そして、(若干遅くはありますが年明け後初投稿なので)あけましておめでとうございます!
新年も早々に(?)わざわざ本小説を読んで下さること、大変ありがたく嬉しい限りです。
2018年は自分でもなかなかに頑張ることが出来たと思っており、その流れを絶やさないためにも、2019年、しっかりと定期更新の方、手を抜くことなくやっていきたいと思います。
ではでは本編の方、どうぞ宜しくです!
いざ臨む初陣
「さて、初戦の対戦相手についてだが」
大会を今週末に控えた俺たち風中野球部。
今日は、部の練習は休みの日。
大会が近くなっても、週に一度は部活動を休まねばならないという市の定めた制約からは逃れられないわけだが。
それによって出来たこの空き日を使い、野球部はミーティングを決行しているというワケだ。
「トーナメント表をもう既に見てる奴もいると思う」
続けて話すのは綜先輩。
そう言いながら皆に見えるような位置に、一枚の紙を貼りつける。
それはもちろん、ついさっき話に挙がった...そう、トーナメント表だ。
その、”風林中学校”のすぐ隣にある学校の名前。それは――。
「…なんの因縁か、初戦は大尾中と当たることになった」
本当に、なんの因縁か。
大尾中とは、つい最近練習試合をしたばかり。
加えて個人的な話になるけど、俺の元チームメイトも所属している。
正直、身内同士の対戦と言ってもいいくらいである。
「お互い、もう十分なくらい情報はあるし、そういう意味では平等な試合が展開できると思う」
確かに、その通りだ。
「ここまで来たら小細工は無し。全力でぶつかって、全力で初戦、取りに行くぞ!」
「「はい!!」」
* * * *
そして、その日はすぐにやって来る。
先輩たちとの最後の大会も、待ってはくれないのだと強く感じた。
今日の風中のスタメンは、
1番レフト克彰先輩、2番セカンド海洋先輩、3番センター綜先輩
4番キャッチャー翔助先輩、5番ショート孝央先輩、6番ピッチャー健竜先輩
7番サード椿先輩、8番ファースト広夢先輩、9番ライト怜伊先輩
…となっている。
一番オーソドックスな布陣。
俺はベンチスタートだけど、何もやることがないわけでもないし、勝利の為に応援は欠かせない。
一回表から、試合は風中のペースで進む。
ショートへの内野安打から、送りバントの後、レフト前ヒットでワンナウト一、三塁。
続いて打席に入った翔助先輩も、このチャンスで初球から良い当たりを放つ。
しかしこれを止めたのが、相手チームのセカンド。
上への打球にいち早く反応し、ジャンプキャッチ。
一塁上の綜先輩が帰塁したためゲッツーにはならなかったが、危なかった。
彼女こそ、俺の元チームメイトでもあり、セカンドと言う位置で大きく立ちはだかっている壁。
名前は、菊地原美涼。
ただ、これで止まらないのが風中というチーム。
一瞬相手に傾きかけた流れを、右中間への2点タイムリーと言う形で元に戻したのは、5番の孝央先輩。
その後は凡退したが、早速2点の先制点を取って良いスタートだ。
その裏の、風中の守り。
点を取った後の守備は試合展開に繋がるという事もあり、いつも以上に力のこもったプレーも出て、見事三者凡退に抑える。
その後試合は、基本風中ペースで、特に何も問題なく進んでいく。
点数の動きとしては、三回に1点、四回には2点、六回にも1点を追加した。
そして、最終回を迎える。
少し前の時点、もっと言えば前日から、最終回は投手交代で自分に出番が回ってくることになっていた俺は、ベンチから少し離れたブルペンで投球前の最終確認。
調子は、まあ良い方だと思う。
公式戦でピッチャーとして試合に出るのはこれが初めて。
そういう意味で、自分がどれくらいいけるのか、まだハッキリとは分かっていない。
先輩たちからは思い切って投げろ、とだけ言われた。
信用してくれているのか、未熟だから余計なことを考えさせたくないのか。
いずれにせよ、とにかく俺はまだまだこのチームで戦っていたい。
そのために1イニング、全力を出し切って抑える。それだけでいいような気もする。
「…緊張してるのか?」
無言で続く投球練習を見かねたのか、そう尋ねてきたのは大吾。
「そりゃな、初マウンドだし」
