ワールドトリガー~遊真もトリオンモンスターな話~ 作:Toっ3m3
嵐山隊が帰っていった後、生徒たちは一旦教室へ戻って行く。
そして遊真と修は案の定質問攻めを受けていた。
「三雲、お前ボーダー隊員だったんだな。」とか
「空閑君すごいね初めてだったんでしょ、怖くなかったの?」といった質問に時に真実で、時に嘘で、時に曖昧に答えながらやり過ごす。
放課後、もうくたくただがボーダー本部に行かなくてはならないのでためとりあえず下駄箱まで降りていく。そこで二人が目の当たりにしたのは人垣に囲まれて口では断っていても満更ではない顔でポーズを決めて写真を撮られている木虎の姿だった。
「なにやってんだこいつ。」
思わず遊真が呟く。修もこれには言葉が出ないようだ、おどろきかたまっている。
遊真の呟きが聞こえたのか、「はっ……!」っと気づいて遊真たちの方を見て若干恥ずかしそうに咳払いをし、
「改めて自己紹介するわ。私はボーダー本部所属嵐山隊所属の木虎藍、本部まで同行するわ。」
と、言い放った。
「ほう、道案内か?」
「違うわ、あなた達が逃げないように監視しに来たのよ。」
「別に僕たちは逃げたりなんかしないよ。」
「命がかかっていたとはいえあなた達はルールを破ったの。そう簡単に信用してもらえるとは思はないことね。」
「……………。」
「まあとりあえず行こうぜ、喋るなら歩きながらでもいいじゃん。」
人垣を抜けて三人は本部基地へと歩き出す。
途中爆撃型トリオン兵イルガーが市街地に現れ木虎が自爆モードまで追い込んだがそのまま街に突っ込もうとしたのを遊真がばれないように川に落としたり、修がレプリカに驚いたり救助活動したりとトラブルに巻き込まれたものの、三人はボーダー本部基地までたどり着いた。
遊真たちは木虎と別れ会議室へと向かう。
「失礼します。」
「しつれーします。」
遊真と修が会議室へと入るとそこにはすでにボーダーの幹部が勢揃いしていた。
「来たか。」
そう呟いた遊真たちの正面にいる人物、ボーダー本部指令の城戸が遊真を見据えて言い放つ。
「お前は空閑の息子か?」
この会議室にいる人物の半分以上がその言葉の意味を理解できない。
「どの空閑さんのことを言ってるのかは知らんけど、空閑有吾の息子ならおれだよ。」
その言葉に城戸は表情を変えぬまま遊真を見つめ、遊真から見て右にいる人物、玉狛支部長の林道匠とボーダー本部長の忍田真史は「おお」とどこか喜びを含んだ声で驚き「なるほど有吾さんの息子なら訓練用のトリガーでモールモッドを一刀両断したのも納得だ。」等と口々に呟く。
「ほう、何人かは親父を知ってるみたいだな、ちょうどいい聞きたいことがあるんだけど、モガ「失礼しまーす。」ん、一人増えた。」
「迅悠一、お召しにより参上しました。」
「ご苦労。」
遊真が質問をしようとしたときに、扉が開いて迅と名乗った男が入ってきた。
「お、君たちは?」
「あ、三雲です。」
「空閑遊真だよ。」
「ミクモ君にクガ君か、俺は迅よろしく。」
そう挨拶を交わしたところで城戸が先ほど遊真が言いかけた質問が何だったのかと問いかけ遊真が話し出す。
「モガミソウイチっていう人知らない?親父の知り合いでボーダーにいるって言ってたんだけど。」
その言葉を聞いた途端先ほどの三人と迅の顔が強張る。
一瞬の沈黙、それを破ったのは迅だ。
「最上さんならこれだよ。」
そう言って腰に着けていたトリガーをテーブルの上に置く。
それを見た遊真は目を見開いて驚きそして悲しそうね目をした。
話についていけていない修は(初めて空閑の驚いた顔を見たかもしれない)と場違いなことを考えていた。
ここまでのやりとりを黙って見ていた他の幹部、開発室長の鬼怒田、メディア対策室長の根付、外務・営業部長の唐沢の三人と城戸の後ろに控えているA級三輪隊隊長の三輪が会話に参加してくる。正確には幹部の三人だけだが。
「それで、その空閑っていうのは誰だ。」
