俺の名前は。   作:kwhr2069

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こんにちは。
準決勝も最終局面を迎え、7回表1点ビハインドのツーアウトというところ。
果たしてどうなるのか?

ということで、お楽しみください。どうぞ!


第三十八話

つながる希望

 

 最終回の攻撃。

 1点ビハインドの風中の打順は俺から。

 絶対に出塁しないといけない場面。しかし、セカンドフライ。

 続く8番の椿先輩はショートゴロ。これでツーアウトになり、後がなくなった。

 

 その後、怜伊先輩の初球攻撃がファールとなり、追い込まれて4球目。

 インローのボールを引っ張った打球が、レフト線へ飛んだ。

 

 繋がった。

 先輩は二塁へ到達し、二死二塁で打席には克彰先輩。

 3球目、低めのスライダーを叩きつけた打球が内野を高く跳ねて、セカンドの前。

 前進して取ろうとするが、バウンドが上手く合わず、弾く。

 その間に一塁を駆け抜けた先輩が出塁し、これで二死一、三塁。

 

 ここにきての、エラー。

 ここにきての、ビッグチャンス。

 

 打席には、海洋先輩が入った。

 

 

* * * * * *

 

 ベンチは振り返らない。

 背中にいろんな声が届いて、握るバットに力が入る。

 

 打席に立って、視線の先にはマウンドに立つ相手エースの姿。

 5回表の攻撃で、二死満塁から空振り三振を奪われた相手。

 

 今度こそ、という思いは強い。

 

 初球は、この回から多投しだしたカーブ。

 ゆったりとした軌道でキャッチャーミットに収まるがアウトコースのさらに外でボール。

 

「(カーブの後は緩急差を使ってストレートを投げてた。ここも同じパターンで来る?)」

 

 果たして、その2球目は予想通りストレート。

 バットを出したものの、振り遅れてファールとなった。

 

「(くそ、悩むくらいなら思い切って狙うべきだった…もう後がないんだ。打つしかないんだよ)」

 

 自分に言い聞かせる。

 

 3球目もストレート。

 2球目のアウトローに対して今度はインコース胸元近く。

 これもバットを出すが、ボールは後ろに飛んでファール。

 

 カウント、ツーストライクワンボール。追い込まれた。

 4球目のスライダーこそ見極めてボールとなったが、依然として状況は変わらない。

 

「(変化球続ける?ストレートで押してくる?…だめだ、分からない。

 しょせん自分は守備が良いだけ。打撃もそれこそ、これまでだってまともに貢献できたことはないんだ…)」

 

 思考も追い込まれていく。

 

「(綜なら、綜が打席に立っていれば、きっと逆転打を打ってくれたはずなのに)」

 

 ふと同学年の頼れるキャプテンのことを想う。

 

『今の俺たちにできるのは、勝つことだ』

 

 ここで脳裏をよぎったのは、試合前の綜の決意表明。

 

「(そうだ、剣竜…)」

 

 綜に並んでもう一人、頼れるエースに考えが及ぶ。

 

 ここまで積み重ねてきた努力、練習の成果。

 そして何より、このチームのメンバーでもっと戦っていたいという気持ち。

 

「(自分はまだ、あの二人にもチームのみんなにも、何もあげられていない!)」

 

 5球目が投じられる。

 脳内であらゆる思考が混ざりあってぐちゃぐちゃになって。

 

 とにかく、ボールをよく見てバットを振った。

 

 その次の瞬間に見たのは、ジャンプするセカンドの頭を越えた打球が、外野へ転がっていくところ。

 

 ライト前ヒット。試合を振り出しに戻す同点タイムリー。

 俊足の克彰が三塁まで走り、またも二死一、三塁。

 

 打席に入る綜を、一塁ベース上から見つめる。

 

「(頼む、打ってくれ…!)」

 

 2球目外角高めのストレートを完璧に捉えた打球が、センターの頭上を襲う。

 

「(綜…お前はやっぱりすごいやつだよ)」

 

 

 しかし、そう甘くはなかった。

 猛然と後進したセンターが、大ジャンプ。

 伸ばしたグラブにしっかりと白球が掴まれていた。

 

 2ー2、同点。試合はまだまだ続きそうだ。

 

* * * * * *

 

 7回裏。

 なんとか同点に追いつけた風中。

 ここはしっかりと抑え、次に繋げていきたい。

 

 相手、英邦学院の打順は8番から。 

 3球目のシュートを詰まらせ、ピッチャーゴロに打ち取る。

 

 続く9番打者は外角ストレートを打たれたが、完全に詰まったファーストファールフライでツーアウト。

 

 打席には4巡目、1番の本田が入る。

 5回裏から登板して、これでちょうど1巡。

 これまでは通用していた球も打たれるかもしれないと警戒しながら投げる。

 

 結果、本田にはストレートを打ち返され、センター前ヒット。

 これに続いて2番宇佐には8球粘られて四球を与え、3番酒井にはレフト前ヒット。

 外野は前進していてサヨナラタイムリーとはならなかったが、二死満塁となった。

 

 ここで打席に4番の堀、という場面で一旦内野が集まってタイムを取る。

 

「牧篠、疲れは」

 

「それは大丈夫です」

 

「なら良い。言っておくが、ボールは来てる。

 さっきの回にヒット打たれてるが、まだシュートは見てないしそれから入るぞ」

 

「了解です」

 

 主にキャッチャー翔介先輩との会話。

 まだ3イニング目、疲れたなんて言ってられない。

 

「大丈夫だ。ここを抑えて次、点を取る。このピンチ、乗り切るぞ」

「そうだな。打ち返されても俺らが止めてやる。思い切り投げろ」

 

 先輩からの言葉が嬉しい。

 

「はい。ピンチは作ってしまいましたが、ここで相手の4番を抑えてこそ、ですよね」

 

 皆が笑って応え、輪がとける。

 

 そうだ。

 まだ終わらせない。終わらせたくない。

 

 俺が投げて、抑えるんだ。

 

 再開後の初球、予定通りインコースのシュートから。

 振ってきてバットに当たるが、打球はバッターの後ろに飛んでファール。

 

 2球目、アウトローを狙ったストレートが少し外れてボール。

 3球目、近いところからゾーンに入るシュートを投げるがこれもボール。

 

 ワンストライクツーボール。

 今は四球でも負けの状況。逃げてばっかりじゃいられない。

 

 4球目、インコースにストレート。やや高かったが見逃されストライク。

 5球目、今度は真ん中低めのストレート。一塁線から切れてファールボール。

 

 そして、6球目。

 勝負球の胸元をえぐるシュート。

 振り切ったバットの根元に当たった打球は、二遊間方向へ飛ぶ。

 

 後ろを向いたと同時にパシッとボールが収まる音がした。

 ショートの孝央先輩がノーバウンドで捕球。

 

 スリーアウトチェンジ。

 

 

 これで準決勝の戦いは、7回で決着つかず、延長にもつれることとなった。

 




本編読了お疲れさまでした。
決着はつかず、まだ続くことになりましたね。いつ終わるのかという緊張感を味わいながら読んでくれればと思います。

それでは、最近後書きが長くなりがちだったので今回は早めにこのあたりで失礼します。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
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