俺の名前は。   作:kwhr2069

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こんばんは。前日夜からお届けする前書きです。

皆さんいかがお過ごしでしょうか?
私は本格的に大学でのオンライン授業が始まり、若干てんやわんやしながら生活しています。慣れるまでには時間がかかりそう…。

さて、今日の本編は、前回の続きで延長戦に突入したところから。
それでは、どうぞ!


第三十九話

近づくクライマックス

 

「牧篠、次の回から行けるか」

 

 5回表の始まろうとする頃、ネクストバッターズサークルにいた俺は綜先輩に声をかけられた。

 

 エースのケン先輩は投げられない状態で、相手は強豪の英邦学院。

 椿先輩を信用していないということではないが、初回から攻撃中になるとブルペンへ行き、いつでも投げられる準備をしてきた。

 

 そして先輩は2イニング続けての失点。4回を終わって1点ビハインド。

 

「…分かりました。準備はできてます」

 

 少し、声が震えている。

 

「さすがに、心の準備はできてないみたいだな」

 

 見透かされていた。

 

「…一つだけ、剣竜から言付けを預かってる。聞くか?」

 

「ケン先輩から…!?」

 

 聞きたいという意志を込め、首を縦に振る。

 

「『自信を持って投げろ。俺が保証する』だそうだ」

 

 

*  *  *  *

 

 そして、今。

 俺は、マウンドに立っていた。

 

 7回を終わって2ー2で、試合は延長戦に突入。

 8回表の風中の攻撃では、翔介先輩がレフト線へのツーベースヒットで出塁。

 しかし孝央先輩がバントを失敗し一死一塁となり、沢さんがレフトフライ、俺が空振り三振。

 

 8回裏、対する英邦学院の打順は5番の豊原から。

 さっきの俺の打席、カーブ・スライダー・チェンジアップの持ち球をすべて使われ三振に抑えられた。

 お前にはまだ負けない、と訴えられたような気持ちを抱いた。

 

 だが、俺にも意地はある。

 こうも抑えられてばかりではいけない。だから、自分が抑えることでやり返す。

 

 そんな気持ちを抱えた初球。

 インコースのシュートは見逃され、ボール。

 

 2球目は外いっぱいにストレートが決まってストライク。

 3球目もほぼ同じコース。やや高くバットを出されたがバックネットに飛んで行ってファール。

 

 これでツーストライクワンボール。追い込んだ。

 4球目は外にストレートを見せ、勝負の5球目はインコースのストレート。

 

 弾き返された打球は三塁線を切れてファール。

 

 この試合に勝ちたいという気持ちは、相手も同じ。

 そう簡単にはいかない。

 

 6球目、同じコースにシュートを投げるが見逃され、判定は惜しくもボール。

 7球目は外低め、8球目は真ん中高めにストレート。いずれもファール。

 9球目。三度目のインコースへのシュート。

 

 良いところに投げた感触が残り、バットが出されるのが見える。

 詰まらせた…と、思ったのだが。

 

 ふらふらっと上がった打球はサードのほぼ真後ろ、レフトの前に落ちるポテンヒット。

 

 押し切ったと思ったが、力で運ばれた。

 

 次のバッターは送りバントの構え。

 させるかという思いでインハイにストレートを投げるが上手く転がされ、一死二塁となる。

 

 相手の打席には代打の曽根。

 その初球、外を狙ったストレートが逆球になり、振り抜かれる。

 打球は三遊間を抜け、レフト前ヒット。

 

 これで一死一、三塁。相手の打順は8番の川相。

 スクイズを警戒しているうちにカウントが悪くなり、最後は歩かせてフォアボール。

 

 ここで、内野のタイムがとられる。

 

「翔介先輩、わざわざ歩かせる必要はなかったんじゃ…」

 

「いや、というか牧篠、疲れてるだろ」

 

「…っ、そんなことはないです!」

 

 嘘だ。図星だった。

 

「強がらなくてもいい。ここまでよく頑張って投げてくれた。

 

 

 あとのことは大丈夫。あいつに任せればいい」

 

 そう言われて先輩の視線の先、ベンチを見るとそこには

「ケン先輩…!?」

 

 いないはずの先輩がいた。

 

 

*  *  *  *

 

 その直後、風林中は選手の交代を告げ、俺はマウンドから降りてベンチへ。

 そのマウンドには、エースのケン先輩が上がった。

 

 投球練習の間、軽くクールダウンのキャッチボールを大吾と行う。

 

「3回と1/3を投げて無失点、か。お疲れさま。良いピッチングだったと思うぞ」

 

「…正直もう投げられん」

 

「はは、そんな風には見えない気もするけど」

 

「もちろん体力は一応まだあるさ。

 ただ、いくら良いと言われるボールを持ってても、球種の幅が少ないと配球パターンも狭まる。それを実感したよ」

 

「でも、一巡目はほぼ完璧だっただろ」

 

「それでも主軸には打たれてた。

 二巡目からは打順関係なく打たれてたし、まだまだ全然だ」

 

「そうか。じゃあ、決勝戦でリベンジだな」

 

「おう」

 

 決勝戦でリベンジ。

 

 俺がマウンドを降りケン先輩がマウンドに来るとき、俺に一言だけ、ありがとうと言った。

 その声を聞いて、言いたいことは色々あったのに、伝えられなかった。言葉が出てこなかった。

 

 でも、そうだ。

 今は余計な言葉なんていらない。

 

 とにかくこの試合を勝って、次の決勝戦に進む。

 これが、今俺たちが目指すところ。

 

 ピンチは作ってしまったけれど、まだ試合は終わらせない。

 

「ケン先輩…!」

 

 祈り、見つめる先には投球練習を終え真剣な顔つきの一人の先輩の姿があった。

 

 

* * * * * *

 

「投げて大丈夫なのか?」

 

「ああ、というか、投げるしかないだろ」

 

「それはそうだが…」

 

「せっかく椿と牧篠がここまで繋いでくれたんだ。あとは俺が何とかする」

 

「まあ、お前はそういうやつだったな。

 平気なんだったら、遠慮なくサイン出すからしっかり投げてこいよ」

 

 そんな会話をして投球練習を行い、状況とサインの再確認をして相手の打者と対峙する。

 

 満塁?サヨナラのピンチ?

 関係ない。抑えるだけだ。

 

 初球、アウトコースにストレート。わずかに外れてボールの判定。

 

「(…まだ細かいところは難しいか)」

 

 2球目はスローカーブ。タイミングを完全に外して見逃しのストライク。

 3球目はインコースのストレートでファール。

 そして4球目は、ドロップカーブ。バットは空を切って三振。

 

 これで、ツーアウト。

 

 次のバッターは1番の本田。

 今度は初球スローカーブから入り、2球目胸元のストレート、3球目外低めのストレートでカウント2ー1と追い込む。

 

「(これで…チェンジだ!)」

 

 4球目、決め球に選んだのは同じくドロップカーブ。

 

 

 …しかし、投じたボールが、指からすっぽ抜けた感覚が残った。

 




本編お疲れさまでした。すっぽ抜け…のその先は、来週に持ち越しです。
そろそろ準決勝も終わらないといけないなあと思いながら、さんざん引き延ばしてしまっています。申し訳ない。

それでは今回も後書きは短めに、このあたりで失礼します。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
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