俺の名前は。   作:kwhr2069

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大変ご無沙汰しておりました。
どうも。kwhr2069です。
色々語るべきことはあるのですが、長くなるので先に本編をお送りし私個人の話は後書きにて少し詳しく書いていきたいと思います。

久々の投稿のため内容を忘れたという方は、少し戻っておまけ②をざっと読んでいただければ。

それでは、どうぞ!


第三十四話

不穏なムード

 

 二回戦を突破したその日、俺たち風中野球部は試合後家へは帰らず、球場のスタンドにいた。

 次の試合の勝者が対戦相手になる予定であり、少しでも情報を集めておくためだ。

 

 その試合、5ー3で勝利を収めたのは宇戸(うど)中学だった。

 

 初回に死球やエラーが絡み先制点こそ許したものの、3回には同点に追いつき、5回、相手のエース降板を皮切りに4連打を放ち試合を決定づける3得点。

 

 投手陣は先発の向島(むくしま)から新田(にった)志野(しの)と3人の投手リレー。

 1人目の向島は背番号9の右投げで直球主体。3人目の志野は背番号11の右投げでカーブやスライダーなどを投げていた。

 そして背番号1をつけた新田は、左投げで力強い直球と小さく変化するカットボールを武器にインコース主体の強気の投球が目立った。

 中でもエースの新田は特に良いピッチャーに見えたが、俺の先輩たちの打力なら打ち崩せないことはないはずだ。

 

 三回戦は明日行われ、これに勝てば準決勝進出が決まる。

 順当にいけば、準決勝では英邦学院と当たる予定だ。

 風中野球部の皆は、あの日負けた悔しさがあってここまで練習してきたと言っても過言ではない。

 

 そのリベンジのためにも。

 明日は絶対に負けられないのだと、皆決意を新たにし球場を後にするのだった。

 

 

*  *  *  *

 

 翌日。

 試合前に出された両チームのオーダーはこれだ。

 

  風林 打順  宇戸

 7近江 一番 8荒牧

 4坂口 二番 9向島

 8茅ヶ谷三番 6岩見

 2徳地 四番 5神凪

 6市松 五番 1新田

 1濱内 六番 3伊佐山

 5綾部 七番 2原

 3丹波 八番 4森下

 9渡  九番 7早川

 

 相手先発は新田、こちらはケン先輩で、両エースの登板となった。

 

 そうして始まった試合の初回、先攻の風中は3番の綜先輩がチーム初ヒットで出塁。が、得点とはならず。

 一方の宇戸中相手に、ケン先輩は3人でぴしゃりと抑える良い立ち上がりを見せる。

 

 その後、両チームともにランナーは出るが得点は奪えず。

 

 試合が大きく動いたのは3回裏、宇戸中の攻撃。

 先頭の8番森下が四球を選び、次打者は犠打を決める。これで、一死二塁。

 二巡目に入り1番の荒牧。バントの構えなどで揺さぶりながら10球以上粘り、また四球を選ぶ。

 一死一、二塁となったところで一旦内野のタイムが取られた。

 

 

「宇戸中、嫌な野球してくるな」

 

 隣で試合を見つめる大吾に話しかける。

 

「ああ、昨日も思ってたけどピッチャーの嫌がる事とことんやってくるって感じだな」

 

「初回からバントの構え続けられてるし、ほんとに徹底してる」

 

「投球練習、やっておくか?」

 

 大吾に問われる。

 

「…いや、今はいい」

 

 そう答える。

 

『試合状況を見て、必要だと思ったらブルペンで肩を作っておいてくれ』

 今朝、綜先輩に言われたことだ。

 

 でも、今はまだその時ではないと思う。

 

 それはケン先輩の目を見れば分かる。

 こんな戦術に屈さない、負けてたまるかという気持ちが俺にも伝わってくる、強い決意の目。

 

 だから俺は、一人の後輩として、先輩を信頼し応援する。

 それが今やるべきことだろう。

 

 

 タイムの輪がとけ、試合は再開。

 打席の2番向島はバントの構え。

 ケン先輩は初球を投じ、三塁側へバントに備えてチャージ。

 対する打者はバットを引き、バスターの要領で打ち返した。

 ケン先輩の近くに打球が飛ぶ。

 素早い反応をした先輩が差し出したグラブに、パシッとボールが収まった音がしてピッチャーライナー。

 打者はアウトで走者も動けず、最高の形でツーアウト。

 

 次の打者は3番岩見。

 その初球、内角の直球に上手く反応した打球がレフトの前へ抜ける。

 

 二死満塁で、4番の神凪を迎えた。

 一打席目にはチーム初ヒットを打っており、今日一のピンチだ。

 

 初球、緩いカーブから入りストライクを取ると、その後三球直球を続けファール、ボール、ファールでカウントは2ー1。

 追い込んでからバッテリーが選択したのは、決め球のドロップカーブ…だったのだと思う。

 

 ホームベース付近でワンバンしたそのボールは、キャッチャーの構えた横をすり抜けるワイルドピッチ。

 満塁で埋まったランナーは、それぞれ進塁。

 その後、スローカーブでレフトフライに打ち取ったが、痛い1点がスコアボードに刻まれた。

 

 

「すまん!ボールが微妙に引っかかった、俺のせいだ!」

 

 ベンチに帰るや否や、手を合わせるケン先輩。

 

「いや、止められなかったのにも責任はある。ケンだけのせいじゃない」

 

「でも…」

 

「罪の被り合いはそこまで」

 

 庇おうとする翔介先輩に対してケン先輩が何か言いかけたところを制したのは綜先輩。

 

