落第騎士と鬼神ちゃん   作:カモシカ

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少女との奇妙な縁は、それから始まった。

男子寮だろうが構わず突撃してくる少女なのだから、縁も何も無いだろうが。

ともあれ、俺が為すべき事は少女に打ち勝つこと。


恋も試合も、全身全霊粉骨砕身、頑張ってやろうじゃあないか。




「・・・・・って事があったのよ。《狩人》だか何だか知らないけど、嫌ーな奴よね」

「ふーん。桐原のお馬鹿さん、まだそんな事言ってるんだ」

 

 桐原静矢。私にちょっかい出して来た時、徹底的に叩き潰してやった男だ。

 たまたま持っていただけのつまらない才能を驕り、自分より強いヤツ(現実)からは目を逸らす。

 

 黒鉄一輝とは違うベクトルで、愚かな男だ。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

『才能』

 人間である以上、これが平等な事など有り得ない。

 生まれつきの物もそうだし、周囲の環境によっても大分変わるものだ。それがいい方向への変化かどうかは兎も角。

 そして桐原は、才能を腐らせる方向に変化した。

 けれど黒鉄一輝は、才能に努力を足し合わせ、人の限界に挑み続けている。

 

 この結果は、その差なのだろう。

 

 片や、己の才能を過信し、ランクで劣る全てを見下す愚者。

 片や、己の価値を愚直に信じ続け、ランクを外れた力を手に入れた狂信者。

 

 桐原と一輝では、土台から違ったのだ。

 

 

 

「僕は、君が嫌いな『努力』でここまで来た。その道中には滅茶苦茶な天才なんて幾らでも居る。今更君程度の才能に絶望なんか出来ないさ」

 

 

 

 桐原の深層心理までも見通し、何度も何度も対話をして────その果てで、狂信者(黒鉄一輝)は、愚者(桐原静矢)を見限った。

 

 

 人と獣が会話出来ないように。宗教家が異教徒を理解しないように。

 

 黒鉄一輝の決別は、余りにも人間くさく。

 

 

「だから、敢えて言おう。桐原静矢、君は天才だ。けど、僕より弱い。────悔しかったら、僕に追いつけ」

 

 

 うん。けれどやっぱり、

 

 

「君が見ようとしない遥か先で、僕は君を待っている」

 

 

 君は、妖には成れないね。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

『し、試合終了ーーーー!!!!

 驚きの結末です!Aランクを下したという噂は、決して誇張では無かったのか!?()()()()()()()使()()()、《狩人》桐原静矢に勝利しました!!!

 この結末は一体どういう事なのでしょう!解説の西京先生!』

『んー・・・・・なーんか()()()()()気はするけど、まあ、実力差で言ったら当たり前だねえ』

『ですが、黒鉄くんはFランクですよ?』

『んなもん関係ないない。ランクで測れるのなんてせいぜい高校レベルまでだ。【魔導騎士】は、そんな低レベルじゃ無いぜ?まあそれにしたって黒鉄は異常だけどさー』

 

 好き放題言ってくれる解説だ。

 多少の自覚はあるけども、異常は言い過ぎだろう。

 それに異常(その言葉)は、青鬼さんに言うべきことだ。

 

 桐原くんは、僕にとって因縁の相手と言えた。

 だから、だろう。僕はこの試合を極度の緊張状態でこなしていた。まともに剣を振れないのは分かったし、だからこそ《陰鉄》を使わない選択をしたのだ。弓使いを相手に近接武器を持っていたところで、両手は塞がるし取り回しは素手に比べれば悪いしで、この選択は間違っていない。

 

 第一、刀を使わないと戦えないなんて冗談にもならない。

 緊張状態で刀を使えないなら、もっと掌握しやすい手足を使えばいい。

 遠距離武器が無いのなら、小石を投げて応戦すれば良い。

 相手が隠れて見えないなら、心眼で捕捉すれば良い。

 

 その程度の事が出来なきゃ、彼女には絶対に届かない。

 

 

 僕はそれを知っている。

 

 

 誰よりも彼女に敗け続けている僕だから。

 

 

 けれど、何時かは打ち倒してみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 (化け物)を負かすのは、何時だってヒトなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待っててね。青鬼さん。すぐに、追いついてみせるから」

 

 

 

 ****

 

 

 

 

「霊装展開:茨木童子・茨木華扇」

 

