落第騎士と鬼神ちゃん   作:カモシカ

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学園に入学した俺は、とある少女に模擬戦を挑まれた。

Bランクの意地と、この異能を持つ責任を賭け、俺は許される範囲で全力を擲った。


その日、俺は少女に敗北し。



生まれて初めての、恋を知った。




「・・・・・今日は一人かぁ」

 

 一輝くん達は今日、近くのショッピングモールに行くらしい。ガンジーがうんたらとか言ってたけど、その映画って面白いんだろうか?

 

 一人で山を吹き飛ばしていても寂しいだけなのだが、今日は何をしたら良いのだろう?人工物が大量にある場所が大っっっっ嫌いだからと言って、一輝くんの誘いを断らなければ良かった。

 

 

 そんな時だった。

 

 

 私の携帯電話が、鳴り響いた。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

『もすもす?どしたの兄さん?』

 

 耳に当てた子機から、愛する妹の声が聞こえる。

 今日はとある報告と宣言をするため、妹──勇華へと電話をかけたのだ。

 

「ああ、いや、その・・・・・少し、伝える事があってな」

『ふーん?』

 

 勇華は、前世の記憶を持っていると伝えた、たった二人の大切な人の一人だ。

 そして、俺の澱み腐りきった内面を曝け出しても受け入れてくれた、自分にとって無二の家族だ。

 

 本当に、一生かかっても返せない程の恩がある。

 

「・・・・・兄さんが高校で出会った、あいつとの話だ」

『・・・・・』

 

 勇華にも、当然あいつの事は伝えてある。俺みたいな奴に初めて出来た、本当の友達としてのあいつを。

 聡い勇華の事だから、もうこの時点で内容を理解したかもしれない。

 

「色々、考えたんだ。この五年間、一体俺の本物は何なのだろうかって」

『うん』

 

 俺にとって家族とは、いきなり消えて、いきなり出来て、いつかは裏切る。そういう曖昧でゴミみたいなものだった。

 前世での狭い世界の記憶と、限定的な経験からくる、消えないシミみたいな価値観だ。

 

「そしたら、まあ・・・・・お前と、あいつなんだなぁって、ありきたりだけど、確信した」

『・・・・・うん』

 

 同じ病室で一週間だけ過ごした、知人以上友人未満なヤツに押し付けられた、一冊の本。『B.A.D.』というライトノベル。

 残酷で醜悪で、その中で足掻く異能者とただの人が、ただただ美しく見えた。

 

「今夜、告白する」

『・・・・・そっかぁー』

 

 だから、なんだろう。

 俺がこの異能を持って生まれ直したのは。

 だから俺のこの異能(ちから)は、愛する人を守る為に、使いたい。

 彼のように神降ろしを望む訳じゃ無いけど、必要に迫られれば、俺はきっとなんの躊躇いもなく実行する。

 

 そしてきっと、あいつと勇華にぶん殴られて止められるのだ。

 

 

 それで良い。それが良い。素晴らしいじゃないか。そんな日々は。

 

 

『頑張って』

「ああ・・・・・良い結果、期待してくれ」

『ふふ。そうだね。私も、あの人ならお姉ちゃんにしても良いかな』

「気が早いな」

 

 けれど、何時かは。

 俺がこの鎖を引きちぎり、あいつと同じ場所に立てたなら────

 

 

「じゃあ、行ってくる」

『うん。いってらっしゃい』

 

 

 まだ待ち合わせまで数時間はあるのに、早くも早鐘を打つ心臓に呆れつつ、受話器を下ろした。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 プツン、と。

 味気ない音を立てて、私の携帯電話は沈黙した。

 

「そっか・・・・・兄さん達、まだ付き合ってすら無かったんだっけ」

 

 傍から見ると、完全に夫婦なものだから勘違いしてしまった。

 

「ま、些細なことでしょ。ちっちゃいことはー気にしなーい」

 

 前世の記憶があるなんて、変な事を言う兄だけど、私を守り、導いてくれた唯一の家族なのだ。

 その幸せの第一歩を祝わずして何が鬼か。

 

「兄さんから逃げないであげてよ?義姉さん」

 

 豪胆な癖して、変な所で初心な姉が告白されるシーンを想像して、ちょっとだけ可笑しくなった。




超短いですが、まあ短編という事で。
筆が乗れば一万字くらい書けるんですけども。

今後も1500くらいから4000くらいまでで投稿すると思います。

感想、評価ありがとうございます。特に感想や高評価をくれると作者は喜びます。
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