俺の名前は。   作:kwhr2069

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どうもこんばんは。
またまたお久しぶりの投稿になりました。よろしくお願いします。
事情説明という名の言い訳はあとがきに書きます。

では、前置きは長くならないうちにこんなところにして、本編へどうぞ。


第四十四話

新エース②

 

 一昨日からテスト前の部活動停止期間に入り、野球のできない日が続いている。

 前回そこそこの順位を取った身としては一応頑張りたいと思っている。

 

 そんな中、明日の土曜日は野球部での勉強会が開かれることになった。

 元は太鳳に頼まれて沢さんと大吾も含む4人での予定だったはずが、どういうわけか話が広がり睦子と関鳥も一緒にやることになってしまった。

 みんなに勉強する気がどれだけあるかは知らないけれど、やるからには真剣に教えるつもりだ。

 教えることで学べるとも言うし、せっかくの機会を活かさない手はない。

 

 ちなみに、集まるのは大吾の家である。

 大吾と二人でやるつもりの時は図書館にでも行こうかと話していたが、人数が増えたため変更した。

 俺としては、野球というスポーツを始めたそもそものきっかけである茂野吾郎さんの家に行けることに若干緊張している。

 今は仕事の都合で家にいないらしいが、それはむしろありがたい。

 会ったら勉強どころではなさそうだし。

 

 などと思考を巡らせている間に、テスト前に提示された課題が終わった。

 このあと何をするか少し考え、俺は家を出て少し走り込みに行くのだった。

 

 

* * * * * *

 

「ねえ大吾、ここなんだけどさ」

 

「ああ、それならこの公式を使って…」

 

 翌日。

 少し離れた机では、大吾と睦子が向かい合って勉強をしている風景。

 

「これは額縁に飾って家に置いておきたい光景だ、とか考えてるでしょ」

 

「うーん…って沢さん、俺の思考を読み取らないで」

 

「え、そんなこと考えてたらさすがに引くわ」

 

「いや太鳳、流石にそこまでは考えてないから…」

 

 俺に任せられたのは沢さんとの太鳳のお守りであった。

 ちなみに関鳥は大吾の方にいる。睦子がいるのもあってほぼ背景と同化しているが。

 

「ミチル、これやって」

 

「アホ、自分でやりなさい」

 

「えーん、弥生、ミチルがいじめるよ~」

 

「よしよし」

 

 この有り様である。俺には教える役など務まらないらしい。

 しかし、悪いのは太鳳も同じだ。

 ついさっき教えたことを忘れるのは当然のこと、たまに将来が不安になるようなことを言う。

 時事問題対策で、現内閣総理大臣の名前が出てこなかった時は返答に困った。

 

「太鳳の方から提案してきた割にやる気出さないのはちょっとどうかと思うぞ」

 

「だってー、ミチルは苦手な教科無いんでしょ?」

 

「まあ、今のところは」

 

「それなら計画破たんなんだよね、せめて一つくらいは希望がないと」

 

「なんの話をしてるんだ?」

 

 俺の問いを受け、しばし太鳳と沢さんが目を合わせる。

 太鳳が首をかしげ、沢さんは肩をすくめる。見た目が良い二人にしか許されない言動だ。

 

「ほんとはさ、ミチルの苦手教科で勝って色々お願いしてやろうとか考えてたんだよね」

 

 太鳳が観念したという風に口を開いた。

 

「ああ、なるほどな」

 

 驚きと同時に、なんとなく冷静に受け止めている自分がいた。

 そりゃ、太鳳が自ら勉強なんてタイプじゃない。

 

「でも、俺が完璧超人だったから勉強が苦手な太鳳さんは諦めることにしたんですね?」

 

「はあ?何そのムカつく言い方」

 

「別に」

 

 別に、太鳳をバカにしたり煽ったりする気はない。

 これは勉強会を開くことに何の疑いも持たなかった自分に対する戒め。

 今後は太鳳の言うことを信じないようにすると誓いたい。

 

 それは置いといて。

「沢さんはずっとスマホ触ってるけど、何してるの?」

 

「やーね、私も勉強してないから怒られちゃう?」

 

「いや…沢さんは成績悪くないし勉強しなくてもいいとは思うけど」

 

「ミチル、それは不平等って言うんだよ知らないの?」

 

「そういうことは沢さんと同じくらいの点数取ってから言ってね、太鳳さん」

 

「ちょっと気持ち悪いからその"さん"付けやめてくれない?」

 

 俺が太鳳にミチルと呼ばれている時はそれに似た感情なのだが、これで理解してもらえるだろうか。

 

「とりあえず、せっかく来てるんだし勉強するしかないだろ。

 それに家にいてもどうせやらないんだろ?」

 