 目の前で刀を構える挑戦者の力量を認め、()()()()【名前持ち】、それも【四天王】を展開した。事実、彼にはそれだけの力量と価値がある。

 

「・・・・・まさか、初めから【四天王】で来てくれるとは思わなかった」

「嘘つけ。私が君の力量も測れない愚図な訳ないって、分かってたでしょ?」

「ははは・・・・・」

 

 紳士に、常人に、優しい人に擬態していても、その実戦を潜り抜け洗練された所作は隠せない。黒いだけの、何の変哲もない刀から放たれる威圧感と闘気は、私を()()()()()()奮い立たせる。

 

 心の底から湧き出るは歓喜。

 

 次いで日本という国への失望と感謝。

 

 こんな、人とも修羅ともつかない、けれどだからこそ素晴らしい逸材を放置し、埋もれさせた日本という国への失望。

 そして、黒鉄一輝を迫害し、結果としてここまで育て上げた日本という国への感謝。

 

 相反する感情をあるがままに受け入れ、歓喜のままに期待を乗せた拳を振るう。

 

「オォおぉオラ!」

「第三秘剣───(まどか)

「──へぇ」

 

 人外の膂力で放たれた拳を受け止め、受け流し、拳を振り切った隙を狙い、そのまま返さず。

 

「そして、第六秘剣─毒蛾の太刀」

「っつ!?」

 

 鬼の膂力を全て内部破壊の振動には変換できなかったものの、その約三割の力に私の体内は攻撃された。

 初めてだった。ここまでのダメージを受けたのは。

 初めて、学生騎士との戦いを、楽しむ事が出来た。

 

「は、ハハハハっ!!!すごいっ!すごいよ一輝!!!!!あっはははははははははははは!!!」

「ッッッ!その、霊装は、もしかして」

「えへへっ。君があんまりにも素晴らしいからさぁ

 ────ちょっとだけ、本気だすね」

 

 

 ─────()()()()()()()()・伊吹萃香

 

 

「お願いだから・・・・・死なないでね?」

「ッッッッッ!!!《一刀修羅》ァァァ!!!!!」

 

 

 

「《四天王奥義ィ」

 

 一歩、踏み出す。制御を外れ漏れ出した魔力が赤い弾幕を形作り、私の周りに配置される。

 二歩、踏み出す。漏れ出た魔力を『萃め』、中型の弾幕に形成する。

 

 そして、三歩。

 

「オォォォォォォォォォ!!!」

 

(逃げ道なんて無い!そして既存の剣技じゃまず()()()()!・・・・・なら、作るしかない。幸いスピード自体は目で追えるし、(一刀修羅)なら追いつける。なら足りないのはパワーだ。『円』で打ち返すなんて恐らく今の僕には出来ない。押し負ける。ならどうするか)

 

「避けて、斬る」

「:三歩必殺》ゥ!!!」

「秘剣:鬼斬ッ!!!」

 

 今まさに額を捉えようとした拳がすり抜ける。空ぶる。

 そして気付く。

 

「痛、い?」

 

 痛みの源に目線を向ける。

 そこは腹だ。腹に、黒い刀が、生えていて。

 

 刀の先には、()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()、一輝が居た。

 

「アハッ」

 

 ふと、出来心で、『茨木の百薬枡』を取り出す。

 そこに、『伊吹瓢』から酒を注ぐ。

 酒は百薬の長。いかなる傷をも癒す。それが、鬼の酒器ならば尚更に。

 造られた薬酒を、一輝の口に注ぎ───

 

「・・・・・一輝?」

「それは、なんだか、ダメな気がする」

 

 一輝は、受け入れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やはり彼は、妖には成れないらしい。

 

 

 

 

《落第騎士》と、《小さな百鬼夜行》の、初めての闘いだった。




秘剣:鬼斬・・・・・《一刀修羅》の強化を脚と腕に集中し、蜃気狼で惑わしながら犀撃を放つ。集中された強化は、制御する箇所を絞ったので少しだけ強化倍率が上がっている。名付けは適当。多分もう出ない。設定もガバガバだけど怒らないでください。

茨木の百薬枡を拒んだ一輝・・・・・飲むと体が鬼に近づく魔法の薬酒。大抵の怪我はたちどころに治り、健康な状態で飲めば一時的に怪力を得る。己の騎士道にそぐわないものだと直感的に理解した一輝は勇華が飲ませようとするのを拒んだ。


すまない・・・・・更新遅くてすまない・・・・・その癖短くてすまない・・・・・
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