ワールドトリガー~遊真もトリオンモンスターな話~ 作:Toっ3m3
<緊急警報、緊急警報。ゲートが市街地に発生します。市民の皆様は直ちに避難してください。繰り返します、市民の皆様は直ちに避難してください。>
校庭の真ん中にゲートが発生しそこからトリオン兵が現れる。
「警戒区域の外にゲートが開くなんて、どうなってるんだ!?」
驚く修と、
「モールモッドが四匹。お、こっち来た。」
いつもの飄々とした態度を崩さずに状況を確認する遊真。
あらわれた四匹の内半分が遊真らの方へ壁を登向かってくる。そして残りの二匹は近くにいた生徒を追いかけ始めた。
遊真は迫ってっ来るモールモッドをどうしたものかと考える。
(さっきオサムにトリガー使うなって言われたばっかだしなぁ。うーむ、これはこれは困った。……とりあえず逃げるか。)
「おいオサム、とりあえず逃げようぜ。ん、どうしたオサム?」
言うが否や素早く動き出そうとする遊真に対して、修はトリガーを右手に握ったまま動こうとしない。そしてその眼には決意の色が浮かんでいる。
「トリガーオン!」
そう修が叫んでトリオン体に換装した瞬間窓を突き破ってモールモッドが教室に侵入してきた。
上から大きく振り下ろされたブレードを左右に散開して二人ともが回避しモールモッドから間合いを取った。
「仕方ないな。なあレプリカ、トリガー使っていいか?」
『それを決めるのは私ではない。遊真自身だ。ただ、もしボーダーに見つかったら追われるかもしれない。』
「おれはそれでもいいけど。」
『……ユーマはよくてもオサムに迷惑がかかるが?近界民を匿っていたことがばれてしまう。』
「確かにそうだな。うーむどうするべきか。」
「おい、誰としゃべってるんだ空閑」
モールモッドの攻撃を避けながらも遊真は己の何もないとこ相棒と相談するがレプリカのことを知らない修からすれば突然遊真が喋りだしてしかも遊真と自分以外いないというのに答えが返ってきたのだ。驚くしかない。
その間にももう一匹モールモッドが窓から侵入してくる。
どうやら二匹目は修に照準を合わせたらしい。
「逃げろオサム、こいつらはおれがかたずけとくから。」
「でも、お前一人じゃ。ぐっ!」
そう口論してるうちにもモールモッドの攻撃は止まってくれるわけもなく修は武器を持つ左腕を切り落とされた。持ち主を失ったブレードがモールモッドの攻撃を躱していた遊真の近くに転がってきた。
「お、ラッキー。このトリガー使えばボーダーにばれないかも。」
そう言って遊真は転がっているブレードに跳びつく。そのまま拾い上げてブレードを再展開しモールモッドのブレードを迎え撃った。
切り上げられた遊真と振り下ろされたモールモッドのブレードがぶつかり合いお互いに弾かれる。
間髪入れずにモールモッドの懐に飛び込んだ遊真は目のような形の弱点に対して真っすぐにブレードを突き立てる。
モールモッドを一瞬にして屠った遊真が修の方を見るとちょうど修がモールモッドに真っ二つにされ換装体を失ったところだった。
「オサムッ!?」
本来の持ち主がトリオン体を失ったため遊真が手に持っていたブレードも消えてしまった。
モールモッドのブレードが生身の修に迫る。
「強印【ブースト】!!」
モールモッドのブレードが今まさに修の命を刈り取ろうとしたとき、遊真がモールモッドを横合いから蹴り飛ばした。
「無事かオサム?」
「ああ、おかげさまで。」
モールモッドの動きを警戒しながらも修の無事を確認する遊真。その時遊真に一つの考えがひらめいた。
地面に落ちている修のトリガーを拾い上げる。
「おい待て何する気だ」
「ちょっと借りるぜ。トリガーオン。」
トリオン体に換装しブレードを生成して起き上がって再び攻撃してきたモールモッド迎え撃つ。
「待て空閑。それは訓練用のトリガーだ。お前のとは違う。死ぬぞ!」
「いや、オサムもさっきこれで戦おうとしたじゃん。」
「いや、それはその。」
「にしてもこのトリガー思ったより出力出ないな。そのくせに重い。」
それもそのはずだろう、いま遊真が使っているのはレイガスト。シールドモードとブレードモードを使い分けて戦うトリガーである。防御・重装型だ。
そんな会話をしながらモールモッドの攻撃を捌いているとなかなか倒せない遊真にしびれを切らしたのかモールモッドは修に対して攻撃する。
間に割り込んで攻撃を受け止めた。遊真としては修に死なれるわけにはいかない。彼には最近結構助けられてるし遊真は彼のことが案外気に入っている。
だが、修を守るために少々無理な姿勢で受けてしまったようで窓の外へとはじき出されそうになる。飛ばされながらとっさに修の制服の襟をつかんで一緒に外に出た。
「しまった、外に出たらおれが戦ってるのばれるじゃん。」
軽く辺りを見回してみると何人かの生徒がこっちを見ていた。
「ゲホッ、ゲホッ。ほ、他の人たちは大丈夫なのか?」
「自分が死にかけたのに他人の心配とはお人好しが過ぎるぞオサム。ん、三匹ともこっち来やがった。ちょっと失礼。」
