俺の名前は。   作:kwhr2069

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どうも。
前も話題にした気がしますが、この時間帯って“こんにちは”と“こんばんは”だとどっちの方が適してるんですかね…?
『どうも。』だけなのは味気ないので、何か付け加えたいんですが自分の中で決めるのが難しくて一生悩んでしまっています。

…とまあ、雑談もこんなところにしておいて、では本編へどうぞ。


第三十六話

白熱の準決勝

 

 試合が始まる前に伝えられた普段と違うオーダーの中には、俺の名前があった。

 

 そして、エースのケン先輩が事情により今日は投げられないことも伝えられた。

 現に、その先輩は今ここにいなかった。

 綜先輩によると朝から病院へ行って診てもらっているらしい。

 詳しいことは伏せられたが、肩の故障とだけ教えられた。

 

 昨日の試合が原因なのか、これまでの投球の蓄積の結果なのかは分からない。

 よりによってどうしてケン先輩が、という気持ちになる。

 きっと今日の英邦学院との再戦を一番望んでいたのは先輩だし、リベンジを果たしたいと思っていたはずなのに。

 

 ケン先輩のことを思い気持ちの沈む中、綜先輩がその時声を上げた。

「今の俺たちにできることは、勝つことだ」

 

 皆の顔が上がる。

 

「この準決勝、剣竜がマウンドに上がれないのは本人にとっても悔しいこと。

 だから、俺たちは今日勝って決勝に進む。そしてそこで、剣竜の気持ちをぶつけてもらうんだ」

 

 そうだよな、と誰かが言った。

 その声に、皆が決意を固めたのが分かった。

 

 こうして一つになった俺たち風中は、英邦学院との試合に臨む。

 

 

*  *  *  *

 

 試合開始前、センターのバックスクリーンに両チームのスタメンが表示される。

 

  風林 打順 英邦

 7近江 一番 4本田

 4坂口 二番 7宇佐

 8茅ヶ谷三番 5酒井

 2徳地 四番 2堀

 6市松 五番 9豊原

 3沢  六番 1地頭

 5牧篠 七番 8水戸

 1綾部 八番 6川相

 9渡  九番 3菅野

 

 風林中が先攻で行われるこの試合、両チームの先発投手はエースではなかった。

 

 風林の先発は背番号5をつけた綾部椿。右のサイドスローで変化球主体の投球が特徴。

 県下最強と名高い英邦学院にどこまで的を絞らせないピッチングを見せられるかが鍵となる。

 

 一方の英邦学院、先発は次期エースと言われている背番号10の2年生地頭。力強い直球が武器の右投げ投手。

 エースの豊原はライトに就いており、今大会この二人を含む四人の投手を使って未だ無失点。継投をする際の見極めが重要になるだろう。

 

 初回、両チームともに三者凡退の立ち上がりでゆったりと始まった試合だったが、2回の裏先頭の堀がヒットで出塁すると、少し制球を乱した投手から豊原は四球を選び無死一、二塁とする。

 しかし、このピンチをサードライナー、空振り三振、ショートゴロに抑えて切り抜ける。

 

 だが3回裏、ワンナウトから1番本田が内野安打で出塁すると、犠打で進塁の後、センター前ヒットで英邦学院が1点を先制する。

 

 4回表、これまでランナーを出せていない風林中の攻撃は1番の近江から。

 4球目の外角直球に当てただけの打球は三遊間深い所へ。ショートが追いつくも投げることなく一塁はセーフとなり内野安打。続く坂口は初球で送りバントを決め、一死二塁。

 ここで茅ヶ谷がレフト前ヒットを放ちチャンスを拡大すると、徳地が左中間へ犠牲フライとなる飛球を打ち、同点とした。

 

 同点に追いついたここでしっかり抑えたい風林中の綾部。

 しかし4回裏、先頭の豊原が右中間を破るツーベースヒット。

 続く6番のセカンドゴロの間に進塁し、7番水戸は内野フライに倒れるも8番の川相が8球粘ってしぶとくライト前ヒット。これで追加点を挙げ、再度一点差に戻した。

 

 

*  *  *  *

 

「牧篠、次の回から行けるか」

 

 5回表の始まろうとする頃、ネクストバッターズサークルにいる牧篠に声をかける。

 

 エースの剣竜は投げられない状態で、相手は強豪の英邦学院。

 初回から、攻撃中になるとブルペンへ行って投げられる準備をしている様子だった。

 

 そして椿は2イニング続けての失点。4回を終わって1点ビハインド。

 

「…分かりました。準備はできてます」

 

 答える声が震えている。

 

「さすがに、心の準備はできてないみたいだな」

 

 見透かされた、という表情をした牧篠に向かって、俺は切り札を繰り出す。

 

「…一つだけ、剣竜から言付けを預かってる。聞くか?」

 

