俺の名前は。   作:kwhr2069

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どうも、こんばんはです。

本日投稿分に当たり、まだ明かせてなかった先輩方のフルネームをここに記しておきます。
詳しい人物紹介等は少し後になりますので、そこのところ、よろしくお願いします。

・1番センター:近江 克彰(おうみ かつあき)・2番セカンド:坂口 海洋(さかぐち みひろ)
・4番キャッチ:徳地 翔助(とくち しょうすけ)・5番ショート:市松 孝央(いちまつ たかお)

ではでは本編の方も、よろしくどうぞ!


第二十九話

(まみ)える球友

 

 今日は日曜日。

 いつもなら練習をしているところだが、今日は違う。

 

 県内の二校と練習試合なのだ。

 しかもいつも練習をしている風中のグラウンドではなく、他校に来ている。

 

 そしてここは、大尾(おおび)中学校。

 風中よりも心なしか狭く感じるそのグラウンドだが、今日はうちの学校ではサッカー部が広く使っているため使うことが出来ない。

 

 やむなくというか、そういう経緯でここに来たわけなのだが。

 

 さっそく、驚いたことが一つ。

 それは、俺がよく知っている顔が大尾中野球部の中にいたからだ。

 

「…よう、久しぶりだな」

 

「牧篠君、今日はようこそ」

 

 ようこそ、と言いながら帽子を取り、丁寧なお辞儀をするのは一人の元チームメイト。

 その、少しよそよそしさを含んだ態度に、何となく面白さを感じながら話し続ける。

 

「まさか菊地原が大尾中に来ていたとはな...知らなかったよ」

 

「まあ言ってなかったし、情報も回ることない気はするしね(笑)」

 

「他のみんなとは、連絡とってたりするのか?」

 

「んー、そうでもないかな。牧篠君は?」

 

「この間、勝一に誘われてシニアリーグの練習試合を見に行って、ついでに会ってきた」

 

「それって鹿瀬の他のみんなともだよね?それはちょっと羨ましいかも」

 

「菊地原も、いつか見に行ってやんなよ」

 

 そうだね、と返され、じゃあまた試合で、とそう言い残し去っていく菊地原。

 以前より少し、背が伸びただろうか。

 

 また菊地原が去ったのとほぼ同時に、俺の方へ近づいてくる影が二つ。

 何となく見なくても分かる。相楽と椿先輩だろうか。

 

「…やっぱり」

 

「誰?」

 

「少年野球時代のチームメイト、菊地原美涼。

 ポジションはセカンドで、打撃力こそ足りないもののそれを補って余りある守備力には定評が」

 

「ふ~ん」

 

 いやいや、そっちから聞いておいてそのリアクションの薄さはなんだ、相楽よ。

 

「ふ~ん」

 

 一方こっちは、少しニヤニヤに近い笑みを浮かべている椿先輩。

 何を考えているかは知らないが、いちいち反論するのも面倒なので放っておくことにした。

 

 

*  *  *  *

 

 その後。

 まずは大尾中ともう一つの今日の俺たちの対戦相手、茂舞(しげまい)中学校との対戦から。

 

 俺たちがグラウンドの隅でアップをし、キャッチボールをし、後に見学したその試合。

 結果は、大尾中が4ー2での勝利を掴んだ。

 

 次に行われたのは、うちと茂舞中との試合。

 こちらの先発ピッチャーは椿先輩で、6回を一失点完投。

 いつものスタメンとは違うオーダーで臨んだ打線も好調で、6回10安打9得点。

 また、相手投手二人が左投げだったこともあり、8番サードで先発出場した関鳥が特に大暴れ。

 コールド勝ちを決めた二点タイムリーヒットに始まり、二回には勝ち越しタイムリーも放った。

 

 昼食休憩をはさんで、次に予定されているのはもちろん、風中と大尾中の試合。

 俺は、2番サードで先発出場することになった。

 

 ちなみに1試合目と合わせて、全員が先発出場できるようにオーダーを組んだ俺たち。

 つまり、この試合は大吾がスタメンマスクを被ることになったし、セカンドを守るのは沢さんで、ライトには睦子が入る。

 

