Bランクの意地と、この異能を持つ責任を賭け、俺は許される範囲で全力を擲った。
その日、俺は少女に敗北し。
生まれて初めての、恋を知った。
「・・・・・今日は一人かぁ」
一輝くん達は今日、近くのショッピングモールに行くらしい。ガンジーがうんたらとか言ってたけど、その映画って面白いんだろうか?
一人で山を吹き飛ばしていても寂しいだけなのだが、今日は何をしたら良いのだろう?人工物が大量にある場所が大っっっっ嫌いだからと言って、一輝くんの誘いを断らなければ良かった。
そんな時だった。
私の携帯電話が、鳴り響いた。
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『もすもす?どしたの兄さん?』
耳に当てた子機から、愛する妹の声が聞こえる。
今日はとある報告と宣言をするため、妹──勇華へと電話をかけたのだ。
「ああ、いや、その・・・・・少し、伝える事があってな」
『ふーん?』
勇華は、前世の記憶を持っていると伝えた、たった二人の大切な人の一人だ。
そして、俺の澱み腐りきった内面を曝け出しても受け入れてくれた、自分にとって無二の家族だ。
本当に、一生かかっても返せない程の恩がある。
「・・・・・兄さんが高校で出会った、あいつとの話だ」
『・・・・・』
勇華にも、当然あいつの事は伝えてある。俺みたいな奴に初めて出来た、本当の友達としてのあいつを。
聡い勇華の事だから、もうこの時点で内容を理解したかもしれない。
「色々、考えたんだ。この五年間、一体俺の本物は何なのだろうかって」
『うん』
俺にとって家族とは、いきなり消えて、いきなり出来て、いつかは裏切る。そういう曖昧でゴミみたいなものだった。
前世での狭い世界の記憶と、限定的な経験からくる、消えないシミみたいな価値観だ。
「そしたら、まあ・・・・・お前と、あいつなんだなぁって、ありきたりだけど、確信した」
『・・・・・うん』
同じ病室で一週間だけ過ごした、知人以上友人未満なヤツに押し付けられた、一冊の本。『B.A.D.』というライトノベル。
残酷で醜悪で、その中で足掻く異能者とただの人が、ただただ美しく見えた。
「今夜、告白する」
『・・・・・そっかぁー』
だから、なんだろう。
俺がこの異能を持って生まれ直したのは。
だから俺のこの
彼のように神降ろしを望む訳じゃ無いけど、必要に迫られれば、俺はきっとなんの躊躇いもなく実行する。
そしてきっと、あいつと勇華にぶん殴られて止められるのだ。
それで良い。それが良い。素晴らしいじゃないか。そんな日々は。
『頑張って』
「ああ・・・・・良い結果、期待してくれ」
『ふふ。そうだね。私も、あの人ならお姉ちゃんにしても良いかな』
「気が早いな」
けれど、何時かは。
俺がこの鎖を引きちぎり、あいつと同じ場所に立てたなら────
「じゃあ、行ってくる」
『うん。いってらっしゃい』
まだ待ち合わせまで数時間はあるのに、早くも早鐘を打つ心臓に呆れつつ、受話器を下ろした。
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プツン、と。
味気ない音を立てて、私の携帯電話は沈黙した。
「そっか・・・・・兄さん達、まだ付き合ってすら無かったんだっけ」
傍から見ると、完全に夫婦なものだから勘違いしてしまった。
「ま、些細なことでしょ。ちっちゃいことはー気にしなーい」
前世の記憶があるなんて、変な事を言う兄だけど、私を守り、導いてくれた唯一の家族なのだ。
その幸せの第一歩を祝わずして何が鬼か。
「兄さんから逃げないであげてよ?義姉さん」
豪胆な癖して、変な所で初心な姉が告白されるシーンを想像して、ちょっとだけ可笑しくなった。
超短いですが、まあ短編という事で。
筆が乗れば一万字くらい書けるんですけども。
今後も1500くらいから4000くらいまでで投稿すると思います。
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