「ケン先輩から…!?」

 

 首を縦に振る牧篠。顔が聞かせてくれと言っている。

 

「『自信を持って投げろ。俺が保証する』だそうだ」

 

 一瞬、牧篠の時が止まった感じがしたが、その直後俺に向けてきた顔は、どこか既視感を覚えるものだった。

 

「…とりあえず、この回は2人目の打者として自分を援護するつもりで立ってこい」

 

「分かりました」

 

 その返事を聞き、ベンチへ戻る。

 途中で俺の後ろに立っていた翔介と目が合う。

 

「大丈夫か、あいつ?あそこまで言ったら気負いそうだが」

 

「…あいつの目、見たか?」

 

「目?まさか何か変なとこでもあったのか?」

 

「いや、そうじゃない。ただ、同じだったんだよ」

 

 そう。

 牧篠は、まさしく昨日の剣竜と同じ目をしていた。

 

 自分がチームを背負って投げ抜くという決意の目。

 それは、決して気負いなどではない。”覚悟”の目だ。

 

 

*  *  *  *

 

 ついさっき、次の回からの登板を告げられた。

 左胸に手を当てると、心臓がバクバク鳴っているのが分かる。

 

 一旦心を落ち着けるため、すーっと大きく深呼吸してみるとなんだか落ち着けた気がする。

 

 今は、5回の表。風中の攻撃。

 打席に立つのは6番の沢さんで、この後俺に回ってくる。

 

 相手投手の地頭は、速いストレートを投げてくるが一打席目でボールはだいたい見た。

 内角球に詰まらされて内野ゴロに終わったが、次は打ち返せるはず。

 

 そして…それはおそらく、沢さんにも言えるはずなのだ。

 

 

 快音が響いて、打球がセンター前へ飛ぶ。

 先頭の沢さんが出塁。チャンスをつくるときが来た。

 

 ネクストバッターズサークルからベンチを振り返ると、皆が声をあげている。

 

 1点ビハインドの状況。

 でも、負けない。諦めない。絶対に勝つ。

 そういう思いを胸に、俺は打席へと向かう。

 

「(さて、サインは、と…了解です)」

 

 ベンチから出されるサインに対してヘルメットのつばを触って返す。

 

 相手の内野の位置は、二遊間が二塁寄りのゲッツー狙い、サードはやや前でバント警戒。

 俺がバントの構えを見せると、サードはさらに前へ。

 

 初球。内角高めに来てバットを引く。判定はボール。

 サードのピッチャーがチャージをかけてきたが、戻る。

 俺はベンチのサインを確認した後、再度バントの構えを見せ、投球を待つ。

 

 2球目、の前にピッチャーが一塁へけん制。何か仕掛けを警戒しているのか。

 再度ベンチにサインを求め、確認して投手と向き直る。

 

 今度は、バントの構え無しで。

 これに対してサードは少し守備位置を下げた。

 

 そして投じられた2球目。

 投球と同時にバントの構えを見せ始め、即座にバットを引きながらサードの様子をうかがう。

 ボールは外に曲がってカウントツーボール。サードはチャージを掛けていた。

 

 揺さぶりに対し少し硬い表情をしているのはマウンドの地頭。

 キャッチャーがいさめる言葉を聴きながら、俺はベンチを向きサインを確認。

 今度はバントの構えを見せて投球を待つ。サードは前寄りの位置だ。

 

 3球目。

 バットを引かない俺に対して投球と同時にチャージを掛けるサード。

 ボールを極限まで見極めながら、チラッと視線を向けて狙いを定める。

 内角、やや低めに来たボールをバントの体勢で迎えながら、瞬間的に、押す。

 

 勢いを持って転がっていったそれは、チャージするサードの反応を一瞬遅らせた。

 

 グラブを出すが収まらずに弾かれ、ボールはダイヤモンドの外へ転がる。

 

 慌てて拾い上げ一塁へ送球されるが、少し逸れてファーストが離塁。

 その間にベースを駆け抜け、セーフ。

 

 俺は一塁ベースの上で、拳を突き上げた。

 




本編お疲れさまでした。
山場の準決勝が遂に始まりましたね。再開早々に山場を迎え、書き手としても若干緊張していたりします。

さて。
今週の後書きでは、先々週に投稿した活動報告②の内容『原作ネタバレを含むこの作品との乖離点と今後の本小説の展開』について話す予定だったのですが、アニメ第四話(今日17:35~放送回)でその話を取り上げそうな雰囲気が次回予告などから漂っていたため、ネタバレにも配慮してこのお話は来週に持ち越そうと思います。
なお、アニメがこの内容を取り上げなかったとしても来週の後書きでは上記の内容について語るつもりです。

というわけで、今回は長くならないうちにこのあたりで失礼します。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
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