俺の名前は。   作:kwhr2069

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こんにちは。
先週は予告なく休んでしまい申し訳ありませんでした。
詳しくは後書きで話しますが、書きたくなかったとかそういう感じではないのでご容赦ください。

また本編ですが、今週から新章の幕開けとなっています。
それではどうぞ!


幕間章:中学1年期
第四十一話


新チーム

 

 3年生の最後の大会が終わった翌日。

 昨日の暗い空気とは対照的な雰囲気に包まれた部屋。

 先輩たち一人一人が、部活を離れる別れの挨拶をしていく。

 

 ただ別れと言っても、風林学園は中高一貫校ということもあり多くの人がそのまま高校へ進学する。

 それもあって、大半の先輩たちは高校野球へ気持ちも切り替わっている様子だった。

 

 その中で二人、事情の違う人がいた。

 

 一人は、椿先輩。

 風林高校には女子野球部はない。

 話を聞いた限りでは違う高校に進むことはなく、ここで野球はやめるとのことだった。

 それでも後悔している感じはなく、むしろ晴れやかにも見えた。

 話しているとき度々俺と視線が合ったのは何だったのか分からないけれど。

 

 もう一人は、綜先輩。

 先輩たちの中で唯一、違う高校への進学を決めた。

 県内でも名の知られた強豪校へ行き、自分を高めると言っていた。

 実に先輩らしい決断だし、きっとレギュラーとして活躍するだろうと思った。

 また、綜先輩は俺たちに対し、地区優勝の目標を引き継いでほしいと最後に言った。

 

 

 それらたくさんの想いを受け取って、俺たちは決意を新たにする。

 今日から、新チームが始動するのだ。

 

 まず、先輩からの指名でキャプテンを大吾が務めることになった。

 はじめは困惑していたが、監督の推薦もあったということを聞いてひとまず受け入れたようだった。

 

 ちなみにその監督は、まだ現場復帰できないことが伝えられた。

 元々、去年の秋頃から慢性的な腰痛があり通院を繰り返して様子を見ていたそうなのだが、その生活の中で一つの事件が起こった。

 

 それが、非行少年のグループを注意した結果、逆ギレされて負傷し左腕を骨折したというもの。

 現在は未だ入院中で、リハビリもした後で様子を見て退院できるらしいが、数か月間は療養も必要になるはずだから戻ってきてくれるのはまだ先になりそうだ。

 

 まあ、3年生が抜けたあとのチームは1年生6人2年生1人の7人だから試合はできないし、大会にも出られない。

 

 そのため、基本的には練習しながら新入生を待つことがメインになる。

 ありがたいことに受験のない先輩たちが交代で練習に出てくれることにもなっているから、その面では問題ないと思う。

 

 その後、練習メニューの内容確認などをして今日は解散になった。

 そして俺は、帰宅する前に一人の先輩のもとへ行った。

 

* * * * * *

 

「椿先輩!」

 

 名前を呼ばれる。

 誰かは簡単に分かったため、振り返りながら声をかける。

 

「どうしたの、マキくん」

 

 とは言え、なんとなく要件も察しているが。

 

「…野球、辞めるんですね」

 

 切り出しにくそうにしながら、そう言った。

 言いにくいなら言わなきゃいいのに、と思いながら、この子なら聞いてくると想像していたのも事実。

 

「まあね。中学で限界が見えたし、高校に野球部もないし…やめ時かなって思ったから」

 

 思いのままに話す。

 

「限界なんて、本当にそう思ってるんですか?」

 

 ああ、君はやっぱり何も分かっていない。

 口にしかけて、やめる。

 

「…本当よ」

 

 そう言うと、考え込んで黙ってしまった。

 気まずい空気の中、何か言おうとした時。

 

「俺は」

 

 目が合う。

 強く、強かな目。

 

「俺は、椿先輩にピッチャーとして、サードとして、いろんなことを学びました。

 全然追いつけてないし、先輩はすごい選手でした。

 先輩は、まだまだ限界なんかじゃないと思います」

 

 褒められているんだろう。

 私はすごいプレイヤーだったのだと。

 これからも頑張れば、更にうまくなれるはずだと。

 

「マキくん」

 

 目を合わせる。

 強く、語りかけるように言う。

 

「…そういうこと、あんまり他の子には言っちゃダメだよ?」

 

 きっとこの子は繰り返す。

 同級生の可能性を信じて、ひたむきにただ上だけを見て。

 限界はまだ先だと。まだ頑張れるはずだと。

 

 想いがちゃんと伝わるように、私は自分の話をする。

 

「…私も少し前までは『自分ならまだやれる』『まだまだ限界じゃない』って思ってた。

 でも、無理だった。限界がきた」

 

 正直に、すべてをさらけ出すように。

 

「私は、自分が思ってたより強くなくて、何もできなくて、無力だと分かった。

 だから一度、離れてみることにしたの。

 

 …それでもやりたくなったら、戻ってくるから」

 

 私には、分かっている。

 離れてもたぶん、離れきれない。どうせすぐに戻ってくる。

 

「それまでは野球も、お休み」

 

 最後まで話した後、マキくんは今にも泣きだしそうな表情をしていた。

 

「…すみません、俺、先輩のことなんにも分かってなかった」

 

 首を垂れながら、声の沈んだ返答だった。

 

「ほんとにその通り。

 いい?もう一回言うけど、他の子には言っちゃダメだからね?」

 

「…はい」

 

「よろしい。

 それじゃあ最後に、私から一つだけ。

 

 …ありがとう」

 

 何を言われると思っていたのか、言葉を聞いた瞬間驚いた顔で私を見てきた。

 

「…マキくんの言葉、嬉しかったよ。これも、本当の気持ち。

 だから、ありがとう」

 

 私の可能性を信じてくれて。

 私の限界を決めないでいてくれて。

 私をここまで慕ってくれて。

 

 いっぱいいっぱい、ありがとう。

 

 

「…これから頑張ってね、美智琉」

 

 感情の溢れ出す後輩に最後の一言をかけると、彼は小さな声で美智琉呼びはやめて下さい、と言った。

 




本編お疲れさまでした。

ということで、今週から新たに「幕間章」に入りました。
ここでは学年が一つ上がるまでの秋~春の物語を書いていこうかなと思っています。(とは言え本編時空はまだ夏ですが)
また、先週休んだ件については、今日が6月初週にあたるため新章開幕においてキリが良いかなと思ったので、1週間待ってから出しました。
アニメも先週から再開して最高の気分ですし、来週からまた毎週投稿がんばります!

それでは今週は、このあたりで失礼します。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
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