどうぞ!
初めての障壁
5月上旬某日。
俺たち風中野球部は、いつにも増して熱心に練習に取り組んでいた。
その理由は...少し前にさかのぼる。
「いきなりだが、皆少し聞いてくれ」
綜先輩のこんなセリフから始まった今日の練習。
ウォーミングアップ前にこうやって先輩が話すのは、割と珍しいかもしれない。
「実は再来週の週末に、大会がある」
皆の集合を確認してから、そう発言した先輩。
…って、え?今なんて?
「黙っていたわけではないんだが、すっかり言うのを忘れていてな、すまん」
「ん?でも再来週なんじゃん?別に気にすることじゃなくねーか」
頭を下げる先輩に対し、素直に疑問を呈するのはレイ先輩。
確かに、
ただ...。
「はぁ、相変わらずアンタの脳はお花畑みたいね」
溜息をつきながらそう割って入ったのは、綾部先輩だ。
「なんだよ、頭お花畑って?」
「…来週の木曜から何が始まるか、アンタはどうせ覚えてもないんでしょ」
そう。
「は?来週、木曜から?なんじゃそりゃ」
「…ま、分かる人には分かるだろうし、アンタはもういいや。
あとそこまでの二日間、練習頑張るぞってことでしょ?キャプテン」
「ああ、レイには少し、反省も兼ねて黙っておくことにするか。
…ということで他のメンバー、分かってくれるとありがたい。では、今日も始めようか」
「はい!!」
「いやちょっと!なんでオレだけハブられてんの、ねえ?」
「はいはい、思い出したら言ってくれていいから。
…まあアンタは、
「なんだよ、思い出したくもないこと、って。…ったく、メンドくせえな」
相変わらず、レイ先輩は思い出せないみたいだ。
…クラスのHRとかで、言われてないのだろうか?
「…あいつ、HRですらいつも寝てるからな」
「わ...って、近江先輩」
まるで俺の心を読んでいるかのようにそう答えると、横を抜き去ってランニングの先頭へ。
わざわざ疑問に答えてくれた(口にはしてないのに)先輩には感謝だ。
…もしかして毎回、この時期になるとレイ先輩に苦しめられているのだろうか、とふと。
だとしたらそれは、ご愁傷様ですとしか言いようがない。
あと足、やっぱり速いなあ...。
「ミチルは、勉強できる感じなの?」
突然そう聞いてきたのは相楽。
「ミチル言うな。
ただまあそうだな...少なくとも相楽よりかは出来る自信はある」
「わ、何その返し。性格悪」
「いやいや、相楽さんの性格の悪さには負けてますって」
「そういうとこ直さないと、ミチル一生彼女とか出来なさそう」
「…ほっとけ」
少し痛いところを突かれたような気がして、返しが弱くなってしまった。
追撃があると嫌だな、と思っていたがそれ以上の口撃はなく、一安心?だ。
「大吾はどうなんだ?勉強」
「ん~、今回範囲になりそうなところは、一応大丈夫かな...。
牧篠にいつか、頼るタイミングあるかも。その時はよろしく」
「別に良いが...お姉さんとかには教わらないのか?」
「姉ちゃんは絶対やだ。とりあえずバカにしてくるから」
なるほど、色々あるんだな...。
「あと一つ。なんで俺に頼ろうと?他にもいるだろ」
「相楽はともかくとして、牧篠には余裕が見えたから、かな」
「余裕?」
「…姉ちゃんが言ってたんだよ。
『”アレ”の前に周りの様子を窺うようにしてる奴は、絶対敵だから』って」
「プッ!…ミチル、アンタ敵だってさ」
大吾の発言にいち早く反応した相楽。
笑いながら俺を煽る。
「…敵」
一方の俺は、自分を客観的に見つめなおして顔を青くする。
「いや、牧篠がそういう奴じゃないってのは分かってるからな?
