俺の名前は。   作:kwhr2069

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どうも。
年の瀬、いかがお過ごしでしょうか。

本小説は、今話にて今年は最後の更新となりました!
読者様方に対する、重い思いの丈は後書きで書かさせて頂くことにいたしまして、早速本編に入りたいと思います。

それではどうぞ!よろしくお願いします。


第三十話

迫る大会、昂る気持ち

 

「じゃあ大吾、あと2球行くぞ」

 

 10数メートル先、座って構えているチームメイトに向かい、声をかける。

 おう、という返事を聞き、振りかぶって投げる。

 指先に力を込め投じたボールは、勢いよく大吾のミットに吸い込まれ、パァン、と心地良い音を響かせた。

 捕球したやつの口が、ナイスボール、と動いた気がして思わず、少しだけ口元が緩む。

 

「ラストもこんな感じで、こい!」

 

 そう言いながら投げ返されたボールを受け取り、今度は俺が、おう、と言う。

 そして続けざまに振りかぶると、今日一番の力を込めて、練習で最後となるボールを投じた。

 

 

*  *  *  *

 

「…ボールだったな」

 

「いやいや、入ってたろ」

 

「残念だけどボール球」

 

「いいから認めてくれって」

 

 ピッチング練習を終えた後。

 最後の球のストライク、ボールについて軽く言い合う。

 …とは言いつつ、何となくボールだったような感覚はあるのだが。

 

「はいはい二人とも、その辺で」

 

 割って入ったのは椿先輩。

 

「先輩見てました?入ってましたよね?」

 

「見てないから分かんないよ」

 

 俺の問いかけを冷たくあしらう先輩。

 口ぶりからなんとなく察するに恐らく見ていたのだろうが、それ以上言い続けるのはとりあえずやめておくことにした。

 

 それはそうと、と話題を変えるように話しだした椿先輩。

 

「マキくんも、今やすっかりピッチャー慣れたんじゃない?」

 

「まあそうですね。…先輩が良いんですかね?」

 

「そういうこと。分かってるじゃない」

 

「そこは謙遜しててほしかったです」

 

「マキくんが私のこと良く言うなんて珍しいから乗ってあげたんだけど?」

 

「そうですかね?」

 

「そういう、すぐとぼけるところよ」

 

 これこそ慣れたもの、という感じで先輩と言葉の応酬。

 ただ今日は、何だか少しいつもと違っているような気がして。

 

 それも、いつの間にか時が経ってきて、来週にはもう、三年生にとっては最後となる大会があるという、時期的な事もあってのことかと思っていた。

 

 それが気のせいじゃないという事が分かったのは、少し後のことだったのだが。

 

「あれ?大吾は?」

 

「ん」

 

 いつの間にかいなくなっていたチームメイトの居所を尋ねると、俺の背後を指差された。

 

 見ると、睦子と一緒にさっきまで俺が投げていた所へ向かっているところだった。

 色々忙しいやつだな。

 

「睦子ちゃん、なんであんなフォームにしたんだろうね?」

 

「…それ、先輩が言います?」

 

「私だからこそでしょ。だって、わざわざ同じフォームなんて、ねぇ?」

 

「……」

 

「ちょっと、何よ?」

 

「何でもないですよ、少し意外だなって思っただけです」

 

 何が!?どこが意外なのよ!?と、異議申し立てする椿先輩は放っておき、少し睦子の様子を見る。

 

 サイドスロー。身体を少し右に傾けつつ横からボールを投げるフォーム。

 その、椿先輩と見た目が全く同じといっても差し支えない形で、睦子はピッチャー練習を続けている。

 

 一度、フォームが同じなんて気味悪がられるかな、と心底不安げな様子で聞かれたことがあった。

 

 先輩はそういうこと気にしなさそうだけど、と一応言っておいたのだが、ついさっきの先輩のセリフは、どういう心理が働いてのものなのか。

 

 気味悪がっているわけではないと思うが、少し掘り下げておこう。

 

「先輩は、同じフォームで投げてる後輩がいるって、どんな気持ちなんです?」

 

「何よいきなり...まあそうね、近くに心強い味方がいる感覚にはなるわね」

 

「なるほど?」

 

「私はそもそも、小学生の頃からピッチャーやってて。

 それで、オーバースローじゃどうしても男子には適わないから、サイドにしたわけなのね。

 …で、今中学も三年、来週には最後の大会が始まるって時期なわけだけど。

 そんな時に睦子ちゃんの練習姿を見てると、ちょっと前の自分を思い出して、頑張ろう!ってなるわ」

 

 …そうだったのか。

 

「…ちょっと!何か反応してくれないと、真面目に話した私が損なんだけど」

 

「その分俺が得してるので、割は取れてますよ」

 

「そういう話じゃないでしょ、全く...」

 

「真面目な話する椿先輩って珍しいのでつい、黙っちゃいました」

 

 そんなことを言うと、つかつかと俺との距離を縮めてくる先輩。

 突然、俺のことを軽くたたき始める。

 

「そういう生意気なことを言うのは...お前だな!今回ばかりは許さん!」

 

 照れ隠ししてる先輩かわいいなあ、とか言おうとしたが、さすがにこれ以上ふざける訳にもいかない。

 

「…なんてね。マキくんにだって私、感謝してるんだから」

 

「!?」

 

 突然耳元に囁かれたその言葉に、一瞬ビクッとする俺。

 しかしそれも束の間、先輩は軽く駆けるように離れていく。

 

「ちょ、先輩?」

 

「ドキッとしたでしょ?」

 

 振り向いてそう言った先輩は、笑っていた。

 

「…かなわないな」

 

 

 なんとなく、空を見上げる。

 

 一か月前くらいにはほぼ毎日曇り空だったのが、今やすっかり晴れ晴れとしている。

 本当に、時の流れと言うのは早いものだ。

 正直、来週から大会があることもまだあまり実感にない。

 

 

 でも。

 だからこそ。

 

 4月からここまで、約3か月間、先輩たちと作ってきた思い出、重ねてきた練習。

 

 その全てを失わないためにも。

 その全てに意味があったと証明するためにも。

 何よりも、最後の大会をいつまでも今のチームで戦い続けるためにも。

 

 とにかく頑張って、精一杯力を発揮して。

 悔いを残さない。先輩たちとの試合の記憶を、強く刻む。

 

 

 そのために、俺は。

 




勝手に、割と時間進めました。
新年最初の更新は、三年生と迎える最後の大会、その一回戦の模様をお届けしたいと思います。

さて。
4月から始まった本小説、まさかここまで多くの方々に読んでいただける作品になるとは。
今年は本当に、大変充実した年になりました。
それもこれも皆様のおかげです。誠に、ありがとうございます。

そしてよろしければ、来年からも。
毎週土曜の17:30を楽しみにしていただければ、と思っています。

私自身もっと精進していかねばと、そんな気持ちを胸に秘め。それでは今回は、このあたりで。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

良いお年を!お過ごし下さいませ!
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