俺の名前は。   作:kwhr2069

40 / 47
どうもこんばんは。
先週触れた挨拶に関して、あの後少し考えてみてこの前書き文を書いている時間帯に沿って言えばいいのではと思いました。ということでこれは金曜の夜に書いていますが、今後はこのスタイルでいってみます。

…とまあ、前置きはこんなところで、それでは本編どうぞ。


第三十七話

高鳴る鼓動

 

 5回表、沢さんと俺で作った無死一、二塁のチャンス。

 

 打席には、8番の椿先輩。

 その初球。自分とは対照的に勢いを殺した絶妙なバントを決め、一死二、三塁となる。

 

 すると、少し慌ただしくなる相手のベンチ。

 直後、監督が出てきて主審へ選手の交代を告げた。

 

 ベンチからグラブを手にした背番号9の選手がライトへ向かい、ライトにいた背番号1のエース豊原は、マウンドへ小走りに向かってくる。

 

 

「…来たわね」

 

 三塁コーチャーの睦子のところに集まった沢さんと俺とで、投球練習を見つめる。

 

「ああ、ここからが本番って感じだ」

 

 春の大会で見た時よりがっちりとした身体、投げられるボールも力強く、変化球も鋭い。県で一番と言われる投手だ。

 

 俺はふと、次の回からマウンドに上がることを思い出し、この人と投げ合うことになるのかと考える。

 

「どしたの美智琉、何かあった?」

 

 黙り込んだ俺を見かねてか、声をかけてくる沢さん。

 別に隠すことでもないと思い、次の回からマウンドに上がることや少し緊張していることを打ち明ける。

 

 緊張していると聞いて少し驚いた表情の沢さんと、自分のことのように緊張して口を閉ざしている睦子を見て、幾分か気がほぐれる。

 

「まあ、全力を尽くすだけなのはいつも通りだし、やれることをやるだけだから」

 

「なにカッコつけてるの美智琉、ちょっと寒いわよ」

 

「なんで!?というか、美智琉禁止」

 

「試合中くらい許しなさい、それとほら、ベースに戻らないと」

 

 そう言われてマウンドを見てみると、あと1球で試合再開となるようだ。

 急いで二塁ベースへ戻る。足取りもどこか軽くなった気がする。

 

「(沢さんには感謝しないとな。…美智琉呼びも、今は気にしないようにしよう)」

 

 少し気を紛らわしていたが、試合再開。

 9番の怜伊先輩の打順で、俺はピッチャー越しに打席を見つめる。

 

 初球はウエスト気味に外した球でボール。

 ランナー状況からスクイズを警戒しているのかもしれない。

 

 こちらのベンチのサインも確認しながらバッテリーでサイン交換し、2球目。

 インローに決まってストライク。

 

 そこから、外に外れたスライダーを挟んで直球が2つ続き、カウント2-2。

 6球目、投じられたのはスライダー。

 ふらふらと上がった打球はファーストがファールゾーンで掴んでツーアウト。

 ランナーも動けない。

 

「(怜伊先輩、バント苦手だしスクイズ難しいのは分かってたけど、抑えられちゃったか…。)」

 

 二死二、三塁となって打席に入るのは1番克彰先輩。

 初球、内のスライダーが外れてボール。

 2、3球目の直球は高めと低めに外れ、4球目こそアウトローに決まったが、5球目低めのスライダーを見極めて四球を選んだ。

 

 エースを相手にチャンスが広がって二死満塁。

 2番の海洋先輩が打席に立つ。

 

「(まだ代わりっぱなで制球もそこまでじゃない…叩くならここですよ!)」

 

 しかし。

 

 アウトローのストレート、見逃し。

 アウトローのスライダー、空振り。

 インハイのストレート、空振り。

 三球三振。三者残塁という結果で、相手はピンチを脱出。

 

 思わず身震いしてしまいたくなるような、これがエースかという圧巻の投球だった。

 

 

 でも、ここからは。

 俺も同じマウンドに立つ者として、これ以上の失点は許されず、相手の前に立ちはだかる壁として投げ抜かなければならない。

 

 エースのケン先輩が欠けた今、俺のやるべきことは明確だ。

 

 ベンチに戻り、ヘルメットを脱ぐ。

 大吾から渡されたスポーツドリンクを飲み、グラブをはめて帽子をかぶり直す。

 