 この前の大会では、ここまで一年と一緒に試合に出ることはなかったから、何だか気分も上がる。

 試合を見た感じだと勝てない相手ではないと思うし、実際勝たないといけない。

 俺たち風中野球部の目標は、もっともっと上にある。

 

 

 

 …と、そんな意気込みで挑んだ試合ではあったのだが。

 

 初回、先攻の俺たちはセカンドゴロ、サードゴロ、センターフライで三者凡退。

 勢いに乗っていきたいところだったが、結果出塁できず仕舞い。

 

 しかし、一方のケン先輩の投球も上々のスタート。

 空振り三振、ファーストフライ、ショートゴロで三者凡退に抑えた。

 

 こうなると、先制点が欲しくなる。

 そして二回の表、ワンナウトから孝央先輩がヒットで出塁。

 ケン先輩の内野ゴロで二塁へ進塁すると、次打者の沢さんがレフト前ヒットを放ち、先輩は本塁生還。

 意外にも、あっさりと先制点を挙げることに成功した。

 

 その後、三回表にも三長短打で二点を挙げる。

 

 だが四回表の攻撃で俺たちが三者凡退に抑えられると、直後の大尾中の攻撃。

 3、4番の二連打に送りバントでワンナウト二、三塁のピンチを迎える。

 次打者はファーストゴロに抑えた。

 

 …が、一塁手は翔助先輩。あまり守らない守備位置という事もあってか、ここで送球ミス。

 一点を与え、続く打者はライトへのフライ。睦子の返球もむなしく、二失点目となってしまった。

 

 

 

「…みんな、すまない」

 

 開口一番、そう発言したのはケン先輩。

 

「なんでそこで先輩が謝るんですか」

 

「なんでって、そりゃ...」

 

「じゃあケンは、手を抜いて投球してたってことか?」

 

 先輩の言葉を遮りそう言ったのは、綜先輩だった。

 

「それは...違うけど」

 

「それなら、ケンの責任じゃないだろ。いつだって失点は、チームみんなの責任だ。

 だから、みんなで点を取り返しにいかないと」

 

「そうだそうだ。それに、第一ミスしたのはおれだぞ、普通そっちからだろ」

 

「いや、翔助は慣れないファーストだろ。仕方ないというか...」

 

「ああ。だから、ミスは取り返すし、それに...」

 

「それに...?」

 

「そういう失敗を積み重ねて、人間って成長していくものだって言うだろ?

 一回の過ちですぐ下を向く、ケンの悪い癖だぞ」

 

「翔助の言う通り。だからこそ、オレ達は練習するんだろ。

 問題点を見つけて、それを克服していってこそ、上達していくことに繋がるんじゃねえのか?」

 

「みんな...」

 

「ケンが一番大好きで一番得意な、勉強と一緒だろ」

 

「…一番大好きは言い過ぎだよ。まったく...」

 

 

 一気に雰囲気の変わるベンチ。

 一年が入る余地など全くなく、先輩たちだけで解決してしまった。

 さすがの呼吸というか。

 俺たち一年も、いつかこんな風に慣れるのだろうかとふと考え、無理なのではと思った。

 

 

 その後、五回表の攻撃。

 ワンナウト二塁の場面で俺は打席に。

 三球目、外角球に逆らわず打ち返した打球は一、二塁間へ。

 

 しかしそこには、菊地原がいた。

 

 アウトとなり、その次の綜先輩は外野フライで得点とはならず。

 1点差に詰め寄られて点が欲しい場面だっただけに、後悔が残る。

 

 だが、マウンドに向かうケン先輩の背中からは、これまでとは違う何かを感じた。

 しかしこの回先頭の菊地原が、センター前ヒットで出塁。

 バントと内野ゴロで三塁へ進塁し、打席には相手の3番打者。

 

「牧篠君のとこ、良いチームだね」

 

「ん?ああ、それは、菊地原の方もだろ?」

 

「そうだね。楽しんでやれてるから...負けないよ?」

 

「こっちこそだ」

 

 打球が飛んでくる。

 身体の右側。素早く反応し逆シングルのグラブで捕球。

 一塁で構える翔助先輩目掛けて、送球。無事アウト。

 

 ホームベース辺りで振り返ってきた菊地原と目が合い、どちらともなく笑みを零した。

 