「それより、取られた一点をどう返すかが問題だろ?違うか?」

 

「…違わない」

 

 そう答えたケン先輩に対し満足そうに頷く綜先輩は、輪の中心となって相手投手の攻略を練る。

 

 そして始まった4回表の攻撃だったが、先頭の綜先輩が死球を受け、二死三塁から6番のケン先輩も四球を選ぶ。

 しかし作ったチャンスは生かせず、無得点に終わった。

 

 対する宇戸中は、2人にヒットが出て二死一、三塁とするも、9番が倒れて無得点。

 だが、試合の流れはなんだか宇戸中が握っているような感じに思えた。

 

 5回表。

 ツーアウトから1番克彰先輩が死球を受け出塁、即座に盗塁を決めたが2番の海洋先輩は空振り三振。

 これで、5回終わって5残塁。多すぎるわけではないが、なんだかもやもやした雰囲気が漂う。

 

「なあ」

 

 隣にいた大吾にまたも話しかける。

 

「…”多い”よな」

 

 俺の言いたいことを分かっているという風に頷く大吾の目は、少し怒っているように見えた。

 

 この試合、こちらが出したランナーの数は5つで、その内訳はヒット2本、死球3つだ。

 数で見ればそこまで目立たないが、昨日の試合も見ていた俺たちには何か引っかかる点があった。

 

 それが、相手チームの死球の多さだ。

 故意なのか違うのかは分からないが、そんな違和感を抱かせられる投球内容に思える。

 

 もし相手の戦術が『敵を苦しめる』ことであれば、バントの構えを取ってくるスタイルとも辻褄が合うし、そういう風に捉えてしまうような状況になってきていた。

 

 

 マウンドに目を向けると、疲れ気味に汗をぬぐうケン先輩が目に入る。

 初回から繰り返されてきた戦術を思えば、そろそろ体力の限界が来ていてもおかしくはない。

 

 だが、それを繰り返されてもなお、むしろ繰り返されるほど力強くなるピッチングに、小学生の時にも抱いた憧れの気持ちがよみがえるような感じがした。

 打席に入っていた相手の3番打者を直球で押し、最後はドロップカーブで三振に抑える。

 この回三者凡退の投球。

 

「ケン先輩、かっこよすぎだろ…」

 

 思わず漏れる声。そして、

 

「大吾、ブルペン行くぞ」

 

 一つの確信とともに、俺はベンチを出て投球練習へと向かった。

 

 

* * * * * *

 

「剣竜、大丈夫か?」

 

 ベンチで汗を拭っていると、ヘルメットを被った綜が真剣な目つきで問うてきた。

 

「ああ、問題ないよ。それに…」

 

 そう返しながら目を向けた先では、一人の後輩が投球練習をしている。

 

「あれだけ信用してくれてる後輩がいるんだ。弱気な姿は見せられないだろ?」

 

「まあな」

 

「ただ今日の試合、あいつにマウンドを譲るつもりはない。

 …というか、一人で投げ抜くつもりで来てるからな」

 

「それはやっぱり…相手の戦術が?」

 

「もちろんそうだが、それ以上に戦う意志が強すぎるからだな。

 あれでマウンドに立ったら、相手にデッドボール当て始めてもおかしくない」

 

「そういう陰湿なやつか?」

 

「陰湿さじゃなく、強気すぎるからだと言え」

 

「そういうことにしておくよ」

 

「そもそもあいつは、まだ登板経験が浅い。そういうピッチャーを上げるくらいなら、疲れてでも俺が投げる方がマシだとも思う」

 

「それについては一理あるかも」

 

「まあなんにせよ、だ」

 

「…?」

 

「一本頼むぞ、キャプテン」

 

「ああ、言われるまでもない。

 お前の言う通り、これ以上後輩に情けないサマ、見せ続けるわけにもいかないしな」

 

 ブルペンに一度目を向け、打席へ向かって歩き出す親友。

 それはこれまで幾度も見てきた姿で、これ以上ないほどに信頼できる背中だった。

 




本編、お疲れさまでした。
大まかなプロット等は残っていたものの、本当に久々すぎて私自身、これまでの話を振り返りながら書いておりました…笑

さて。
この作品を好きでいてくれる方、毎話読んでくださる方々、お久しぶりです。
まずは、いきなり蒸発したように消えてしまい申し訳ありませんでした。諸事情により一時期ログインできなくなるなど色々あったのですが、一年以上も放置してしまったのは私の責任です。重ねてお詫び致します。
また、休載期の話に関しては本日18時に投稿される活動報告にて、掘り下げた話をしていますのでよければそちらをご確認ください。次話以降の後書きで小出ししていく予定もあるので、面倒な方はそれまで待っていて下さればと思います。

ここからは少しだけ再開の理由を語らせていただきます。
今回、私が久々に筆を動かしたのは、他ならぬアニメ2期の放送がきっかけでした。
放送決定についてはもちろん前から知っていたのですが、実際に動いている大吾たちをアニメで見ると心の中で何か燃えてくるものがあり、加えて昨今のコロナウイルスの事情により自宅で暇な時間を過ごしていたことから、書けると判断して連載再開を決めました。
本日から、少なくともアニメ放送期間中までは、ひとまず以前のように17時30分の毎週投稿を続けていく所存です。都合で追いつかなかったらすみません。

休載中、本編をご覧になった方や感想を書いていただいた方。
私が戻ってこられたのはそのような力もあってこそです。感謝の念に堪えません。

それでは長くなってしまいましたが、今回はこのあたりで失礼したいと思います。
ここまで読んでくださり、誠にありがとうございました。
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