俺の名前は。   作:kwhr2069

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先週はサボりました…というより自分の用事に追われてました、すみません…

と、いうことで久しぶりの投稿になります。
どうぞ、よろしくお願いします!


第三十三話

それぞれの気持ち

 

 『女の子なのに野球なんて』

 

 ずっと前から、周りに言われ続けてきた言葉。

 言われるたび、返すのは苦笑いの表情。

 

 始めは、どうでもいいと思っていた。気にすることじゃないと。

 実際、野球に打ち込んで男子にも勝つことで、私はそのような言葉を跳ね返してきた。そんな自負が心の底にある。

 

 でも。最近は。

 なんだか、突き刺さる。

 

 少しずつだけど感じ始めて来た、明らかな男女の力の差。成長の差。

 

 それは、どうやっても埋められないものであり、感じずにはいられないもの。

 向き合いたくなかった、考えたくなかった。

 むしろ、考えないようにしていたのかもしれない。

 

 その”感じ”は、一年生の後半頃から何となく抱いていた…けど、認めたくなかったもの。

 

 それが確たる認識になったのは、言うまでもなく、私が進級して後輩が出来てから。

 その一人の少年の愚直な成長に、私は嫉妬した。

 

 同時に、悟ったのだ。

 もう昔のように、軽々しく男子に勝てるなんて、そんな甘くはないのだと。

 

 だから、この中学最後の大会。

 私の持てるすべての力を出して終わってやろう、散ってやろう、と決めた。

 

 そんな決意で迎えた二回戦。

 先発のマウンドを託されたのは…私。

 相手は当山中、打撃の強いチーム。

 

 ピンチは作られたけど、なんとか粘り続けて迎えた五回ウラの守り。

 

 ()()()()が、ベンチを出ていく様子が見えた。

 一人は、同級生で、私の中学での投手生活を半壊させた男子。

 一人は、後輩なのに、私の心を壊す契機になった男子。

 

 このまま、負けていいのか。

 ずるずるといいようにやられて、何もできずに降板していいのか。

 

 …いや、そんなはずがない。

 

 私にだって、プライドがある。

 これまでずっと男子に追い抜かれながらも進んできた、そういうプライドが。

 

 だから、出し切るんだ。

 自分の全てを。今ここで。

 

 五回と、六回の相手の攻撃。

 出し切る力を全て発揮して、無事無失点で切り抜けた。

 

 お疲れさまです、と何も知らない後輩に言われる。

 

 私は、少しの敗北感と試合への満足感を胸に込め――。

 

 

* * * * * *

 

「ありがと、後はよろしくね」

 

 …と。

 そう、椿先輩に言われ送り出された、この試合最終回のマウンド。

 

 その言葉に込められた本当の意味は、分からないけど。

 とにかく今は、先輩が繋げてくれたこの試合を不意にしないために、全力で応えるだけ。それしかない。

 

 相手の打順は、8番から。

 

 自分が投げられるのは、ストレートと、一つの変化球。

 変化球といっても、ケン先輩のカーブだったり、椿先輩のスライダーであったり、そんな出来の良いものでもないんだけど。

 

 俺の一番の憧れ、野球を始めるきっかけになったその人は、実際直球勝負が主だった。

 だから俺も、どちらかと言うとそのスタイルでピッチャーをやっていきたいと思っている。

 

 打席に入った右打者と対峙する。

 その奥で構える翔助先輩とサインを交わし、振りかぶって投げる。

 

 初球、いきなり振り抜かれた打球は俺の頭を越えて外野へ…が、センター定位置へのフライだ。

 綜先輩がしっかりと掴み、これでワンナウト。

 

 次のバッターは左打席に入った。

 先輩のミットはアウトコースに構えた。

 俺は、先輩を信じて腕を振るう。

 

 これまた初球攻撃で、打球は俺の右を抜けてショート方向へ。

 孝央先輩が流れるように処理し、一塁の沢さんへ送球。これで、ツーアウト。

 

 一旦、気持ちを落ち着ける。

 このままあと一人、抑えられれば勝利だ。

 

 でも、どうなるか分からない。何が起こるか分からない。

 相手の打順は1番に還ったし、まだ諦めの表情がない以上何とか食らいついてくるに決まってる。

 

 俺は、覚悟が出来ているか?

 

 

 …言うまでもない。

 この回、この試合の最終回の、このマウンドに立ったときから、その強い気持ちだけはしっかり忘れずに持ってきたつもりだ。

 

 絶対に、抑える。

 

 相手の1番は右バッター。

 翔助先輩とのサインから、初球に投じるのは俺が唯一投げる変化球。

 インコースに構えられたミットに向け、これまで以上に強く腕を振る。

 そのボールは、ホームベース当たりで、打者に近づくように変化し、先輩のミットに収まる。

 ワンストライクだ。

 

 先輩が、ナイスボールだと言いながら返球してくれて、少しホッとする。

 

 さっきの球は、シュートボール。

 自分が投手になると決めたその日、直球勝負中心の俺に合いそうな変化球を探して…見つけた。

 

 もちろん、フォークなどの落ちる球で三振を取るスタイルも憧れはあった。

 でも、何となく違う気がした。

 あの人の真似だけではダメだ、あくまでも自分のスタイルというのを見つけなければ、と思った。

 

 だからこそ見つけた、俺のスタイル。

 

 二球目の要求も、インコースのボール。今度は、ストレートだが。

 それに応えてしっかりと投げきる。

 相手バッターは強い目をしながら、でも少し内への攻めに恐れているように見えた。

 

 三球目は、初球に投げたのと同じボール。

 投げると、相手は打ってきた。ただ、バットに当たっただけのファールボール。

 

 そして四球目、先輩の要求は外角へのストレート。

 さすがに俺でも、意図が分かる配球。

 

 内角攻めから一転、外角球で見逃しを狙う。

 

 俺は、今日一番の力を込め、制球にも配慮して渾身の一球を投げる。

 力なく打たれた打球は、ふらふらと内野に打ち上がった。

 

 飛球を、セカンドの海洋先輩が掴む。

 

 これでゲームセット。俺たちの勝ちだ!

 ホームベースに沿って向かい合い、整列する。

 

 グラウンドに、ありがとうございました、という声が響いた。

 




一週間空いた割に文字数少なくてすみません...期待されていた方には味気ない内容だったかもですね。。

そして、ここで一つ。
急にはなりますが、これまで毎週投稿を基本的に続けてきたところ、今後は不定期にしようと思っています。
未だに原作にすら届いていませんが、ちょっと最近は書く力が弱まってきてまして...(汗)

月に二回は最低でも投稿しようと思っているので、宜しくお願いしたいです!
そして頻度が減る分、文字数であったりクオリティであったりというものを、もっともっと良くしていければと思っています。
ですので良ければ、辛口でもいいので評価や感想等をより貰えると嬉しい限りです。

…という事で、日ごろからご愛読して頂いている皆様には、今後ともご贔屓にして下さればと願うばかりです。

それでは今回はこのあたりで。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
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