だからこそ、困ったときは頼ろうと思った、って話だから」
「おう...フォローサンキュな、大吾...。
…敵、敵なのか...」
大吾の姉さんが言ったというそのセリフにショックが止まらない俺。
その後、一時思考が停止したのであった。
* * * *
「あ。思い出した」
突然そう言ったレイ先輩。
時刻は、もうすぐ部活動も終わろうかという18時過ぎ。
今は、内野手のバッティング練習...ロングティーの時間。
外野を守る人たちはそこに散って、打球の飛来を待っているところだった。
「…ということで、綜!!助けてくれ!!」
瞬間移動のように駆け寄ると、先輩の前で一礼した。
「いつものことだしそれは勿論いいけど...ケンじゃなくていいのか?
俺より成績はアイツの方が上だぞ」
「健竜は...なんか怖いんだよ、ここだけの話」
「あ?誰が怖いって?」
綜先輩に尋ねられたレイ先輩。
正直に答えた彼の背後に立っていたのはケン先輩で、彼の言葉に少し怒り口調になる。
「ヒッ、そう、そういうとこだよ!」
「いや、考えてみろレイ。毎度毎度、この時期になる度にだぞ?
自分の勉強ではなく人に教えることに時間を費やさないといけない事がどれだけ大変か。
そんでもってお前は、真面目にやる気も出さないし、なあ?」
「でも...人に教えるのも勉強っていうじゃん?」
「それは相手がしっかりと聞いてくれる場合だけ!
真面目に聴く気がない相手に勉強教えたところで、残るのは寂しさだけだろ?おい」
…ケン先輩のああいう怒ったとこ、初めて見たな。
少年野球で一緒だった時も、その冷静さを崩さない先輩だっただけに、あのような姿を見るのはとても新鮮な気分だった。
レアすぎて、写真を撮っておきたいまである。
「…いや、何やってるんです綾部先輩」
「ん?」
いつの間にか俺の横に立っていた一人の先輩。
あろうことかケン先輩とレイ先輩に向かってスマホのカメラを向けている。
何をやっているのかという俺の問いに、何とも言えない満面の笑みを浮かべて首を傾げた。
「いつもこんな感じなんですか?この時期は」
「ん~そうだね...今回が、今までで一番やばいかも。
これまで、二週間前には普通は泣きついてきてたのよね。
それが今回はもう、残り一週間って感じじゃない?
ちょっと、期待してたのよね。今回ばかりは泣きつきがないんじゃないかって」
「その結果がこれだった、と」
「そういうこと。
だからケンは、むしろ期待してた自分に怒ってたりするんじゃないかしら?」
色々いきさつについて教えてくれる綾部先輩。
期待してた自分に怒る、確かにケン先輩ならそういう感じのところはありそうだ。
それにしても...。
「…カメラ、仕舞わないんですか」
「だって、面白いじゃん?」
「先輩、良い趣味してますね」
「そ、ありがと」
俺の皮肉も、軽い相槌で片付けられた。
ただまあ、今もなお怒っているケン先輩を見るのは新鮮だし、別にいいやと言う気もしてきた。
だが、すっかり練習は止まってしまった。
数少ない部活停止期間前の練習だから、今日はいつも以上にやろうという気持ちはどこへやら。
果たしてこのままで、再来週の大会に仕上げを間に合わせることなどできるのだろうか。
そんな気持ちを各々が抱えていたことだろう。
「クッソー!!!なんだって学校には、テストなんてものがあるんだよーー!?!?」
そして学校のグラウンドに、一人の悲鳴が響いた。
「あ、テストのこと書いてんなこれ」
…と読者様方が気付かれたのはどのあたりのタイミングだったのでしょうかね?
と、いうことで。
原作では殆ど出てこなさそうなテストの話題、触れていくことに。
各キャラの頭脳については個人的解釈になりますが、その辺りはどうかご勘弁を。
それでは今回は短めに、このあたりで失礼します。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。