 そう言うと、観念したという風に勉強道具を開く太鳳。

 不服そうな顔を浮かべているが、少し前よりは指が進むようになった。

 

「…というか、俺が教えるより沢さんが教えた方が良いんじゃないか?」

 

 その問いに対し、沢さんは不思議な笑みをこちらに向けて返すだけだった。

 

 

*  *  *  *

 

「弥生!どうだった?」

 

 テスト後、期待した目を向けてくるのは目の前の席に座っている太鳳。

 名前準拠の出席番号のため、相楽、沢と続いて同じクラスの連番になることがこれまでも多く、今年で5回目だ。

 

「うーん、まあまあかな」

 

「そっかー、でもミチルの出来によるかもね」

 

「そうね、結果を見ないと分からなさそう」

 

 土曜日の勉強会。

 課題に奮闘する太鳳の横でこっそり副教科の過去問を見ていた私は、それを武器に美智琉の成績を上回ることを期待されているが、そこまで完ぺきな感触は得られていない。

 そもそも過去問がかすってすらいない教科もあって若干困っているのだが。

 

「ミチルと言えばさ、一つ前の社会のテスト、あいつの言ってたことが出たんだよね

 あの憎らしい顔のおかげで思い出せたよ」

 

「そう?勉強会も役に立ってるのね」

 

「言ってもそれだけだよ、ほかは全然」

 

 そうは言いながら、今回のテストは前回ほど感触も悪くないんだろうと顔を見れば分かる。

 こういう時、少しだけ美智琉に嫉妬している自分がいることに最近気づいた。

 

「ん?どしたの弥生」

 

 沈黙を見かねた太鳳が私の顔を覗き込むようにして聞く。

 

「別に、ただ少し美智琉のことを考えてただけよ」

 

 

*  *  *  *

 

 テストの休み時間、突然教室内で大きなくしゃみが響く。

 

「…牧篠、どうした?勉強して風邪でも引いたか?」

 

「いや、さすがにそんなことないと思うけど…おかしいな」

 

 くしゃみの主は疑問そうに首をひねっている。

 

「それで?今のところは?」

 

「まあぼちぼちかな。前回から大幅転落、みたいなことはなさそう。

 大吾は?」

 

「一応そんなに悪くないぞ。牧篠に教えてもらったところも出たからな」

 

「あーあれな、書けたなら良かった」

 

 テスト中に俺の心配をする余裕があるとは、つくづくできるやつだ。

 

「そういえば次は数学だろ?

 睦子と勉強してたところも出てくるんじゃないのか?」

 

「確かにそうかもしれないけど、それがどうかしたのか?」

 

 睦子が数学が苦手とのことだったため、勉強会では比較的今の範囲が分かっている俺が教えていた。そして、全般的に苦手な太鳳が牧篠に預けられ、ほかの二人はそれぞれについていく形となったのだ。

 

 そのことを改めて考えてみると、少し不安だ。

 俺はしっかりと教えられただろうか。睦子はこの後のテストで、教えた問題をしっかり解けるだろうか。

 

「意味が分かったかな?」

 

「ああなんとなく」

 

「まあ、不安に思ったところで結果は変わらないし、自分は自分で頑張るしかないんだけどな」

 

 …と、なんだか決めゼリフのようなことを牧篠が言ったところで予鈴が鳴る。

 俺は自分の席に戻り、今日最後のテストを受ける準備をし始めた。

 

 

 このテストで自分の教えた範囲が出題され、冷や汗をかきながらもその日の放課後、睦子から『大吾のおかげで助かったよ。ありがとう』と言われた嬉しさは今後忘れることはないだろう。

 




本編お疲れさまでした。

さて、久しぶりの更新となってしまいましたが軽く説明(言い訳)します。
七月以降、大学の授業と課題に終われ、書く時間が取れず書く気になれませんでした。八月下旬になりようやく余裕は出てきたのですが、今度は何を書こうとしていたかを忘れ復帰に時間がかかってしまった…という流れになっています。
日常パートを書くのはとても難しい。野球成分ゼロのお話は今後当分の間書きたくないです(笑)
ちなみに、来月からはまた授業が再開するため大変そうなのですが、理想としては月一投稿を考えています。不定期更新は読者の皆さんのことを考えるとあまりやりたくないので…。
しかし、これまでの私の信用度からして実現は難しいことも否めません。まず今月の残りの期間や書けるタイミングでちゃんと書く精神を持って、今後は進めていきたいと思っています。ご理解のほどよろしくお願い致します。

それでは長くなりましたが、今回の後書きはこのあたりで失礼します。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
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