これは、僕が森にきて少しの年月が経ち、12歳になった時の話だ。
「よしっ!また魚を上手く捕まえれた!これでアイリスに褒めてもらえるかな。」
「少し採りすぎではないかしら?」
「アイリス!たくさん採れたよ!」
しかし、アイリスは溜息をつくように
「上手く採れたことは褒めるわ、でも...必要以上にとりすぎるというのはあまり良いものではないわ。」
「それじゃあ、少し逃がすよ...。」
「ええ、何事も、程よく、バランスよく、そうすることで全ては均衡が保たれて持続するのよ。」
アイリスは瞼を閉じながら、靴を脱いで川に足を入れた。
一方、僕はというと、とりすぎた魚を川に逃がしていた。すると、アイリスは瞼を閉じながらこう続ける。
「人間が現れてから、異常なペースで生物が滅びていったのは知ってるわね?」
「まあ、そうだね。時々図書室の本を読んでたから。」
「そう...。あそこの図書室は様々な歴史が書いてあるわ。集めたのは私だけどね。」
ひとつ息をついて、更にこう続ける。
「生物はそう簡単に絶滅しないよう、常に進化を続けて生きているわ。例えば、捕食者に捕まらないように景色と同化したり、逃げ足を早くしたり、といったようにね。そうすることで、捕食者、被食者、植物、微生物のバランスは保たれてきたの。でも、気候の変化だったりに絶えられず滅びてしまう種もいるわ。でも、それは仕方のないこと。そのように淘汰されていくことでバランスは保たれるから。」
「何が良いたいの?」
「そうね、そのバランスを崩す存在が現れてしまったらどうなると思う?」
「うーん...簡単に生き物が減っていく...とか?」
「そう。人間は、自らの欲望のために罪のない生き物を狩り、金に買えていったわ。それによって生態系のバランスは崩壊し、種は絶滅していったわ。歴史をみると、食料だったり、趣味だったりで乱獲されて絶滅した種は少なくはないわ。」
「でもさ、それって昔の話だよね?」
「まあ、そうね...多いのは比較的昔ではある。でも、それから数十年、数百年経ったとしても続いてしまったことで滅亡してしまった種もいるのよ。」
「なんで、そんなことに?」
「そりゃあ、食料の需要と供給もわからないバカが儲けたいがために商売文句を掲げて大量に生産、結果的に売れずに廃棄。なんてバカな無能がしたせいよ。」
「でも、売れてないのに売ろうとするかなぁ?」
たしかに、僕はそう思った。意味のないことを流石にしようとは誰も思わないと。
「それがね、昔からの風習や伝統に引きずられた時代遅れ達はタチが悪いからするのよ。これは、ある魚を滅ぼした島国の話よ。ウナギ、という魚がいたのだけれど、その魚は昔から愛されてきた食材よ。そして、そこから時が流れて先ほどいったように必要以上に乱獲したせいで絶滅をしたの。絶滅の危機と叫ばれながらも乱獲し続けたせいでね。どうしようもないわ、ほんとに。」
「ひどい、どうしてそんな。」
「そりゃあ、目先の利益にしか目が向けられないからよ。廃棄をしていても、伝統なんて幻想にすがりついた結果、過ちを繰り返す。その結果よ。」
「そっか、何事も必要なだけ。というのは大事なんだな。」
「そうよ。ものごとは常にバランスを保つ事によって成立するものなのよ。次からは気をつけなさい?」
「はぁい。」
「それじゃあ帰りましょうか、今日はこの川魚を塩焼きに、あとは白米を炊いて、とある島国風にしましょう。」
「そうだね。それにしても、少し暑くなってきたね。」
「ええ、この森も、夏というのがきたのかしらね。」
木漏れ日は、少しずつではあるけれど、眩しくなってきていた。