モールモッド三匹を確認した遊真は修を抱えて校舎の屋上へ飛び上がる。
「修君!」
声がした方に目を向けるとそこには遊真と同じくらいの身長の少女がいた。
「ほほう、オサムお前彼女いたのか。」
「な、ちょっ、違う。千佳はそんなんじゃない!」
「か、彼女って!?」
「まあいいや。とりあえずもうちょっとトリガー借りとくぜ。」
「あ、待てっ。」
軽口をたたき、屋上から飛び降りた。修が制止する声が聞こえたが気にしない。自分が戦ってることはもう他の生徒にも知られてしまったしこのトリガーなら自分が近界民であることを知られずに戦える。こうなったらやるしかないだろう。
校庭の真ん中に降り立ち突撃してくるモールモッド三匹を捌いていく。手に持つブレードには刃こぼれの一つも無い。
三匹を相手しながらそろそろ攻撃に出ようかと考えていた時、遊真の視界の外から幾つものトリオン弾がモールモッドに命中した。
「ッ!?」
驚きながらもその隙を逃さず弱点をたたき切る。そして、後ろに飛び退いてトリオン弾が飛んできた方向に目を向ける。
「嵐山隊ただいま現着した、これより戦闘を開始する!」
三門市民なら誰もが知る部隊がそこにいた。
嵐山隊が現着してから三十秒とかからずにモールモッドは撃破され今は生徒の安否を確認しているところだ。死者六名、重軽傷者十二名。遊真と修が二匹と戦ってるうちに残りの二匹が暴れたらしい。
修にトリガーを返してクラスメイトに囲まれている遊真に嵐山近ずいてくる。
「君がさっき戦っていた子だね。名前を聞いてもいいかな?」
「ん、おれか?空閑遊真です。」
「空閑君か。君が戦っていなかったらもっと被害が出ていたかもしれない。うちの弟と妹がこの学校なんだ。ありがとう。」
そう言って嵐山は彼の兄弟と思しき人物に突撃していく。
「オサム、誰だアラシヤマって?ボーダーだよな?」
「嵐山さんはボーダーのA級隊員でボーダーの顔だ。テレビとかにもよく出てる。」
「ほう、てれび。」
二人の会話を聞いていたクラスメイト達から「嵐山隊を知らないのか」という驚きの声が上がるが遊真が帰国子女だということを思い出して勝手に納得していく。
そんな会話をしてるうちに嵐山が戻ってきた。
「にしても君強いな、フリーのB級隊員か?」
嵐山は遊真の換装体の服装がC級の白いものとは違ったため何か勘違いをしたようだ。
「いえ、ただのいっぱんじんです。」
「なっ!?」
「うそ!?」
ボーダーに入ってるわけでもなく近界民と言うわけにもいかない遊真はしれっと嘘を吐いた。いや、近界民な事を除けばあながち嘘でもないかもしれない。
これには嵐山と彼の後ろに無言で立っていた女性隊員も驚きの声を上げる。それもそうだろう、ついさっき自分たちの前で見事な動きでモールモッドを屠った人物がただの素人だというのだ(実は違うが)。と、そこで女性隊員が重大な事実に思い至る。
「つまりボーダー隊員以外がトリガーを使用したということじゃない、大問題ですよ嵐山さん。」
「ああ、そうだな、でも結果的に市民の命を救ってるわけだし。」
「そもそもなんで一般人がトリガーを?」
そこで修が前に出た。
「それは僕のトリガーです。空閑と二人でいた時に襲われて換装したんですけどやられてしまって。それで空閑が。」
黙っていればいいのに正直な奴だなぁ、と遊真は思う。まあ、そこが修の美点でもあるわけだが。
「君は?」
「C級の三雲修です。」
嵐山の問いに修が答える。
「何、C級隊員が訓練以外でトリガーを使って挙句の果てにはやられて一般人に使用させたの。これは重大な隊務規定違反よ。嵐山さん、これは処罰されてしかるべきだと思いますが。」
「うーんこれはどうするべきか。」
なにやら話がややこしくなってきたところで遊真が。
「なあ、おれたちがトリガー使わなかったほうがよかったて言いたいわけ?えっと、ハンドガンの人」
「なっ、ハンドガンの人ですって!木虎よA級五位嵐山隊の木虎藍。知らないの?」
「うん知らん。でどうなの?」
「例え市民の命が救われたといっても隊務規定違反は隊務規定違反よ。今回は何とかなったかもしれないけど他のC級にマネされたら大変だわ。」
「でもトリガー使わなかったらおれたち死んでたぞ。」
「確かにそうかもしれないけど何の処罰も無しじゃ他のC級に示しがつかないわ。」
「半分くらい嘘だな。おれが褒められるのが気に食わない?」
「何を言ってるの、私はただ「はい、そこまで。」」
いつの間にか居た嵐山隊のもう一人の隊員が二人の言い合いを遮った。
「現場検証は終った。回収班を呼んで撤収するよ。」
「でも時枝先輩。」
「でもも何も彼らをどうするかは上の人が決めることだよ。ですよね嵐山さん。」
「なるほど、充の言う通りだ。」
彼らの中で結論が出たらしい。
「今回のことはうちの隊から報告しておこう。三雲君と空閑君は今日中に本部に出頭してくれ。。」
「は、はい。」
「わかった。」
「処罰が重くならないように力を尽くすよ。」
そう言って嵐山隊は去っていった。
修の見せ場がログアウトしてしまった。