「我々にもご説明いただきたいですねぇ。」
そう鬼怒田と根付が問う。
返答したのは忍田だ。
「有吾さんは四年半前にボーダーの存在が公になる前から活動していた、言わば旧ボーダーの創設に関わった人間、ボーダー最初期のメンバーの一人だ。私と林藤にとっては先輩にあたり、城戸さんにとっては同輩にあたる。」
そう言い忍田はさらに続ける。
「それで遊真君、有吾さんは今何所に?」
「死んだよ。」
忍田の問いに遊真はただ一言そう答えた。
「……!?」
「なっ!?」
「………………」
有吾を知る三人は驚きを隠せない。
「これが親父の残したブラックトリガーだよ。」
遊真が自らの指に着けている黒い指輪を見せながら言う。
ここまでの会話に違和感を感じていた唐沢が遊真に問う。
「どうも話が分かりませんね。知り合いだというのに子供の存在を知らなかったり。まったく連絡を取りあってなかったんですか?」
その問いに答えたのは遊真だ。
「そりゃそうだよおれら近界にいたんだし。」
そう言ってあっさりと自分が近界民だという事を暴露した。
その言葉にいち早く反応したのは三輪だった。いきなり遊真に向けて発砲したのだ。
遊真が展開したシールドがそれを弾く。
それを見た修が叫ぶように三輪に問いかけた。
「何してるんですか‼。」
「近界民を名乗った以上そいつは敵だ。ここで殺す。」
そう言い捨て城戸以外の幹部陣の制止の言葉も聞かず撃ち続ける。その瞳に映るのは憎悪だ。
対する遊真は楽しそうに笑みを浮かべてブラックトリガーを起動する。
これには余裕を持って傍観していた城戸と迅も制止を促さざるを得ない。
「待て三輪。」
「待った空閑君。」
「止めないでください指令。あれは近界民です、我々の敵ですよ!」
「止めないでよ迅さん、あっちはやる気みたいだぞ。」
結局三輪が城戸に基地を壊す気かと言われ攻撃をやめた為戦闘は回避されたが、まだ会議場は一触即発な空気を残したままだ。
見かねた迅が口を開く。
「とりあえず二人をどうするかを決めましょうよ。イレギュラーゲートについても考えないと。」
「じゃあさ、おれの日本への滞在を見逃してとオサムの処罰を免除にしてよ。」
遊真がとんでもないことを平然と言い放った。都合がいいにも程がある、そんな周囲の声を聞きながら話を続ける。
「その代わりイレギュラーゲートの原因は突き止めてやるからさ。」
「ほう。」
イレギュラーゲートは現在ボーダーの頭痛の種だ、技術者総出でも全く原因不明なそれの原因を目の前の近界民は突き止めてくれるというのだ。 取引の材料としてはなかなか魅力的ではある。
「心当たりがあると?」
「あるよ。」
「馬鹿馬鹿しい。こいつを捕まえて吐かせればばいいだろう。」
城戸と遊真の会話を切って捨てたのは鬼怒田だ。確かにここはボーダー本部いくらブラックトリガーといえどもたった一人くらい倒せないわけがない。
「やってみる?」
挑発的な笑みを浮かべる遊真、ほぼ空気と化している修の冷や汗がとんでもない量になっている。
「いいだろう。条件を飲もう。」
「城戸指令!?」
「俺も賛成ですね。」
承諾した城戸とそれに賛成する迅。
「ただし、24時間以内に突き止めろ。そしてボーダーに敵対する行動をとった場合はわかっているな。」
そう条件を付けてだが。
「オッケーオッケー。そんなに時間はかからないよ。わかったらオサムを介して連絡するよ。じゃあ帰っていい?」
「ああ。」
会議室から出ていく遊真、修も慌てて付いて行く。
「いいのか空閑?イレギュラーゲートの原因を突き止めるなんて。」
「大丈夫だよ。レプリカに心当たりがあるらしいし。」
「というかなんで僕を介して連絡するんだよ。」
「ああ、パイプ役だよ。オサムにも役目がないといかんだろう。」
「あ、ああ。」
修が蚊帳の外にならないようにという遊真なりの気配りだった。
会話をしながら二人は帰路に着くのだった。
修が一番書きずらい。