そう返すと、意外なものでも見つけたような表情を浮かべてこっちを見てくる。
加えて、予想外の返答だったのか、少し表情が曇る。
「わり、ちょっとデリカシーない質問だったな、忘れてくれ」
「いや」
「…?」
「助かった、何とかなりそうだ」
「そうか?それならいいんだけど...」
「おう」
つまりは、そういう事なのだと思う。
確かに考えてみれば、くよくよ考えるなんて俺らしくもない。
それこそ初マウンドということで、緊張...していたのだろうか。
「(ありがとな大吾。
お前のおかげで、なんか色々取り戻せた...気がする)」
試合の方を確認すると、ツーアウトで一塁にランナーがいるという場面。
「相楽が出てる、代走かな」
「ああ、弥生が代打で出て、塁に出られたら代走に太鳳が入るって言われてたな」
「そうだっけか?」
…それだとなんか可哀そうじゃないですか、相楽さん。
そういう不平等を生まないためなのかは知らないけど、出塁した沢さんは称賛に値するな。
「…ん?」
「どうした牧篠」
「あ、いや、気にしないでくれ」
さらっと言ったけど、相楽はさておき沢さんのこと下の名、しかも呼び捨てなんすね大吾さん。
…あ、相楽盗塁決めた。相変わらず足早えなあ。
「もう投球はいいのか?牧篠」
「んー、点が入ってからでいいだろ」
「ほう」
ツーアウト二塁。
傍目から見れば、一打出れば点が入るだろうなという場面。
ただ、俺は感じた気がした。
絶対タイムリーを打つ、と。
なぜなら、今打席に立っている綜先輩は、そういう人だからだ。
それは、俺がずっと憧れている先輩ならやってくれるという期待感もあるかもしれない。
ただそれよりも、これまでがそうであったという記憶、感覚が頭に残っているから。
投球練習をやめてまで信じてみることか、と誰かは言うかもしれない。
だが、少なくともそれは俺にとっては違った。
綜先輩のこの打席を見届けることにこそ意味がある。
そして、彼の打席から何かを感じ取らねばならないような気がしたのだ。
果たして綜先輩は、本当にタイムリーを打った。
その打球は、左中間に飛んでいく。
懸命にダイヤモンドを駆ける綜先輩を見て、俺はふと、あの日のことを思い返す。
それは、俺が初めてチームの勝利に大きく関わったあの試合。
確かあの日も、今の綜先輩のような感じで――。
三塁ベースにヘッドスライディングする綜先輩。
その姿は、記憶の中の過去の自分と、完全に一致した。
見ていると、先輩はこっちを見てきたようで、
「…偶然じゃないなんて、そんなことは...ないよな?」
俺は、そう呟いた。
* * * *
試合は、7ー0で終わった。
最終回の守り。
マウンドに上がった俺は、無心で投げた。
結果、あまり内容は覚えていないのだけど...。
ただ、最後の打者が菊地原であり。
ファールで粘られた末、8球目でサードゴロに打ち取ってやったという感覚だけが残っている。
とにかく押し切った投球をしたから、何をどこにどのタイミングで投げたかも忘れてしまったくらい。
だからこれは、今日の反省点。
次マウンドに上がる時は、そういうことも考えながら投球したいと思った。
「…ピッチャー、奥が深いな」
帰りの静かなバス内でそっと呟いた俺の声は、誰かの耳に入っただろうか。
分からないけど、願わくは聞こえてないと良いな、となんとなくそう思った。
中体連に入っていくのは若干早い気もしますが、新年からはキリよく何かをスタートさせたかったため、こういう形を取らさせて頂きました。
…という事で今年も、どうぞよろしくお願い致します。
ちなみに、来週は登場人物紹介、第二弾を予定しております。各キャラについて第一弾で触れられなかったのについてだけでなく、既に紹介済みのキャラも更に掘り下げたいと思っています!
ハードル上げすぎない程度に、楽しみにして下されば、と。
(追記:2月2日)
投稿順番を入れ替えたため、現在はこの一つ前に登場人物紹介第二弾が投稿されている形になっています。ご了承ください。
それでは今回は、このあたりで失礼します。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。