俺の名前は。   作:kwhr2069

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今日はちゃんと間に合いました...ホッとしてます。

先週はとんだ醜態を晒してしまい、本当に申し訳ないです。
土曜にしか更新されてるかどうかを確認されていない方は、一話前の、日曜に更新したものも良かったら見てやってください。

…ということで前回のおまけから、今回は再び本編に舞い戻っています。
どうぞよろしく、お願いします!


第三十二話

来たるべき時

 

 今日は、大会の二回戦。

 相手は当山(あたりやま)中学という学校。

 特徴として、その打撃力がとても高いことが知られている。

 中でも用心しないといけないのは、クリーンナップ。

 3番ファーストの水上(みずかみ)、4番サードの伊月(いつき)、5番レフトの猿渡(さるわたり)は、県内でも屈指の強打者。

 ただ投手力はあまり高いわけではなく、エースで6番を打つ東堂(とうどう)の一枚看板。

 基本的にその人が、ほぼ全試合のマウンドに上がる。

 

 そんな相手に対し、我らが風中のスタメンは、いつもとは少し違う形。

 

 先発投手として椿先輩が入り、サードには普段はファーストの広夢先輩が変わって入った。

 そしてそのファーストには、沢さんが就く。

 

 エースのケン先輩は、休んで疲れを取ってもらうという意味でもベンチスタート。

 

 打順的には、いつもケン先輩が入っている6番に、沢さんがそのまま入っているという形だ。

 

 基本的にはセカンドを守っている沢さんだけど、不思議と、緊張しているような素振りもない。

 ちなみに、ファーストは小学生の頃にも、何度かやったことはあるとのことだった。

 

 

 そんなこんなで試合は始まった。

 先攻の風中は初回、ヒットにエラーが絡みツーアウト三塁のチャンスを作ったが、結果無得点。

 

 一方で当山中も、不安定な立ち上がりの椿先輩を攻め立てツーアウト一、二塁のチャンス。

 しかしここを、自慢の制球力で見逃し三振に抑えて切り抜ける。

 

 その後二回の表、ワンナウトから沢さんがヒットで出塁すると、打席には椿先輩。

 1ー1からの3球目、ヒットエンドランのサインで上手く打球を転がして一、三塁となる。

 このチャンスに広夢先輩はショートフライに倒れてしまうが、続く怜伊先輩。

 初球のインコース低めのボールを引っ張り打って、これが2点タイムリーツーベースヒット。

 風中が2点を先制した。

 

 更に三回表。

 先頭打者の海洋先輩がフォアボールを選ぶと、盗塁とバントでワンナウト三塁。

 続く4番の翔助先輩が左中間を破り、5番の孝央先輩も右中間を破って二者連続タイムリー。

 これで試合は4-0となり、かなり優位な状況に。

 

 しかし、そう簡単に事は運ばない。

 三回ウラ、四回ウラは、どちらも相手にチャンスを作られる展開。

 椿先輩の踏ん張りとチームの堅い守備で、なんとか失点は阻止し続ける。

 

 逆に風中は四、五回と、ランナーが一人も出ない。

 

 そして、五回のウラ。

 この回相手の打順は1番からで、不穏な空気が流れ始める。

 

 4点リードはしているこの状況。

 だが打撃力のあるチームに勢いを与えてしまうと最後、流れを持っていかれるかもしれない。

 そういう不安が、風中のメンバーの心を駆り立てる。

 

 

 その時だった。

 

「牧篠、行くぞ」

 

 声の主は...ケン先輩。

 

 その表情は、いつもの落ち着きはらったような、でも奥深くで闘志を燃やしているもの。

 

「でも俺だと、先輩の練習にならないんじゃ...」

 

 先輩がブルペンで準備するつもりなら、俺ではなく大吾に言った方が良いはず。

 そこを俺に言ってきたのはどういうつもりなんだろうかと、疑問を呈する。

 

「二人で一緒に準備するためだよ、ほら、早く早く」

 

 そう言って急かされる。

 とりあえず言われた通りについていくことにする。

 

「あの、二人で一緒に準備って?」

 

「そのままの意味」

 

 俺の質問への返答は、そんな感じのとても淡白なもの。

 自分で考えろ、という事なのか。

 

 

 そこから少し、思考回路を巡らせて。

 先輩とのキャッチボールも、若干本格的に熱が入ってきた頃、少しだけ分かった。

 

 それは要するに、点差だ。

 

 今日は元々、接戦にならない限りはケン先輩の出番はないはずだった。

 椿先輩の完投か、俺がまた途中から代わって入るか、という話になっていた。

 

 しかし、今日の試合。

 現時点で四点差はあるけど、下手をしてしまえば追いつかれかねないのが、相手チームの実力。

 その万が一を考えて、ケン先輩は自分も準備することに決めたのだろうか。

 

 とりあえず俺が考えられるのはこれくらいなので、頭を切り替える。

 

 試合に出るとなったら、どんな場面で、どんな打者と当たるのか。

 そこの心の準備をしておく必要がある。

 

 

「…大丈夫そうだな」

 

 ふと、ケン先輩がそう呟く。

 その目線の先には、守備を終えてベンチに戻ってくる風中のナイン。

 

 見ていると、椿先輩がドヤ顔交じりにピースしている。

 おそらく視線的に、相手は俺ではなくケン先輩みたいだけど。

 

 先輩は、少し笑みを見せながら俺の近くに...と、通り過ぎてベンチへ行く様子。

 

「ちょ、先輩?あの...」

 

「ん、なんだ?」

 

「いや、キャッチボールは...?」

 

「そりゃないぞ。…というか先に言ったの牧篠だろ」

 

 だめだ、先輩の言ってることが分からないぞ。

 

「マウンド上がるはずだし、この後は大吾とやれってことだよ」

 

「ケン先輩はもう、いいんですか?」

 

「…俺は皆を信じてる」

 

 最後はよく分からないセリフを残して去っていった先輩。

 

 その後色々考えていた俺のところに、大吾が走ってやって来た。

 

「…なんかやらかしたか?牧篠」

 

「はい?いや、なんの話だよ」

 

「それなら勘違いか、気にしなくていいや」

 

「気になるじゃんか、教えてくれ」

 

「…まあ簡単に言うと、健竜先輩が少し、不機嫌そうに見えたっていう話」

 

「…なんで?」

 

「だから聞いたんだろ。なんかやらかしたか?...って」

 

「…俺、なんかやっちまったのか?」

 

「いや、俺に聞かれても分かるわけないって。

 …というかほら、投球練習やるんだろ」

 

 なんだか釈然としないまま、大吾にせっつかれてブルペンのマウンドに登る。

 

 そんな心理状態でのピッチング練習。

 まともに出来るなんて、そんなはずもなく。

 

「集中しろ」

 

「…すまん」

 

 こんなやり取りが続く。

 

 しかし俺の頭は、ケン先輩の不機嫌さの原因を探そうとしていた。

 ただ残念なことに、分からないことはいくら考えても分からないのであって。

 

 そんなモヤモヤを抱えたまま、俺の気持ちはよそに試合は進む。

 そして俺がマウンドに上がる瞬間も、刻々と近づいてくるのであった。

 




短めで、更に試合はまだ終わらないという形に...中途半端にはなりましたが、まあ、そこは大目に見て下さると有難いです。

あと来週くらいに、前回投稿しているおまけ②に関しては第三十一話の前に挿入して順番を入れ替えておこうかなと思ってます。
後書きで色々書いてるのでこんがらがりそうという事もあり、その辺の文章も修正しておきます。
…という事で、ささやかな報告でした。

それでは、今回はこのあたりで失礼します。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
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