 

*  *  *  *

 

 6-2。俺たちの勝利で試合は終わった。

 俺たち一年は帰るため、ベンチに残った道具たちを片付ける。

 

「そういやミチルさ」

 

「ミチルやめろ」

 

「しつこいな。まあいっか。

 五回裏だっけ?とかに、相手の子と何か話してなかった?」

 

 相楽のやつ、ホントそういうとこ目ざといな。

 

「…軽い世間話みたいなもんだよ」

 

 嘘はついてない...というか吐く必要もないんだけど。

 

「世間話、ねぇ...」

 

「何がご不満なんだよ」

 

「んー?別に、」

 

「別に、なんだよ?」

 

 中途半端な言葉が気になり聞き返すと、何やら俺の背後に目をやっている相楽。

 振り返ると、菊地原がいた。

 

「なんだ、まだいたのか」

 

「そりゃね、ここうちの学校だし」

 

 言われてみればそうだった。

 

「それで?何か...」

 

 何か用か、と尋ねようとした俺。

 それを、他の人には聞こえないようにして自分の方へ引き寄せてきた菊地原。

 

「一つ聞き忘れてたなぁ、と思って」

 

「なんだよ?」

 

「あの中に好きな子とかいるの、ってこと」

 

「…正気か?」

 

「一応」

 

 何言ってるんだ菊地原、俺はずっと道塁ちゃん一筋...って、何てこと言おうとしてんだ俺。

 

「…いない」

 

「ふ~ん、微妙な溜めが怪しいね?(笑)」

 

 それは気にするな、ちょっと違うこと考えてた、とは言えなかった。

 

「まあ、いないならいいや」

 

「用ってホントにそれだけか?」

 

「うん。それに...ね?」

 

「ん?」

 

 言葉を濁した菊地原に首をかしげると、背後に強い視線を感じた。

 

「なんだ相楽」

 

「忙しいなら置いてくよ?それとも、今日は帰らない感じ?」

 

「そんなわけないだろ。じゃあな菊地原、また」

 

「うん、気をつけて帰ってね。ばいばい~」

 

 手を振ってくる菊地原。

 それにしても、さっきの質問は何だったのだろうか。真意が掴めん。

 

 部内恋愛、ねえ...。

 なんとなく、ふと前の方に目をやる。

 そこには睦子の分まで荷物を持っている大吾の横で、あたふたしている睦子が。

 

「(割ともう、あの二人は公認みたいなとこあるよな...本人たちがどう思ってるかは知らんが)」

 

 そんなことを考えていた俺の横に、少し近付いてくる者が一人。

 

「何話してたの?さっき」

 

「軽い世間話だな」

 

「またそれ?」

 

「昔のチームメイト同士だと、こういうこともあるだろ。分かんない?」

 

「…さあ?」

 

 全く同意できないと言いたげな反応の相楽。

 言われてみれば、相楽は横浜リトル出身。

 大抵のチームメイトはシニアに入った男子だろうし、会うことはない上、話すことも無さそうだ。

 

「(…実際、相楽はチームメイトの男子とも仲良くしてなさそうだしな)」

 

「ミチル今、失礼なこと考えてるでしょ」

 

「…はは、まさか」

 

「…ま、別にいいけど」

 

 相変わらず要所要所で鋭いなホントに。

 仕方ない、これ以上の詮索はやめておいて、後で思い出した時にでも沢さんに聞いてみるか。

 

 そんなことを思いつつ、長いようで短かった日曜日が終わる。

 そしてまた、時は止まることなく進んでいく。

 




菊地原美涼ちゃんを大尾中に入れるという悪行に出やがりましたよこの作者...()
いや、左投げ内野手の件、自分は頭固くて違和感覚えちゃうので、一人オリキャラ入れたかったんですよね、大尾中にも。

そういうことで、美涼ちゃんは今後も登場機会があります。応援してあげて下さいませ。

さてさて、来週で本年の更新は最後となります。
4月から始めた本小説ですが、ここまで書けているのも日々応援して下さる皆様方のおかげです。本当に、本当にありがとうございます!!

それでは今回は、このあたりで失礼させてもらいます。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
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