「うし」

 

 少し自分に気合いを入れ、ベンチを飛び出して向かうのはグラウンドの中にある小高いマウンド。

 一、二回戦でも立ったものの、今日は特別な重みがある。

 

 そんなことを思いながら投球練習をし、キャッチャーの翔介先輩と投球の打ち合わせを済ませる。

 

 この回まず相対するのは、相手の1番本田。

 

『ボールは良い感じに来てる。残り3イニングでちょうど一巡。

 点は俺らが取ってやるから、お前は全てをぶつけて投げてこい』

 

 ついさっき言われたばかりの言葉が脳に響く。

 

「(…先輩、ありがとうございます)」

 

 初球を投じる。インコース低めに決まってストライク。

 

「(…皆、俺を信じてマウンドに送り出してくれた)」

 

 二球目は外。高めに外してボール。

 

「(その期待に応えたい。

 …いや違う、()()()んだ!)」

 

 三球目。インコース胸元に食い込むシュート。

 詰まった当たりは、この回からサードに就いた椿先輩のところへ。

 軽快にさばいてワンナウト。

 

 グラウンドの至る所から、ベンチから、マウンドに届く声。

 

 それらを受けとめ、俺は次なる打者と対峙する。

 

 

* * * * * *

 

 5回の裏。

 英邦学院はワンナウトから死球でランナーを出したものの、3番打者がセカンドゴロゲッツーに倒れてスリーアウト。

 

 一方の風林中、6回表の攻撃。

 先頭の茅ヶ谷が痛烈なあたりを放つもファースト正面のライナーでアウト。

 4番の徳地がショートゴロに倒れた後、市松がライト前ヒットを放つ。

 しかし続く沢は空振り三振に仕留められ無得点。

 

 対する英邦学院の6回裏。

 先頭の4番堀がセンター前ヒットで出塁。

 だが後続がサードフライ、空振り三振、ショートゴロでチャンスは広がらず無得点。

 

 スコアは動かぬまま、試合は7回表、最終回の風林中の攻撃を迎えた。

 

 この回先頭は7番の牧篠。

 リリーフで登板してここまで2イニングをおさえる投球。

 自分を楽にするためにも出塁したいところだったが、インコースの直球に押されてセカンドフライ。

 続く8番の綾部はサードゴロに倒れてツーアウト。

 

 後がない風林中、ここで打席に入るのは9番渡。

 その初球、インコース高めややボール気味の球を完璧に捉える。

 打球は、伸びて伸びて伸びていき、レフトポールの外側へ。ファールボール。

 2球目は外のボール球で、ワンストライクワンボール。

 3球目、ストライクからボールになるスライダーを振らされ、これで追い込まれる。

 両チームが固唾を飲んで見守る4球目。

 ピッチャーが投げ、バッターはバットを振りぬく。

 

 グラウンドに、快音が響いた。

 




本編お疲れさまでした。準決勝はもう少し続きます。ぜひお楽しみください。

またここからは、先週のアニメ第四話でも話題になった本作品と原作との乖離点について少しお話しします。アニメを見ておらずネタバレNGという方はここでブラウザバック推奨となります。

さて。
まず私がこの事実を知ったのは単行本17巻を読んだ時で、率直に申し上げて最悪でした。2年生は完全にいないものとしてこの小説を進めてきたため、ここでそんな架空の部員の話をされても困る、と思いました。続きを書く気が起きず、休載していた原因でもあると思います。ただ、ここまで書いてしまったからには引き返せないので、なぜ監督がいないかに関しては後ほど自分で勝手に決めようと思っています。とりあえず今は何らかの原因で入院していることにしています(自分の中の仮設定)すみません。
加えてアニメにも触れたいのですが、第四話、素晴らしい出来だったと思います。そもそも原作の流れから外れて大会前にこの設定を回収し、なおかつ原作より掘り下げる脚本。吾郎たちの聖秀の頃の話も引き合いに出しながら上手に展開されていて、感激しながら見ました。メジャーセカンドのアニメスタッフってメジャー愛があるなあと常々思っていましたが、改めてそれを痛感する回になりました。コロナの影響で今週から一旦再放送となってしまいましたが、いつの日かまた返ってくる日を楽しみにしておこうと思います。

というわけで、今回は少し語りすぎた気もしますが、そろそろ失礼します。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。